シェフラーのパッティングから考える、パターの長さ

前回は、今年のPGAツアーで長め・中尺・長尺・カウンターバランス系のパターが目立っていることについて書きました。

今回は、先週のU.S. OpenとTravelers Championshipの動画を見ながら、Scottie Schefflerのパッティングについて考えてみたいと思います。

もしシェフラーのパッティングがもう少し決まっていれば、結果は違っていたかもしれません。

私が気になったのは、シェフラーのテークバックです。

シェフラーは、パターがややアウトサイドに上がる傾向があるように見えます。
もちろん、それでも世界ランキング1位の選手ですから、パッティングが悪いという話ではありません。

ただ、U.S. OpenやTravelers Championshipでは、勝負どころで決め切れていなかったように感じます。

今回注目したいのは、ストロークの癖そのものではありません。
その癖が、なぜ発生しているのかです。 “シェフラーのパッティングから考える、パターの長さ” の続きを読む

ちょっとまって、中尺・長尺パターは、勝率高くない?

前回は、Viktor Hovlandの優勝パターについて書きました。

36インチのPING PLD DS-72 Prototype。
そしてWinn 17インチの長めグリップ。

ホブランはクロスハンドではなく、基本的に順手です。
それでも、長めのパターと長めのグリップを組み合わせることで、手元側に重量を残し、パター全体を安定させているように見えます。

今回改めて気になったのは、今年のPGAツアーで、長めのパターを使った選手の優勝が目立っていることです。

Akshay Bhatiaは、44インチ級のブルームスティックパターで優勝。
Wyndham Clarkは、38インチのPING Scottsdale TEC Ally Blue Onset CBで優勝。
しかもClarkはこの仕様でUS OPENも勝っています。
そして今回のViktor Hovlandは、36インチの長め仕様に17インチグリップを組み合わせて優勝しました。

38インチ以上を中尺・長尺と厳密に見るなら、BhatiaとClarkが代表例です。
一方で、Hovlandの36インチ+17インチグリップまで「長め・カウンターバランス的な仕様」として含めると、今年のPGAツアーでは長めのパターがかなり目立っていることが分かります。

ここで重要なのは、単に「長いパターが流行っている」という話ではありません。

長めのシャフトにすることで、構えたときの手元位置、前傾角度、グリップエンドの余り方、そしてパター全体の慣性が変わります。
さらに17インチ前後の長いグリップを組み合わせると、手元側に重量を残しやすくなり、ヘッドの動きが落ち着きます。

つまり、長めのパターは、ストロークを手先で操作する道具ではなく、パター全体を安定して動かすための道具だと考えることができます。

グリップを余らせて打つ選手は、余ったグリップエンドと左手を結ぶ線が目標からずれないようにストロークします。

これほど、プロの世界で目立つという事は、一般ゴルファーも注目してもいいと思います。

特に手首の動きが大きい方、ショートパットでフェース向きが安定しない方、距離感でインパクトが緩みやすい方は、短いパターを無理に操作している可能性があります。

長めのパターにすることで、手元が安定し、ヘッドの暴れが減り、ストローク全体が落ち着くことがあります。
さらに長いグリップを余らせて使えば、カウンターバランス的な効果も得られます。

長め・中尺は距離感が難しくなる人もいますが、カウンターバランスなら通常パターに近い感覚で使えます。

中尺・長尺パターは、特殊な人だけの道具ではありません。
むしろ、手首の余計な動きを抑えたいアマチュアにとって、非常に合理的な選択肢です。

今回のホブランの優勝も、そのことを改めて示しているように感じます。

パターは、長さを合わせる道具です。
市販の34インチや35インチに、自分の構えを合わせる必要はありません。

自分の構えに合った長さを選ぶ。
そこから、パッティングの安定は始まります。

PING Co-PILOT パターレングス アプリを、ぜひ利用してください。

唐突ですが、すこし気持ちを緩めましょう。えっ、今週もUSOPENだったというトラベラーズの動画を紹介して次回に続きます。

ホブラン優勝。順手でも、長めのパターとカウンターバランスは効く。

Viktor Hovlandが、Travelers Championshipを制しました。

相手は世界ランキング1位のScottie Scheffler。
72ホールを終えて両者は21アンダーで並び、勝負は月曜日のプレーオフへ。

最後はホブランが18番でバーディパットを沈め、シェフラーが決め返せず、ホブランの優勝が決まりました。

この勝利でホブランはPGAツアー8勝目。
しかも、今の男子ゴルフ界で最も安定して強いシェフラーを、最後のパットで上回ったという点に大きな意味があります。 “ホブラン優勝。順手でも、長めのパターとカウンターバランスは効く。” の続きを読む

ウインダム・クラークがエピソードトークにやってきた。

なんと、ウインダム・クラークがエピソード トークにやってきました。内容を見ていきましょう。

ウィンダム・クラークが語った、PING Ally Blueに替えてパットが入る理由

全米オープンを制したウィンダム・クラークが、PINGのPodcastで自身のパターについて語っています。

今回、特に面白いのは、単に「新しいパターに替えたら入った」という話ではありません。
クラーク本人が、なぜこのパターで狙いやすくなったのかをかなり具体的に話している点です。

クラークは、PINGのツアートラックで偶然Ally Blueを手にしたといいます。

「待っている間にバッグの中のパターをいじっていたら、Ally Blueが目に入った」

そこからヒューストンで実戦投入し、マスターズでも使用。
そしてRBCの前後で、さらに自分仕様へ調整していきます。

具体的には、

38インチに長くする
大きめのグリップを入れる
ヘッド下部にかなりの重量を追加する

という調整です。

ここからクラークのパッティングは大きく変わります。

本人も、

「RBCのヒルトンヘッドあたりから、本当に素晴らしいパッティングが始まった」

と語っています。

さらにPINGのスタジオでロフトや転がり、スピンを確認したことで、自分が感じていた良さが数字でも確認できたようです。


クラークが最も評価しているのは「狙いやすさ」

クラークがAlly Blueで最も気に入っているのは、転がりの良さだけではありません。
むしろ中心にあるのは、構えた時の狙いやすさです。

彼はこう話しています。

「一番の問題は、照準だった」
「自分が安定して狙えるパターをずっと探していた」
「本当に見つけたと思っている」

これは非常に重要です。

プロであっても、ストロークそのものより、まずどこを向いているかが問題になる。
クラーク自身も、自分のストロークにはかなり自信を持っています。

「フェースを良い状態で入れて、良い転がりを作ることは一貫してできる」
「でも一番の問題は、照準だった」

つまり、Ally Blueはクラークにとって、ストロークを直したパターではなく、
正しく構えられるようにしたパターだったと言えます。


オンセット、白いヘッド、黒いライン、そしてドット

クラークは、Ally Blueの良さを3つ挙げています。

まず、オンセット形状
クラークは、オンセットによってフェースを狙いやすく感じると話しています。

次に、白いヘッドに黒いライン
彼の目には、黒地に白よりも、白地に黒の方が合うようです。

そして、ラインとドットの組み合わせ
PINGがIQテクノロジーと呼ぶ照準機能について、クラークはこう表現しています。

「ドットがラインをしっかり確定させてくれる感じがある」
「視線が柔らかくなるような感じ」

これは、非常に面白い表現です。

アライメントは、単に線を長くすれば良いわけではありません。
人によっては、ラインだけだと左に見えたり、逆に迷いが出たりします。

クラークは左目利きで、ボールをスタンスの前方に置くため、ラインが左を向いて見えることがあったと話しています。
しかしAlly Blueでは、ラインとドットの関係によって、構えた時のズレが少なくなった。

その結果、キャディに確認してもらっても、

「今は毎回、合っていると言われる」

という状態になったそうです。


重いパターと柔らかいインサート

もう一つ見逃せないのが、クラークが重いパターを好むという点です。

本人も、

「僕は重いパターが好きなんです」

とはっきり話しています。

さらにインサートについても、ボールが速く出すぎないところを評価しています。

「ボールがフェースからすごく速く出るわけではないところが好き」
「速い下りのパットでも、しっかりストロークしている感覚を持てる」

これは、アマチュアにも非常に参考になります。

速いグリーンや微妙な距離のパットでは、フェースからボールが速く出すぎると、どうしても手が止まりやすくなります。
クラークは、少し柔らかく、しっかり打てるフィーリングを好んでいるわけです。


店長的まとめ

クラークの発言をまとめると、Ally Blueが合った理由は単純な「転がりの良さ」だけではありません。

むしろ本質は、

狙いやすい
視線が迷わない
重さがある
速いグリーンでもストロークできる
自分の感覚をPINGの計測で確認できた

という点にあります。

特に重要なのは、クラークほどの選手でも、
「ストロークは良い。しかし狙いがズレる」
という問題を抱えていたことです。

パター選びでは、打感や転がりだけでなく、
自分が本当に正しく構えられているか
を確認することが非常に大切です。

今回のクラークの優勝は、Ally Blueというパターの性能だけでなく、
パターは“打つ道具”である前に、“正しく狙う道具”である
ということを改めて教えてくれる内容だったと思います。

ウインダム・クラークはなぜ全米オープンで強いのか 第三話 重いパターはなぜソフトタッチに強いのか

第一話では、全米オープンのパッティングがなぜ難しいのかを考えました。

全米オープンは、速く、硬く、傾斜の強いグリーンで行われることが多く、ただ距離感を合わせるだけでは足りません。

弱く、正確に、ボールへエネルギーを与える技術が求められます。

第二話では、ウインダム・クラークのパター選びを見ました。

2023年のOdyssey Versa Jailbird系。
そして、SCOTTSDALE TEC ALLY BLUE ONSET CB。

メーカーは違っても、そこには共通する思想があります。

長めであること。
重めであること。
ストローク中の余計な操作を抑えやすいこと。

さらに、全米オープンでは過去にも、ウェブ・シンプソンのベリーパター、ブライソン・デシャンボーのアームロックなど、手首の余計な動きを抑えるパター思想が目立ちます。

では、なぜ重いパターは、全米オープンのような速いグリーン、そしてソフトタッチのパッティングに合いやすいのでしょうか。

ここを考えてみます。 “ウインダム・クラークはなぜ全米オープンで強いのか 第三話 重いパターはなぜソフトタッチに強いのか” の続きを読む

使用率 No.1!

ウインダムクラークがSCOTTSDALE ALLYBLUE ONSET CBを使っての優勝はかなりインパクトがあったようで、アクセス数も伸びていますが、こちらも、かなりすごい事です。

今年のメジャー大会でG440LST DRIVERが一番使われたという投稿です。

PINGを疑うよのですが、AIに本当かどうかを調べてもらいました。

指定の投稿は 「Augusta、Aronimink、Shinnecock の3メジャー連続で、G440 LST が使用本数1位のドライバーモデルだった」 という趣旨です。該当投稿の検索結果でもその文言が確認できます。

対象大会

投稿内の表現 大会 会場
Augusta 2026 Masters Augusta National
Aronimink 2026 PGA Championship Aronimink GC
Shinnecock 2026 U.S. Open Shinnecock Hills

1. 2026 Masters:G440 LST 使用選手

Golf Monthly の「2026 Masters 全選手の使用ドライバー」表では、G440 LST は11本使用で、最も多いドライバーモデルとされています。

確認できる使用選手は以下です。

選手 ドライバー
Brian Campbell PING G440 LST
Patrick Cantlay PING G440 LST
Corey Conners PING G440 LST
Harris English PING G440 LST
Chris Gotterup PING G440 LST
Mason Howell(アマ) PING G440 LST
Matt McCarty PING G440 LST
Rasmus Neergaard-Petersen PING G440 LST
Andrew Novak PING G440 LST
Jose Maria Olazabal PING G440 LST
Mike Weir PING G440 LST

Golf Monthly は、G440 LSTについて「Augusta Nationalで11本使用、Titleist GT3の9本を上回った」と説明しています。

2. 2026 PGA Championship:G440 LST 使用選手

PING側の投稿では、PGA ChampionshipでG440 LSTが20本使用され、最も多いドライバーモデルだったことは確認できます。

ただし、今回確認できた公開ソースでは、20名の選手名一覧までは取得できませんでした
確認できたのは「20本使用」「最多モデル」という事実までです。

3. 2026 U.S. Open:G440 LST 使用選手

指定投稿の内容から、Shinnecock=2026 U.S. Open でも G440 LSTが使用本数1位のドライバーモデルだったことは確認できます。

ただし、こちらも公開検索で確認できた範囲では、U.S. Open出場選手ごとのG440 LST使用者一覧は見つかりませんでした

現時点の結論

確実に選手名まで抜き出せたのは 2026 Masters の11名です。

PGA Championship と U.S. Open については、PING公式系の投稿から 「G440 LSTが最多使用モデル」 までは確認できますが、使用選手の全リストは公開ソース上では確認できませんでした。

という事になります。

店長的にびっくりしたことは、マスターズチャンピオンのレジェンドである

オラサバル

ウィアー

が使用していることなんですが、もう知らない方のほうが多いですよね。

優勝POP ピンゴルフジャパンが追いかけてきた!

やっと、ピンゴルフジャパンがLBブログに追いつきました。
と言ったら、怒られるかな?

画像をクリックするとPDFが開きます。

という訳です。このブログの読者の方は、US PINGが全米オープン初日にこれを発表してから店長が大騒ぎ(大騒ぎは暫く続きます)していることをご存じだと思います。 “優勝POP ピンゴルフジャパンが追いかけてきた!” の続きを読む

ウインダム・クラークはなぜ全米オープンで強いのか 第一話 全米オープンはなぜパッティングが難しいのか

ウインダム・クラークの優勝の余韻を借りて、店長が、なぜクラーク推しだったのかを追記いたします。

店長がクラークに注目していた理由は、実は、SCOTTSDALE TEC ALLYBLUE ONSET CBだけではなく、単に飛ぶからでも、体が大きいからでもありません。

もちろん、彼のショット力は大きな武器です。
しかし、全米オープンという大会で本当に勝敗を分けるのは、ただ飛ばす力ではありません。

歴史ある名門コースで行われることの多い全米オープンでは、フェアウェイを外せばラフに捕まり、グリーンを外せば簡単には寄らず、グリーンに乗っても安心できません。

速く、硬く、傾斜の強いグリーンでは、強く打つパッティングよりも、弱く、正確に、ボールへエネルギーを与える技術が求められます。

ここで重要になるのが、クラークのパター選びです。

彼が使ってきたのは、いわゆる普通の長さ・普通の重さのパターではありません。
中尺で、重量感があり、ストローク中の余計な操作を抑えやすいパターです。

店長がクラークを推していた理由は、まさにここにあります。

全米オープンのようなコースでは、豪快なショットだけでは勝ち切れません。
最後に必要になるのは、弱いタッチでもフェースを安定させ、狙った方向へボールを正しく転がす能力です。

クラークのパター選びには、その大会特性に対する合理性が見えます。

つまり、クラークはただ調子が良かったから勝ったのではなく、全米オープンで勝つために必要な要素を、道具の面でも持っていた選手だったのではないか。

今回はその視点から、

ウインダム・クラークはなぜ全米オープンで強いのか

を考えてみたいと思います。

第一話は、全米オープンはなぜパッティングが難しいのか

です。

全米オープンという大会は、他のメジャーとは少し性格が違います。

もちろん、マスターズにも独特の難しさがあります。
全英オープンには風とリンクスの難しさがあります。
PGA選手権には、現代的な総合力を問う難しさがあります。

しかし、全米オープンの難しさは、もっと我慢比べに近いものです。

簡単にバーディーを取らせない。
少しでもズレると、すぐにボギーになる。
よいショットを打ったつもりでも、次の一打が楽にならない。

そういう大会です。

そして、その難しさを作っている大きな要素が、開催コースにあります。

全米オープンは、歴史ある名門コースで行われることが多い大会です。

Oakmont。
Shinnecock Hills。
Winged Foot。
Merion。
Pinehurst No.2。
Pebble Beach。
Los Angeles Country Club。

名前を並べるだけでも、アメリカゴルフの歴史そのものと言ってよいコースが多くあります。

これらのコースは、ただ距離が長いだけではありません。

むしろ、現代の大型造成コースのように、広いグリーンでボールを受け止める設計とは違います。

グリーン面が小さい。
傾斜が強い。
グリーン周りの逃げ場が少ない。
ピンの近くに外したつもりが、実は一番難しい場所に止まっている。

そういう設計が多いのです。

つまり全米オープンでは、ショットの精度だけでは足りません。

フェアウェイに置く。
グリーンに乗せる。
外したら寄せる。
そして、最後にパットを沈める。

この一つ一つの工程で、少しずつ選手にストレスがかかります。

特に厄介なのが、グリーン上です。

全米オープンのグリーンは、速く、硬く、簡単には止まりません。

しかも、ただ速いだけではありません。

速いグリーンなら、弱く打てばよい。
そう考えるのは簡単です。

しかし、実際にはそう単純ではありません。

弱く打つということは、ボールに与えるエネルギーが小さいということです。

エネルギーが小さいということは、フェースの向き、打点、ストロークの緩み、わずかな手首の動きが、そのまま結果に出やすいということです。

強く打つパットなら、多少のズレを勢いでごまかせることがあります。

しかし、速いグリーンで弱く打つパットは、ごまかしが効きません。

フェースがほんの少し開けば、ボールは右へ出ます。
ほんの少し閉じれば、左へ出ます。
インパクトで緩めば、届きません。
少し押し出せば、返しのパットが残ります。

つまり、全米オープンのパッティングで難しいのは、単に距離感を合わせることではありません。

弱いタッチの中で、ボールの進行方向へ正しくエネルギーを与えること。

これが難しいのです。

店長はここが、全米オープンのパッティングの本質だと思っています。

マスターズのパッティングは、大きな傾斜をどう読むか、どのラインに乗せるか、どこで止めるかという距離感の勝負という面が強くなります。

一方、全米オープンでは、もっと小さなズレが命取りになります。

入れにいったパットが少し強ければ、返しが怖い。
寄せにいったパットが少し弱ければ、次もまだ神経を使う。
カップの近くに止まっても、そこからが簡単ではない。

だから選手は、常に「どこまで攻めるか」と「どこで止めるか」の間で揺さぶられます。

この状況で必要になるのは、強く打つ勇気だけではありません。

むしろ必要なのは、弱く打ってもフェースを安定させる能力です。

小さなストロークでも、ボールへきちんとエネルギーを伝える能力です。

そして、狙った方向へ、余計な横ブレを入れずに転がす能力です。

ここに、ウインダム・クラークのパター選びを見る意味があります。

クラークは、全米オープンを力でねじ伏せた選手というより、全米オープンで必要になる「我慢のパッティング」に対して、非常に合理的な道具を選んでいた選手と見ることができます。

長めで、重く、ストローク中に余計な操作をしにくいパター。

これは、速いグリーンで強く打つための道具ではありません。

むしろ、弱く打つための道具です。

弱いタッチでもヘッドが暴れにくい。
弱いタッチでもフェースの向きが変わりにくい。
弱いタッチでも、ボールへ一定のエネルギーを与えやすい。

全米オープンのような大会では、この差が非常に大きくなります。

パターは、入れるための道具です。

しかし、全米オープンではもう一つの役割があります。

それは、外し方を小さくすることです。

大きくオーバーしない。
大きくショートしない。
ラインから大きく外さない。
次のパットを難しくしない。

この「外し方を小さくする」という考え方は、全米オープンでは非常に重要です。

そして、クラークの中尺・重量級パターには、その思想が見えます。

だから店長は、クラークの強さを単なる勢いや調子の良さだけでは見ていません。

全米オープンという大会が要求するパッティング。
その要求に対して、彼の道具選びが非常に合っていた。

ここに、クラーク推しだった理由があります。

次回は、クラークのパターそのものに少し踏み込みます。

2023年のOdyssey Jailbird。
そして、SCOTTSDALE TEC ALLYBLUE ONSET CB。

メーカーは違っても、そこに共通する思想は何か。

第二話では、

ウインダム・クラークはなぜ中尺・重量級パターを選んだのか

を考えてみたいと思います。

PING PUTTER PRO ウインダム・クラークが全米オープンを制しました。

難コース、シネコック・ヒルズを制したのは

PING PUTTER PRO

ウインダム・クラーク

です。これで全米オープン2勝目我慢大会に強いプロですね。

でもですね、朝起きて、スコアを崩していたのでどうしようかと思いましたよ。周りの人にどれだけ優勝予想したか、昨日の試打会でもです。嘘つきになるかならないかの緊張感を味わいました。 “PING PUTTER PRO ウインダム・クラークが全米オープンを制しました。” の続きを読む

帝王の言葉 第8話 帝王が守ろうとしているもの

ここまで、ジャック・ニクラスの発言を起点に、現代ゴルフが抱える問題を考えてきました。

ニクラスは、現在のPGAツアーの日程について、重要な大会が短期間に集中しすぎていると懸念を示しました。

大きな大会が連続すれば、トップ選手はすべての試合へ万全な状態で出場することができません。

その結果、一部の大会へ選手と注目が集中し、それ以外の大会は存在感を失っていきます。

また、ボールのロールバックについても、トッププロで十数ヤード程度の飛距離低下では問題を解決できないとして、

「タイタニック号からデッキチェアを投げ捨てるようなもの」

と表現しました。

これらを別々の発言として読めば、一方は日程問題、もう一方は飛距離問題です。

しかし、ここまで考えてきたことを重ねると、二つの発言は同じ問題へつながっているように見えます。

それは、現代のゴルフ界が、

何をゴルフの価値として残そうとしているのか

という問題です。

高額賞金大会へトップ選手を集中させる。

大観衆を収容できるスタジアムコースを使う。

飛距離が映える広いコースを用意する。

300ヤードを超えるドライバーショットや、パー5の2オンを見せ場として売る。

こうした興行は、非常に分かりやすいものです。

しかし、その一方で、各大会が持っていた固有の価値が薄れていきます。

狭いコース。

短いコース。

風の強いコース。

木によって射線が限定されるコース。

地面の硬さや傾斜を使わなければ、ボールを止められないコース。

それぞれ異なる能力を選手へ要求するからこそ、ツアーには多様性がありました。

ところが、大会の価値を賞金額と出場選手の顔ぶれだけで決めるようになれば、開催コースが選手へ何を問うのかは、二次的なものになります。

その結果、高額大会に選ばれなかった大会だけでなく、そこで行われてきたゴルフそのものまで評価されなくなります。

ニクラスがコグニザント・クラシックを例に挙げた意味も、ここにあるのではないでしょうか。

単に、自分に縁のある大会へトップ選手を集めてほしいという話ではありません。

PGAナショナルというコースが選手へ与える課題。

地域大会として積み重ねてきた歴史。

ほかの大会とは違うゴルフを見せる価値。

それらが、賞金額による序列の中で埋もれてしまうことへの懸念だったのかもしれません。

ニクラスは飛距離を否定しているのか

ニクラス自身は、全盛期に圧倒的な飛距離を持つ選手でした。

したがって、彼が飛距離の価値を否定しているとは考えられません。

しかし、ニクラスの強さは、単に遠くへ飛ばしたことではありませんでした。

どこへ打つのか。

どの高さで打つのか。

どの方向へ曲げるのか。

どこへ着弾させるのか。

どのミスを避けるのか。

ピン位置から逆算して、ボールをコントロールする能力があったからこそ、帝王と呼ばれる成績を残したのです。

飛距離は、彼の技術の一部でした。

しかし、飛距離が他の技術を必要としなくするほど、無条件の利益ではありませんでした。

飛距離のある選手であっても、その飛距離をどこで使うのかを問われました。

飛ばしすぎれば、悪い位置へ入る。

方向を間違えれば、グリーンへの射線を失う。

残り距離が短くても、悪い角度からはピンの周辺へボールを止められない。

そのようなコースの中で、飛距離をコントロールできたことが、ニクラスの強さだったはずです。

ベン・ホーガンも同じです。

ホーガンは、サム・スニードほど飛ぶ選手ではありませんでした。

それでも、飛距離を追うのではなく、ドローからフェードへ持ち球を変え、曲がり幅と停止地点を管理することで大きな成功を収めました。

ホーガンやニクラスが証明したのは、パワーが不要だということではありません。

パワーは、コントロールの中に置かれて初めてゴルフの技術になる

ということです。

守ろうとしているのは、昔のゴルフではない

ニクラスの発言を、昔のゴルフを懐かしむ老人の言葉として片づけることは簡単です。

しかし、彼が守ろうとしているのは、昔の飛距離や古い用具ではないでしょう。

飛ばないボールへ戻せばよい。

木製のクラブへ戻せばよい。

選手のフィジカルトレーニングを制限すればよい。

そのような話ではありません。

技術が進歩することは当然です。

選手が強くなり、クラブやボールの性能が高まることも、スポーツの発展の一部です。

しかし、競技側がその進歩に対して、ただコースを長くするだけでは、飛距離のある選手をさらに有利にします。

ボールを十数ヤード飛ばなくするだけでも、全員が同じだけ後ろへ下がるだけで、飛距離の相対的な優位は残ります。

必要なのは、昔へ戻ることではありません。

現代の技術を前提にしながら、飛距離、方向性、距離管理、球筋、判断力を、もう一度コースが評価できるようにすることです。

飛ばした方が有利なホールがあってもよい。

距離を抑えた方が有利なホールがあってもよい。

空中から高い球で止める方法があってもよい。

地面を使って転がし、止める方法があってもよい。

一つの正解だけではなく、異なる能力を持つ選手に、異なる攻略法が残されていることが重要です。

商業が競技を支えるのか、競技を変えるのか

メーカー、メディア、PGAツアーにとって、飛距離は売りやすい価値です。

数字で表せる。

映像で伝わる。

新しいクラブやボールの購入理由になる。

観客も、一目で凄さを理解できます。

しかし、売りやすいからという理由で、飛距離だけをゴルフの中心に置けば、競技の方が商品に合わせて変えられていきます。

本来は、優れたゴルフをどのように見せるかを考えるべきでした。

ところが、

売りやすいゴルフとは何か。

盛り上がりやすいゴルフとは何か。

商品を買ってもらえるゴルフとは何か。

という発想が先に立ち、それに合わせてコースや選手の評価まで変わってしまいました。

商業がゴルフを支えるのではなく、商業がゴルフの形を決めるようになったのです。

ニクラスが現在のツアーへ示した違和感は、その主従の逆転に対するものではないでしょうか。

大会の価値は、賞金額だけで決まるのか。

選手の価値は、飛距離だけで決まるのか。

コースの価値は、大観衆を収容できるかどうかで決まるのか。

ゴルフの価値は、すぐに理解できる派手な映像だけで決まるのか。

帝王は、ゴルフ界へその問いを投げかけているように思えます。

帝王の言葉を聞き入れられるのか

PGAツアーが最初に取り組むべきなのは、ボール規制だけではありません。

まず、自らの大会で使用するコース設定を変えることです。

飛距離がそのまま残り距離の短さへ変換され、短いクラブによって簡単にボールを止められる設定を見直す。

フェアウェイの中に、正しい位置と間違った位置を作る。

飛ばした先からは、ピンの周辺へ止めにくくする。

グリーンへの進入角度と、使える着弾地点を重視する。

観客をホールの両側へ並べ、ミスショットを救う構造も改める。

現代のドローン、弾道追尾、大型ビジョンを使えば、観客を特定の観戦エリアへ集めながら、ホール全体の戦略を見せることができます。

観客をコースへ近づけるのではなく、コースと選手の判断を映像で観客へ届ける。

技術は、コースを簡単にするためではなく、ゴルフの複雑さを伝えるために使うべきです。

そしてメーカーやメディアも、飛距離以外の技術を伝えなければなりません。

なぜ、そのクラブを選んだのか。

なぜ、20ヤード短く打ったのか。

なぜ、フェアウェイの左側を狙ったのか。

なぜ、ピンではなくグリーン手前へボールを落としたのか。

それを説明できれば、ターゲットゴルフも十分に観客を魅了できます。

飛距離だけが、ゴルフの見せ場ではありません。

ゴルフは、問題を解き続ける競技

ゴルフでは、人間の身体が作った力を、長いクラブによって増幅してボールへ伝えます。

わずかな狂いが、大きな結果の違いを生みます。

どれほど優れた選手でも、すべてのショットを完全には再現できません。

だからこそ、起きた結果を受け入れ、次に与えられた問題を解かなければなりません。

そして、目の前の一打を成功させるだけでなく、次の問題を少しでも簡単にする場所へボールを運ぶ。

この連続がゴルフです。

ゴルフは、完璧なショットを並べる競技ではありません。

不完全な結果の中から、判断と技術によって最善の答えを探し続ける競技です。

コースは、その能力を人間の主観的な採点を使わずに評価してきました。

ところが飛距離が常に正解になれば、コースが出す問題は単純になります。

どれだけ前へ出せるのか。

それだけでは、ゴルフが持つ多面的な評価機能は失われてしまいます。

帝王が守ろうとしているのは、昔のゴルフではありません。

異なる能力を持つ選手が、それぞれの技術と判断によって問題を解き、それぞれの方法で勝つことのできるゴルフです。

ジャック・ニクラスの言葉を、ゴルフ界は聞き入れることができるのでしょうか。

それとも、これからも飛距離、賞金、観客数という分かりやすい数字だけを追い続けるのでしょうか。

その選択によって、ゴルフがこれからも総合的な技術を問う競技であり続けるのか。

あるいは、最大出力を競うだけのスポーツへ近づいていくのかが決まります。

ニクラスが投げかけた問いに答えるのは、帝王自身ではありません。

PGAツアー。

メーカー。

メディア。

そして、私たちゴルファーです。