ちょっとまって、中尺・長尺パターは、勝率高くない?

前回は、Viktor Hovlandの優勝パターについて書きました。

36インチのPING PLD DS-72 Prototype。
そしてWinn 17インチの長めグリップ。

ホブランはクロスハンドではなく、基本的に順手です。
それでも、長めのパターと長めのグリップを組み合わせることで、手元側に重量を残し、パター全体を安定させているように見えます。

今回改めて気になったのは、今年のPGAツアーで、長めのパターを使った選手の優勝が目立っていることです。

Akshay Bhatiaは、44インチ級のブルームスティックパターで優勝。
Wyndham Clarkは、38インチのPING Scottsdale TEC Ally Blue Onset CBで優勝。
しかもClarkはこの仕様でUS OPENも勝っています。
そして今回のViktor Hovlandは、36インチの長め仕様に17インチグリップを組み合わせて優勝しました。

38インチ以上を中尺・長尺と厳密に見るなら、BhatiaとClarkが代表例です。
一方で、Hovlandの36インチ+17インチグリップまで「長め・カウンターバランス的な仕様」として含めると、今年のPGAツアーでは長めのパターがかなり目立っていることが分かります。

ここで重要なのは、単に「長いパターが流行っている」という話ではありません。

長めのシャフトにすることで、構えたときの手元位置、前傾角度、グリップエンドの余り方、そしてパター全体の慣性が変わります。
さらに17インチ前後の長いグリップを組み合わせると、手元側に重量を残しやすくなり、ヘッドの動きが落ち着きます。

つまり、長めのパターは、ストロークを手先で操作する道具ではなく、パター全体を安定して動かすための道具だと考えることができます。

グリップを余らせて打つ選手は、余ったグリップエンドと左手を結ぶ線が目標からずれないようにストロークします。

これほど、プロの世界で目立つという事は、一般ゴルファーも注目してもいいと思います。

特に手首の動きが大きい方、ショートパットでフェース向きが安定しない方、距離感でインパクトが緩みやすい方は、短いパターを無理に操作している可能性があります。

長めのパターにすることで、手元が安定し、ヘッドの暴れが減り、ストローク全体が落ち着くことがあります。
さらに長いグリップを余らせて使えば、カウンターバランス的な効果も得られます。

長め・中尺は距離感が難しくなる人もいますが、カウンターバランスなら通常パターに近い感覚で使えます。

中尺・長尺パターは、特殊な人だけの道具ではありません。
むしろ、手首の余計な動きを抑えたいアマチュアにとって、非常に合理的な選択肢です。

今回のホブランの優勝も、そのことを改めて示しているように感じます。

パターは、長さを合わせる道具です。
市販の34インチや35インチに、自分の構えを合わせる必要はありません。

自分の構えに合った長さを選ぶ。
そこから、パッティングの安定は始まります。

PING Co-PILOT パターレングス アプリを、ぜひ利用してください。

唐突ですが、すこし気持ちを緩めましょう。えっ、今週もUSOPENだったというトラベラーズの動画を紹介して次回に続きます。

ホブラン優勝。順手でも、長めのパターとカウンターバランスは効く。

Viktor Hovlandが、Travelers Championshipを制しました。

相手は世界ランキング1位のScottie Scheffler。
72ホールを終えて両者は21アンダーで並び、勝負は月曜日のプレーオフへ。

最後はホブランが18番でバーディパットを沈め、シェフラーが決め返せず、ホブランの優勝が決まりました。

この勝利でホブランはPGAツアー8勝目。
しかも、今の男子ゴルフ界で最も安定して強いシェフラーを、最後のパットで上回ったという点に大きな意味があります。 “ホブラン優勝。順手でも、長めのパターとカウンターバランスは効く。” の続きを読む

ウインダム・クラークがエピソードトークにやってきた。

なんと、ウインダム・クラークがエピソード トークにやってきました。内容を見ていきましょう。

ウィンダム・クラークが語った、PING Ally Blueに替えてパットが入る理由

全米オープンを制したウィンダム・クラークが、PINGのPodcastで自身のパターについて語っています。

今回、特に面白いのは、単に「新しいパターに替えたら入った」という話ではありません。
クラーク本人が、なぜこのパターで狙いやすくなったのかをかなり具体的に話している点です。

クラークは、PINGのツアートラックで偶然Ally Blueを手にしたといいます。

「待っている間にバッグの中のパターをいじっていたら、Ally Blueが目に入った」

そこからヒューストンで実戦投入し、マスターズでも使用。
そしてRBCの前後で、さらに自分仕様へ調整していきます。

具体的には、

38インチに長くする
大きめのグリップを入れる
ヘッド下部にかなりの重量を追加する

という調整です。

ここからクラークのパッティングは大きく変わります。

本人も、

「RBCのヒルトンヘッドあたりから、本当に素晴らしいパッティングが始まった」

と語っています。

さらにPINGのスタジオでロフトや転がり、スピンを確認したことで、自分が感じていた良さが数字でも確認できたようです。


クラークが最も評価しているのは「狙いやすさ」

クラークがAlly Blueで最も気に入っているのは、転がりの良さだけではありません。
むしろ中心にあるのは、構えた時の狙いやすさです。

彼はこう話しています。

「一番の問題は、照準だった」
「自分が安定して狙えるパターをずっと探していた」
「本当に見つけたと思っている」

これは非常に重要です。

プロであっても、ストロークそのものより、まずどこを向いているかが問題になる。
クラーク自身も、自分のストロークにはかなり自信を持っています。

「フェースを良い状態で入れて、良い転がりを作ることは一貫してできる」
「でも一番の問題は、照準だった」

つまり、Ally Blueはクラークにとって、ストロークを直したパターではなく、
正しく構えられるようにしたパターだったと言えます。


オンセット、白いヘッド、黒いライン、そしてドット

クラークは、Ally Blueの良さを3つ挙げています。

まず、オンセット形状
クラークは、オンセットによってフェースを狙いやすく感じると話しています。

次に、白いヘッドに黒いライン
彼の目には、黒地に白よりも、白地に黒の方が合うようです。

そして、ラインとドットの組み合わせ
PINGがIQテクノロジーと呼ぶ照準機能について、クラークはこう表現しています。

「ドットがラインをしっかり確定させてくれる感じがある」
「視線が柔らかくなるような感じ」

これは、非常に面白い表現です。

アライメントは、単に線を長くすれば良いわけではありません。
人によっては、ラインだけだと左に見えたり、逆に迷いが出たりします。

クラークは左目利きで、ボールをスタンスの前方に置くため、ラインが左を向いて見えることがあったと話しています。
しかしAlly Blueでは、ラインとドットの関係によって、構えた時のズレが少なくなった。

その結果、キャディに確認してもらっても、

「今は毎回、合っていると言われる」

という状態になったそうです。


重いパターと柔らかいインサート

もう一つ見逃せないのが、クラークが重いパターを好むという点です。

本人も、

「僕は重いパターが好きなんです」

とはっきり話しています。

さらにインサートについても、ボールが速く出すぎないところを評価しています。

「ボールがフェースからすごく速く出るわけではないところが好き」
「速い下りのパットでも、しっかりストロークしている感覚を持てる」

これは、アマチュアにも非常に参考になります。

速いグリーンや微妙な距離のパットでは、フェースからボールが速く出すぎると、どうしても手が止まりやすくなります。
クラークは、少し柔らかく、しっかり打てるフィーリングを好んでいるわけです。


店長的まとめ

クラークの発言をまとめると、Ally Blueが合った理由は単純な「転がりの良さ」だけではありません。

むしろ本質は、

狙いやすい
視線が迷わない
重さがある
速いグリーンでもストロークできる
自分の感覚をPINGの計測で確認できた

という点にあります。

特に重要なのは、クラークほどの選手でも、
「ストロークは良い。しかし狙いがズレる」
という問題を抱えていたことです。

パター選びでは、打感や転がりだけでなく、
自分が本当に正しく構えられているか
を確認することが非常に大切です。

今回のクラークの優勝は、Ally Blueというパターの性能だけでなく、
パターは“打つ道具”である前に、“正しく狙う道具”である
ということを改めて教えてくれる内容だったと思います。

ウインダム・クラークはなぜ全米オープンで強いのか 第三話 重いパターはなぜソフトタッチに強いのか

第一話では、全米オープンのパッティングがなぜ難しいのかを考えました。

全米オープンは、速く、硬く、傾斜の強いグリーンで行われることが多く、ただ距離感を合わせるだけでは足りません。

弱く、正確に、ボールへエネルギーを与える技術が求められます。

第二話では、ウインダム・クラークのパター選びを見ました。

2023年のOdyssey Versa Jailbird系。
そして、SCOTTSDALE TEC ALLY BLUE ONSET CB。

メーカーは違っても、そこには共通する思想があります。

長めであること。
重めであること。
ストローク中の余計な操作を抑えやすいこと。

さらに、全米オープンでは過去にも、ウェブ・シンプソンのベリーパター、ブライソン・デシャンボーのアームロックなど、手首の余計な動きを抑えるパター思想が目立ちます。

では、なぜ重いパターは、全米オープンのような速いグリーン、そしてソフトタッチのパッティングに合いやすいのでしょうか。

ここを考えてみます。 “ウインダム・クラークはなぜ全米オープンで強いのか 第三話 重いパターはなぜソフトタッチに強いのか” の続きを読む

ウインダム・クラークはなぜ全米オープンで強いのか 第二話 ウインダム・クラークはなぜ中尺・重量級パターを選んだのか

第二話 ウインダム・クラークはなぜ中尺・重量級パターを選んだのか

第一話では、全米オープンのパッティングがなぜ難しいのかを考えました。

全米オープンは、ただ距離が長い大会ではありません。

歴史ある名門コースで行われることが多く、グリーンは速く、硬く、傾斜も強い。
しかも、外した後の返しが簡単ではありません。

そこで求められるのは、強く打つパッティングではありません。

弱く、正確に、ボールへエネルギーを与える技術です。

この視点で見ると、ウインダム・クラークのパター選びは非常に面白くなります。

2023年、クラークがロサンゼルス・カントリークラブで全米オープンを制したとき、彼の手にあったのはOdyssey Versa Jailbird系のパターでした。

このパターは、いわゆる普通の長さ、普通の重さのパターではありません。

通常より長めで、重量感があり、カウンターバランスの効いた中尺系のパターです。

そして今回、店長がさらに注目しているのが、SCOTTSDALE TEC ALLY BLUE ONSET CBです。

メーカーはOdysseyからPINGへ変わりました。

しかし、ここで大事なのは、メーカー名ではありません。

Odysseyだから勝った。
PINGだから勝った。

という単純な話ではないのです。

重要なのは、そこに共通している思想です。

長めであること。
重めであること。
手先で細かく操作するよりも、ストローク全体を安定させる方向で作られていること。

ここが、クラークのパター選びの本質だと思います。

実は、全米オープンでは過去にも、この「手先の余計な動きを抑える」思想を持ったパターで勝った選手が目立ちます。

2012年、オリンピッククラブで優勝したウェブ・シンプソンは、ベリーパターを使用していました。

2020年、ウイングドフットで優勝したブライソン・デシャンボーは、アームロック型のパターを使用していました。

そして2024年、パインハーストNo.2で再び全米オープンを制したブライソンも、アームロック型のパターでした。

さらに2023年、ロサンゼルス・カントリークラブで優勝したウインダム・クラークは、長めのカウンターバランス型Odyssey Versa Jailbird系パター。

こうして見ると、全米オープンでは、普通の長さのパターで手先の感覚だけを使うというより、長さ、重さ、グリップ側のバランス、あるいは腕との一体感を使って、ストローク中の余計な動きを抑えるタイプのパターが目立ちます。

ここでいう「中尺以上」は、単に長いパターという意味ではありません。

ベリーパター。
アームロック。
カウンターバランス。

これらを、まったく同じパターとして扱うことはできません。

しかし、共通している方向性はあります。

それは、手首の過剰な動きを抑え、ストローク全体を安定させる方向のパターである、ということです。

もちろん、これだけで全米オープンを勝てるわけではありません。

ショット力。
アプローチ。
メンタル。
コースマネジメント。

すべてが揃わなければ、全米オープンは勝てません。

しかし、速く硬いグリーンで、弱いタッチを何度も正確に出し続けるという条件を考えると、これらのパターに共通する思想は非常に興味深いものがあります。

それは、

パターを自由に動かすのではなく、余計に動かさない。

という考え方です。

普通の長さのパターは、操作しやすいというメリットがあります。

フェースを開いたり、閉じたり。
距離感を手先で合わせたり。
微妙なタッチを自分の感覚で出したり。

もちろん、それが合う選手もいます。

しかし、全米オープンのようなグリーンでは、この「操作しやすさ」が、逆に危険になることがあります。

なぜなら、全米オープンでは強く打てないからです。

速いグリーンでは、ボールに大きなエネルギーを与えることができません。

ほんの少しだけ打つ。
ほんの少しだけ転がす。
カップの近くで止める。
外れても、次のパットを簡単に残す。

こういうパッティングが必要になります。

ところが、弱く打つパッティングほど、手先の余計な動きが結果に出やすくなります。

ほんの少し手首が動く。
ほんの少しフェースが開く。
ほんの少しインパクトで緩む。
ほんの少し押し出す。

これだけで、ボールの出球は変わります。

強く打つパットなら、勢いでごまかせることがあります。

しかし、弱く打つパットでは、ごまかしが効きません。

だからこそ、クラークは手先で操作しやすいパターではなく、余計な操作をしにくいパターを選んでいるように見えるのです。

中尺・重量級パターの良さは、ここにあります。

ヘッドが重い。
長さがある。
グリップ側にも重さがある。
全体として、パターが勝手にフラフラしにくい。

つまり、ストローク中に余計な動きが入りにくくなります。

もちろん、これは魔法の道具ではありません。

重いパターを使えば誰でも入る、という話ではありません。

むしろ、合わない人には合いません。

しかし、全米オープンのような速く硬いグリーンで、弱いタッチを正確に出し続けるという条件では、非常に合理的な選択になります。

ここで注意したいのは、これは昔のロングパターやアンカーリングとは違うということです。

クラークのパターは、体に固定して打つためのパターではありません。

長さと重さを使って、ストローク全体を安定させるパターです。

手で打つのではなく、パター全体の重さで転がす。

この感覚に近いと思います。

店長がクラークを推していた理由は、ここにあります。

クラークは、ただ飛ばす選手ではありません。

全米オープンという大会で必要になるパッティングの性質を考えたとき、その要求に合った道具を選んでいるように見える選手です。

全米オープンでは、入れるパッティングだけでは勝てません。

外し方を小さくするパッティングが必要です。

大きくオーバーしない。
大きくショートしない。
ラインから大きく外さない。
次のパットを難しくしない。

このためには、パターの操作性よりも、パターの安定性が重要になります。

軽くて自由に動かせるパターよりも、余計な動きをさせないパター。

手先で距離を合わせるパターよりも、ストローク全体でエネルギーを一定にするパター。

クラークの中尺・重量級パターには、この考え方が見えます。

つまり、全米オープンでは「入れるための感性」だけでなく、「外し方を小さくするための構造」が効いている可能性があります。

クラークのパター選びも、この流れの中で見ると、かなり合理的に見えてきます。

だから店長は、クラークのパター選びを単なる流行とは見ていません。

2023年のJailbird。
そして、SCOTTSDALE TEC ALLY BLUE ONSET CB。

メーカーは違っても、そこにある思想は近い。

それは、全米オープンのようなグリーンで、弱く、正確に、ボールを転がすためのパター選びです。

クラークは、全米オープンを力でねじ伏せたのではありません。

もちろん、ショット力は大きな武器です。

しかし最後に勝敗を分けるのは、グリーン上で余計な1打を打たないことです。

その意味で、クラークのパターは「入れるための奇策」ではなく、「外し方を小さくするための設計」だったのではないか。

店長は、そこにクラークの強さを見ています。

次回は、さらに一歩踏み込みます。

重いパターは、なぜソフトタッチに強いのか。

弱く打つパッティングで、なぜヘッドの重さやカウンターバランスが有利に働くのか。

第三話では、

重いパターはなぜソフトタッチに強いのか

を考えてみたいと思います。

他のメジャーではそれほど勝利はありません。調べた限りは

選手 大会 パターの系統 備考
2011年 キーガン・ブラッドリー PGA選手権 ベリーパター メジャーでアンカー系パター優勝の初期代表例
2012年 アーニー・エルス 全英オープン ベリーパター ロング/ベリー系使用者として紹介される代表例
2013年 アダム・スコット マスターズ ロングパター 胸に当てる長尺パター時代の象徴

これくらいでした。

優勝POP ピンゴルフジャパンが追いかけてきた!

やっと、ピンゴルフジャパンがLBブログに追いつきました。
と言ったら、怒られるかな?

画像をクリックするとPDFが開きます。

という訳です。このブログの読者の方は、US PINGが全米オープン初日にこれを発表してから店長が大騒ぎ(大騒ぎは暫く続きます)していることをご存じだと思います。 “優勝POP ピンゴルフジャパンが追いかけてきた!” の続きを読む

ウインダム・クラークはなぜ全米オープンで強いのか 第一話 全米オープンはなぜパッティングが難しいのか

ウインダム・クラークの優勝の余韻を借りて、店長が、なぜクラーク推しだったのかを追記いたします。

店長がクラークに注目していた理由は、実は、SCOTTSDALE TEC ALLYBLUE ONSET CBだけではなく、単に飛ぶからでも、体が大きいからでもありません。

もちろん、彼のショット力は大きな武器です。
しかし、全米オープンという大会で本当に勝敗を分けるのは、ただ飛ばす力ではありません。

歴史ある名門コースで行われることの多い全米オープンでは、フェアウェイを外せばラフに捕まり、グリーンを外せば簡単には寄らず、グリーンに乗っても安心できません。

速く、硬く、傾斜の強いグリーンでは、強く打つパッティングよりも、弱く、正確に、ボールへエネルギーを与える技術が求められます。

ここで重要になるのが、クラークのパター選びです。

彼が使ってきたのは、いわゆる普通の長さ・普通の重さのパターではありません。
中尺で、重量感があり、ストローク中の余計な操作を抑えやすいパターです。

店長がクラークを推していた理由は、まさにここにあります。

全米オープンのようなコースでは、豪快なショットだけでは勝ち切れません。
最後に必要になるのは、弱いタッチでもフェースを安定させ、狙った方向へボールを正しく転がす能力です。

クラークのパター選びには、その大会特性に対する合理性が見えます。

つまり、クラークはただ調子が良かったから勝ったのではなく、全米オープンで勝つために必要な要素を、道具の面でも持っていた選手だったのではないか。

今回はその視点から、

ウインダム・クラークはなぜ全米オープンで強いのか

を考えてみたいと思います。

第一話は、全米オープンはなぜパッティングが難しいのか

です。

全米オープンという大会は、他のメジャーとは少し性格が違います。

もちろん、マスターズにも独特の難しさがあります。
全英オープンには風とリンクスの難しさがあります。
PGA選手権には、現代的な総合力を問う難しさがあります。

しかし、全米オープンの難しさは、もっと我慢比べに近いものです。

簡単にバーディーを取らせない。
少しでもズレると、すぐにボギーになる。
よいショットを打ったつもりでも、次の一打が楽にならない。

そういう大会です。

そして、その難しさを作っている大きな要素が、開催コースにあります。

全米オープンは、歴史ある名門コースで行われることが多い大会です。

Oakmont。
Shinnecock Hills。
Winged Foot。
Merion。
Pinehurst No.2。
Pebble Beach。
Los Angeles Country Club。

名前を並べるだけでも、アメリカゴルフの歴史そのものと言ってよいコースが多くあります。

これらのコースは、ただ距離が長いだけではありません。

むしろ、現代の大型造成コースのように、広いグリーンでボールを受け止める設計とは違います。

グリーン面が小さい。
傾斜が強い。
グリーン周りの逃げ場が少ない。
ピンの近くに外したつもりが、実は一番難しい場所に止まっている。

そういう設計が多いのです。

つまり全米オープンでは、ショットの精度だけでは足りません。

フェアウェイに置く。
グリーンに乗せる。
外したら寄せる。
そして、最後にパットを沈める。

この一つ一つの工程で、少しずつ選手にストレスがかかります。

特に厄介なのが、グリーン上です。

全米オープンのグリーンは、速く、硬く、簡単には止まりません。

しかも、ただ速いだけではありません。

速いグリーンなら、弱く打てばよい。
そう考えるのは簡単です。

しかし、実際にはそう単純ではありません。

弱く打つということは、ボールに与えるエネルギーが小さいということです。

エネルギーが小さいということは、フェースの向き、打点、ストロークの緩み、わずかな手首の動きが、そのまま結果に出やすいということです。

強く打つパットなら、多少のズレを勢いでごまかせることがあります。

しかし、速いグリーンで弱く打つパットは、ごまかしが効きません。

フェースがほんの少し開けば、ボールは右へ出ます。
ほんの少し閉じれば、左へ出ます。
インパクトで緩めば、届きません。
少し押し出せば、返しのパットが残ります。

つまり、全米オープンのパッティングで難しいのは、単に距離感を合わせることではありません。

弱いタッチの中で、ボールの進行方向へ正しくエネルギーを与えること。

これが難しいのです。

店長はここが、全米オープンのパッティングの本質だと思っています。

マスターズのパッティングは、大きな傾斜をどう読むか、どのラインに乗せるか、どこで止めるかという距離感の勝負という面が強くなります。

一方、全米オープンでは、もっと小さなズレが命取りになります。

入れにいったパットが少し強ければ、返しが怖い。
寄せにいったパットが少し弱ければ、次もまだ神経を使う。
カップの近くに止まっても、そこからが簡単ではない。

だから選手は、常に「どこまで攻めるか」と「どこで止めるか」の間で揺さぶられます。

この状況で必要になるのは、強く打つ勇気だけではありません。

むしろ必要なのは、弱く打ってもフェースを安定させる能力です。

小さなストロークでも、ボールへきちんとエネルギーを伝える能力です。

そして、狙った方向へ、余計な横ブレを入れずに転がす能力です。

ここに、ウインダム・クラークのパター選びを見る意味があります。

クラークは、全米オープンを力でねじ伏せた選手というより、全米オープンで必要になる「我慢のパッティング」に対して、非常に合理的な道具を選んでいた選手と見ることができます。

長めで、重く、ストローク中に余計な操作をしにくいパター。

これは、速いグリーンで強く打つための道具ではありません。

むしろ、弱く打つための道具です。

弱いタッチでもヘッドが暴れにくい。
弱いタッチでもフェースの向きが変わりにくい。
弱いタッチでも、ボールへ一定のエネルギーを与えやすい。

全米オープンのような大会では、この差が非常に大きくなります。

パターは、入れるための道具です。

しかし、全米オープンではもう一つの役割があります。

それは、外し方を小さくすることです。

大きくオーバーしない。
大きくショートしない。
ラインから大きく外さない。
次のパットを難しくしない。

この「外し方を小さくする」という考え方は、全米オープンでは非常に重要です。

そして、クラークの中尺・重量級パターには、その思想が見えます。

だから店長は、クラークの強さを単なる勢いや調子の良さだけでは見ていません。

全米オープンという大会が要求するパッティング。
その要求に対して、彼の道具選びが非常に合っていた。

ここに、クラーク推しだった理由があります。

次回は、クラークのパターそのものに少し踏み込みます。

2023年のOdyssey Jailbird。
そして、SCOTTSDALE TEC ALLYBLUE ONSET CB。

メーカーは違っても、そこに共通する思想は何か。

第二話では、

ウインダム・クラークはなぜ中尺・重量級パターを選んだのか

を考えてみたいと思います。

PING PUTTER PRO ウインダム・クラークが全米オープンを制しました。

難コース、シネコック・ヒルズを制したのは

PING PUTTER PRO

ウインダム・クラーク

です。これで全米オープン2勝目我慢大会に強いプロですね。

でもですね、朝起きて、スコアを崩していたのでどうしようかと思いましたよ。周りの人にどれだけ優勝予想したか、昨日の試打会でもです。嘘つきになるかならないかの緊張感を味わいました。 “PING PUTTER PRO ウインダム・クラークが全米オープンを制しました。” の続きを読む

ウインダム・クラークのパター変遷を見ると、PING Scottsdale TEC Ally Blue Onset CBの意味が見えてくる

USオープン2日目も、ウインダム・クラークが首位をキープしています。

ここまでくると、最近のクラークのパターの変遷を調べておかなければなりません。

現時点でのクラークのパター変遷は、次のように整理できます。

時期 パター 位置づけ
2023年 全米オープン優勝時 Odyssey O-Works Versa Jailbird系 38〜39インチ級のカウンターバランス系。Rickie Fowler型の流れ
2024年〜2025年頃 Odyssey Jailbird系を中心に試行錯誤 成功した形をベースにしつつ、安定感を探る時期
2025年後半〜2026年初め L.A.B. DF3、Toulon Le Mans、Scotty Cameron Tour T-11などをテスト ゼロトルク系・大型マレット系・別ブランドを広く試す
2026年3月 THE PLAYERS頃 Bettinardi Antidote SB1 Whisper Rockのプロショップで見つけた通常長さ系のゼロトルクパター
2026年3月 Houston Open PING Scottsdale TEC Ally Blue Onset まず標準長さに近い仕様で投入
2026年4月 RBC Heritage以降 PING Scottsdale TEC Ally Blue Onset CB 38インチ、17インチグリップ、重ヘッドのカウンターバランス仕様
2026年 CJ Cup Byron Nelson PING Scottsdale TEC Ally Blue Onset CB SG: Putting +12.573でPGAツアー記録、優勝
2026年 全米オープン2日目 PING Scottsdale TEC Ally Blue Onset CB 2日目終了時点で首位キープ

こうして見ると、クラークはかなりパターを入れ替えています。

そのクラークが、使用期間3か月にも満たない段階で、しかもパターだけの契約をPINGと結んだ。

これはかなり驚きです。 “ウインダム・クラークのパター変遷を見ると、PING Scottsdale TEC Ally Blue Onset CBの意味が見えてくる” の続きを読む

ウインダム・クラークがPINGとSCOTTSDALE TECパター契約

昨日のXに、PING GOLF(@PingTour)から次のような投稿がありました。

Signed and gaming a Scottsdale TEC. We’re excited to announce that Wyndham Clark has signed an agreement to exclusively play a Scottsdale TEC putter. Since switching to an Ally Blue Onset, Wyndham set a Strokes Gained: Putting record for a PGA Tour event (+12.573) and notched his fourth PGA Tour title. #PlayYourBest

どうやら、ウインダム・クラークがSCOTTSDALE TECパターの使用契約をPINGと交わしたようです。

営業さんに確認してもらったところ、契約については事実との返事がありました。
ただし、PINGで過去にこのような契約があったのかについては、現在も確認中です。 “ウインダム・クラークがPINGとSCOTTSDALE TECパター契約” の続きを読む