ハンター・メイハンはどのようなウェッジがあうのでしょうか?
実はこのようなタイプのゴルファーは、かなり、いらしゃいます。
ウェッジのフィッティングでは一般的に、
「入射角がスティープならハイバウンス」
「入射角がシャローならローバウンス」
と説明されます。
これは基本的には間違っていません。
実際、PINGの現行s259でも、Wグラインドはスティープな入射角や大きなシャフトリーンを持つゴルファー向けとされています。
Wグラインドは実効バウンス14°。
PING自身も、
steep angle of attack
そして、
a lot of shaft lean
を持つプレーヤーに適すると説明しています。
ここだけを見れば、
スティープにクラブを入れるメイハンなら、
Wグラインド
という答えになりそうです。
しかし、単純ではないと思っています。
なぜなら、
ウェッジのソールが地面に当たる状態は、入射角だけでは決まらない
からです。

重要なのが、
ボール位置です。
そして、
インパクトでハンドルがどこにあるのか。
さらに、
身体がどのように回転しているのか。
です。
メイハンのスイングを見ると、かなり特徴があります。
クラブはスティープに入る。
そしてインパクト付近では、身体が強く回転していく。
いわゆる、
スピンアウトするタイプ
です。
手元も身体の回転に伴って左へ抜けていきます。
このタイプが、ボールをスタンス中央や右側に置けば、
話は比較的簡単です。
ボールが早い段階でインパクトを迎えるので、
シャフトはハンドファーストになりやすい。
ロフトは立つ。
バウンスは減る。
そしてリーディングエッジが地面へ向かいます。
この条件なら、
Wグラインドの大きなバウンスが助けになります。
スティープに入っても、
ソールが地面から反力を受け、
ヘッドが深く潜るのを防いでくれる。
これは、
「スティープならハイバウンス」
という一般的な考え方です。
しかし、
メイハンのアプローチを見ていくと、
ボール位置がもっと左側にあるように見えます。
ここで条件が大きく変わります。
ボールを左へ置けば、
クラブはスイング円弧のより先でボールに到達します。
そのため、
同じスティープなスイングでも、
インパクトでのシャフトリーンは小さくなります。
ロフトも残る。
そして、
ソールのバウンスも使いやすくなります。
つまり、
静的な入射角だけを見れば「スティープ」でも、
実際に地面へ当たるウェッジの姿勢は、
まったく違う可能性があるのです。
ここで出てくるのが、
現行PING s259の
Bグラインド
です。

Bグラインドは58°と60°に設定され、
実効バウンスは8°。
PINGの公式説明では、
浅い入射角とスクエアなセットアップを想定したローバウンス設計です。
ところがBには、もう一つ大きな特徴があります。
ワイドソールです。
つまり、
バウンス角そのものは小さいけれど、地面と接触するソール幅は広い。
という設計です。
ここが非常に重要だと思います。
ボールを左へ置き、
ロフトを残し、
身体を強く回転させながらクラブを左へ抜く。
このタイプの場合、
必要なのは必ずしも、
14°という大きなバウンス角ではありません。
むしろ、
リーディングエッジは低く保ちながら、広いソールで地面を受け流す
という考え方が合う可能性があります。
それがBグラインドです。
例えばWグラインドで14°のバウンスがあり、
さらにボールを左へ置いてシャフトリーンを減らせば、
インパクトではかなり大きな実効バウンスになります。
柔らかい地面なら、それが助けになることもあります。
しかし、
硬いフェアウェイや薄いライでは、
ソール後方が先に地面へ当たり、
リーディングエッジが浮いてしまう可能性もあります。
一方Bグラインドなら、
実効バウンスは8°。
それでもソール幅は広い。
ですから、
地面に刺さりにくくしながら、リーディングエッジを低く保つ
という両方を狙うことができます。
これは、
スピンアウトするゴルファーをフィッティングするときに、
かなり重要な考え方だと思います。
つまり、
スティープだからW。
ではありません。
見るべきなのは、
そのスティープなクラブが、どの姿勢で地面に到達しているのか。
です。
ボール位置。
シャフトリーン。
フェースの開き。
ハンドルの高さ。
身体の回転。
そしてソールが地面へ接触する場所。
これらを全部見なければなりません。
メイハンの2014年のWITBを見ると、
ウェッジはPING i25の54°と59°でした。
この事実だけから、
現在のBグラインドと同じものを使っていた、
と断定することはできません。
当時のソール形状と現在のs259 Bは別物です。
しかし少なくとも、
メイハンのウェッジ選びを、
「スティープだから最大バウンス」
という一言だけでは説明できないことは分かります。
そして、
2010年ライダーカップ17番のあのアプローチです。
あのショットを改めて見ると、
店長には、
ボールを右へ置いて強くダウンブローに打つショットには見えません。
比較的左にボールを置き、
ロフトを残して、
身体を回しながらソールを使おうとしているように見えます。
もしそうであれば、
あのミスについても、
単純に、
「スティープだからダフった」
では説明できません。
普段は、
左に置いたボールに対して、
身体を回転させながら、
ソールを地面へ当てて抜いている。
ところが、
ライダーカップを決める極限のプレッシャーの中で、
いつもよりほんの少し、
メイハン本来のスティープな成分が強く出た。
ボール位置は左のまま。
しかしクラブは、
いつもより少し早く地面へ向かった。
すると、
最下点がボールに届く前に地面へ当たる。
あのチャックです。
もちろん、
これは映像から考えた店長の仮説です。
ただ、
この仮説からウェッジフィッティングについて考えると、
非常に面白いことが分かります。
ゴルファーのミスを、ウェッジ側でどこまで許容できるのか。
ということです。
メイハンのようなタイプを現行s259でフィッティングするとしたら、
店長なら、
まず58°で
WグラインドとBグラインドを両方打ってもらいます。
そして、
単にナイスショットだけを見るのではありません。
ボールを左に置いたとき。
少し右に置いたとき。
硬いライ。
柔らかいライ。
スクエアフェース。
少し開いたフェース。
そして、
少し手前から入ったとき。
そこまで見ます。
Wなら、
スティープに入ったときの許容度は大きい。
しかし、
左にボールを置いてロフトを残したときに、
ソールが跳ねすぎないかを見る。
Bなら、
リーディングエッジを低く使いやすく、
ワイドソールによって多少手前から入っても地面を受け流せる。
その代わり、
本当に強く打ち込んだときに8°のバウンスで足りるのかを見る。
つまり、
どちらが正しいのかを、
入射角という一つの数字だけで決めない。
これが重要です。
店長なら、
メイハンのような、
スピンアウトするタイプ
+スティープな入射
+ボール位置が左寄り
のゴルファーには、
むしろBグラインドをかなり真剣に試します。
PINGの分類だけを見れば、
Bはシャローなゴルファー向けです。
しかしフィッティングでは、
分類表にゴルファーを合わせるのではありません。
実際に、その人がクラブをどう地面へ届けているのかを見る。
ことが必要です。
これはウェッジに限った話ではありません。
スイングを見て、
「スティープだからこれ」
と決めるのも、
「掌屈しているからこう」
と決めるのも、
本質的には同じ問題です。
ハンター・メイハンが現在話している、
「見た目が少し違っていても、機能しているものには触るな」
という考え方。
ウェッジフィッティングでも同じです。
スイングをクラブに合わせるのではなく、
まず、
その人が本来持っているメカニズムを理解する。
そして、
そのメカニズムが多少ズレても、
大きなミスになりにくいソールを選ぶ。
それが、
ウェッジフィッティングなのだと思います。
だから、
スティープ=ハイバウンス
ではありません。
より正確には、
その人がインパクトで、どのような姿勢のソールを地面へ届けているのか。
そこまで見て、
初めてバウンスとグラインドを選ぶことができます。
そして、ここでもう一つ興味深い事実があります。
2014年のメイハンのセッティングです。
当時、アイアンには小ぶりなPING S55を使用していました。
ところがウェッジを見ると、
54°と59°には、
専用ウェッジではなく、i25のウェッジ
を入れています。
さらに記録では、
54°はstandard grind。
59°はbounce grind。
となっています。
これは、かなり興味深い選択です。
通常、上級者やツアープロのウェッジというと、
操作性を高めるために、
小ぶりなヘッド。
比較的細いソール。
そしてフェースを開いたときに邪魔をしないグラインド。
そうしたものを想像すると思います。
しかしメイハンが選んだi25は、そうした典型的なツアーウェッジとは少し違います。
比較的ソール幅が広く、寛容性を持ったヘッドです。
つまりメイハンは、
アイアンではS55という操作性の高いモデルを使いながら、
グリーン周りでは、
よりソール幅のあるi25を選択していたことになります。
もちろん、
2010年のライダーカップでの経験が、そのままこの選択につながった、
と断定することはできません。
メイハン本人がそう語っているわけではないからです。
しかし店長には、
この選択が非常に興味深く見えます。
なぜなら、
これまで考えてきたメイハンのアプローチのメカニズムと、
よく一致するからです。
ボールを比較的左へ置く。
身体を強く回転させる。
クラブは左へ抜けていく。
そして、
ソールを地面に当てながらヘッドを抜いていく。
このタイプであれば、
操作性だけを優先して細いソールを選ぶより、
多少インパクト位置がズレても、
広いソールによって地面から受ける反力を利用できるほうが、
成功確率を高められる可能性があります。
そして店長は、
この考え方と現在のs259 Bグラインドに、
共通する部分があると思っています。
もちろん、
i25のソールとs259 Bグラインドが同じ設計だ、
という意味ではありません。
現在のBグラインドは、
8°のローバウンス+広めのソール幅
によって、
硬い地面でもリーディングエッジを浮かせすぎず、
ソールを滑らせやすくする設計です。
PINGの公式分類では、
Bグラインドは浅い入射角のゴルファー向けです。
一方Wグラインドは、
スティープな入射角やシャフトリーンが大きいゴルファー向けです。
しかし、
メイハンのようなゴルファーを、
単純に、
「スティープだからW」
と分類していいのでしょうか。
店長は、ここにウェッジフィッティングの面白さがあると思っています。
ボール位置が左。
シャフトリーンはそれほど大きくならない。
身体を回転させながら左へ抜く。
その結果、
ロフトとバウンスを残した状態でソールが地面へ届く。
この条件なら、
高バウンスに頼るより、低いリーディングエッジと広いソール面積を両立させたBグラインド
が機能する可能性があります。
つまりこれは、
操作性を優先するのか。
それとも、
結果の成功確率を優先するのか。
という違いでもあります。
細いソールは、
フェースを開いたり閉じたりしやすく、
様々なショットを打ち分ける自由度があります。
しかし、
ワイドソールには、
多少インパクトがズレても、
地面との接触によって大きなミスになりにくいという別の価値があります。
メイハンが2014年に、
S55アイアンから54°・59°だけi25へ切り替えていたこと。
店長には、
それが単なるクラブ選択以上に、
「操作できるクラブ」より「結果を出しやすいクラブ」を選ぶ
というウェッジフィッティングの一つの考え方を示しているように見えます。
そして現在、
低バウンスでありながら広いソールを持つBグラインドが存在する。
店長は、
この二つの間に、
PINGが長年考えてきたウェッジフィッティングの一つの流れを感じています。
これはあくまで店長の考察です。
しかし、
ウェッジを選ぶときに見るべきなのは、
「プロだから操作性の高いウェッジ」
でも、
「スティープだからハイバウンス」
でもありません。
そのゴルファーが、どのようにクラブを地面へ届けているのか。
そして、
多少その動きがズレたとき、どのソールなら結果を守ってくれるのか。
そこまで考えて選ぶことが、
本当のウェッジフィッティングなのだと思います。