ダイナミックでいこう!第3話 力はどこに向いているのか?

前回は、ライ角を変えることでクラブの運動特性が変わり、手元の時間軸まで変わる可能性について考えました。

では、その手元を動かしている「力」は、いったいどちらへ向いているのでしょうか。

ここで思い出したい言葉があります。

Geometrically Oriented Linear Force

直訳すれば、

「幾何学的に方向づけられた直線的な力」

といった意味になります。

少し難しく聞こえます。

しかし、考えていることは意外と単純です。

ゴルフスイングでは、ただ力を出せばいいわけではありません。

その力が、

どちらへ向いているか

が重要です。

スタンスの向きと、力の向きは同じなのか

ゴルフでは一般的に、

「目標に対してスクエアに構える」

ことが基本とされます。

足のライン。

膝のライン。

腰のライン。

肩のライン。

これらを目標線に合わせる。

とても分かりやすい考え方です。

しかし、ここまでダイナミックに考えてくると、ひとつ疑問が出てきます。

スタンスが目標に対してスクエアなら、力も目標方向へ向くのでしょうか。

これは必ずしも同じではありません。

人間は一本の棒ではありません。

足があります。

膝があります。

股関節があります。

骨盤があります。

背骨があります。

肩があります。

肘があります。

手首があります。

それらがつながったリンク機構です。

足元がどちらを向いているかと、

最終的に手元やクラブへ伝わる力がどちらを向くかは、

別の問題です。

円運動には「支点」がある

ゴルフスイングを円運動として考えると、重要になるのが支点です。

ここでは仮に、左股関節付近を有効な支点として考えてみます。

支点からクラブヘッドへ向かう線を「半径」と考えれば、その瞬間のクラブヘッドの進行方向は、半径に対して90度の接線方向になります。

つまり、

です。

もしインパクトでクラブヘッドを目標方向へ動かしたいなら、

支点からインパクト位置へ引いた線は、目標線に対して90度になる必要があります。

ここで大切なのは、

スタンスラインが目標に対して何度か

ではありません。

重要なのは、

支点がどこにあり、そこからどちらへ力が向いているか

です。

左を向いた方が真っすぐ飛ぶ

私自身、実験していて不思議に感じたことがあります。

かなり左を向いて構えた方が、ボールが目標方向へ真っすぐ飛ぶことがあるのです。

スタティックに考えれば、おかしな話です。

左を向けば、左へ飛びそうです。

しかし、実際にはそうならない。

なぜでしょう。

考えられるのは、

左を向くことで、インパクト時の左股関節の位置と、そこから発生するリニアフォースの方向が整った

ということです。

つまり、

左を向いたから真っすぐ飛んだのではなく、

左を向くことで、実際にクラブへ伝わる力の方向が真っすぐになった

と考えることができます。

切り返しですでに方向は決まっているのではないか

さらに興味深いのは、トップから切り返す瞬間です。

切り返しの時点で、

左股関節と右股関節の位置関係は、すでにある程度決まっています。

そこから余計な力を加えず、

クラブと身体の慣性に任せて動かしたとします。

すると、その瞬間の人体リンクの配置によって、

最初のリニアフォースの方向が決まる

と考えることができます。

もしそれが正しいなら、

ボールの方向を決めているのは、

インパクト直前の手先の操作ではありません。

もっと前。

切り返しの時点ですでに、かなり決まっている

ことになります。

方向はインパクトで作るのではない

これは、かなり大きな違いです。

一般的には、

「インパクトでフェースを合わせる」

「目標へ振り抜く」

と考えます。

しかし、ダイナミックに考えるなら、

切り返しの時点で、

支点の位置。

人体リンクの配置。

クラブの慣性。

そしてリニアフォースの方向。

これらがほぼ決まっていて、

その結果としてインパクトが訪れる。

つまり、

方向はインパクトで作るのではなく、その前に作られている。

ということになります。

ここでホーガンのスタンスを見る

この考え方で、ベン・ホーガンの有名なスタンス図を見ると、少し違って見えてきます。

ショートアイアンではオープン。

ミドルアイアンではスクエアに近づき、

長いクラブになるほどクローズ。

一般的には、

「クラブによってスタンスを変えていた」

と説明されます。

しかし、本当に変えたかったのはスタンスだったのでしょうか。

もしかすると、

クラブごとに変わる慣性に合わせて、切り返し時のリニアフォースの方向を揃えていた

のかもしれません。

そう考えると、

ショートアイアンでオープン。

長いクラブでクローズ。

という変化にも意味が出てきます。

スタンスを変えることが目的なのではありません。

同じ方向へ力を出すために、スタンスを変えていた。

そう考えると、ホーガンのスタンス図は、

単なるアドレスの教科書ではなく、

クラブの慣性に合わせた、人体側の幾何学的な補正表

に見えてきます。

これこそ、

Geometrically Oriented Linear Force

という言葉にふさわしい考え方ではないでしょうか。

力は、ただ強ければいいのではありません。

どちらへ向いているか。

その方向は、どの支点から作られているか。

そして、その支点はクラブによってどう変わるのか。

次は、このホーガンのスタンス図を、現代クラブの質量分布と比較しながら考えてみたいと思います。

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