ゴルフトレンドウォッチャーでゴルフライターのコヤマカズヒロ氏が朱莉プロのクラブ変更について動画にしていましたので、覗いてみることにしました。 https://youtube.com/watch?v=NcyBCvLmpZ4&si=hNVOtq3KMO_C2kqG
朱莉プロのクラブ変更の理由や何故そうしたのかを小山氏の視点で解説されています。 店長は極秘ルートで(嘘です。営業さんに聞けば教えていただけます。)ツアーレップからのデータを手に入れて検証してみたいと思います。以下が朱里プロのクラブスペックです。 ◆Shuri Sakuma – Club Spec 1W: G440 LST (9 / +1.5° position), N.S. Regio Formura MB+ Proto S55(No Tip), 45.0inch, D0 3W: G430 MAX (+1° position), N.S. Regio Formura MB+ Proto S55(No Tip), 43.0inch, D0 7w: G430 (Flat position), N.S. Regio Formura MB+ Proto S65 (Tip -0.5”), 41.0inch, D0 5H: G430 (Flat position), N.S.MODUS HYBRID GOST HL(No Tip), 38.75inch, C9+ Iron: i240 (#4), N.S.MODUS HYBRID GOST HL, Lie:Green,Loft:24°, Length:-1/4inch, D0 Iron: Blueprint T (#6-#PW), N.S.PROTO STL – Stiff, Lie:Red, Length:-1/4inch, D0ALL Wedge: s259 Chrome (50S), N.S.PROTO, Length:35.0inch, Lie:Red, Loft:48° , D0 Wedge: s259 Chrome (54S), N.S.PROTO, Length:34.75inch, Lie:Red, Loft:53° , D0 Wedge: s259 Chrome (58E), N.S.Modus³105 Wedge, Length:34.5inch, Lie:Red, Loft:57° , D0 Putter: Scottsdale B63, Lengh:32inch, Lie:21deg/Loft:3.0deg このように細かいデータがあればなるほどと思えるんですが、ヘッドだけのデータでは推測部分が多くなります。
いよいよ最終回のウェッジです。
コヤマ氏は、佐久間朱莉プロが昨年まで使用していたS159から、新しいS259へ変更したことを紹介されています。
現在のツアーレップから取り寄せたスペックは、
s259 Chrome 50S 実ロフト48°
s259 Chrome 54S 実ロフト53°
s259 Chrome 58E 実ロフト57°
となっています。
コヤマ氏は動画の中で、昨年まで使っていた58Hから58Eへ変更した点に注目されています。
昨年のHグラインドについては、フェースを開いて使いやすく、抜けも良かったという佐久間プロ自身の話を紹介した上で、今年のEグラインドについて、
「オフセットもちょっとありますし、かなり独特」
「EYE2のようなソール」
「バンカーなど難しい状況で大きなミスをしにくくするためではないか」
という見方をされています。
EグラインドがEYE2ソールで、バンカーに強いという説明そのものは間違っていません。
ただ、ここで一つ注意したいことがあります。
S159のEグラインドと、S259のEグラインドは同じものではありません。
コヤマ氏が話されている「独特なヘッド形状」と「強いオフセット」という特徴は、どちらかというと前作S159のEグラインドの特徴です。
PINGのS159では、Eグラインドは明確に、
「オフセットがほしい」
プレーヤー向けとして紹介されていました。
実際、PING USの公表スペックを見ると、S159の58°Eグラインドのオフセットは0.06インチ。
同じ58°のHグラインドは0.02インチです。
つまりS159では、Eグラインドだけ明確にオフセット量が大きかったことが分かります。
ところがS259では事情が変わります。
PINGはS259でヘッド形状そのものを見直しています。
細くしたホーゼル、削ったリーディングエッジ、ネックからフェースにつながる部分の厚みの変更などによって、アドレスしたときにスクエアに構えやすい、すっきりした形状へ変更されています。
そして非常に興味深いのがオフセットです。
PING USのS259の公表値では、
58S 0.02インチ
58W 0.02インチ
58E 0.02インチ
58H 0.02インチ
58T 0.02インチ
となっています。
つまり、S259の58Eは、S159の58Eにあった0.06インチという大きなオフセットではありません。
少なくとも公表設計値では、他の58°グラインドと同じ0.02インチです。
ここは今回のウェッジを考える上で、かなり大きなポイントだと思います。
S159のEグラインドを知っている人ほど、
「E=独特な顔で、かなりオフセットがあるEYE2ウェッジ」
という印象を持っていると思います。
店長もそうでした。
しかしS259では、EYE2ソールの機能を残しながら、ヘッド形状はかなり現代的に整理されています。
ですから佐久間プロの、
S159 58H → S259 58E
という変更を、
「操作性の高いHから、独特なオフセットの強いEYE2型へ変更した」
と考えると、少し実際とは違って見えてしまいます。
S259のEは、前作S159のEとは別物として考えた方がよさそうです。
もちろん、Eグラインドの根本にあるEYE2ソールの考え方は残っています。
PING自身もS259のEグラインドを、
「バンカーから楽に脱出可能」
と位置づけています。
ですからコヤマ氏が、
「厳しいライや難しいバンカーで、大きなミスをしないためではないか」
と考えた部分は、十分に理解できます。
ただし、その理由を「独特なヘッド形状や強いオフセット」に求めるのではなく、
S259で再設計されたEYE2ソールそのものの機能
に求めた方が、今回のクラブには合っていると思います。
そして、もう一つ見逃せないのがロフトです。
コヤマ氏は、
50°・54°・58°
というロフト構成は昨年と変わっていない、と説明されています。
確かにヘッドに刻印されている数字は、
50
54
58
です。
しかしツアーレップの実スペックは、
48°
53°
57°
です。
つまり佐久間プロのウェッジを見る場合も、前回のアイアンと同じで、
ソールに刻印された数字だけを見てはいけない
ということになります。
完成したクラブとしてのロフトピッチは、
48° → 53° → 57°
です。
5°差、4°差。
しかも、
50Sを48°へ立て、
54Sを53°へ立て、
58Eを57°へ立てています。
つまり佐久間プロは、新しいS259へモデルチェンジしただけではありません。
3本のウェッジを自分が必要とするロフトに作り直している。
ここは非常に重要だと思います。
そして一番下の57°だけ、SではなくEグラインド。
つまり、
48S
↓
53S
↓
57E
という構成です。
48°と53°は、比較的スクエアに使いやすいSグラインド。
そして最もロフトのある57°だけ、EYE2ソールのEグラインド。
こう見ると、58Eだけがバッグの中で特殊な役割を与えられていることが分かります。
普段のアプローチをすべて57E一本で行うわけではありません。
50Sも54Sも使う。
つまり57Eは、
通常の距離を打ち分けるためだけのウェッジではなく、難しいライやバンカーなど、他のウェッジでは対応しにくい状況を担当するクラブ
と考えることができます。
その意味では、コヤマ氏の、
「厳しい状況で大きなミスをしないためではないか」
という見方は、かなり納得できます。
ただし、そこに至る理由については、
S159のEグラインドの強いオフセットや独特な顔ではなく、S259で再設計されたEYE2ソールの機能
として考えた方がよいでしょう。
今回も、アイアンと同じことが起きています。
50と書いてあるから50°ではない。
58と書いてあるから58°でもない。
Eと書いてあるから、前作S159のEと同じでもない。
佐久間プロのクラブセッティングを見ていると、
モデル名、番手、刻印をそのまま読むだけでは、本当のクラブは見えてこない
ということがよく分かります。
実際のロフトを確認し、
世代ごとのヘッド形状の違いを確認し、
グラインドがどのように変化したのかを見る。
そうすると今回のウェッジ変更は、
「HからEというやさしいソールへ替えた」
という単純な話ではなく、
S259という新しいヘッドでロフト構成そのものを48°・53°・57°に作り直し、その中で最も難しい状況を担当する57°に、新しく設計されたEグラインドを与えた
と考えた方が、このセッティングの実像に近いのではないでしょうか。
ここまで佐久間朱莉プロのクラブを見てくると、改めて「カスタムとは何か」を考えさせられます。
佐久間プロのクラブには、ロフトを大きく動かしたり、ソールを削ったり、シャフト長を細かく調整したりと、ツアーバンだからこそ可能なカスタムが数多く施されています。
もちろん、一般のお客様がまったく同じことをする必要はありません。
しかし、考え方そのものは同じです。
PINGのクラブは、フィッティングを行い、その結果に基づいてカスタムビルドされ、お客様に届けられることを前提にしたクラブです。
つまり、
標準仕様のクラブにゴルファーが合わせるのではなく、ゴルファーに合わせてクラブを作る。
これがPINGのフィッティングの基本にある考え方です。
そのために重要になるのが、フィッターの役割です。
単に、
「球が右に行くからアップライトにする」
「球が低いからロフトを増やす」
という結果だけを見るのでは足りません。
なぜ右に出るのか。
なぜその高さになるのか。
なぜそのクラブだけ振りにくいのか。
お客様のスイングを見て、その動きがなぜ起きているのかを読み取る力が試されます。
ここを間違えると、症状だけをクラブで消すことになり、別のミスを生み出すこともあります。
逆に、動きの理由まで理解できれば、
ロフト、ライ角、長さ、シャフト、バランスといった基本的なカスタムだけでも、クラブの性格は大きく変えることができます。
さらに現在のPINGには、ホーゼルポジションやウェイトポジションの変更によって、完成後にもクラブの挙動を細かく調整できる仕組みがあります。
そして、ここが面白いところです。
クラブの設定を変えることで、スイングそのものが変わることがあります。
昨日も、
「少し左に出るので見てほしい」
というお客様がいらっしゃいました。
確認すると、ロフトは標準ポジション、ウェイトはフェードポジションでした。
そこでまず、弾道だけを見るのではなく、お客様のスイングを確認しました。
球の高さは低い。
スピンの入り方を見ると、少しチーピン気味。
つまり、単純に「左に出るからもっとフェード側へ」という話ではありません。
店長が取った方法は、
ロフトをSmall+へ変更。
そして、
ウェイトポジションはフェードから標準へ戻す。
という調整でした。
普通に考えれば、
「左に出るのに、なぜウェイトを標準に戻すのか」
と思われるかもしれません。
ところが結果は逆でした。
弾道は高くなり、
ボールは強く前へ伸びていく。
左への嫌な動きも減りました。
では、何をしたのでしょうか。
店長が変えたのは、単にロフトとウェイトではありません。
ホーゼルポジションとウェイトポジションを変えることで、お客様のクラブの使い方、つまりスイングそのものを変えたのです。
フェードポジションだから左に行かない。
ロフトを増やしたから球が上がる。
そういう単純な話ではありません。
クラブの設定を変えると、
構え方が変わる。
フェースの見え方が変わる。
ヘッドの感じ方が変わる。
その結果、ゴルファーの動きも変わります。
だからフィッティングでは、
クラブをどう動かすかではなく、クラブを変えたときに人がどう動くか
を見る必要があります。
佐久間プロのセッティングも同じです。
7Wは標準より短くしてFlatにする。
4Iは24°までロフトを寝かせ、ハイブリッド用シャフトを入れ、リーディングエッジまで削る。
ウェッジも、50・54・58という刻印のまま使うのではなく、実際には48・53・57°に作り替える。
つまり、
番手やモデル名に自分を合わせるのではなく、自分が必要とする弾道にクラブを合わせている。
ということです。
必要なのは、
この距離を、どの高さで、どの方向に打ちたいのか。
そして、
そのためにクラブをどう作るのか。
ということです。
佐久間プロのようなツアーバンでの加工は特別なものですが、フィッティングによって「自分に必要なクラブを作る」という本質は、一般のお客様でも同じです。
カスタムというと、特別なシャフトや珍しい仕様を選ぶことだと思われがちですが、本当の価値はそこではありません。
自分のスイングを無理にクラブへ合わせるのではなく、クラブを変えることで、その人が自然に良い動きをしやすくする。
それが、カスタムのもう一つの価値だと思います。
その結果として、
振りやすい。
高さが合う。
出球が揃う。
ミスの幅が小さくなる。
という、自分にとっての「やさしいクラブ」が出来上がります。
やさしいクラブとは、万人にやさしいクラブではありません。
自分に合っているから、やさしい。
そして時には、
クラブを変えることで、スイングまで変わる。
佐久間プロのセッティングも、昨日のお客様のフィッティングも、そこは同じなのだと思います。
