今年のメモリアル・トーナメントが終了しました。
優勝は、プレーオフの末にJ.T.ポストン。PING契約選手のウィンダム・クラークも好調を維持し、3位タイに入りました。
最終日はプレーオフまでもつれる展開となりましたが、今年のメモリアル・トーナメントは、どこか例年ほどの盛り上がりを感じられなかったようにも思います。
メモリアル・トーナメントは、軍人や退役軍人、そして国のために犠牲となった人々へ敬意を示す大会でもあります。
世界各地で戦争が続き、多くの命が失われている現在、その現実が大会の空気にも影を落としていたのかもしれません。
しかし、理由はそれだけではないように思います。
大会を主催するジャック・ニクラスが開幕前に語った言葉も、現在のPGAツアーが抱えている問題を象徴していたのではないでしょうか。
彼の発言内容は、以下のようなものでした。
ニクラスの発言は、大きく二つの問題に分けることができます。
一つ目は、現在のPGAツアーの日程についてです。
ニクラスは、シグネチャーイベントをはじめとする重要大会が短期間に集中しすぎている現状について、「現在彼らが進めていることに、必ずしも賛成ではない」と懸念を示しました。
大きな大会が連続すれば、トップ選手はすべてに万全な状態で出場することができません。
選手には試合の合間に体と精神を回復させる時間が必要であり、自身も現役時代には、重要な試合と試合の間に休養を入れることで、再び最高の状態を作っていたと説明しています。
また、注目度の高い大会を短期間に集中させることで、それ以外の大会が埋没してしまうことにも懸念を示しました。
具体例として挙げたのが、コグニザント・クラシックです。
ペブルビーチ、ジェネシス招待、ベイヒル、ザ・プレーヤーズ選手権といった大きな大会の間に置かれれば、その大会が独自の存在感を示すことは難しくなります。
※コグニザント・クラシックは、フロリダ州のPGAナショナルで開催されるPGAツアーの大会です。
以前は「ホンダ・クラシック」の名称で知られ、現在も「ベア・トラップ」と呼ばれる難関ホールを持つ、歴史ある大会です。
ニクラスは、この大会が大きな大会の間に置かれることで注目を失っていると指摘しました。
高額賞金大会を増やし、トップ選手を一部の大会へ集めることで、PGAツアー全体が強くなるのではなく、むしろ大会ごとの個性や価値が失われるのではないか。
ニクラスは、そのような危機感を示しているように見えます。
そして、この問題について新CEOのブライアン・ロラップ氏や、コミッショナーのジェイ・モナハン氏と、直接話をしたいとも述べています。つまり、単なる感想ではなく、現在のPGAツアーの方向性に対する明確な異議と考えてよいでしょう。
もう一つは、ゴルフボールの飛距離制限、いわゆるロールバックについてです。
USGAとR&Aが進める新しいボール規制によって、アマチュアの飛距離低下は1~2ヤード、トッププロでも12~14ヤード程度にとどまると、ニクラスは見ています。
そして、この程度の変更では飛距離問題の本質的な解決にはならないとして、「タイタニック号からデッキチェアを投げ捨てるようなもの」と表現しました。
沈みかけた大型船から椅子を一つ投げ捨てても、船の行方は変わりません。
つまりニクラスは、ボールの飛距離を少し抑える方向そのものに反対しているのではなく、今回の規制では影響が小さすぎると考えているのです。
選手の飛距離が伸びるたびにコースを延長すれば、さらに広い土地が必要になります。
散水や芝の管理に必要な水、維持費、プレー時間も増え、歴史あるコースはプロ競技を開催できなくなっていきます。
ミュアフィールド・ビレッジも延長を重ねてきましたが、ニクラスは、これ以上伸ばすには周辺の道路まで買わなければならないと語っています。
飛距離の増大に合わせて、いつまでもコースを長くし続けることはできない。
しかし、ボールをわずかに飛ばなくするだけでも解決しない。
ニクラスの発言は、現在の飛距離問題が、用具だけではなく、コース、ツアー運営、試合の見せ方まで含む、より大きな問題であることを示しています。
※ゴルフダイジェストさんの記事はこちらです
次回以降、このニクラスの発言を起点に、現在のPGAツアーが抱える問題を少しずつ掘り下げていこうと思います。
