ここまで何度か触れてきた、
2010年ライダーカップ。
そろそろ、あの一打について書かなければならないと思います。
できれば、この話には触れたくありませんでした。
なぜなら、一つのミスショットだけを取り上げて選手を評価することは、店長は好きではないからです。
ましてや、その選手はハンター・メイハンです。
世界でもトップクラスの選手として戦い、PGAツアーで何度も優勝し、ライダーカップ、プレジデンツカップにも出場した選手です。
しかし、現在のメイハンが語っている、
「自分が本当に得意なものを見つけ、それを守れ」
という言葉を考えると、
どうしても2010年のライダーカップを避けて通ることができません。
舞台はウェールズのセルティック・マナー。
アメリカとヨーロッパの勝敗は、最後のシングルスマッチまで持ち越されました。
その最後の一組が、
グレーム・マクドウェル対ハンター・メイハン。
16番でマクドウェルが大きなバーディーパットを決めます。
これでメイハンは2ダウン。
残りは17番と18番の2ホール。
つまり、17番を落とせば、その時点でライダーカップが決まります。
17番はパー3。
メイハンのティーショットはグリーンに届かず、手前に止まりました。
報道では、グリーン手前およそ15ヤードほどからのアプローチだったとされています。
そして、そこで起きたのが、
多くのゴルフファンの記憶に残っている、あのショットです。
メイハンのクラブはボールの手前に入り、
ボールはほとんどグリーンまで届きませんでした。
いわゆる、
チャック。
あるいは、日本で言えば完全なダフリです。
マクドウェルがパーを確実なものとし、メイハンはマッチをコンシード。
3&1で敗れ、ヨーロッパが14.5対13.5でライダーカップを奪還しました。
試合後、
メイハンは記者会見で涙をこらえることができませんでした。
最後のアプローチについて質問されると、言葉を続けられなくなった。
しかしチームメイトたちは、
「28マッチの中の、どの半ポイントを取り上げても同じことだ」
と彼を擁護しました。
実際、その通りだと思います。
ライダーカップは一人の一打だけで負けたわけではありません。
だから、
この一打を、
「メイハンがプレッシャーに負けた」
という話だけで終わらせるつもりはありません。
店長が興味を持っているのは、
もっと別のところです。
なぜ、あのショットを選んだのか。
です。
メイハンのフルスイングをもう一度見てみます。
[ハンター・メイハンのスイング動画]
店長には、メイハンはかなりスティープにクラブを入れるタイプに見えます。
クラブを上から入れ、
強くボールをコンタクトする。
ボールを打ったあとにクラブが地面へ入っていく。
そういうメカニズムを持った選手です。
もちろん、世界トップレベルのプロですから、
柔らかいアプローチも、
フェースを開いたショットも、
ソールを使ったショットも打てたはずです。
問題は、
打てるかどうかではありません。
あの場面で、
何を選ぶべきだったのか。
です。
映像を見る限り、メイハンはボールを強く打ち込んで低く転がすというより、
ロフトとソールを使って、
ボールを少し浮かせ、
柔らかくグリーンへ落とそうとしているように店長には見えます。
ここは、あくまで映像から見た店長の解釈です。
本人が、
「こういうショットを打とうとしていた」
と説明したわけではありません。
しかし、もしそうだったとすれば、
非常に興味深いことになります。
メイハンが普段持っている、
スティープに入り、強くコンタクトするメカニズム。
それに対して、
あの場面で要求したのは、
ソールを滑らせ、入射を少し浅くして、柔らかく運ぶメカニズム。
だった可能性があるからです。
この二つは、同じアプローチでもクラブの使い方がかなり違います。
そして、ここに極限のプレッシャーが加わります。
普段ならできる。
練習ならできる。
試合でも何度も成功してきた。
しかし、
ライダーカップを決める一球。
となったとき、
身体は本当に、普段とは違うメカニズムを再現してくれるのでしょうか。
店長は、ここが重要だと思っています。
プレッシャーがかかったとき、
身体が突然、新しい運動を始めるわけではありません。
むしろ、
その人が長い時間をかけて身につけてきた動きが出てくる。
と考えたほうが自然です。
浅くソールを滑らせようとしている。
しかし身体には、
上からクラブを入れる動きが強く残っている。
もし、この二つがほんの少しだけ噛み合わなくなったとすれば、
最下点はボールの手前へ移ります。
その結果として起こるのが、
あのチャックです。

もちろん、
これは店長の仮説です。
あの一打が本当にそうだったのかは、メイハン本人に聞かなければ分かりません。
そして、極度の緊張そのものがミスを生んだ可能性も当然あります。
実際、あの場面のプレッシャーは途方もないものでした。
対戦相手のマクドウェルでさえ、
それまでゴルフ場で感じたことがないほど緊張したと語っています。
ただ、
「プレッシャーだったからダフった」
で終わってしまうと、
そこから学べることはあまりありません。
店長はむしろ、
プレッシャーが大きいほど、自分の持っているメカニズムから離れないショットを選ぶ必要があるのではないか
と考えます。
最も寄るショットではなく、
最も再現できるショット。
最も格好良いショットではなく、
自分の身体が一番よく知っているショット。
それを選択する。
第5話で書いた、
「どのショットを使わないかを決める能力」
とは、まさにこのことです。
そして現在のメイハンは、
若い選手に、
「自分が本当に得意なものを見つけなさい」
と話しています。
さらに、
「それを理解し、磨き上げ、誰にも触らせるな」
と言います。
2010年のあの一打と、
現在のこの言葉。
メイハン本人が二つを結び付けて語っているわけではありません。
ですから、
「あの失敗があったから、今の考え方になった」
と断定することはできません。
しかし、
あの経験をした選手が、
今、
「自分の強みを理解すること」
を若いゴルファーに語っている。
店長には、
それが単なる偶然には思えないのです。
そして、あのライダーカップから現在までのメイハンを見ていくと、
もう一つ重要な言葉が浮かび上がってきます。
Compete。
競争すること。
メイハンは現在、自分が指導する高校生チームの中心に、この言葉を置いています。
次回は、
なぜ彼がスイングではなく、
「Compete」
という言葉を若い選手たちに教えているのか。
そこを考えてみたいと思います。
