鳩尾にある右肘は何を意味するのか

前回は、インパクトでは「肩と両腕の三角形」は固定された形ではなく、左手首・右手首・クラブヘッドラグ・手元位置という構造要件によって、自然に変化することをお話ししました。

そして、その構造要件を満たした結果として、右肘は自然と鳩尾付近へ収束します。

では、この右肘の位置には、どのような意味があるのでしょうか。

多くのレッスンでは、「右肘を体につける」「右肘をたたむ」といった表現が使われます。

しかし、私は少し違う視点で考えています。

右肘は、意識して作るポジションではありません。

もし、

  • 左手首がフラットで、
  • 右手首が背屈し、
  • クラブヘッドラグが維持され、
  • グリップが両肩の中央付近にある

というインパクトの構造要件が満たされれば、右肘は自然と鳩尾付近へ収束します。

つまり、右肘は原因ではなく、結果なのです。

そして、この「結果」には大きな意味があります。

右肘が鳩尾付近にあるということは、その瞬間に、

  • グリップの位置
  • 左手首の角度
  • 右手首の角度
  • クラブヘッドラグ
  • シャフトの向き

これらが互いに矛盾なく成立している可能性が高いことを示しています。

言い換えれば、右肘はインパクト全体を映し出す「指標」と考えることができます。

だからこそ、右肘だけを意識して動かしても、本質的な解決にはなりません。

構造要件が整えば、右肘は自然とそこへ収束します。

逆に、構造要件が整っていなければ、右肘だけを正しい位置へ持っていこうとしても、他のどこかに無理が生じます。

私は、多くのトッププロに共通する右肘の位置は、技術を真似た結果ではなく、人間の骨格が最も効率よく力を伝えられる構造を表しているのではないかと考えています。

では、なぜ人間の骨格は、その位置を選ぶのでしょうか。

その答えは、ゴルフの技術論ではなく、人間が本来持っている骨格の仕組みにあるのかもしれません。

次回は、「なぜ右肘は鳩尾へ収束するのか」を、人間の骨格構造という視点から考えてみたいと思います。

四足歩行はゴルフのヒントになるのか

前回、私は右肘が鳩尾付近へ収束する理由は、人間の骨格そのものにあるのではないかという考えをお話ししました。

そのヒントとして注目したいのが、赤ちゃんのハイハイや四足歩行です。

四足歩行では、腕は体重を支える役割を担っています。

そこでは筋力だけに頼るのではなく、骨格を使って効率よく力を受け止めています。

もし毎回、腕の力だけで体重を支えていたら、すぐに疲れてしまうでしょう。

だからこそ、骨格が最も無理なく荷重を受けられる位置へ自然に収束していると考えられます。

一方、ゴルフのインパクトでも、クラブヘッドにはボールとの衝突によって大きな反力が発生します。

その反力を受け止めるという点では、体重を支える四足歩行と共通する部分があります。

もちろん、四足歩行とゴルフは同じ運動ではありません。

しかし、「外から加わる大きな力を骨格で受け止める」という視点で見ると、多くの共通点が見えてきます。

だから私は、トッププロの右肘が鳩尾付近へ収束するのも、単なるスイング技術ではなく、人間が本来持っている骨格の使い方が表れているのではないかと考えています。

言い換えれば、長い年月をかけて、多くのゴルファーは人間の骨格が最も自然に働く位置でボールを打ったときに、真っ直ぐ飛ぶクラブを使う方向へ進化してきたのではないでしょうか。

もしこの考え方が正しいのであれば、フィッティングの役割もさらに明確になります。

クラブによって人間の骨格を変えるのではありません。

人間の骨格が最も自然に働く状態で、狙った方向へボールを飛ばせるクラブを見つけること。

それが、本来のフィッティングなのではないでしょうか。

そして、この考え方は、PINGが長年取り組んできた静的フィッティングにもつながっていきます。

なぜ、スイングを見る前に体を測るだけでクラブを選べるのでしょうか。

次回は、その理由を静的フィッティングという視点から考えてみたいと思います。

パワーパッケージは変化する三角形である?

ゴルフでは、両腕と肩で構成される「三角形」が重要だと言われます。

確かにアドレスでは、その表現は正しいでしょう。

しかし、インパクトの瞬間をよく観察すると、その三角形は本当に維持されているのでしょうか。

インパクトでは、

  • 左手首はフラット
  • 右手首は背屈
  • クラブヘッドは手元より遅れた状態(ラグ)
  • グリップは両肩のほぼ中央に位置する

という条件が同時に成立しています。

この状態を成立させようとすると、右肘は自然と体の正面、鳩尾付近へと収束していきます。

つまり、アドレスで見られた三角形は、そのまま固定されているわけではありません。

インパクトで要求される構造要件を満たすために、三角形そのものが自然に変形しているのです。 “パワーパッケージは変化する三角形である?” の続きを読む

世界中のトッププロに共通する「一直線」

ゴルフスイングには、流派があります。

スタック&ティルト、ワンプレーン、ツープレーン、ヒッター、スインガー…。

レッスン理論もコーチも違えば、スイングの形も違って見えます。

しかし、ある一点だけは驚くほど共通しています。

ダウン・ザ・ラインからインパクト付近を見てみましょう。

世界ランキング上位の選手、メジャーチャンピオン、PGAツアーのトッププロ…。

何人見ても、不思議な共通点があります。

それは、

ボール・シャフト・手元・右肘が、ほぼ一直線上に並んでいることです。

最初は偶然だと思いました。

しかし、何十人、何百人と見ても、この傾向は変わりません。

もちろん、全員がまったく同じではありません。

手元の高さも違えば、前傾角も違います。

それでも、この一直線という関係だけは、多くのトッププロに共通しています。

では、なぜでしょうか。

たまたま似た形になったのでしょうか。

それとも、人間の体には、この形にならざるを得ない理由があるのでしょうか。

私は長年フィッティングを行ってきましたが、この一直線こそが、スイングを理解する大きな鍵ではないかと考えています。

次回は、この一直線が意味するものについて考えてみます。

フィッティングとは、ゴルファーを変えることではない。ゴルファーを引き出すことである。

この回では、Podcastで何度も語られている

「クラブをゴルファーに合わせる」

というPINGの思想を掘り下げます。


導入

これまで紹介してきた内容を見ると、

  • モデルを選ぶ
  • ロフトを選ぶ
  • スリーブを調整する
  • ウェイトを動かす

と、クラブばかりを調整しているように見えます。

しかし、本当に変わっているのはクラブでしょうか。

実は違います。

PINGが変えようとしているのは、

ゴルファーが自然に振れる状態

です。


Podcastのポイント

このあたりではマーティが繰り返し、

  • 無理にスイングを変えない
  • 自然に振れる状態を探す
  • ゴルファーが持っている動きを活かす

という考え方を話しています。

つまり、

フィッティングはスイング改造ではない。


店長の解説

ここは私が以前から言っている

クラブは先生である

という考え方につながります。

ゴルファーはクラブを振っています。

しかし、

クラブもゴルファーを動かしています。

だから、

合わないクラブでは、

無意識に補正動作が始まります。

例えば、

  • 開いて見える
  • ボールが遠い
  • ライ角が合わない

これだけで、

構えが変わり、

スイングが変わります。

つまり、

スイングを直しているのではなく、

クラブに合わせてしまっているのです。


一番伝えたいこと

ここで読者へ投げかけます。

フィッティングとは何でしょうか。

多くの人は、

「クラブを選ぶこと」

と思っています。

私は違うと思います。

フィッティングとは、

本来その人が持っているスイングを、最も自然に発揮できるクラブを探すこと

です。

だから、

良いフィッティングを受けると、

「スイングが良くなった」

と感じます。

しかし、

良くなったのはスイングではありません。

クラブが邪魔をしなくなったのです。

理想の球筋を作るのではなく、打ちたくないミスを消す

前回は、PINGのドライバー・フィッティングが、

まず縦方向を合わせる
次に左右方向を合わせる

という順番で行われていることを紹介しました。

縦方向では、ボール初速、打ち出し角、スピン量を整えます。

その後、左右方向では、打ち出し方向、曲がり幅、スピン軸、左右の散らばりを調整します。

では、左右方向のフィッティングでは、どのような弾道を目指せばよいのでしょうか。

多くのゴルファーは、

きれいなドローを打ちたい
安定したフェードを打ちたい
真っすぐな球を打ちたい

と考えます。

しかし、PINGは少し違う方向から考えています。

打ちたい球筋を作るのではなく、打ちたくないミスを消す。

という考え方です。

上級者の方ほど、意図しないボールを打ちたくないという事がはっきりしています。一方、アベレージな方は飛んで曲がらないが求める弾道となります。

Podcastの会話

16:14~18:40

シェーン:
私は最近、ドライバーのロフトを少し増やしました。

 

私は左打ちですが、右へのミスに悩んでいました。

 

もともと私はスピン量の多いプレーヤーなので、ボールを右から左へ動かすために、スピンを使うことに慣れていました。

 

しかし、現在のドライバーではスピン量が減り、以前ほどボールが曲がらなくなっています。

 

そこでLSTのロフトを増やし、以前より真っすぐ構えるようにしました。

 

少しロフトを増やしただけで、フェアウェイを捉えやすくなりました。しかも、飛距離はほとんど失っていません。

 

マーティ:
その右ミスは、左打ちのあなたにとって、右へ曲がっていく球だったのですか。

 

それとも、右へ出て、そのまま戻ってこない球だったのでしょうか。

 

シェーン:
右へ出て、そのまま戻ってこない球です。

 

15年ほど前なら、芯で打った球でも、スピンによって左へ戻っていました。

 

しかしG430からG440へ進む中で、サイドスピンがかなり減ったように感じます。

 

今ではフェアウェイ右側を狙って打ちます。

 

少しカットしてもよいですし、曲がらなくてもフェアウェイに残ります。

 

マーティ:
それは非常に面白い例です。

 

PGAツアーには、軽いカットを基本にしながら、真っすぐ飛んでも問題ないという選手が多くいます。

 

そのような球筋には、かなり大きな安心感があります。

 

ドライバー・フィッティングでは、

 

「特定の球筋を作る」

 

という考え方がよく使われます。

 

しかし私は、逆に考える方がよいと思っています。

 

「出したくないミスを消す」

 

ように、ドライバーをフィッティングするのです。

 

必ずしも一定量のフェードを打ちたいわけではなくても、

 

「右へのミスだけは消したい」

クラブ軌道が左を向き、フェースは軌道より右を向いている可能性があります。

 

ということがあります。

 

そのように考えると、フィッターにもゴルファーにも分かりやすくなります。

ただし、右へ出るだけなら許容できます。

 

シェーン:
そのとおりです。

 

私は右へ曲がる球を見たくありません。

 

これは、フィッティングそのものを大きく変えたというより、技術の進歩によって狙い方を変えられたということです。

店長の解説

この会話で重要なのは、

右へ飛ぶ球は、すべて同じミスではない

ということです。

シェーンは左打ちです。

そのため、右方向はドローやフック側になります。

しかし彼が嫌っていたのは、右へ出ること自体ではありません。

右へ出たあと、さらに右へ曲がっていく球です。

一方、右へ出て、そのまま真っすぐ飛ぶ球であれば、狙い方によって許容できます。

つまり、最終的な着弾地点だけを見て、

右へ行ったから失敗

と判断しているわけではありません。

  • どこへ打ち出されたか
  • そこからどちらへ曲がったか
  • その球が想定の範囲内だったか

を分けて考えています。

これが、左右方向のフィッティングです。

打ち出し方向と曲がり方向は別のもの

ドライバーの弾道を見るとき、多くの人は最終的にボールが止まった場所だけを見ます。

しかし、同じ右側へ着弾した球でも、弾道の内容は違います。

たとえば右打ちの場合、

右へ出て、そのまま飛ぶ球

主にインパクト時のフェース向きが右を向いている可能性があります。

フェースとクラブ軌道の差が小さければ、大きく曲がらず、そのまま右へ飛びます。

真っすぐ出て、右へ曲がる球

打ち出し方向はおおむね合っていますが、フェースと軌道の関係によってスピン軸が右へ傾いています。

左へ出て、右へ曲がる球

同じ右ミスでも、原因は同じではありません。

したがって、

右へ行くから、つかまるドライバーにする

だけでは不十分です。

打ち出し方向を変える必要があるのか。

曲がり幅を減らす必要があるのか。

その両方を変える必要があるのか。

まず区別しなければなりません。

「理想のドロー」が必要とは限らない

ゴルフでは、ドローが飛ぶ球として好まれることがあります。

しかし、すべてのゴルファーがドローを打つ必要はありません。

ドローを作ろうとすると、

  • フェースを閉じようとする
  • クラブを内側から下ろそうとする
  • 手を強く返そうとする
  • 右を向いて構える
  • ボールを必要以上に右へ置く

といった動きが生まれることがあります。

その結果、

ドローではなく、大きなフックが出る

こともあります。

本来、軽いフェードでフェアウェイを捉えられていたゴルファーが、「ドローの方が飛ぶ」という理由だけで球筋を変え、左右両方のミスを持つようになることもあります。

必要なのは、見た目の良い球筋ではありません。

コース上で、どのミスなら許容できるか

です。

一方向のミスに絞る

ツアープレーヤーの多くは、左右両方へ大きく曲がる状態を嫌います。

真っすぐ飛ぶことだけを求めているわけではありません。

たとえば、

  • 真っすぐ、または軽いフェード
  • 真っすぐ、または軽いドロー

というように、球筋の幅を一方向へまとめています。

右打ちのフェードヒッターであれば、

真っすぐならフェアウェイ中央
少し曲がればフェアウェイ右側

という狙い方ができます。

しかし、同じ構えから、

  • 強いフェード
  • 真っすぐ
  • 強いドロー

のすべてが出ると、狙う場所がなくなります。

ゴルフで重要なのは、曲がらないことだけではありません。

どちらへ曲がる可能性があるのかを予測できること

です。

フィッティングでは、最悪の球を見る

弾道測定器を使ったフィッティングでは、一番飛んだ球に注目しがちです。

しかし、コースでスコアを崩すのは、多くの場合、一番良い球ではありません。

最も悪いミスです。

たとえば10球打ったときに、

  • 8球はフェアウェイ幅
  • 1球は少しラフ
  • 1球はOB

というクラブと、

  • 10球すべてがフェアウェイか浅いラフ

というクラブがあったとします。

最長飛距離が前者の方が5ヤード長くても、実戦では後者の方が良い可能性があります。

前者には、一打でゲームを崩す球が含まれているからです。

そのためフィッティングでは、

平均値を良くすること

と同時に、

最悪のミスをどこまで小さくできるか

を見る必要があります。

消すべきミスは、人によって違う

すべてのゴルファーが、同じミスを嫌うわけではありません。

左側にOBが多いコースをプレーする人

左へのミスを消す価値が大きくなります。

右側に池や谷が多いコースをプレーする人

右へのミスを抑える必要があります。

左へ曲がると急激に飛距離が落ちる人

左への曲がりを減らすことが、距離の安定にもつながります。

右へ出るが、ほとんど曲がらない人

打ち出し方向を少し修正するだけでよく、ヘッドを大きくつかまる仕様にする必要はないかもしれません。

左右両方へ曲がる人

まず、どちらか一方へミスをまとめる必要があります。

つまり、

最適な左右バイアス

は、その人のスイングだけで決まるわけではありません。

普段プレーするコース、ティーショットの狙い方、許容できるミスによっても変わります。

ヘッドモデルで、ミスの方向を決める

G440の各モデルには、それぞれ異なる左右特性があります。

G440 SFT

フェースが開いて届きやすく、右へのミスが多いゴルファーに適しています。

右へ曲がる球を減らし、よりスクエアに近い状態でフェースを届けることを助けます。

G440 K

高い慣性モーメントによって、打点がずれたときのヘッドの回転を抑えます。

CG Shifterによって、ドロー、ニュートラル、フェード方向へ調整できます。

G440 MAX

Kよりも少し高い打ち出しとスピンを作りながら、CG Shifterで左右方向を調整できます。

G440 LST

スピン量を抑えることを基本にしながら、CG Shifterによって左右特性を調整できます。

重要なのは、

モデルを選べば、球筋がすべて決まるわけではない

ということです。

モデルで基本的な弾道特性を決め、その後、ウェイト位置、スリーブ、クラブ長、ヘッド重量などで左右のミスを整えます。

LSTをドロー仕様にする理由

前話で紹介したジョン・ソルハイムの例は、この考え方をよく示しています。

彼はスピン量が多くなりやすいため、ヘッドにはLSTが必要です。

しかし、LSTの低スピン性能を使うだけでは、フェースのつかまりが足りない可能性があります。

そこで、

  • CG Shifterをドロー位置へ動かす
  • スイングウェイトを少し軽くする
  • フェースを戻しやすくする

ことで、左右方向を調整しています。

これは、

低スピンにしたいからLST
つかまえたいからSFT

という単純な二者択一ではありません。

縦方向にはLSTが必要です。

左右方向には、ドロー方向の調整が必要です。

その二つを組み合わせています。

フィッティングとは、モデル名にゴルファーを当てはめる作業ではありません。

ゴルファーに必要な縦と横の条件を、一つのクラブに組み合わせる作業

です。

ロフトを増やして、右ミスを消す

シェーンの例では、ロフトを増やすことで右ミスを減らしています。

一般にロフトを増やすと、

  • 打ち出し角が高くなる
  • スピン量が増える可能性がある
  • フェース角が相対的にクローズ方向へ変化する
  • 構えたときのフェースの見え方が変わる

ことがあります。

シェーンは、ロフトを増やしたことで、以前より真っすぐ構えやすくなりました。

その結果、

無理に右から左へ曲げようとせず、右側を狙って、真っすぐか軽いカットで打つ

という狙い方ができるようになっています。

ここで重要なのは、ロフトを増やしてドローを強くしたわけではないことです。

自分が嫌う右への曲がりを消し、許容できる球だけを残しています。

現代のドライバーは曲がりが少ない

シェーンは、G430からG440へ進む中で、以前よりサイドスピンが減ったと感じています。

厳密には、ボールにはバックスピンとサイドスピンが別々に発生しているわけではありません。

回転軸が傾くことで、ボールが左右へ曲がります。

現代のドライバーでは、

  • 高MOI化
  • フェース設計の進歩
  • 打点ずれに対するスピンの安定
  • ゴルフボールの低スピン化

などによって、芯に近い打点での曲がりが小さくなっています。

その結果、以前なら戻ってきた球が、戻らずにそのまま飛ぶことがあります。

これは悪いことではありません。

しかし、ゴルファーが昔の曲がり幅を前提に狙っていると、想定と違う場所へ飛びます。

クラブが変われば、狙い方も変える必要があります。

曲がりを減らすことは、飛距離にもなる

Podcastでは、シェーンのような高ボールスピードのプレーヤーと、一般ゴルファーを分けて説明しています。

Podcastの会話

19:07~20:23

マーティ:
あなたのボール初速は170mph台後半で、時には180mphに届きます。

 

PGAツアーの平均か、それを少し上回る速度です。

 

その速度があれば、ある程度の曲がりを許容しながら、安心できる球筋と散らばりを、作ることができます。

 

一方、225~250ヤード程度を飛ばし、多くのフェアウェイを捉える一般ゴルファーも大勢います。

 

そのようなゴルファーには、スピン軸の傾きをできるだけ小さくします。

 

ボール初速がそれほど高くない場合、曲がりを減らすことは、飛距離を伸ばすための一つの方法になります。

 

したがって一般原則としては、曲がり幅をできるだけ小さくします。

 

現代のクラブ技術とゴルフボールも、それを助けています。

一般ゴルファーほど、曲がりによる損失が大きい

ヘッドスピードが速いゴルファーは、ボールが少し曲がっても、十分な初速とキャリーを残せます。

しかし、ボール初速がそれほど高くないゴルファーでは、曲がりが大きくなるほど、前へ進む距離を失いやすくなります。

たとえば、右へ大きく曲がる球では、

  • スピン量が増える
  • スピン軸が大きく傾く
  • 最高到達点が高くなる
  • 前方へのキャリーが減る
  • 着弾後のランが減る

ことがあります。

この場合、単にヘッドスピードを上げようとするより、

曲がりを減らす

方が飛距離を伸ばせる可能性があります。

つまり、

真っすぐ飛ばすことは、方向性だけの問題ではない

ということです。

曲がりによって失っていたエネルギーを、前方への飛距離へ戻すことでもあります。

「真っすぐ」を狙いすぎない

曲がりを減らすことは重要です。

しかし、毎回完全なストレートボールを求める必要はありません。

ストレートボールは、フェース向きとクラブ軌道がほぼ一致したときに生まれます。

わずかな差によって、ドローにもフェードにもなります。

そのため、完全なストレートだけを目指すと、左右両方の球が出る可能性があります。

実戦では、

真っすぐ、または軽いフェード
真っすぐ、または軽いドロー

という範囲の方が、狙いやすくなります。

消すべきなのは、すべての曲がりではありません。

コースを外し、次のショットを難しくする曲がり

です。

フィッターが最初に聞くべきこと

左右方向のフィッティングを始める前に、フィッターはゴルファーへ、

どのミスを最も見たくありませんか。

と聞く必要があります。

答えは人によって違います。

  • 左へ引っかける球
  • 右へ大きく曲がる球
  • 右へ出て戻らない球
  • 左へ出てさらに左へ行く球
  • 高く吹き上がりながら曲がる球
  • 低く出て急激に曲がる球

その球を確認したうえで、

  • モデル
  • CG Shifter
  • スリーブ
  • クラブ長
  • シャフト
  • スイングウェイト

を使います。

何も聞かずに「ドローとフェードのどちらが好きですか」と尋ねるだけでは、十分ではありません。

好みの球筋と、実際に消すべきミスは同じとは限らないからです。

今回の結論

ドライバー・フィッティングの目的は、見た目の良い球筋を作ることではありません。

必要なのは、

コース上で最も大きな損失になるミスを消すこと

です。

ドローを打ちたいか。

フェードを打ちたいか。

その前に確認しなければならないことがあります。

  • どこへ打ち出されるのか
  • そこからどちらへ曲がるのか
  • 左右のどちらが大きなミスになるのか
  • どの球なら許容できるのか
  • 最悪の一球は何か

です。

理想の球筋を一つ決めるより、

打ちたくない球を一つ消す

方が、コースでは狙い方が明確になります。

真っすぐか、軽いフェード。

真っすぐか、軽いドロー。

そのようにミスを一方向へまとめることができれば、ティーショットの安心感は大きくなります。

そして、ボール初速がそれほど高くない一般ゴルファーにとっては、曲がりを減らすことが、飛距離を増やすことにもつながります。

ドライバーは、一番きれいな一球を打つためのクラブではありません。

最も悪い一球によって、ゲームを壊さないためのクラブです。

次回は、Trajectory Tuning Sleeve、ロフト、ライ角、フェース角が、実際に何を変えているのかを見ていきます。

ライ角が変わると、ゴルファーの構えも変わる

まず確認しておきたいのは、ゴルファーはクラブのライ角を無視して構えることはできない、ということです。

クラブを地面に置けば、ソールの形状とライ角によって、シャフトがどの方向に立つかがある程度決まります。

そのシャフトを握る以上、ゴルファーの手元の位置も影響を受けます。

アップライトなクラブでは、シャフトがより縦に立ちます。

そのため、自然に構えようとすると、手元の位置は高くなります。

手元が高くなれば、同じ腕の長さのままでは、ゴルファーはボールに近づくことになります。

反対に、フラットなクラブでは、シャフトが横に寝ます。

そのため、手元の位置は低くなり、ボールとの距離は遠くなります。

整理すると、次のようになります。

アップライトなクラブ

  • 手元が高くなる
  • ボールとの距離が近くなる
  • シャフトが縦に立つ
  • 腕が身体の近くに下りる
  • 構えがやや窮屈になりやすい

フラットなクラブ

  • 手元が低くなる
  • ボールとの距離が遠くなる
  • シャフトが横に寝る
  • 腕が身体から離れやすくなる
  • 構えが広がりやすい

ここで重要なのは、ライ角の変化が、単なるクラブの角度の違いでは終わらないことです。 “ライ角が変わると、ゴルファーの構えも変わる” の続きを読む

ライ角は、本当に方向だけの問題なのでしょうか?

ライ角の説明を受けたことがあるゴルファーなら、一度はこの図を見たことがあると思います。

アップライトになるとフェースは左を向く。

フラットになるとフェースは右を向く。

その結果、

  • アップライトなら左へ飛びやすい
  • フラットなら右へ飛びやすい

という説明です。

これはライ角の基本として広く知られており、PINGをはじめ、多くのクラブメーカーでも採用されている考え方です。

もちろん、この説明は間違いではありません。 “ライ角は、本当に方向だけの問題なのでしょうか?” の続きを読む

G740アイアンのフィッティングの肝!

G740は、PINGのアイアンチャートの中では、一番やさしさ側に位置するゲームエンジョイメントアイアンです。

BLUEPRINTやi240のようなプレーヤーズアイアンは、比較的厳しいピン位置に対しても、スピンでボールを止めていくアイアンです。ボールに先にコンタクトし、その後にターフを取る。適切なロフト、入射角、フェースとボールの摩擦によってスピン量を確保し、グリーン上でボールを止めます。

一方、G Le4、G440、G740は、ゲームエンジョイメントアイアンに分類されます。
その中でもG740は、最も飛距離性能と寛容性を重視したモデルです。

ここで重要なのが、G740はプレーヤーズアイアンと同じ止め方をするアイアンではないということです。

前回も説明したように、G740はスピンで強く止めるというより、高い打ち出しと大きな落下角でボールを止めるアイアンです。そのためには、フェースの下側に薄く当てて強いダウンブローで打つよりも、ソールを使いながら安定したコンタクトを作り、ボールをフェースの中央付近でとらえることが重要になります。

G740に採用されているバリアブルキャンバーソールは、まさにこのためのソール形状だと考えると分かりやすいと思います。

“G740アイアンのフィッティングの肝!” の続きを読む

ガルシアとマキロイのスイングは、なぜ違うのか

なぜ、ガルシアとマキロイのスイングは違うのでしょうか。
そして、なぜマキロイの前傾角度は、インパクトでアドレス時と完全には一致しないのでしょうか。

結論を先に書くと、マキロイはヒッターだからです。

こう書くと、多くの人は違和感を覚えるかもしれません。

マキロイのスイングは、流れるように見えます。
リズムも美しく、フィニッシュも綺麗です。
ですから、一般的には「スインガータイプの理想的なスイング」と評価されやすいと思います。

しかし、スインガーとヒッターの違いは、見た目の美しさではありません。

違いは、クラブの動きをどのように作り出しているかです。

筋力、反力、体幹の出力を使ってクラブを動かすのがヒッター。
一方、体を振り子として使い、クラブの運動を効率よく引き出すのがスインガーです。

スインガーでは、左股関節が振り子の支点として機能します。
左股関節の上に上体が乗り、上体はバラバラに動くのではなく、接続された一つのパーツとして回転します。

ここで重要なのは、振り子の支点です。

振り子は、支点が大きく動くと効率が悪くなります。
ですので、スインガーはアドレスで作った前傾角度、手元の位置、シャフトプレーンを大きく変えずに、インパクトで元の構造に戻してくる必要があります。

つまり、スインガーにとっては、

前傾角度が維持されていること
手元が浮かないこと
インパクトでアドレス時のシャフトポジションに近く戻ること

が非常に重要になります。

ここでガルシアのスイングを見ると、非常に分かりやすいです。

見るべきポイントは、左股関節の位置の変化と、体の中心から大きくずれない手元と上体の関係です。

ガルシアはトップからクラブが大きく背後に落ちます。
一見すると、非常に特殊で、真似しにくいスイングに見えます。

しかし、インパクト付近だけを見ると、アドレス時のシャフトポジションに非常に近く戻っています。
前傾も崩れていません。
手元も浮いていません。

つまり、ガルシアは途中経過こそ独特ですが、インパクトでは非常にスインガー的な条件を満たしています。

一方、マキロイはどうでしょうか。

マキロイは、強烈な下半身の出力、右足の反力、背筋を使った体幹の回転力によってクラブを加速させます。
クラブが自然に振られているというより、身体能力でクラブを強く動かしている。

その結果、インパクトでは手元が低く見えます。
前傾も維持されているように見えます。
しかし、アドレス時のシャフトポジションと完全に一致しているわけではありません。

なぜなら、マキロイのインパクトは、アドレスの再現ではなく、強い出力のために作られた動的なインパクトだからです。

ヒッターは、筋力を使ってクラブを動かし、最終的にボールに当てます。
ですので、ボールに対して強く、正確に力を伝えられるなら、その方法は一つではありません。

多くのヒッターは、背筋を利用してクラブを加速させます。
前傾した状態で背中側の筋肉を強く使えば、当然、前傾角度は失われやすくなります。

つまり、マキロイの前傾角度がアドレス時と完全に一致しないのは、スイングが悪いからではありません。
強い出力を作るために、体を積極的に使っているからです。

では、なぜマキロイのスイングは流れるように見えるのでしょうか。

それは、いくら強い筋力を持つマキロイでも、クラブの慣性に逆らって急激に方向を変えれば、クラブに体が引き込まれてしまうからです。
そのため、急激な変化を少なくし、クラブの慣性を受け流しながら強い出力を加えている。

だから、マキロイのスイングは流れるように見えるのです。

しかし、それはスインガーだから流れているのではありません。
強いヒッターが、クラブの慣性に負けないために、滑らかに力を加えているのです。

ここに、一般的なスイング評価の落とし穴があります。

多くのスイング評価では、

手元が低い
前傾が維持されている
体の回転で打っている

という言葉が使われます。

しかし、これらの多くは、本来はスインガー型のスイングを評価するための言葉です。

ところが、マキロイは結果が圧倒的に良い。
飛距離が出る。
見た目も美しい。
だから、見る側は「素晴らしいスイング」と感じ、その印象に合う言葉を後から当てはめてしまいます。

つまり、マキロイがスインガーだから「手元が低い」「前傾が維持されている」と評価されているのではありません。

マキロイの結果が素晴らしいから、スインガー用の称賛語がマキロイに割り当てられている。

ここを分けて考える必要があります。

ヒッターの評価基準は、本来は違います。

ヒッターは、流れるように振れているかではなく、
強く、正確に叩けているか。
ここが評価の中心になります。

そのために、

背筋と右足の反力を使えているか
体幹と筋力でクラブを支配できているか
フェースを逃がさず、ボールに圧をかけられているか
強い出力を方向性に変換できているか

を見る必要があります。

この基準で見ると、マキロイは非常に優れたヒッターです。

一方、ガルシアは、一般的には「独特なスイング」と見られがちです。
しかし、インパクト構造だけを見ると、アドレスに戻る能力、前傾の維持、低い手元という点で、非常に優れています。

つまり、こう整理できます。

マキロイは、ヒッターとして非常に優れている。
ガルシアは、インパクト構造として非常に優れている。

問題は、評価する側がこの二つを分けていないことです。

スインガーの評価語でヒッターを褒める。
ヒッターの強さを、スインガー的な美しさとして説明する。
そして、ガルシアのように本質的に優れたインパクト構造を持つ選手を、途中経過が独特だからという理由で低く見てしまう。

ここに、一般的なスイング評価のズレがあります。

マキロイのスイングは素晴らしい。
しかし、それはスインガーとして素晴らしいのではなく、ヒッターとして極めて高い完成度を持っているという意味で素晴らしいのです。

そしてガルシアのスイングもまた、一般的な美しさとは違う意味で、極めて優れています。

スイングを見るときに大切なのは、
美しく見えるかどうかではなく、その動きが何によってクラブを動かしているのかを見ることです。

マキロイとガルシアの違いは、そこにあります。