前回は、
考えるときは考える。
打つときは打つ。
という話をしました。
ハンター・メイハンがタイガー・ウッズについて語った、
必要なだけ考える。しかしクラブを持ったら速い。
という話。
そしてVISION54の、
Think BoxとPlay Box。
さらに、
一度に二つのことへ意識を集中させない、
というメンタルマネジメントの考え方。
これらは、
ゴルフを教えるうえでも非常に重要な考え方だと思います。
では、
実際に選手を指導するとき、
コーチはどこまで要求していいのでしょうか。
これは、
ジュニアや高校生を教えていると、
必ず出てくる問題です。
厳しく言いすぎてはいけない。
楽しくゴルフをしてほしい。
まだ子供なのだから、
プロと同じことを求めてはいけない。
そう考えるのは自然です。
ハンター・メイハンも、
高校生のチームを指導し始めたとき、
同じようなことを考えていたようです。
高校生に、
どこまで求めていいのか。
どのくらいの基準を設定していいのか。
そのとき、
メイハンに助言したのが、
元NFLの名選手で、
その後高校のフットボールチームを指導していたジェイソン・ウィッテンでした。
メイハンは、
高校生を指導する経験がなかったので、
ウィッテンに、
「高校生には何を期待すればいいのか」
という話を聞きに行ったそうです。
そこでウィッテンから言われたのが、
「彼らに対する期待値は、自分が思っているよりずっと高くしていい」
ということでした。
これは、
かなり面白い話だと思います。
コーチを始めると、
まず選手に好かれたい。
厳しすぎると思われたくない。
「高校生なんだから、このくらいでいい」
と考えてしまう。
メイハン自身も、
最初はそう考えていたと話しています。
しかしウィッテンは、
構造と基準を持つことは、子供にとって良いことだ
と教えます。
年齢に関係なく、
レベルに関係なく、
チームとして何を大切にするのか。
どこまでやるのか。
その基準を明確にする。
そして、
「私たちは、自分たちができる最高のものを目指す」
と要求していい。
メイハンは、
そのことについて、
コーチは謝る必要がないと話しています。
例えば、
練習へ来る。
そこで、
「今日は何となくボールを打って終わり」
ではない。
練習へ来たなら、
練習する準備をして来る。
それを高校生に求めることは、
決して無理な要求ではない。
メイハンは、
そう考えています。
店長は、
ここで非常に大切なのは、
要求を高くすることと、形を押しつけることは違う
ということだと思います。
このシリーズの最初で、
メイハンは、
「自分が本当に得意なものを見つけ、それを誰にも触らせるな」
と話していました。
これは、
「好きなようにやればいい」
という意味ではありません。
また、
「何も直さなくていい」
という意味でもありません。
その選手の個性やメカニズムは守る。
しかし、
取り組む姿勢。
準備。
判断。
練習の質。
一打一打への集中。
こうした部分には、
高い基準を要求する。
この二つは、
まったく矛盾しません。
むしろ、
店長には、
ここがメイハンのコーチングの核心のように見えます。
そして店長は、
スインガーのスイングについては、
使われる基本的な機能そのものには、ある程度決まったものがある
と考えています。
人間の身体は、
骨と関節によって構成されたリンク機構です。
それぞれの関節には、
構造上、
動きやすい方向があります。
つまり、
身体をどのように使ってクラブを動かすのかという基本的な機構は、
何でも自由に作れるわけではありません。
しかし、
だからといって、
全員のスイングが同じ形になるわけでもありません。
腕の長さ。
脚の長さ。
胴体の長さ。
肩幅。
骨盤の形。
そして、
それぞれの関節が向いている方向。
こうしたものは、
ゴルファーによって違います。
同じ機能を使っていても、
外から見える形は違って当然なのです。
メイハンが、
そこまで機構として考えているのかは分かりません。
しかし、
店長には、
彼が話している、
「機能しているものには触るな」
という考え方と、
非常によく重なって見えます。
正しい機能を使わせることと、
全員を同じ形にすることは、
まったく別の話です。
だから、
無理に形を追いかける必要はありません。
スイングの形を統一する必要はない。
しかし、取り組む基準は高くできる。
例えば、
選手Aは、
大きく身体を回転させるスイング。
選手Bは、
腕を強く使うスイング。
選手Cは、
シェフラーのように足が大きく動く。
その形を、
全員同じにする必要はありません。
しかし、
練習へ来たら準備する。
自分の課題を理解する。
一球ずつ目的を持って打つ。
失敗したら、
次の一打へ戻る。
こうした部分は、
全員に要求できます。
つまり、
個性は自由でも、基準まで曖昧にする必要はない。
ということです。
そして、
メイハンはもう一つ重要なことを話しています。
それは、
全員に同じように要求するわけではない
ということです。
メイハンは、
「すべての子供は違う」
と話しています。
ある選手には、
かなり強く言える。
しかし、
別の選手には、
同じ強さでは言えない。
だから、
選手によって押し方を変えなければならない。
ここも重要です。
基準は同じでも、
そこへ連れていく方法は同じではない。
のです。
例えば、
「練習では一球ずつ目的を持つ」
という基準を設定したとします。
ある選手には、
「もっと考えてから打ちなさい」
と言えばいいかもしれません。
しかし別の選手は、
考えすぎて動けなくなるかもしれない。
その選手には、
「決めたらすぐ打ちなさい」
と教えたほうがいい。
目的は同じです。
しかし、
伝え方は逆になります。
これは、
ゴルフスイングのフィッティングとよく似ています。
ゴールは、
良いショットを打つこと。
しかし、
そこへ行くためのクラブも、
スイングも、
考え方も、
人によって違います。
だから、
「この形にしなさい」
ではなく、
「この選手には何が必要なのか」
を見なければなりません。
そして、
メイハンは、
細かい部分をきちんとすることも非常に重要だと話しています。
小さなことを曖昧にしない。
練習の準備。
行動。
一打一打への取り組み。
そうした細部を積み重ねる。
これは第7話で出てきた、
Compete
にもつながります。
Competeとは、
気合を入れることではありません。
メイハンの言葉を追っていくと、
むしろ、
自分でコントロールできる小さなことを、毎回きちんとやること
に近い。
店長にはそう見えます。
そして面白いのは、
メイハン自身も、
「自分はもっと上手くやらなければならない」
と話していることです。
選手にだけ高い基準を求めるのではない。
コーチ自身も、
準備してくる。
細かい部分を見る。
その選手に合った伝え方を考える。
メイハンは、
選手が仕事をする準備をして来て、
コーチも仕事をする準備をして来れば、
その空気はチーム全体へ広がると話しています。
ここにも、
メイハンらしさがあります。
コーチが、
「もっとやれ」
と言うだけではない。
自分も同じように準備する。
そして、
高い基準を共有する。
だから、
選手も、
ただ怒られているのではなく、
「このチームは本気で上手くなろうとしている」
と感じる。
そうすると、
練習にも目的が生まれます。
そして、
結果が出始めると、
さらにゴルフが面白くなる。
もっと上手くなりたい。
もっと競争したい。
そういう選手が増えていく。
メイハンは、
そこまでを含めてコーチングと考えているようです。
ここまでシリーズを追ってくると、
最初の言葉と、
今回の話がつながります。
「自分の得意なものを見つけ、それを守れ」
そして、
「思っているより高いことを要求していい」
一見、
反対に見える言葉です。
しかし、
実際には違います。
守るべきなのは、
その選手が持っている機能。
要求するべきなのは、
その機能を最大限に生かすための取り組み。
なのだと思います。
だから、
スイングの形は押しつけない。
しかし、
準備は求める。
判断は求める。
集中は求める。
そして、
一打一打を競争することを求める。
個性を尊重することと、要求水準を下げることは同じではない。
店長には、
メイハンが高校生を指導して学んだことの一つが、
ここにあるように思います。
そして、
これはジュニアを教えるときにも、
非常に重要な考え方なのではないでしょうか。
