USオープン2日目も、ウインダム・クラークが首位をキープしています。
ここまでくると、最近のクラークのパターの変遷を調べておかなければなりません。
現時点でのクラークのパター変遷は、次のように整理できます。
| 時期 | パター | 位置づけ |
|---|---|---|
| 2023年 全米オープン優勝時 | Odyssey O-Works Versa Jailbird系 | 38〜39インチ級のカウンターバランス系。Rickie Fowler型の流れ |
| 2024年〜2025年頃 | Odyssey Jailbird系を中心に試行錯誤 | 成功した形をベースにしつつ、安定感を探る時期 |
| 2025年後半〜2026年初め | L.A.B. DF3、Toulon Le Mans、Scotty Cameron Tour T-11などをテスト | ゼロトルク系・大型マレット系・別ブランドを広く試す |
| 2026年3月 THE PLAYERS頃 | Bettinardi Antidote SB1 | Whisper Rockのプロショップで見つけた通常長さ系のゼロトルクパター |
| 2026年3月 Houston Open | PING Scottsdale TEC Ally Blue Onset | まず標準長さに近い仕様で投入 |
| 2026年4月 RBC Heritage以降 | PING Scottsdale TEC Ally Blue Onset CB | 38インチ、17インチグリップ、重ヘッドのカウンターバランス仕様 |
| 2026年 CJ Cup Byron Nelson | PING Scottsdale TEC Ally Blue Onset CB | SG: Putting +12.573でPGAツアー記録、優勝 |
| 2026年 全米オープン2日目 | PING Scottsdale TEC Ally Blue Onset CB | 2日目終了時点で首位キープ |
こうして見ると、クラークはかなりパターを入れ替えています。
そのクラークが、使用期間3か月にも満たない段階で、しかもパターだけの契約をPINGと結んだ。
これはかなり驚きです。
しかもクラークは、2023年の全米オープンチャンピオンです。
メジャーチャンピオンが、バッグ全体ではなく、パターだけで契約する。
ここに今回の話の面白さがあります。
クラークのパター変遷を見ると、これは単なる新製品への乗り換えではありません。
2023年の全米オープンを勝った時は、Odyssey Jailbird系のカウンターバランス。
その後、L.A.B.、Toulon、Scotty Cameron、Bettinardi Antidote SB1などを試し、ゼロトルク系にも一度向かっています。
しかし、最終的に戻ってきたのは、38インチのカウンターバランスという考え方でした。
ただし、今回はOdyssey Jailbirdではありません。
PING Scottsdale TEC Ally Blue Onset CBです。
つまりクラークは、カウンターバランスの効果を一度知っている選手です。
そのうえで、PINGのOnset形状にたどり着いた、という見方ができます。
ここから先は、店長の推測です。
クラークが一度ゼロトルク系のパターを試しているのは、方向性をかなり重視していたからではないかと思います。
ゼロトルク系パターの大きな効用は、もちろんヘッドのトルクを抑えることです。
ただ、店長はそれ以上に、フェースの見え方が大きいと思っています。
シャフトがフェースにかぶりにくい。
フェース面が見えやすい。
構えたときに、打ち出し方向をイメージしやすい。
この視覚的な安心感は、パターでは非常に大きいと思います。
一方で、ゼロトルク系には、いわゆるトレイル効果はあまり期待できません。
ヘッドが後ろからついてきて、ストローク中に自然に安定する。
そういう感覚とは、少し違う方向のパターです。
ここで、PINGのOnsetが面白くなります。
PING Scottsdale TEC Ally Blue Onsetは、ゼロトルク系パターのように、シャフトがフェースにかぶりにくい見え方を持っています。

それでいて、完全なゼロトルク系とは違い、ヘッドにはトレイル効果もあります。
つまり、
フェースが見えやすい。
打ち出し方向を合わせやすい。
それでいて、ストローク中にヘッドが安定しやすい。
この組み合わせが、クラークの目に合ったのではないかと思います。
さらに重要なのが、カウンターバランスです。
おそらく練習では、PGAツアー選手ですから、通常長さのパターでも、私たちに比べれば遥かに安定したパフォーマンスを出せるはずです。
しかし、試合でプレッシャーがかかった時は別です。
入れたい距離。
外したくない距離。
ここで左手の回内動作が入りすぎると、フェース向きが変わりやすくなります。
カウンターバランスは、その手先の余計な動きを抑えやすい。
手元側に重さがあることで、ヘッドだけを急に返したり、フェースを合わせにいったりする動きが入りにくくなります。
だから最終的に、クラークは通常長さのAlly Blue Onsetではなく、38インチのカウンターバランス仕様に移行したのではないかと思います。
これは以前、PING Proving Grounds Podcast Ep.81を取り上げたブログでも紹介しました。(このシリーズをぜひ読んでくださいね。)
その回では、マーティ・ジャートソンたちが、ロングパター、ミッドレングス、アームロック、カウンターバランスといった「オルタナティブ系パター」について話しています。
そこで注目したいのが、4〜12フィートの“入れたい距離”でフェース向きの再現性に苦労しているなら、アームロック、リストロック、ミッドレングス、カウンターバランスは良い出発点になる、という話です。
さらに深掘りすると、ポイントは「手首の面内運動を抑える」という部分です。
パターで一番怖いのは、手先でフェースを合わせにいく動きです。
特にプレッシャーがかかった場面では、左手の回内・回外によってフェース向きが微妙に変わります。
もちろん、それは人間の自然な動きです。
しかし、入れたい距離では、その自然な動きがそのままミスの原因になることがあります。
そこで、ミッドレングスやカウンターバランスの意味が出てきます。
単に重いパターにするのではありません。
手元側の重さ、長めのグリップ、ヘッドとの重量配分によって、手首や前腕の余計な動きを入りにくくする。
その結果、肩や体幹を使ったストロークに近づけ、フェース向きの再現性を高める。
ここが、PINGらしいところだと思います。
PINGは、ただ「流行っているから中尺を出す」「カウンターバランスが流行っているから作る」というメーカーではありません。
長さ。
重さ。
重心位置。
シャフト軸。
フェースの見え方。
そして、ストローク中のトルク感。
それらを、フィッティングと機械工学の中で整理して製品に落とし込んでいるメーカーです。
だから、クラークのパター変遷はとても興味深いのです。
2023年の全米オープンを、Odyssey Jailbird系のカウンターバランスで勝った。
その後、ゼロトルク系を含めてさまざまなパターを試した。
そして最終的に、PING Scottsdale TEC Ally Blue Onset CBという、Onset形状とカウンターバランスを組み合わせたパターにたどり着いた。
これは、単なる新製品への乗り換えではありません。
クラークが一度知っていたカウンターバランスの安定感。
ゼロトルク系で求めたフェースの見え方。
そして、プレッシャー下でフェース向きを再現するための重さと長さ。
それらが、PING Scottsdale TEC Ally Blue Onset CBでひとつにまとまった。
そう見ると、今回のPINGとのパター契約は、かなり意味のある契約に見えてきます。
PING社の公式記事、
PING社、ウィンダム・クラーク選手とスコッツデール・テック パター契約を締結
にも、今回の契約までの経緯が紹介されています。
ぜひ、あわせてご覧になってください。
