前回は、PINGのドライバー・フィッティングが、
まず縦方向を合わせる
次に左右方向を合わせる
という順番で行われていることを紹介しました。
縦方向では、ボール初速、打ち出し角、スピン量を整えます。
その後、左右方向では、打ち出し方向、曲がり幅、スピン軸、左右の散らばりを調整します。
では、左右方向のフィッティングでは、どのような弾道を目指せばよいのでしょうか。
多くのゴルファーは、
きれいなドローを打ちたい
安定したフェードを打ちたい
真っすぐな球を打ちたい
と考えます。
しかし、PINGは少し違う方向から考えています。
打ちたい球筋を作るのではなく、打ちたくないミスを消す。
という考え方です。
上級者の方ほど、意図しないボールを打ちたくないという事がはっきりしています。一方、アベレージな方は飛んで曲がらないが求める弾道となります。
Podcastの会話
16:14~18:40
シェーン:
私は最近、ドライバーのロフトを少し増やしました。
私は左打ちですが、右へのミスに悩んでいました。
もともと私はスピン量の多いプレーヤーなので、ボールを右から左へ動かすために、スピンを使うことに慣れていました。
しかし、現在のドライバーではスピン量が減り、以前ほどボールが曲がらなくなっています。
そこでLSTのロフトを増やし、以前より真っすぐ構えるようにしました。
少しロフトを増やしただけで、フェアウェイを捉えやすくなりました。しかも、飛距離はほとんど失っていません。
マーティ:
その右ミスは、左打ちのあなたにとって、右へ曲がっていく球だったのですか。
それとも、右へ出て、そのまま戻ってこない球だったのでしょうか。
シェーン:
右へ出て、そのまま戻ってこない球です。
15年ほど前なら、芯で打った球でも、スピンによって左へ戻っていました。
しかしG430からG440へ進む中で、サイドスピンがかなり減ったように感じます。
今ではフェアウェイ右側を狙って打ちます。
少しカットしてもよいですし、曲がらなくてもフェアウェイに残ります。
マーティ:
それは非常に面白い例です。
PGAツアーには、軽いカットを基本にしながら、真っすぐ飛んでも問題ないという選手が多くいます。
そのような球筋には、かなり大きな安心感があります。
ドライバー・フィッティングでは、
「特定の球筋を作る」
という考え方がよく使われます。
しかし私は、逆に考える方がよいと思っています。
「出したくないミスを消す」
ように、ドライバーをフィッティングするのです。
必ずしも一定量のフェードを打ちたいわけではなくても、
「右へのミスだけは消したい」
クラブ軌道が左を向き、フェースは軌道より右を向いている可能性があります。
ということがあります。
そのように考えると、フィッターにもゴルファーにも分かりやすくなります。
ただし、右へ出るだけなら許容できます。
シェーン:
そのとおりです。
私は右へ曲がる球を見たくありません。
これは、フィッティングそのものを大きく変えたというより、技術の進歩によって狙い方を変えられたということです。
店長の解説
この会話で重要なのは、
右へ飛ぶ球は、すべて同じミスではない
ということです。
シェーンは左打ちです。
そのため、右方向はドローやフック側になります。
しかし彼が嫌っていたのは、右へ出ること自体ではありません。
右へ出たあと、さらに右へ曲がっていく球です。
一方、右へ出て、そのまま真っすぐ飛ぶ球であれば、狙い方によって許容できます。
つまり、最終的な着弾地点だけを見て、
右へ行ったから失敗
と判断しているわけではありません。
- どこへ打ち出されたか
- そこからどちらへ曲がったか
- その球が想定の範囲内だったか
を分けて考えています。
これが、左右方向のフィッティングです。
打ち出し方向と曲がり方向は別のもの
ドライバーの弾道を見るとき、多くの人は最終的にボールが止まった場所だけを見ます。
しかし、同じ右側へ着弾した球でも、弾道の内容は違います。
たとえば右打ちの場合、
右へ出て、そのまま飛ぶ球
主にインパクト時のフェース向きが右を向いている可能性があります。
フェースとクラブ軌道の差が小さければ、大きく曲がらず、そのまま右へ飛びます。
真っすぐ出て、右へ曲がる球
打ち出し方向はおおむね合っていますが、フェースと軌道の関係によってスピン軸が右へ傾いています。
左へ出て、右へ曲がる球
同じ右ミスでも、原因は同じではありません。
したがって、
右へ行くから、つかまるドライバーにする
だけでは不十分です。
打ち出し方向を変える必要があるのか。
曲がり幅を減らす必要があるのか。
その両方を変える必要があるのか。
まず区別しなければなりません。
「理想のドロー」が必要とは限らない
ゴルフでは、ドローが飛ぶ球として好まれることがあります。
しかし、すべてのゴルファーがドローを打つ必要はありません。
ドローを作ろうとすると、
- フェースを閉じようとする
- クラブを内側から下ろそうとする
- 手を強く返そうとする
- 右を向いて構える
- ボールを必要以上に右へ置く
といった動きが生まれることがあります。
その結果、
ドローではなく、大きなフックが出る
こともあります。
本来、軽いフェードでフェアウェイを捉えられていたゴルファーが、「ドローの方が飛ぶ」という理由だけで球筋を変え、左右両方のミスを持つようになることもあります。
必要なのは、見た目の良い球筋ではありません。
コース上で、どのミスなら許容できるか
です。
一方向のミスに絞る
ツアープレーヤーの多くは、左右両方へ大きく曲がる状態を嫌います。
真っすぐ飛ぶことだけを求めているわけではありません。
たとえば、
- 真っすぐ、または軽いフェード
- 真っすぐ、または軽いドロー
というように、球筋の幅を一方向へまとめています。
右打ちのフェードヒッターであれば、
真っすぐならフェアウェイ中央
少し曲がればフェアウェイ右側
という狙い方ができます。
しかし、同じ構えから、
- 強いフェード
- 真っすぐ
- 強いドロー
のすべてが出ると、狙う場所がなくなります。
ゴルフで重要なのは、曲がらないことだけではありません。
どちらへ曲がる可能性があるのかを予測できること
です。
フィッティングでは、最悪の球を見る
弾道測定器を使ったフィッティングでは、一番飛んだ球に注目しがちです。
しかし、コースでスコアを崩すのは、多くの場合、一番良い球ではありません。
最も悪いミスです。
たとえば10球打ったときに、
- 8球はフェアウェイ幅
- 1球は少しラフ
- 1球はOB
というクラブと、
- 10球すべてがフェアウェイか浅いラフ
というクラブがあったとします。
最長飛距離が前者の方が5ヤード長くても、実戦では後者の方が良い可能性があります。
前者には、一打でゲームを崩す球が含まれているからです。
そのためフィッティングでは、
平均値を良くすること
と同時に、
最悪のミスをどこまで小さくできるか
を見る必要があります。
消すべきミスは、人によって違う
すべてのゴルファーが、同じミスを嫌うわけではありません。
左側にOBが多いコースをプレーする人
左へのミスを消す価値が大きくなります。
右側に池や谷が多いコースをプレーする人
右へのミスを抑える必要があります。
左へ曲がると急激に飛距離が落ちる人
左への曲がりを減らすことが、距離の安定にもつながります。
右へ出るが、ほとんど曲がらない人
打ち出し方向を少し修正するだけでよく、ヘッドを大きくつかまる仕様にする必要はないかもしれません。
左右両方へ曲がる人
まず、どちらか一方へミスをまとめる必要があります。
つまり、
最適な左右バイアス
は、その人のスイングだけで決まるわけではありません。
普段プレーするコース、ティーショットの狙い方、許容できるミスによっても変わります。
ヘッドモデルで、ミスの方向を決める
G440の各モデルには、それぞれ異なる左右特性があります。
G440 SFT
フェースが開いて届きやすく、右へのミスが多いゴルファーに適しています。
右へ曲がる球を減らし、よりスクエアに近い状態でフェースを届けることを助けます。
G440 K
高い慣性モーメントによって、打点がずれたときのヘッドの回転を抑えます。
CG Shifterによって、ドロー、ニュートラル、フェード方向へ調整できます。
G440 MAX
Kよりも少し高い打ち出しとスピンを作りながら、CG Shifterで左右方向を調整できます。
G440 LST
スピン量を抑えることを基本にしながら、CG Shifterによって左右特性を調整できます。
重要なのは、
モデルを選べば、球筋がすべて決まるわけではない
ということです。
モデルで基本的な弾道特性を決め、その後、ウェイト位置、スリーブ、クラブ長、ヘッド重量などで左右のミスを整えます。
LSTをドロー仕様にする理由
前話で紹介したジョン・ソルハイムの例は、この考え方をよく示しています。
彼はスピン量が多くなりやすいため、ヘッドにはLSTが必要です。
しかし、LSTの低スピン性能を使うだけでは、フェースのつかまりが足りない可能性があります。
そこで、
- CG Shifterをドロー位置へ動かす
- スイングウェイトを少し軽くする
- フェースを戻しやすくする
ことで、左右方向を調整しています。
これは、
低スピンにしたいからLST
つかまえたいからSFT
という単純な二者択一ではありません。
縦方向にはLSTが必要です。
左右方向には、ドロー方向の調整が必要です。
その二つを組み合わせています。
フィッティングとは、モデル名にゴルファーを当てはめる作業ではありません。
ゴルファーに必要な縦と横の条件を、一つのクラブに組み合わせる作業
です。
ロフトを増やして、右ミスを消す
シェーンの例では、ロフトを増やすことで右ミスを減らしています。
一般にロフトを増やすと、
- 打ち出し角が高くなる
- スピン量が増える可能性がある
- フェース角が相対的にクローズ方向へ変化する
- 構えたときのフェースの見え方が変わる
ことがあります。
シェーンは、ロフトを増やしたことで、以前より真っすぐ構えやすくなりました。
その結果、
無理に右から左へ曲げようとせず、右側を狙って、真っすぐか軽いカットで打つ
という狙い方ができるようになっています。
ここで重要なのは、ロフトを増やしてドローを強くしたわけではないことです。
自分が嫌う右への曲がりを消し、許容できる球だけを残しています。
現代のドライバーは曲がりが少ない
シェーンは、G430からG440へ進む中で、以前よりサイドスピンが減ったと感じています。
厳密には、ボールにはバックスピンとサイドスピンが別々に発生しているわけではありません。
回転軸が傾くことで、ボールが左右へ曲がります。
現代のドライバーでは、
- 高MOI化
- フェース設計の進歩
- 打点ずれに対するスピンの安定
- ゴルフボールの低スピン化
などによって、芯に近い打点での曲がりが小さくなっています。
その結果、以前なら戻ってきた球が、戻らずにそのまま飛ぶことがあります。
これは悪いことではありません。
しかし、ゴルファーが昔の曲がり幅を前提に狙っていると、想定と違う場所へ飛びます。
クラブが変われば、狙い方も変える必要があります。
曲がりを減らすことは、飛距離にもなる
Podcastでは、シェーンのような高ボールスピードのプレーヤーと、一般ゴルファーを分けて説明しています。
Podcastの会話
19:07~20:23
マーティ:
あなたのボール初速は170mph台後半で、時には180mphに届きます。
PGAツアーの平均か、それを少し上回る速度です。
その速度があれば、ある程度の曲がりを許容しながら、安心できる球筋と散らばりを、作ることができます。
一方、225~250ヤード程度を飛ばし、多くのフェアウェイを捉える一般ゴルファーも大勢います。
そのようなゴルファーには、スピン軸の傾きをできるだけ小さくします。
ボール初速がそれほど高くない場合、曲がりを減らすことは、飛距離を伸ばすための一つの方法になります。
したがって一般原則としては、曲がり幅をできるだけ小さくします。
現代のクラブ技術とゴルフボールも、それを助けています。
一般ゴルファーほど、曲がりによる損失が大きい
ヘッドスピードが速いゴルファーは、ボールが少し曲がっても、十分な初速とキャリーを残せます。
しかし、ボール初速がそれほど高くないゴルファーでは、曲がりが大きくなるほど、前へ進む距離を失いやすくなります。
たとえば、右へ大きく曲がる球では、
- スピン量が増える
- スピン軸が大きく傾く
- 最高到達点が高くなる
- 前方へのキャリーが減る
- 着弾後のランが減る
ことがあります。
この場合、単にヘッドスピードを上げようとするより、
曲がりを減らす
方が飛距離を伸ばせる可能性があります。
つまり、
真っすぐ飛ばすことは、方向性だけの問題ではない
ということです。
曲がりによって失っていたエネルギーを、前方への飛距離へ戻すことでもあります。
「真っすぐ」を狙いすぎない
曲がりを減らすことは重要です。
しかし、毎回完全なストレートボールを求める必要はありません。
ストレートボールは、フェース向きとクラブ軌道がほぼ一致したときに生まれます。
わずかな差によって、ドローにもフェードにもなります。
そのため、完全なストレートだけを目指すと、左右両方の球が出る可能性があります。
実戦では、
真っすぐ、または軽いフェード
真っすぐ、または軽いドロー
という範囲の方が、狙いやすくなります。
消すべきなのは、すべての曲がりではありません。
コースを外し、次のショットを難しくする曲がり
です。
フィッターが最初に聞くべきこと
左右方向のフィッティングを始める前に、フィッターはゴルファーへ、
どのミスを最も見たくありませんか。
と聞く必要があります。
答えは人によって違います。
- 左へ引っかける球
- 右へ大きく曲がる球
- 右へ出て戻らない球
- 左へ出てさらに左へ行く球
- 高く吹き上がりながら曲がる球
- 低く出て急激に曲がる球
その球を確認したうえで、
- モデル
- CG Shifter
- スリーブ
- クラブ長
- シャフト
- スイングウェイト
を使います。
何も聞かずに「ドローとフェードのどちらが好きですか」と尋ねるだけでは、十分ではありません。
好みの球筋と、実際に消すべきミスは同じとは限らないからです。
今回の結論
ドライバー・フィッティングの目的は、見た目の良い球筋を作ることではありません。
必要なのは、
コース上で最も大きな損失になるミスを消すこと
です。
ドローを打ちたいか。
フェードを打ちたいか。
その前に確認しなければならないことがあります。
- どこへ打ち出されるのか
- そこからどちらへ曲がるのか
- 左右のどちらが大きなミスになるのか
- どの球なら許容できるのか
- 最悪の一球は何か
です。
理想の球筋を一つ決めるより、
打ちたくない球を一つ消す
方が、コースでは狙い方が明確になります。
真っすぐか、軽いフェード。
真っすぐか、軽いドロー。
そのようにミスを一方向へまとめることができれば、ティーショットの安心感は大きくなります。
そして、ボール初速がそれほど高くない一般ゴルファーにとっては、曲がりを減らすことが、飛距離を増やすことにもつながります。
ドライバーは、一番きれいな一球を打つためのクラブではありません。
最も悪い一球によって、ゲームを壊さないためのクラブです。
次回は、Trajectory Tuning Sleeve、ロフト、ライ角、フェース角が、実際に何を変えているのかを見ていきます。
