ウインダム・クラークはなぜ全米オープンで強いのか 第三話 重いパターはなぜソフトタッチに強いのか

第一話では、全米オープンのパッティングがなぜ難しいのかを考えました。

全米オープンは、速く、硬く、傾斜の強いグリーンで行われることが多く、ただ距離感を合わせるだけでは足りません。

弱く、正確に、ボールへエネルギーを与える技術が求められます。

第二話では、ウインダム・クラークのパター選びを見ました。

2023年のOdyssey Versa Jailbird系。
そして、SCOTTSDALE TEC ALLY BLUE ONSET CB。

メーカーは違っても、そこには共通する思想があります。

長めであること。
重めであること。
ストローク中の余計な操作を抑えやすいこと。

さらに、全米オープンでは過去にも、ウェブ・シンプソンのベリーパター、ブライソン・デシャンボーのアームロックなど、手首の余計な動きを抑えるパター思想が目立ちます。

では、なぜ重いパターは、全米オープンのような速いグリーン、そしてソフトタッチのパッティングに合いやすいのでしょうか。

ここを考えてみます。

まず、パッティングで大事なのは、ボールを強く打つことではありません。

ボールへ必要なエネルギーを、必要な方向へ、必要な量だけ与えることです。

特に速いグリーンでは、ボールに大きなエネルギーを与えることはできません。

少し打ちすぎれば、カップを大きくオーバーします。
少し緩めば、カップまで届きません。
少しフェースが開けば、右へ出ます。
少しフェースが閉じれば、左へ出ます。

つまり、ソフトタッチのパッティングでは、非常に小さなエネルギーを、非常に正確に扱う必要があります。

ここに難しさがあります。

軽いパターは、操作しやすいというメリットがあります。

手先で動かしやすい。
距離感を出しやすい。
ヘッドの動きを自分で調整しやすい。

これは一見、繊細なパッティングに向いているように思えます。

しかし、全米オープンのような速いグリーンでは、この「操作しやすさ」が逆に難しさになることがあります。

なぜなら、操作しやすいということは、余計な動きも入りやすいということだからです。

ほんの少し手首が動く。
ほんの少しグリップが止まる。
ほんの少しヘッドが走る。
ほんの少しインパクトで緩む。

この小さなズレが、弱いタッチではそのまま結果に出ます。

強く打つパットであれば、多少のズレを勢いでごまかせることがあります。

しかし、弱く打つパットでは、ごまかしが効きません。

ボールに与えるエネルギーが小さい分、フェースの向きや打点のズレの影響が大きくなるからです。

一方、重いパターは、ヘッドそのものが動きにくくなります。

これは欠点にもなります。

重いパターは、自由に操作しにくい。
細かくヘッドを動かしにくい。
手先だけで距離を合わせにくい。

しかし、全米オープンのような条件では、この「動きにくさ」がメリットになります。

ヘッドが勝手に暴れにくい。
手首の小さな動きに反応しすぎない。
ストローク中のスピード変化が穏やかになる。
インパクトでヘッドが当たり負けしにくい。

つまり、重いパターは、プレーヤーに余計な操作をさせにくいのです。

ここが重要です。

ソフトタッチでは、パターを細かく操作するほど難しくなります。

弱く打とうとして手先で加減する。
距離を合わせようとしてインパクトで緩める。
ラインに乗せようとしてフェースを合わせにいく。

これらは、すべてズレの原因になります。

本当に必要なのは、インパクトで何かをすることではありません。

構えたフェースを、できるだけそのまま戻すこと。
ストローク全体の流れを止めないこと。
ボールの進行方向へ、必要なエネルギーだけを渡すこと。

このとき、重いパターは有利に働きます。

なぜなら、ヘッドの重さがあることで、ストロークが手先の小さな動きに左右されにくくなるからです。

パターが軽いと、手先の動きがすぐにヘッドへ伝わります。

少し手首を使えば、ヘッドが動く。
少し握りが変われば、フェースが変わる。
少し加速すれば、ボールが飛びすぎる。

軽いパターは反応が良いのです。

しかし、反応が良いということは、ミスにも反応しやすいということです。

重いパターは、その逆です。

反応は少し鈍くなります。

しかし、その鈍さが、全米オープンでは助けになります。

余計な手の動きに対して鈍い。
小さな緩みに対して鈍い。
フェースのブレに対して鈍い。

つまり、プレーヤーの余計な動きを、パター側がある程度吸収してくれるのです。

もちろん、これは「重ければ重いほど良い」という話ではありません。

重すぎるパターは、距離感が出しにくくなります。
ヘッドを感じすぎて、ストロークが硬くなることもあります。
合わない人が使えば、むしろタッチは悪くなります。

大切なのは、重さそのものではありません。

重さによって、何を安定させるのかです。

クラークのような中尺・重量級パターで重要なのは、ヘッドだけではありません。

長さ。
ヘッド重量。
グリップ側の重量。
全体のバランス。
ストローク中の支点感。
そして、手首の使いにくさ。

これらが組み合わさって、パター全体の動きが安定します。

これが、カウンターバランス型の面白いところです。

ヘッドだけを重くすると、ヘッドが効きすぎることがあります。

しかし、グリップ側にも重さを持たせることで、パター全体としては重いのに、手元では極端にヘッドが暴れにくくなります。

つまり、ヘッドの慣性を使いながら、手元の安定感も作る。

これが、中尺・重量級カウンターバランス系パターの狙いだと思います。

ここで、全米オープンのパッティングに話を戻します。

全米オープンでは、常に強く打てるわけではありません。

むしろ、強く打ってはいけない場面が多くなります。

下りのパット。
横からの速いライン。
カップを過ぎると大きく切れるライン。
外すと返しが難しくなるピン位置。

こういう場面では、必要なのは強いストロークではありません。

弱く打っても、フェースを安定させることです。

弱く打っても、ラインへ正しく乗せることです。

弱く打っても、ボールが転がり始める方向を狂わせないことです。

これは、軽いパターで手先を使って打つほど難しくなります。

逆に、重いパターでストローク全体を安定させることができれば、弱いタッチでもボールへ正しくエネルギーを伝えやすくなります。

店長が注目しているのは、まさにここです。

重いパターは、ボールを強く打つための道具ではありません。

弱く打つための道具です。

もっと正確に言えば、弱く打ってもフェースを安定させるための道具です。

だから、全米オープンと相性が良い。

全米オープンのグリーンでは、入れることだけを考えると危険です。

強く打って入ればよい。
ラインを消して打てばよい。
カップにぶつければよい。

そういうパッティングが通用しにくい場面が増えます。

必要なのは、外れても次が簡単になるパッティングです。

大きくオーバーしない。
大きくショートしない。
ラインから大きく外れない。
次のパットを難しくしない。

つまり、外し方を小さくするパッティングです。

ここで、重いパターの価値が出ます。

パターを自由に動かすのではなく、余計に動かさない。
手先で合わせるのではなく、パター全体で転がす。
インパクトで操作するのではなく、構えたフェースをそのまま戻す。

この考え方が、ソフトタッチの正確性につながります。

ウインダム・クラークのパター選びは、ここに合理性があります。

クラークは、全米オープンを豪快なショットだけで勝った選手ではありません。

もちろん、飛距離もショット力も大きな武器です。

しかし、全米オープンで最後に問われるのは、グリーン上で余計な1打を打たない能力です。

そのために、彼は手先で自由に操作するパターではなく、余計な動きを抑えやすいパターを選んでいるように見えます。

それは、偶然ではなく、全米オープンという大会の性質に合った選択だったのではないか。

店長はそう考えています。

結局、全米オープンのパッティングで必要なのは、派手な一発ではありません。

弱く、正確に、狙った方向へ転がすこと。

その繰り返しです。

クラークの中尺・重量級パターは、そのための道具です。

入れるための奇策ではなく、外し方を小さくするための設計。

強く打つためではなく、弱く正確に打つための構造。

そこに、ウインダム・クラークが全米オープンで強い理由の一つがあるのだと思います。

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