ハンター・メイハン 第9話 考えるのは打つ前まで

前回は、

ルーティンは毎回同じでなければならないのか。

という話をしました。

ハンター・メイハンがタイガー・ウッズについて語っていたのは、

毎回同じ秒数で打つことではありませんでした。

タイガーは、

必要なら考える。

長く考えることもある。

そして、

自分が納得できるところまで時間を使う。

しかし、

クラブを手に取ったら速い。

メイハンは、

タイガーのショットにかかる時間は毎回同じではなかったと話しています。

考える時間は必要なだけ取る。

しかし、

クラブを持ったときには、

すでに打つ準備ができている。

店長は、この話を聞いていて、

ゴルフでは、

「考える時間」と「打つ時間」を分ける必要がある

のではないかと思いました。

これは、

ピア・ニールソンとリン・マリオットのVISION54で使われている、

Think Box

と

Play Box

という考え方にもよく似ています。

Think Boxでは、

考える。

風を見る。

距離を見る。

ライを見る。

ターゲットを決める。

クラブを決める。

どんな球を打つのかを決める。

必要であれば、

技術的なことも確認する。

つまり、

ショットに必要な判断は、ここですべて終わらせる。

そして、

Play Boxへ入ったら、

もう判断を増やさない。

そこでやることは、

決めたショットを打つこと。

です。

この考え方は、

単に「考える場所」と「打つ場所」を分けているだけではないと思います。

もう一つ、

メンタルマネジメントの考え方があります。

それは、

人間は、一度に二つのことへ意識を集中することができない

という考え方です。

例えば、

「左手首を掌屈させる」

と考えながら、

同時に、

「150ヤード先のターゲットへボールを運ぶ」

ことへ完全に集中する。

これは難しい。

どちらかへ意識を向ければ、

もう一方への注意は弱くなります。

つまり、

スイングを直すことと、ボールを打つことを同時にはできない。

ということです。

ここは非常に重要だと思います。

店長の場合、打つときに意識するものを一つ挙げるとすれば、

『The Golfing Machine』の第一原則、

A Stationary Head(頭の位置を動かさない)

です。

スイング中に、

手首はどうする。

クラブはどこへ上げる。

腰はどう回す。

というように、

身体の各部分をいくつも管理しようとはしません。

一つだけに意識を置き、

あとは身体とクラブの動きに任せます。

ゴルファーは、

コースへ行くとよく、

「トップを小さくしよう」

「左手首を掌屈しよう」

「切り返しでシャフトを寝かせよう」

「身体を止めないようにしよう」

「右へ行かないようにしよう」

と考えます。

もちろん、

こうしたことを考えること自体が悪いわけではありません。

練習では必要です。

スイングを変えるためには、

自分が何をしているのかを理解し、

意識して動かす時間も必要です。

問題は、

いつ、それを考えるのか。

です。

練習場で、

スイングを作っているときなのか。

それとも、

コースでボールを打つ瞬間なのか。

ここを分けなければなりません。

コースでは、

一球しかありません。

その一球を打ちながら、

「トップを小さく」

「左手首を掌屈」

「身体を回す」

「右へ行かないように」

と複数のことを考えれば、

身体は何を基準に動けばいいのでしょう。

頭の中では、

まだスイングを修正している。

しかし身体には、

今すぐボールを打つことが要求されている。

つまり、

修正と実行を同時にやろうとしている

ことになります。

店長は、

ここにコースでスイングが崩れる原因の一つがあると思っています。

これまでこのシリーズで書いてきたように、

スイングは形の集合ではなく、一つにつながった機構

です。

トップだけを小さくする。

手首だけを変える。

切り返しだけをゆっくりにする。

そう簡単にはいきません。

一つを変えれば、

身体の回転とのタイミングも変わります。

クラブの慣性に対する身体の反応も変わります。

フェースの戻り方も変わります。

ですから、

技術的な修正は、

練習の中で繰り返し、

ある程度、

考えなくても起こる動きにしておく

必要があります。

そしてコースでは、

その動きを使って、

何をするかを決める。

Think Boxでは、

考える。

状況を判断する。

必要なら技術的な確認をする。

そして、

ショットを決める。

そこまで終わったら、

Play Boxへ入る。

Play Boxでやることは一つです。

打つ。

「何も考えない」

ということではありません。

むしろ逆です。

考える対象を一つにする。

ということです。

打つ瞬間には、

スイングを直すことではなく、

その一球を打つこと

に意識を向ける。

ここが重要です。

第8話で紹介した、

メイハンのランニングバックの例も、

ここにつながると思います。

優れたランニングバックは、

まだ穴が開いていないのに突っ込みません。

待つ。

見る。

判断する。

そして、

穴が開いた瞬間に走る。

ゴルフも同じです。

まだ風が決まっていない。

番手にも迷っている。

狙いも決まっていない。

それなのに、

ルーティンへ入る必要はありません。

決まるまでは、

考えていい。

時間を使っていい。

しかし、

決めたら行く。

この切り替えが必要です。

Podcastでは、

ローリー・マキロイがオーガスタの12番で、

トム・ワトソンから、

想定している風になるまで打つな、

という趣旨の助言を受けた話も出てきます。

必要な条件が整うまでは待つ。

しかし、

条件が整ったら、

もう迷わない。

打つ。

これも、

Think BoxとPlay Boxの切り替えと同じです。

そして、

この考え方はメイハンが高校生に伝えている、

Compete

にもつながります。

前のダブルボギーを考えない。

3パットを引きずらない。

未来の結果も考えない。

目の前の一打に集中する。

つまり、

Play Boxへ入ったら、

今から打つ一球以外のことを考えない。

ということです。

ここで、

もう一つ面白いことがあります。

VISION54には、

Think Box、Play Boxに加えて、

Memory Box

という考え方もあります。

ショットが終わったあと、

結果をどう受け止めるのか。

良かったものを残す。

必要な反省をする。

そして、

次のショットへ持ち込まない。

これも、

メイハンが話している、

「前のショットを考えない」

というCompeteの考え方と非常によく似ています。

整理すると、

Think Boxでは、

考える。

Play Boxでは、

打つ。

Memory Boxでは、

整理する。

そして、

次のThink Boxへ進む。

店長は、

この分け方が非常に合理的だと思います。

なぜなら、

ゴルフで問題になるのは、

考えることそのものではないからです。

考える場所を間違えること

が問題なのです。

打つ前には、

考えていい。

むしろ、

考えなければならない。

しかし、

打つ瞬間まで考え続ければ、

身体は実行に集中できません。

だから、

タイガーは

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