前回は、
スイングは形の集合ではなく、一つにつながった機構である
という話をしました。
ハンター・メイハンがスコッティ・シェフラーの足の動きを簡単に直そうとしないのも、
その部分だけを切り取って見ているのではなく、
その動きがスイング全体の中で何をしているのか
を見ているからではないか、という話です。
そして、その考え方は、現在のメイハンのコーチングにもはっきり表れています。
現在、メイハンは高校生のゴルフチームを指導しています。
PINGのPodcastで、
「なぜコーチを始めたのか」
と聞かれたメイハンは、非常に興味深いことを話しています。
彼は、
いわゆるスイングインストラクターになりたかったわけではない
と言うのです。
メイハンが興味を持っているのは、
「80で回る選手を、どうやって77にするか」
そして、
「82で回る選手を、どうやって76にするか」
ということです。
もちろん、その中にはスイング技術も含まれます。
しかし、それ以上に彼が重視しているのが、
コースマネジメント。
状況判断。
そして、その場面でどのようなショットを選択するのか。
という部分です。
さらにメイハンは、
77を74、73にするために必要なのは、スイングを変えることではない場合もある
と話しています。
18ホールの中の、
たった1回か2回の判断。
それだけでスコアは変わる。
これは、非常に重要な話だと思います。
ゴルファーはスコアが悪くなると、
まずスイングを疑います。
「今日はトップが深すぎた」
「左手首が掌屈できていなかった」
「身体が開いた」
「クラブがプレーンから外れた」
そして練習場へ行き、
スイングを直そうとします。
しかし、その日のスコアが3打悪かった原因は、本当にそこだったのでしょうか。
例えば、
残り180ヤードから無理にグリーンを狙ってダブルボギーにした。
林の中からグリーンを狙って、さらに深い場所へ入れた。
ピンが端に切ってあるのに、ピンだけを狙ってショートサイドへ外した。
苦手なクラブなのに、距離だけを基準にしてそのクラブを選んだ。
こうした判断が、18ホールの中に一つか二つあっただけかもしれません。
それを考えると、
80を77にするために、本当にスイング改造が必要なのか。
という疑問が出てきます。
メイハンが見ているのは、
「どんなスイングをしているか」
だけではありません。
そのスイングを使って、どうゴルフをしているか。
です。
これは、ゴルフを教えるうえで大きな違いだと思います。
スイングだけを見ていれば、
「もっとこう振りましょう」
という答えになります。
しかし、18ホールを見れば、
「そのショットを打つ必要がありましたか?」
という答えになるかもしれません。
つまり、
問題がスイングにあるとは限らない。
のです。
そしてメイハンは、もう一つ面白いことを言っています。
レンジでできることを、
どうやってコースへ持っていくのか。
それがゴルフの「enigma」、つまり謎なのだと。
練習場では良いショットが打てる。
しかしコースへ行くと打てない。
これは多くのアマチュアが経験することだと思います。
では、なぜでしょう。
練習場では、ほとんどの場合、
同じ場所から、
同じライで、
何球も続けて打つことができます。
一球失敗しても、
次のボールがあります。
しかしコースでは違います。
一球しかありません。
しかも毎回、
ライが違う。
傾斜が違う。
風が違う。
距離が違う。
そして、
その一球を打つ前に、何をするのかを自分で決めなければならない。
ここが練習場とゴルフ場の大きな違いです。
だから店長は、
「レンジで打てるショットをコースでも打てるようにする」
という言葉だけでは、少し足りないと思っています。
コースでは、
そのショットを打つかどうかを決めるところから、すでにゴルフが始まっている
からです。
200ヤード残っているから、200ヤード打てるクラブを持つ。
それだけではありません。
ライはどうなのか。
風はどうなのか。
グリーンのどこへ外してはいけないのか。
自分は今日、そのクラブをどのくらいコントロールできているのか。
一打失敗したとき、次にどのようなショットが残るのか。
そこまで含めて考えて、
初めて一つのショットが決まります。
そう考えると、
メイハンが、
「80を77にする」
という表現を使った理由が分かるような気がします。
彼はスイングを教えたいのではなく、
ゴルフの仕方を教えたい
のだと思います。
そして、これは第1話で紹介した、
「自分が本当に得意なものを見つけ、それを理解し、磨き上げ、誰にも触らせるな」
という言葉にもつながります。
自分ができることを理解する。
自分ができないことも理解する。
そのうえで、
その日の自分のゴルフを組み立てる。
だから、
誰かのお手本のスイングをそのままコピーする必要はありません。
また、
他の選手が打てるショットを、自分も打たなければならないわけでもありません。
自分が再現できるものを使って、最も少ない打数で18ホールを回る。
ゴルフとは、本来そういうゲームなのだと思います。
そして、この話を聞いていると、
2010年のライダーカップでメイハンが経験した、あの一打がどうしても頭に浮かびます。
極限のプレッシャーの中で、
何を打つのか。
自分が最も再現できるショットは何なのか。
そして、
その選択は、自分の持っているスイングメカニズムと一致していたのか。
次回は、もう少し「ショットを選ぶ」ということについて考えてみたいと思います。
