前回は、ハンター・メイハンが高校生に伝えている、
Compete――一打一打を競争する
という言葉について書きました。
前のショットを引きずらない。
未来の結果を考えない。
今、目の前にある一打に集中する。
では、その一打に入るために、プロは何をしているのでしょうか。
そこでメイハンが話していたのが、
タイガー・ウッズのプリショットルーティン
です。
一般的にプリショットルーティンというと、
毎回同じ場所に立つ。
同じ回数素振りをする。
同じタイミングでアドレスに入る。
そして、
同じ秒数で打つ。
そんなイメージがあると思います。
店長も、
「ルーティンとは、毎回同じことをするもの」
という説明を何度も聞いてきました。
しかし、
メイハンが実際にタイガーとプレーして感じていたものは、少し違いました。
メイハンは、
タイガーのプレーには素晴らしいcadence――間とリズムがあったと話しています。
ショットについて考えている時間は、
毎回同じではありません。
長く考えることもある。
キャディーと話し続けることもある。
状況によって、
必要なだけ時間を使う。
しかし、
クラブを手に取った瞬間からは速い。
もう打つ準備ができているのです。
メイハンは、
「ショットにかかる時間は毎回同じではなかった」
と明確に話しています。
そして、
タイガーは自分が納得できるところまで、
思考に必要なだけ時間を使っていたと言います。
ここは、
プリショットルーティンについて考えるうえで、
かなり重要なところだと思います。
毎回、
同じ秒数で打つことがルーティンなのではない。
むしろ、
考えるべきことを考え終えてから、同じリズムでショットへ入る。
これがタイガーのルーティンだったのではないでしょうか。
逆にメイハンは、
一部の選手について、
ルーティンに入るのが早すぎる
と話しています。
まだ判断が終わっていないのにクラブを持つ。
そこから、
決められた手順を始めてしまう。
そして、
「いつものルーティンをやること」
そのものが目的になってしまう。
メイハンには、
そうした選手が、
どこかのステップを飛ばしているように見えるそうです。
本来、
ルーティンには流れがあり、
リズムがなければならない。
そして、そのリズムが、
スイングへ入り、
歩き方へ入り、
プレー全体へつながっていく。
ここで店長は、
ゴルフスイングの話と非常によく似ていると思いました。
第2話、第3話で、
形を目的にしてはいけない
という話をしました。
掌屈する。
オンプレーンにする。
トップをコンパクトにする。
本来は何かを実現するための手段だったものが、
いつの間にか、
その形を作ること自体が目的になる。
プリショットルーティンも同じなのではないでしょうか。
毎回3回素振りをする。
後ろからラインを見る。
右足からアドレスへ入る。
それ自体に意味があるのではありません。
本来の目的は、
その一打を打つ準備を完了させること。
です。
にもかかわらず、
「ルーティンは毎回同じでなければならない」
という言葉だけが独り歩きすると、
ゴルファーは、
考える前にルーティンへ入るようになります。
そして、
ルーティンの途中でまだ迷っている。
クラブを持っているのに、
風を気にしている。
アドレスへ入っているのに、
番手が本当に正しいのか考えている。
構えてから、
「右へ行ったらどうしよう」
と考え始める。
それでは、
身体はすでに打つ準備に入っているのに、
頭だけがまだショットを決めていないことになります。
タイガーは逆だった。
考える時間と、打つ時間を分けていた。
決まるまでは、
いくらでも考える。
しかし、
決まったら速い。
店長は、
ここが非常に重要だと思います。
メイハンは、このことをアメリカンフットボールのランニングバックに例えています。
優れたランニングバックは、
ラインの後ろで、
走る穴が開くまで待つ。
まだ開いていない穴へ、
無理に突っ込んではいかない。
そして、
穴が開いた瞬間に行く。
ゴルフも同じです。
風が決まっていない。
番手も決まっていない。
狙いも決まっていない。
それなのに、
「自分はプレーが速いから」
と打つ必要はありません。
待つべきときには待つ。
そして、
行くと決めたら行く。
この話のすぐあとに、
ローリー・マキロイのマスターズ12番の話が出てきます。
ローリーは2009年にトム・ワトソンとオーガスタで練習ラウンドをしたとき、
12番で、
「自分が想定している風を感じるまでは打つな」
という趣旨の助言を受けたと語っています。
そしてPodcastでは、
その教えを思い出して風を待ち、
7フィートにつけてバーディーを取った場面が紹介されています。
ローリーは、もともとプレーの速い選手です。
リズムに乗れば、
どんどん打っていきたい選手でしょう。
しかし、
必要な風が来ていない。
だから待つ。
これは、
スロープレーではありません。
ショットの条件が整うのを待っている
のです。
そして、
条件が整えば、
いつものリズムで打つ。
ここまで考えると、
プリショットルーティンとは、
決められた動作を繰り返すことではなく、
「決断」と「実行」を分ける仕組み
なのではないでしょうか。
決断するまでは、
状況を観察する。
風を見る。
ライを見る。
距離を見る。
自分の状態を見る。
ショットを決める。
そこまでは時間が変わっていい。
しかし、
決断した後は、
迷わない。
クラブを持ち、
ターゲットを見て、
打つ。
ルーティンとは、時間を一定にすることではなく、迷いをショットへ持ち込まないための仕組み。
店長には、
メイハンの話がそう聞こえます。
そして、
これは前回の、
Compete
にもつながります。
今の一打を競争するためには、
その一打を打つ前に、
やるべき判断を終えておかなければならない。
打つ瞬間になって、
過去を考えない。
未来を考えない。
技術を考えない。
もう決めた一打を打つだけ。
タイガー・ウッズの強さは、
スイングだけではありません。
メイハンが見ていたのは、
その一打に入っていくまでの、
「間」と「リズム」
だったのです。
そして、この話は、
ゴルフスイングそのものにもつながってくるように思います。
考えることと、
動くこと。
この二つを同時にやろうとすると、
人間の動きはどうなるのでしょうか。
次回は、
「スイング中に考える」ということ
について考えてみたいと思います。
