ハンター・メイハン 第7話 Compete 1打1打を競争する

前回は、2010年ライダーカップでのハンター・メイハンの一打について考えました。

極限のプレッシャーの中で、

何を打つのか。

自分が最も再現できるショットは何なのか。

そして、

自分の持っているメカニズムと、選択したショットが一致しているのか。

という話です。

しかし、現在高校生を指導しているメイハンが、選手たちに最も強く伝えている言葉は、もっとシンプルなものでした。

それが、

Compete

です。

日本語にすれば、

「競争する」

でしょうか。

PINGのPodcastで、マッチプレーの話になったとき、メイハンは高校生のチームを指導し始めた頃のことを話しています。

「このチームは何を大切にするのか」

「何を自分たちの言葉にするのか」

と考えたとき、

頭に浮かび続けたのが、

Compete

という言葉だったそうです。

そしてメイハンは、その意味をこう説明しています。

一打一打で、自分のできる最大限の努力をする。

前のショットを考えない。

直前のダブルボギーを考えない。

3パットを引きずらない。

次の一打にいる。

そして、

そこからどう立て直すのか。

それが「Compete」だと言うのです。

これは、単に、

「最後まで諦めるな」

という精神論ではないと思います。

メイハンが言っているのは、

自分がコントロールできるものに集中する

ということです。

彼は、

ゴルフでは自分がコントロールできるものを見つけ、

そこを徹底的にやり続けることが重要だと話しています。

ここで、またスコッティ・シェフラーが出てきます。

メイハンがシェフラーを高く評価しているのは、

単にスイングが優れているからではありません。

むしろ、

前日の結果を翌日に持ち込まないこと。

良かった経験は残す。

しかし、

前日の結果そのものには縛られない。

今日も、

成功につながる同じことを規律正しく行う。

それを毎日繰り返す。

メイハンは、そこにシェフラーの強さを見ています。

これは非常に面白いと思います。

ゴルファーは、

ミスをすると原因を探します。

トップが悪かった。

切り返しが早かった。

フェースが開いた。

身体が止まった。

そして、

次の一打でそれを直そうとします。

しかし、

それはすでに終わった一打です。

メイハンの言う「Compete」は、

その原因分析を次の一打へ持ち込むこととは少し違います。

今、目の前にある一打で何をするのか。

そこへ戻る。

例えば、

前のホールでドライバーを右へ曲げた。

次のティーグラウンドへ行って、

「今度は右へ行かないようにしよう」

と考える。

すると、

すでに前のショットを打っていることになります。

まだ打っていない次の一打ではなく、

頭の中では前のミスと戦っている。

これでは、

現在の一打に集中できません。

メイハンが高校生に教えているのは、

そうではなく、

一度リセットして、次の一打を競争しろ。

ということなのだと思います。

そして、ここで彼はセベ・バレステロスについても触れています。

セベは「競争すること」の達人だった。

一対一の勝負を非常に個人的なものとして受け止め、

その週に勝つために使えるものをすべて使った。

メイハンは、

ゴルフにも他のスポーツでいう、

いわゆる「dog」、

つまり、

勝負に食らいつく選手

が確実にいると話しています。

そして、

ジョーダン・スピース。

ジャスティン・トーマス。

彼らのような選手について、

メイハンはスイングだけを見ているのではありません。

特にジャスティン・トーマスについて、

「目が好きだ」

と話しています。

打つ前から、

頭の中でショットを描いている。

まだボールを打っていないのに、

すでにそのショットを体験しているように見える。

そして、そのイメージがスイングへ移っていく。

ここも重要だと思います。

良いショットを打とうとして、

身体の形を考えているのではありません。

これから打つショットそのものを見ている。

だから、

スイングは目的ではなく、

そのショットを実現するための手段になります。

そしてシェフラーについても、

メイハンは若い頃から知っていました。

当時のシェフラーのスイングは、

いわゆるクラシックなスイングには見えなかった。

見た瞬間に、

「これはスターのスイングだ」

と思わせるようなものでもなかった。

だから若い頃は、

少し過小評価されていたのではないかと話しています。

しかし成長するにつれて、

ボールが答えを教えるようになった。

フェースから出てくるボールが違う。

音が違う。

そこに特別なものがあった。

ここまでこのシリーズを読んでいただいた方なら、

第1話の話を思い出すと思います。

見た目が少し違っていても、機能しているものを簡単に変えてはいけない。

シェフラーのスイングは、

形だけを見れば、

直したくなるところがたくさんあるのかもしれません。

しかし、

ボールは正直です。

そして、

スコアカードもスイングの見た目を評価しません。

Podcastの中でも、

シェフラーは身体や足がどれだけ激しく動いていても、

誰よりも早くボールをカップへ入れている

という話になります。

これがゴルフです。

スイングの採点競技ではありません。

そしてメイハンは、若い選手に対して、

コースで必要な小さなことを、

一つ一つ規律正しくやる能力を身につけてほしいと話しています。

技術は練習していれば、これから伸びる。

身体能力も成長するかもしれない。

しかし、

メンタリティとタフネスを後から教えるのは難しい。

そう言います。

その例として挙げたのが、

バッバ・ワトソンです。

バッバの大きな長所は、

自分のやり方でゴルフをしたこと。

見た目をきれいにしようとしなかった。

他の誰かになろうとしなかった。

そして、ここでメイハンは非常に興味深い話をします。

タイガー・ウッズの時代、

タイガーのスイングはあまりにも完成され、

教科書のように見えた。

そのため多くの選手が、

自分も教科書通りに振ろう

とした。

そして、

それに圧倒されてしまった選手もいたと言います。

なぜなら、

「良いプレーをするためには、良いスイングをしなければならない」

と考えてしまったからです。

しかしメイハンは、

そうではないと言います。

良いプレーとは、誰よりも早くボールをカップへ入れること。

そこから逆算して考えればいい。

これは、

このシリーズでずっと考えてきたことと同じです。

形を整えることが目的ではない。

メカニズムを理解することも、

それ自体が目的ではない。

最終的には、

ゴルフをするためです。

目の前の一打を判断し、

自分が最も再現できるショットを選び、

そして、

その一打を打つ。

失敗したら、

次の一打へ行く。

つまり、

Compete。

それを18ホール続ける。

もしかすると、

メイハンが言う、

「80を77にする」

ということの本質も、

ここにあるのではないでしょうか。

スイングを3打分良くするのではありません。

18ホールの中で、

過去のミスに引きずられた一打。

未来の結果を心配して打った一打。

自分ではコントロールできないことに意識を奪われた一打。

その一打を減らしていく。

それだけでも、

80は77になります。

メイハンは高校生に、

きれいなスイングを残そうとしているのではありません。

競争できるゴルファーを残そうとしている。

店長には、そう見えます。

そして、この先のPodcastを聞いていくと、

この考え方はさらに、

タイガー・ウッズのプリショットルーティン、

そして、

「いつ打つのか」

という話へつながっていきます。

次回は、

ルーティンは毎回同じでなければならないのか。

タイガー・ウッズを見てきたメイハンの言葉から、

考えてみたいと思います。

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