第3話 マッスルバックは、なぜボールを抑えやすいのか

前回、お客様から出てきた一言を紹介しました。

「抑えるのは容易です。」

今回のお客様は、以前マッスルバックを使用していた上級者です。

ボールを高く打つことも、低く抑えることもできる。

ところが、少し「やさしい」とされるハーフキャビティを使っていたときには、その持ち味を十分に生かせていなかったようです。

そしてBLUEPRINT Tに戻すと、再びそれが容易になった。

では、何が違ったのでしょうか。

今回は少し物理の話をしてみたいと思います。

「操作性が高い」をもう少し具体的に考える

マッスルバックは「操作性が高い」と昔から言われています。

しかし、

なぜ操作性が高いのでしょうか。

単にヘッドが小さいから。

それだけでは説明になりません。

そこで注目したいのが、クラブヘッドのシャフト軸まわりの質量分布です。

クラブヘッドの重量が同じでも、その質量が回転軸からどれだけ離れたところに配置されているかによって、回転のさせやすさは変わります。

回転軸から遠いところに質量が配置されるほど、軸まわりの慣性モーメントは大きくなります。

反対に、質量が軸に近いところへ集まれば、慣性モーメントは小さくなります。

ここでは分かりやすく、

「回転させようとしたときの抵抗」

と考えてみてください。

フェースターンには時間が必要

ダウンスイングを見ていると、ハーフウェイダウンからインパクトゾーンへ入っていくあたりで、クラブフェースは大きく向きを変えていきます。

いわゆるフェースターンです。

ここで二つのクラブに、同じ大きさのトルクを加えると仮定してみます。

回転運動では、

トルク = 慣性モーメント × 角加速度

という関係があります。

したがって、同じトルクなら、慣性モーメントが小さいほど角加速度は大きくなります。

つまり、同じ角度だけフェースをターンさせるのであれば、

シャフト軸まわりの慣性モーメントが小さいヘッドほど、必要な時間を短くできる

ということです。

ここまでは比較的単純な話です。

しかし、本当に重要なのはここからです。

フェースターンが速いことが重要なのではない

「それなら、小さいヘッドはフェースが速く返るから操作しやすいのか」

と思うかもしれません。

しかし、今回注目したいのはそこではありません。

フェースターンが速いこと自体が重要なのではありません。

必要なフェースターンを、より短い時間で完了できることが重要なのです。

なぜでしょう。

インパクトの瞬間は決まっています。

そこまでにフェースを必要な位置まで戻さなければなりません。

フェースターンに長い時間が必要なヘッドなら、インパクトに間に合わせるためには、その動きを早く始めなければなりません。

つまり、

リリースを早く始める必要があります。

反対に、必要なフェースターンを短時間で行えるのであれば、

リリースの開始を遅らせることができます。

この違いが重要なのではないかと考えています。

遅らせた時間で、何ができるのか

では、リリースを遅らせることのできた時間で、ゴルファーは何ができるのでしょうか。

ここに今回の話の核心があります。

手元を先へ進めることができます。

ただし、ここには重要な前提があります。

手元、つまりグリップ位置のプレーンを大きく変えないことです。

多くのゴルファーは、インパクトが近づくと手元を身体側へ引き寄せるような動きが入ります。

今回はそうではなく、グリップがそれまで通ってきたプレーンを大きく変えることなく、そのまま進んでいくスイングを考えます。

インパクトの前とインパクトの間でグリップの軌道が同じ軌道を通っていることが分かると思います。

フェースターンをまだ始めなくてもインパクトに間に合うのであれば、その時間だけグリップをさらに先へ運ぶことができます。

クラブヘッドを急いで手元に追いつかせる必要がありません。

すると、

手元が先行した状態を、より長く保つことができます。

ロフトを立てようとしているわけではない

ここでもう一つ重要なことがあります。

ゴルファーは、

「ロフトを立てよう」

としているわけではありません。

手元のプレーンを変えず、

リリースを急がず、

グリップをそのまま進めている。

その結果として、インパクトに近づくにつれてシャフトリーンが生まれます。

そして、

ダイナミックロフトが自然に小さくなります。

つまり、低いボールを打つために、インパクト直前でフェースを無理に立てているわけではありません。

その前の段階で、フェースターンを急ぐ必要がない。

だから手元を進める時間が残っている。

その結果として、ロフトが減っている。

この順番です。

「抑えるのは容易です」の意味

ここまで考えると、お客様の

「抑えるのは容易です」

という言葉の意味が少し違って見えてきます。

単に低い球を打つ技術を持っている、というだけではありません。

必要なところまで手元を運び、

必要なタイミングからリリースし、

インパクトで必要なダイナミックロフトを作る。

そうしたクラブの扱い方を身につけているゴルファーだと考えることができます。

そしてBLUEPRINT Tでは、その技術を使いやすかった。

一方でハーフキャビティでは、同じことをしようとしても、ヘッドの運動特性が違う。

もし必要なフェースターンにより長い時間が必要なら、リリースを早く始めなければインパクトに間に合いません。

そうなれば、手元を先へ進められる時間も短くなります。

結果として、

ダイナミックロフトを減らせる幅も小さくなる可能性があります。

これが今回、ハーフキャビティでは難しかったことが、マッスルバックでは容易になった理由の一つではないかと考えています。

「操作性」の正体

こう考えると、

「マッスルバックは操作性が高い」

という言葉も、少し違って見えてきます。

フェードやドローを打ち分けられる。

高い球や低い球を打ち分けられる。

もちろん、それも操作性です。

しかし、そのもっと手前には、

ゴルファーがクラブを動かしたいタイミングまで、クラブの動きを待たせることができる。

という性質があるのかもしれません。

フェースターンが速いから操作性が高いのではありません。

フェースターンに必要な時間が短いから、その開始を遅らせることができる。

そして、その遅らせた時間を使って手元を進めることができる。

その結果として、ダイナミックロフトを自分で管理できる範囲が広がる。

これが、今回のお客様にとってのBLUEPRINT Tの「やさしさ」だったのかもしれません。

ただし、ここで一つ注意が必要です。

ヘッドの大きさだけで、シャフト軸まわりの慣性モーメントが決まるわけではありません。

重要なのは、あくまでシャフト軸に対して質量がどのように配置されているかです。

BLUEPRINT Tと今回比較したハーフキャビティについて、シャフト軸まわりの慣性モーメントを実測して比較したわけではありません。

ですから、これは今回の現象から考えられる一つの力学的な仮説です。

しかし、

「なぜマッスルバックでは抑えることが容易だったのか」

を考えると、非常に興味深い視点だと思います。

そして、このお客様は言いました。

「抑えるのは容易です。」

ならば、フィッティングでは逆のことを考えることができます。

抑える能力をすでに持っているのであれば、もっと高さを与えてもいいのではないか。

ここから、シャフト選びが始まりました。

次回は、なぜProject X LZを試したのか。

そして、なぜ「弾道の高さ」を基準にシャフトを選んだのか。

その話をしてみたいと思います。

重いシャフトなのに、なぜ軽く感じるのか?

シャフト選びの第二話となります。

前回、シャフト選びの第一歩は「重量」であるという話をしました。

今回は、その「重量」についてもう少し考えてみたいと思います。

フィッティングをしている時にシャフトのフィーリングをお聞きします。

その中で、非常によく聞く言葉があります。

「このシャフト、軽く感じます。」

ところが面白いことに、実際には、それまで打っていたシャフトより重いことがあります。

10g近く重いシャフトなのに、

「こっちの方が軽い」

と言われることさえあります。

なぜ、このようなことが起こるのでしょうか。

人間が感じる「重さ」は一つではない

人がクラブの重さを感じる場面は、大きく分けると二つあります。

一つは、クラブを持ったとき。

もう一つは、クラブを振ったときです。

クラブを手に持って静止していれば、基本的にはクラブの質量と、その重量がどこに分布しているかによって重さを感じます。

しかし、クラブを振り始めると話が変わってきます。

クラブには加速や減速が生まれ、ヘッドには慣性が働きます。

そしてシャフトは、まっすぐな状態のまま動いているわけではありません。

しなり、そして戻っています。

つまり、スイング中にゴルファーが感じている「重さ」は、カタログに書かれている何グラムという数字だけでは説明できません。

45インチの長いクラブを動かしている

もう少し具体的に考えてみましょう。

ダウンスイング初期では、まずグリップエンド方向へクラブを進めていきます。

しかし、そのままグリップエンド方向へ動かし続けるわけではありません。

やがてクラブはリリースを始めます。

このとき、人間は腕とクラブによるてこの作用も利用してクラブを動かしています。

ここで重要になってくるのが、シャフトのしなり戻りです。

ダウンスイングで生じたシャフトのしなりが、ちょうどリリースを始めたいタイミングで戻ってくればどうでしょう。

シャフトの復元する力が、てこの作用を助けてくれます。

ゴルファーが自分の力だけでクラブを動かす必要が少なくなるわけです。

だから、クラブを軽く感じます。

反対に、しなり戻りのタイミングが自分のリリースと合っていなかったらどうでしょう。

シャフトから十分な助けを得られません。

45インチ前後もある長いクラブを、自分の力で動かさなければならなくなります。

当然、大きな抵抗を感じます。

実際には軽いシャフトなのに、

「重い」「振りにくい」

と感じることがあるのは、このためだと私は考えています。

タイミングだけではない

もう一つ重要なのが、しなり戻りの方向です。

シャフトが戻ろうとしている方向と、自分がクラブを振りたい方向が一致していれば、余分な力は必要ありません。

シャフト自身が、クラブを進めたい方向へ動くことを助けてくれるからです。

しかし、両者がずれていたらどうでしょう。

自分はこっちへ振りたい。

ところがクラブは違う方向へ動こうとしている。

そうなれば、ゴルファーはその動きを修正しなければなりません。

当然、そこには余分な力が必要になります。

つまり、同じ重量のシャフトであっても、

しなり戻りのタイミングが合っているか。

そして、

しなり戻りの方向が合っているか。

によって、ゴルファーが感じる重さは変わってくるということです。

「軽く感じる」は重要なサイン

こう考えると、フィッティング中にお客様から聞く、

「このシャフトは軽く感じる」

という言葉の意味も変わってきます。

必ずしも、

「もっと重いシャフトを使える」

という意味ではありません。

むしろ、

そのシャフトの運動と、ゴルファーの運動が同調している。

その可能性を示しているのではないでしょうか。

実重量では重いのに軽く感じる。

これは決して矛盾ではありません。

ゴルファーがクラブと喧嘩せずに振れているから、軽く感じているのかもしれないのです。

元調子が振りやすいと感じる理由もここにある

ここで少しだけ「元調子」について触れておきます。

元調子は、手元側のしなりが大きいシャフトです。

手元に近いところで大きく曲がるため、スイング中には実質的に少し短いクラブを振っているような状態を作ることができます。

もちろん、45インチのクラブが物理的に短くなるわけではありません。

しかし、長い棒の途中が曲がることで、ゴルファーから見たクラブの運動は変わります。

これも、元調子を「振りやすい」「軽く感じる」と評価する人が多い理由の一つではないかと考えています。

ただし、

「だから元調子を選べばいい」

という話ではありません。

ここからが、シャフト選びの面白いところです。

なぜなら、シャフトには「しなり」だけでなく、

しなり戻り

があり、

さらに、

ねじれと、ねじれ戻り

もあるからです。

そして、それらはダウンスイングだけで起きているわけではありません。

シャフトは、テークバックを始めた瞬間からすでに動き始めています。

その動きがゴルファーのスイングとどのように組み合わさるのか。

次回は、そこから考えてみたいと思います。

シャフト選びについて

毎年、メーカーは新しいシャフトを発表し、市場へ送り出しています。

一つのメーカーだけでも複数のシャフトシリーズがあり、それぞれに重量帯やフレックス違いがラインナップされています。さらに、メーカー純正シャフトも数多く用意されています。

最新のシャフトが誰にでも、どのヘッドにも合うのだったら、以前のシャフトは即座井に廃盤となるんですが、廃盤にならないのは、そうではないということを逆に証明しています。

その膨大な選択肢の中から、自分に本当に合う一本を探し出すことは、まさに至難の業です。

では、シャフトを選択する最初の基準となる項目は何でしょうか。 “シャフト選びについて” の続きを読む

フィッティングとは、ゴルファーを変えることではない。ゴルファーを引き出すことである。

この回では、Podcastで何度も語られている

「クラブをゴルファーに合わせる」

というPINGの思想を掘り下げます。


導入

これまで紹介してきた内容を見ると、

  • モデルを選ぶ
  • ロフトを選ぶ
  • スリーブを調整する
  • ウェイトを動かす

と、クラブばかりを調整しているように見えます。

しかし、本当に変わっているのはクラブでしょうか。

実は違います。

PINGが変えようとしているのは、

ゴルファーが自然に振れる状態

です。


Podcastのポイント

このあたりではマーティが繰り返し、

  • 無理にスイングを変えない
  • 自然に振れる状態を探す
  • ゴルファーが持っている動きを活かす

という考え方を話しています。

つまり、

フィッティングはスイング改造ではない。


店長の解説

ここは私が以前から言っている

クラブは先生である

という考え方につながります。

ゴルファーはクラブを振っています。

しかし、

クラブもゴルファーを動かしています。

だから、

合わないクラブでは、

無意識に補正動作が始まります。

例えば、

  • 開いて見える
  • ボールが遠い
  • ライ角が合わない

これだけで、

構えが変わり、

スイングが変わります。

つまり、

スイングを直しているのではなく、

クラブに合わせてしまっているのです。


一番伝えたいこと

ここで読者へ投げかけます。

フィッティングとは何でしょうか。

多くの人は、

「クラブを選ぶこと」

と思っています。

私は違うと思います。

フィッティングとは、

本来その人が持っているスイングを、最も自然に発揮できるクラブを探すこと

です。

だから、

良いフィッティングを受けると、

「スイングが良くなった」

と感じます。

しかし、

良くなったのはスイングではありません。

クラブが邪魔をしなくなったのです。

Thriver の記事が出てきましたね。

カスタム「スライバー」の台頭:ツアープロが自分専用のミニドライバーを製作する理由

と題してゴルフマンスリーの記事が出てきました。

当ブログでも

かなり問い合わせが多いショートウッド

で書いております。通称「Thriver」でスリーとドライバーをくっつけた造語です。

ゴルフマンスリー

では、このように紹介しております。これはプロの仕様を元に書いていると思います。アベレージjゴルファーには少しハードなセッティングだと思います。

PINGのCo-pilotページにはカスタムビルドのガイドを

このように、発表しています。43インチの3Wの」シャフトをドライバーに装着するとドライバーでは43.5インチになります。そしてスイングウェイトはD1.5 程度を推奨しています。スイングウェイトはPING GOLF JAPANでは最大でC7くらいだたっと思いますので、ウェイトを貼って調整することになります。これに関しては、目安のスイングウェイトから増減させて調整することがベターです。

シャフトが短くなるにつれてアタックアングルが増え弾道が低くなりますのでそのために考慮が必要になります。

店長はもっと慣性モーメントを大きくすればいいのではないかと思い、とりあえずG440Kドライバー12度のヘッドで試しておりますが、レンジで打っていますが、好感触です。

まだ、コースで使えておりません。

 

ロフトを変えると、フェースも変わる

これまで、

  • 第1話 ドライバーはゲームの土台
  • 第2話 モデルは技量ではなく弾道で選ぶ
  • 第3話 まず縦、次に横
  • 第4話 打ちたい球ではなく、打ちたくないミスを消す

と紹介してきました。

では実際に、

ロフトを1度増やす

とは、何を変えているのでしょうか。

多くのゴルファーは、

球が高くなるだけ

と思っています。

もちろん、それも間違いではありません。

しかし、PINGはTrajectory Tuning Sleeveを、

単なるロフト調整機構として説明していません。

  

Podcastの会話

“ロフトを変えると、フェースも変わる” の続きを読む

理想の球筋を作るのではなく、打ちたくないミスを消す

前回は、PINGのドライバー・フィッティングが、

まず縦方向を合わせる
次に左右方向を合わせる

という順番で行われていることを紹介しました。

縦方向では、ボール初速、打ち出し角、スピン量を整えます。

その後、左右方向では、打ち出し方向、曲がり幅、スピン軸、左右の散らばりを調整します。

では、左右方向のフィッティングでは、どのような弾道を目指せばよいのでしょうか。

多くのゴルファーは、

きれいなドローを打ちたい
安定したフェードを打ちたい
真っすぐな球を打ちたい

と考えます。

しかし、PINGは少し違う方向から考えています。

打ちたい球筋を作るのではなく、打ちたくないミスを消す。

という考え方です。

上級者の方ほど、意図しないボールを打ちたくないという事がはっきりしています。一方、アベレージな方は飛んで曲がらないが求める弾道となります。

Podcastの会話

16:14~18:40

シェーン:
私は最近、ドライバーのロフトを少し増やしました。

 

私は左打ちですが、右へのミスに悩んでいました。

 

もともと私はスピン量の多いプレーヤーなので、ボールを右から左へ動かすために、スピンを使うことに慣れていました。

 

しかし、現在のドライバーではスピン量が減り、以前ほどボールが曲がらなくなっています。

 

そこでLSTのロフトを増やし、以前より真っすぐ構えるようにしました。

 

少しロフトを増やしただけで、フェアウェイを捉えやすくなりました。しかも、飛距離はほとんど失っていません。

 

マーティ:
その右ミスは、左打ちのあなたにとって、右へ曲がっていく球だったのですか。

 

それとも、右へ出て、そのまま戻ってこない球だったのでしょうか。

 

シェーン:
右へ出て、そのまま戻ってこない球です。

 

15年ほど前なら、芯で打った球でも、スピンによって左へ戻っていました。

 

しかしG430からG440へ進む中で、サイドスピンがかなり減ったように感じます。

 

今ではフェアウェイ右側を狙って打ちます。

 

少しカットしてもよいですし、曲がらなくてもフェアウェイに残ります。

 

マーティ:
それは非常に面白い例です。

 

PGAツアーには、軽いカットを基本にしながら、真っすぐ飛んでも問題ないという選手が多くいます。

 

そのような球筋には、かなり大きな安心感があります。

 

ドライバー・フィッティングでは、

 

「特定の球筋を作る」

 

という考え方がよく使われます。

 

しかし私は、逆に考える方がよいと思っています。

 

「出したくないミスを消す」

 

ように、ドライバーをフィッティングするのです。

 

必ずしも一定量のフェードを打ちたいわけではなくても、

 

「右へのミスだけは消したい」

クラブ軌道が左を向き、フェースは軌道より右を向いている可能性があります。

 

ということがあります。

 

そのように考えると、フィッターにもゴルファーにも分かりやすくなります。

ただし、右へ出るだけなら許容できます。

 

シェーン:
そのとおりです。

 

私は右へ曲がる球を見たくありません。

 

これは、フィッティングそのものを大きく変えたというより、技術の進歩によって狙い方を変えられたということです。

店長の解説

この会話で重要なのは、

右へ飛ぶ球は、すべて同じミスではない

ということです。

シェーンは左打ちです。

そのため、右方向はドローやフック側になります。

しかし彼が嫌っていたのは、右へ出ること自体ではありません。

右へ出たあと、さらに右へ曲がっていく球です。

一方、右へ出て、そのまま真っすぐ飛ぶ球であれば、狙い方によって許容できます。

つまり、最終的な着弾地点だけを見て、

右へ行ったから失敗

と判断しているわけではありません。

  • どこへ打ち出されたか
  • そこからどちらへ曲がったか
  • その球が想定の範囲内だったか

を分けて考えています。

これが、左右方向のフィッティングです。

打ち出し方向と曲がり方向は別のもの

ドライバーの弾道を見るとき、多くの人は最終的にボールが止まった場所だけを見ます。

しかし、同じ右側へ着弾した球でも、弾道の内容は違います。

たとえば右打ちの場合、

右へ出て、そのまま飛ぶ球

主にインパクト時のフェース向きが右を向いている可能性があります。

フェースとクラブ軌道の差が小さければ、大きく曲がらず、そのまま右へ飛びます。

真っすぐ出て、右へ曲がる球

打ち出し方向はおおむね合っていますが、フェースと軌道の関係によってスピン軸が右へ傾いています。

左へ出て、右へ曲がる球

同じ右ミスでも、原因は同じではありません。

したがって、

右へ行くから、つかまるドライバーにする

だけでは不十分です。

打ち出し方向を変える必要があるのか。

曲がり幅を減らす必要があるのか。

その両方を変える必要があるのか。

まず区別しなければなりません。

「理想のドロー」が必要とは限らない

ゴルフでは、ドローが飛ぶ球として好まれることがあります。

しかし、すべてのゴルファーがドローを打つ必要はありません。

ドローを作ろうとすると、

  • フェースを閉じようとする
  • クラブを内側から下ろそうとする
  • 手を強く返そうとする
  • 右を向いて構える
  • ボールを必要以上に右へ置く

といった動きが生まれることがあります。

その結果、

ドローではなく、大きなフックが出る

こともあります。

本来、軽いフェードでフェアウェイを捉えられていたゴルファーが、「ドローの方が飛ぶ」という理由だけで球筋を変え、左右両方のミスを持つようになることもあります。

必要なのは、見た目の良い球筋ではありません。

コース上で、どのミスなら許容できるか

です。

一方向のミスに絞る

ツアープレーヤーの多くは、左右両方へ大きく曲がる状態を嫌います。

真っすぐ飛ぶことだけを求めているわけではありません。

たとえば、

  • 真っすぐ、または軽いフェード
  • 真っすぐ、または軽いドロー

というように、球筋の幅を一方向へまとめています。

右打ちのフェードヒッターであれば、

真っすぐならフェアウェイ中央
少し曲がればフェアウェイ右側

という狙い方ができます。

しかし、同じ構えから、

  • 強いフェード
  • 真っすぐ
  • 強いドロー

のすべてが出ると、狙う場所がなくなります。

ゴルフで重要なのは、曲がらないことだけではありません。

どちらへ曲がる可能性があるのかを予測できること

です。

フィッティングでは、最悪の球を見る

弾道測定器を使ったフィッティングでは、一番飛んだ球に注目しがちです。

しかし、コースでスコアを崩すのは、多くの場合、一番良い球ではありません。

最も悪いミスです。

たとえば10球打ったときに、

  • 8球はフェアウェイ幅
  • 1球は少しラフ
  • 1球はOB

というクラブと、

  • 10球すべてがフェアウェイか浅いラフ

というクラブがあったとします。

最長飛距離が前者の方が5ヤード長くても、実戦では後者の方が良い可能性があります。

前者には、一打でゲームを崩す球が含まれているからです。

そのためフィッティングでは、

平均値を良くすること

と同時に、

最悪のミスをどこまで小さくできるか

を見る必要があります。

消すべきミスは、人によって違う

すべてのゴルファーが、同じミスを嫌うわけではありません。

左側にOBが多いコースをプレーする人

左へのミスを消す価値が大きくなります。

右側に池や谷が多いコースをプレーする人

右へのミスを抑える必要があります。

左へ曲がると急激に飛距離が落ちる人

左への曲がりを減らすことが、距離の安定にもつながります。

右へ出るが、ほとんど曲がらない人

打ち出し方向を少し修正するだけでよく、ヘッドを大きくつかまる仕様にする必要はないかもしれません。

左右両方へ曲がる人

まず、どちらか一方へミスをまとめる必要があります。

つまり、

最適な左右バイアス

は、その人のスイングだけで決まるわけではありません。

普段プレーするコース、ティーショットの狙い方、許容できるミスによっても変わります。

ヘッドモデルで、ミスの方向を決める

G440の各モデルには、それぞれ異なる左右特性があります。

G440 SFT

フェースが開いて届きやすく、右へのミスが多いゴルファーに適しています。

右へ曲がる球を減らし、よりスクエアに近い状態でフェースを届けることを助けます。

G440 K

高い慣性モーメントによって、打点がずれたときのヘッドの回転を抑えます。

CG Shifterによって、ドロー、ニュートラル、フェード方向へ調整できます。

G440 MAX

Kよりも少し高い打ち出しとスピンを作りながら、CG Shifterで左右方向を調整できます。

G440 LST

スピン量を抑えることを基本にしながら、CG Shifterによって左右特性を調整できます。

重要なのは、

モデルを選べば、球筋がすべて決まるわけではない

ということです。

モデルで基本的な弾道特性を決め、その後、ウェイト位置、スリーブ、クラブ長、ヘッド重量などで左右のミスを整えます。

LSTをドロー仕様にする理由

前話で紹介したジョン・ソルハイムの例は、この考え方をよく示しています。

彼はスピン量が多くなりやすいため、ヘッドにはLSTが必要です。

しかし、LSTの低スピン性能を使うだけでは、フェースのつかまりが足りない可能性があります。

そこで、

  • CG Shifterをドロー位置へ動かす
  • スイングウェイトを少し軽くする
  • フェースを戻しやすくする

ことで、左右方向を調整しています。

これは、

低スピンにしたいからLST
つかまえたいからSFT

という単純な二者択一ではありません。

縦方向にはLSTが必要です。

左右方向には、ドロー方向の調整が必要です。

その二つを組み合わせています。

フィッティングとは、モデル名にゴルファーを当てはめる作業ではありません。

ゴルファーに必要な縦と横の条件を、一つのクラブに組み合わせる作業

です。

ロフトを増やして、右ミスを消す

シェーンの例では、ロフトを増やすことで右ミスを減らしています。

一般にロフトを増やすと、

  • 打ち出し角が高くなる
  • スピン量が増える可能性がある
  • フェース角が相対的にクローズ方向へ変化する
  • 構えたときのフェースの見え方が変わる

ことがあります。

シェーンは、ロフトを増やしたことで、以前より真っすぐ構えやすくなりました。

その結果、

無理に右から左へ曲げようとせず、右側を狙って、真っすぐか軽いカットで打つ

という狙い方ができるようになっています。

ここで重要なのは、ロフトを増やしてドローを強くしたわけではないことです。

自分が嫌う右への曲がりを消し、許容できる球だけを残しています。

現代のドライバーは曲がりが少ない

シェーンは、G430からG440へ進む中で、以前よりサイドスピンが減ったと感じています。

厳密には、ボールにはバックスピンとサイドスピンが別々に発生しているわけではありません。

回転軸が傾くことで、ボールが左右へ曲がります。

現代のドライバーでは、

  • 高MOI化
  • フェース設計の進歩
  • 打点ずれに対するスピンの安定
  • ゴルフボールの低スピン化

などによって、芯に近い打点での曲がりが小さくなっています。

その結果、以前なら戻ってきた球が、戻らずにそのまま飛ぶことがあります。

これは悪いことではありません。

しかし、ゴルファーが昔の曲がり幅を前提に狙っていると、想定と違う場所へ飛びます。

クラブが変われば、狙い方も変える必要があります。

曲がりを減らすことは、飛距離にもなる

Podcastでは、シェーンのような高ボールスピードのプレーヤーと、一般ゴルファーを分けて説明しています。

Podcastの会話

19:07~20:23

マーティ:
あなたのボール初速は170mph台後半で、時には180mphに届きます。

 

PGAツアーの平均か、それを少し上回る速度です。

 

その速度があれば、ある程度の曲がりを許容しながら、安心できる球筋と散らばりを、作ることができます。

 

一方、225~250ヤード程度を飛ばし、多くのフェアウェイを捉える一般ゴルファーも大勢います。

 

そのようなゴルファーには、スピン軸の傾きをできるだけ小さくします。

 

ボール初速がそれほど高くない場合、曲がりを減らすことは、飛距離を伸ばすための一つの方法になります。

 

したがって一般原則としては、曲がり幅をできるだけ小さくします。

 

現代のクラブ技術とゴルフボールも、それを助けています。

一般ゴルファーほど、曲がりによる損失が大きい

ヘッドスピードが速いゴルファーは、ボールが少し曲がっても、十分な初速とキャリーを残せます。

しかし、ボール初速がそれほど高くないゴルファーでは、曲がりが大きくなるほど、前へ進む距離を失いやすくなります。

たとえば、右へ大きく曲がる球では、

  • スピン量が増える
  • スピン軸が大きく傾く
  • 最高到達点が高くなる
  • 前方へのキャリーが減る
  • 着弾後のランが減る

ことがあります。

この場合、単にヘッドスピードを上げようとするより、

曲がりを減らす

方が飛距離を伸ばせる可能性があります。

つまり、

真っすぐ飛ばすことは、方向性だけの問題ではない

ということです。

曲がりによって失っていたエネルギーを、前方への飛距離へ戻すことでもあります。

「真っすぐ」を狙いすぎない

曲がりを減らすことは重要です。

しかし、毎回完全なストレートボールを求める必要はありません。

ストレートボールは、フェース向きとクラブ軌道がほぼ一致したときに生まれます。

わずかな差によって、ドローにもフェードにもなります。

そのため、完全なストレートだけを目指すと、左右両方の球が出る可能性があります。

実戦では、

真っすぐ、または軽いフェード
真っすぐ、または軽いドロー

という範囲の方が、狙いやすくなります。

消すべきなのは、すべての曲がりではありません。

コースを外し、次のショットを難しくする曲がり

です。

フィッターが最初に聞くべきこと

左右方向のフィッティングを始める前に、フィッターはゴルファーへ、

どのミスを最も見たくありませんか。

と聞く必要があります。

答えは人によって違います。

  • 左へ引っかける球
  • 右へ大きく曲がる球
  • 右へ出て戻らない球
  • 左へ出てさらに左へ行く球
  • 高く吹き上がりながら曲がる球
  • 低く出て急激に曲がる球

その球を確認したうえで、

  • モデル
  • CG Shifter
  • スリーブ
  • クラブ長
  • シャフト
  • スイングウェイト

を使います。

何も聞かずに「ドローとフェードのどちらが好きですか」と尋ねるだけでは、十分ではありません。

好みの球筋と、実際に消すべきミスは同じとは限らないからです。

今回の結論

ドライバー・フィッティングの目的は、見た目の良い球筋を作ることではありません。

必要なのは、

コース上で最も大きな損失になるミスを消すこと

です。

ドローを打ちたいか。

フェードを打ちたいか。

その前に確認しなければならないことがあります。

  • どこへ打ち出されるのか
  • そこからどちらへ曲がるのか
  • 左右のどちらが大きなミスになるのか
  • どの球なら許容できるのか
  • 最悪の一球は何か

です。

理想の球筋を一つ決めるより、

打ちたくない球を一つ消す

方が、コースでは狙い方が明確になります。

真っすぐか、軽いフェード。

真っすぐか、軽いドロー。

そのようにミスを一方向へまとめることができれば、ティーショットの安心感は大きくなります。

そして、ボール初速がそれほど高くない一般ゴルファーにとっては、曲がりを減らすことが、飛距離を増やすことにもつながります。

ドライバーは、一番きれいな一球を打つためのクラブではありません。

最も悪い一球によって、ゲームを壊さないためのクラブです。

次回は、Trajectory Tuning Sleeve、ロフト、ライ角、フェース角が、実際に何を変えているのかを見ていきます。

ドライバー・フィッティングは、まず縦を合わせ、次に横を合わせる

G440の各モデルが、上級者用、初心者用という技量別に分けられているのではなく、

必要な打ち出し
必要なスピン量
消したい左右のミス

によって分けられていることを紹介しました。

では、実際のフィッティングでは、何から決めていけばよいのでしょうか。

ドライバーには、非常に多くの調整項目があります。

  • ヘッドモデル
  • ロフト
  • シャフト
  • シャフト長
  • Trajectory Tuning Sleeve
  • CG Shifter
  • ヘッド重量
  • スイングウェイト

これらを見ていると、どこから手をつければよいのか分からなくなります。

実際、すべてを同時に変更すると、

何を変えたことで、弾道が変化したのか

が分からなくなります。

PINGは、ドライバー・フィッティングを大きく二つに分けています。

まず縦方向を合わせる。
その後、左右方向を合わせる。

という考え方です。 “ドライバー・フィッティングは、まず縦を合わせ、次に横を合わせる” の続きを読む

PINGパターが連続でメジャー奪取! しかも、中尺。

The OPEN Ryan Fox の優勝でした。
早速、このような動画が作成されています。

一見、変則に見えるスイングですが、素晴らしいスイングの持ち主です。

さて、本題!

PING PUTTER ANSE2Dを使用しています。

PINGゴールドパターボールトへの主要な追加です。年間最優秀ゴルファーは、ロイヤルバークデールでの優勝に頼ったAnser 2Dの純金レプリカを受け取ります。

仕様:

  • Anser 2D、
  • 40インチ KBS C-Taper 130 Black PVD 8番アイアンシャフト
  • 6.5ºロフト、
  • 20ºライ角
  • 17インチ SuperStroke Tour 1.0Pグリップ

と

シャフトに40インチのKBS C-Taper 130 Black PVD 8番アイアンシャフトを使用し、ロフトは6.5度、グリップは中尺用と中尺パターにしていますね。

これで、メジャーは中弱パターが2連勝となりました。

 

ドライバーは、なぜバッグの中で最も重要なクラブなのか

エピソードトークを分析していきます。

ゴルフには、昔から有名な言葉があります。

Drive for show, putt for dough.

日本語では一般的に、

ドライバーは見せるため、パットは稼ぐため

と訳されます。

この言葉は、ドライバーショットの華やかさと、パッティングがスコアへ直接反映されることを対比したものだと思います。 “ドライバーは、なぜバッグの中で最も重要なクラブなのか” の続きを読む