円の接線の定理をご存じでしょうか。
円では、接点における接線は、その点へ引いた半径と必ず90度で交わります。
ミスター・ホーガンのスタンス図に、少し補助線を入れてみました。

AGLでのボールの位置は左足踵の線上の内側です。ドライバーだけ外側となります。
スイングの支点を中心として円を描き、ボールの位置を接点として考えます。
すると、その接点での接線はターゲット方向を向きます。
ここで重要なのは、スタンスそのものの向きではありません。
支点から見て、どの方向へ力が働くのか。
もしスイングの力の方向が、この接線方向、つまりターゲット方向へ向いているとすれば、クラブヘッドの進行方向もターゲットへ整いやすくなります。
そして、その状態ではフェースの向きもターゲット方向と整合しやすくなります。
こうして見ると、ホーガンのスタンス図は、単なる「クラブごとの構え方」の図ではないように見えてきます。
支点から広がる扇形は何を表しているのか
図を見ると、支点から各クラブに向かって扇形が広がっています。
ショートアイアンでは小さく、
ロングアイアン、
そしてドライバーになるほど、その扇は大きく開いていきます。
これは、単なるスタンス幅の違いではありません。
そのクラブで必要になる回転量の違い
を表しているように見えます。
クラブが長くなると、回転半径は大きくなります。
慣性モーメントは、

で表されます。
質量 (m) が同じでも、回転軸からの距離 (r) が大きくなれば、慣性への影響は距離の二乗で大きくなります。
つまり、長いクラブほど慣性は大きくなります。
そしてホーガンの図では、
長いクラブほど、支点から見た扇形も大きく開いている。
これは、クラブの慣性と回転量の関係に一致しているように見えます。
長いクラブだからクローズなのではない
一般的には、
「ショートアイアンはオープンスタンス」
「長いクラブほどクローズスタンス」
と説明されます。
しかし、この図をダイナミックに見ると、少し意味が変わってきます。
ホーガンは、
長いクラブだからクローズにした、
のではなく、
長いクラブほど大きくなる慣性に合わせて、必要な回転量を確保するために、スタンスを変えていた
のではないでしょうか。
つまり、スタンス変更そのものが目的ではありません。
クラブごとに変わる慣性に対して、
人体側の初期配置を変える。
そして、切り返し以降はなるべく余計な調整をしない。
そう考えると、
ショートアイアンではオープン。
長いクラブではクローズ。
という変化は、
クラブごとの慣性差を、アドレスの段階で吸収するプリセット
だった可能性があります。
接線は方向、扇形は回転量
この図をさらに単純化すると、
接線は、
力の方向
を示し、
支点から広がる扇形は、
回転量
を示していると考えることができます。
だとすれば、ホーガンのスタンス図は、
「どちらを向いて立つか」
を示した図ではなく、
どの方向へ力を出し、そのためにどれだけ回転するか
を同時に表した図だったのではないでしょうか。
これなら、
Geometrically Oriented Linear Force
という言葉ともつながります。
ただ力を出すのではなく、
幾何学的に方向づけられた力を作る。
その方向を決めるのが接線。
そのために必要な運動量を作るのが、支点から広がる回転。
そう考えると、
ホーガンの図は急に違って見えてきます。
ホーガンの頭の中には、この補助線があったのではないか
もちろん、ホーガン本人がこの補助線を実際に描いていたという証拠があるわけではありません。
しかし、
ショートアイアンからドライバーまで、
スタンスの向きと幅をこれほど系統的に変えながら、
最終的には同じターゲットへボールを運んでいます。
そこには、
単なる感覚ではなく、
支点、回転量、力の方向をまとめた一つの幾何学的な考え方
があったように思えます。
私は、
ミスター・ホーガンの頭の中には、必ずこの補助線があったのではないかと思うのです。
そしてこの考え方を現代のクラブに当てはめると、
さらに面白いことが見えてきます。
ホーガンの時代と違い、現代クラブは、クラブ長が変わっても慣性差がかなり小さくなるように設計されています。
だとすれば、
ホーガンほど大きくスタンスを変える必要はないのかもしれません。
次は、
ホーガン時代のクラブと現代クラブでは、慣性がどれほど違うのか。
そこから、このスタンス図をもう一度見直してみたいと思います。
