ウインダム・クラークはなぜ全米オープンで強いのか 第一話 全米オープンはなぜパッティングが難しいのか

ウインダム・クラークの優勝の余韻を借りて、店長が、なぜクラーク推しだったのかを追記いたします。

店長がクラークに注目していた理由は、実は、SCOTTSDALE TEC ALLYBLUE ONSET CBだけではなく、単に飛ぶからでも、体が大きいからでもありません。

もちろん、彼のショット力は大きな武器です。
しかし、全米オープンという大会で本当に勝敗を分けるのは、ただ飛ばす力ではありません。

歴史ある名門コースで行われることの多い全米オープンでは、フェアウェイを外せばラフに捕まり、グリーンを外せば簡単には寄らず、グリーンに乗っても安心できません。

速く、硬く、傾斜の強いグリーンでは、強く打つパッティングよりも、弱く、正確に、ボールへエネルギーを与える技術が求められます。

ここで重要になるのが、クラークのパター選びです。

彼が使ってきたのは、いわゆる普通の長さ・普通の重さのパターではありません。
中尺で、重量感があり、ストローク中の余計な操作を抑えやすいパターです。

店長がクラークを推していた理由は、まさにここにあります。

全米オープンのようなコースでは、豪快なショットだけでは勝ち切れません。
最後に必要になるのは、弱いタッチでもフェースを安定させ、狙った方向へボールを正しく転がす能力です。

クラークのパター選びには、その大会特性に対する合理性が見えます。

つまり、クラークはただ調子が良かったから勝ったのではなく、全米オープンで勝つために必要な要素を、道具の面でも持っていた選手だったのではないか。

今回はその視点から、

ウインダム・クラークはなぜ全米オープンで強いのか

を考えてみたいと思います。

第一話は、全米オープンはなぜパッティングが難しいのか

です。

全米オープンという大会は、他のメジャーとは少し性格が違います。

もちろん、マスターズにも独特の難しさがあります。
全英オープンには風とリンクスの難しさがあります。
PGA選手権には、現代的な総合力を問う難しさがあります。

しかし、全米オープンの難しさは、もっと我慢比べに近いものです。

簡単にバーディーを取らせない。
少しでもズレると、すぐにボギーになる。
よいショットを打ったつもりでも、次の一打が楽にならない。

そういう大会です。

そして、その難しさを作っている大きな要素が、開催コースにあります。

全米オープンは、歴史ある名門コースで行われることが多い大会です。

Oakmont。
Shinnecock Hills。
Winged Foot。
Merion。
Pinehurst No.2。
Pebble Beach。
Los Angeles Country Club。

名前を並べるだけでも、アメリカゴルフの歴史そのものと言ってよいコースが多くあります。

これらのコースは、ただ距離が長いだけではありません。

むしろ、現代の大型造成コースのように、広いグリーンでボールを受け止める設計とは違います。

グリーン面が小さい。
傾斜が強い。
グリーン周りの逃げ場が少ない。
ピンの近くに外したつもりが、実は一番難しい場所に止まっている。

そういう設計が多いのです。

つまり全米オープンでは、ショットの精度だけでは足りません。

フェアウェイに置く。
グリーンに乗せる。
外したら寄せる。
そして、最後にパットを沈める。

この一つ一つの工程で、少しずつ選手にストレスがかかります。

特に厄介なのが、グリーン上です。

全米オープンのグリーンは、速く、硬く、簡単には止まりません。

しかも、ただ速いだけではありません。

速いグリーンなら、弱く打てばよい。
そう考えるのは簡単です。

しかし、実際にはそう単純ではありません。

弱く打つということは、ボールに与えるエネルギーが小さいということです。

エネルギーが小さいということは、フェースの向き、打点、ストロークの緩み、わずかな手首の動きが、そのまま結果に出やすいということです。

強く打つパットなら、多少のズレを勢いでごまかせることがあります。

しかし、速いグリーンで弱く打つパットは、ごまかしが効きません。

フェースがほんの少し開けば、ボールは右へ出ます。
ほんの少し閉じれば、左へ出ます。
インパクトで緩めば、届きません。
少し押し出せば、返しのパットが残ります。

つまり、全米オープンのパッティングで難しいのは、単に距離感を合わせることではありません。

弱いタッチの中で、ボールの進行方向へ正しくエネルギーを与えること。

これが難しいのです。

店長はここが、全米オープンのパッティングの本質だと思っています。

マスターズのパッティングは、大きな傾斜をどう読むか、どのラインに乗せるか、どこで止めるかという距離感の勝負という面が強くなります。

一方、全米オープンでは、もっと小さなズレが命取りになります。

入れにいったパットが少し強ければ、返しが怖い。
寄せにいったパットが少し弱ければ、次もまだ神経を使う。
カップの近くに止まっても、そこからが簡単ではない。

だから選手は、常に「どこまで攻めるか」と「どこで止めるか」の間で揺さぶられます。

この状況で必要になるのは、強く打つ勇気だけではありません。

むしろ必要なのは、弱く打ってもフェースを安定させる能力です。

小さなストロークでも、ボールへきちんとエネルギーを伝える能力です。

そして、狙った方向へ、余計な横ブレを入れずに転がす能力です。

ここに、ウインダム・クラークのパター選びを見る意味があります。

クラークは、全米オープンを力でねじ伏せた選手というより、全米オープンで必要になる「我慢のパッティング」に対して、非常に合理的な道具を選んでいた選手と見ることができます。

長めで、重く、ストローク中に余計な操作をしにくいパター。

これは、速いグリーンで強く打つための道具ではありません。

むしろ、弱く打つための道具です。

弱いタッチでもヘッドが暴れにくい。
弱いタッチでもフェースの向きが変わりにくい。
弱いタッチでも、ボールへ一定のエネルギーを与えやすい。

全米オープンのような大会では、この差が非常に大きくなります。

パターは、入れるための道具です。

しかし、全米オープンではもう一つの役割があります。

それは、外し方を小さくすることです。

大きくオーバーしない。
大きくショートしない。
ラインから大きく外さない。
次のパットを難しくしない。

この「外し方を小さくする」という考え方は、全米オープンでは非常に重要です。

そして、クラークの中尺・重量級パターには、その思想が見えます。

だから店長は、クラークの強さを単なる勢いや調子の良さだけでは見ていません。

全米オープンという大会が要求するパッティング。
その要求に対して、彼の道具選びが非常に合っていた。

ここに、クラーク推しだった理由があります。

次回は、クラークのパターそのものに少し踏み込みます。

2023年のOdyssey Jailbird。
そして、SCOTTSDALE TEC ALLYBLUE ONSET CB。

メーカーは違っても、そこに共通する思想は何か。

第二話では、

ウインダム・クラークはなぜ中尺・重量級パターを選んだのか

を考えてみたいと思います。

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