コヤマカズヒロ氏の朱莉プロのクラブ解説よりまとめ 連続性の呪縛

コヤマカズヒロ氏は多くの示唆を与えてくれた内容です。朱莉プロだけではなく細野プロの事に引き合いに出していただいたのがよかったと思います。

さて、結論をまとめたいと思います。

連続性の呪縛

例えば、ドライバーのキャリーが230ヤードだったとします。

そこから10ヤード刻みでクラブをバッグに入れようとすると、

230ヤード
220ヤード
210ヤード
200ヤード
190ヤード
180ヤード……

というように、きれいな階段を作りたくなります。 “コヤマカズヒロ氏の朱莉プロのクラブ解説よりまとめ 連続性の呪縛” の続きを読む

コヤマカズヒロ氏の朱莉プロのクラブ解説より IRON編

ゴルフトレンドウォッチャーでゴルフライターのコヤマカズヒロ氏が朱莉プロのクラブ変更について動画にしていましたので、覗いてみることにしました。 https://youtube.com/watch?v=NcyBCvLmpZ4&si=hNVOtq3KMO_C2kqG

朱莉プロのクラブ変更の理由や何故そうしたのかを小山氏の視点で解説されています。 店長は極秘ルートで(嘘です。営業さんに聞けば教えていただけます。)ツアーレップからのデータを手に入れて検証してみたいと思います。以下が朱里プロのクラブスペックです。 “コヤマカズヒロ氏の朱莉プロのクラブ解説より IRON編” の続きを読む

Bの変化

前回の投稿で、BシリーズがPINGの歴史の中でもかなり正統な系譜を持つパターであることがお分かりいただけたと思います。

初期のステンレス製B60を見ると、

トップブレードがかなり薄いことが分かります。

そのためネックも、現在のパターのようにトップブレードの上から立ち上がっているというより、フェース背面に取り付けられているように見える形状になっています。

一方、店長のコレクションにあるB60 BeCu(ベリリウムカッパー)は、

初期のステンレスモデルと比較すると、トップブレードがかなり厚くなっています。

この違いから考えると、初期型ではトウ側・ヒール側に重量を多く配分するため、トップブレード部分に十分な重量を使えなかった可能性もあるのではないかと思います。

ただし、BeCuのB60にも初期ステンレスモデルと同じようにトップブレードの薄いものがあります。

したがって、単純な素材の違いというより、製造時期や金型による形状差と考える方がよさそうです。

打感についても違いがあります。

店長の感覚では、ステンレスモデルの方が硬く、そしてヘッドが軽く感じます。

もう一つ、初期B60を見て気になるのが、プル角、つまりシャフトとフェース面の関係です。

初期型は、現在のB60やB63と比較するとシャフトの傾きが強く見えます。

この形状を見ると、ボールをスタンス中央よりやや右側に置き、手元を少し先行させた状態で構えることを想定していたのではないか、とも考えられます。

もちろん、これがPINGの明確な設計意図だったと断定することはできません。

ただ、パターの構え方やストロークの考え方が現在とは少し違っていた可能性はありそうです。

その後、パターヘッドの重量は徐々に重くなっていきます。

それに伴って、トップブレードも厚くなり、ネックの取り付け位置も変化していきました。

そして現在のScottsdale B63を見ると、

トップブレードの厚さはANSER系に近くなり、ネックもフェース背面から付いているというより、トップブレード上部から自然に立ち上がる形状に変わっています。

さらに大きな変化が、ヘッドの奥行きです。

B60は世代を追うごとに少しずつ奥行きが増し、現在のB63ではかなりマレット的な印象が強くなっています。

image

ここに、Bシリーズの進化の方向がよく表れているように思います。

初期のB60は、ANSERに近い操作感を重視したブレード系パターでした。

そこから、

トップブレードを厚くする
→ ヘッド重量を増やす
→ 奥行きを増やす
→ 周辺重量配分を強くする

という方向へ進み、少しずつ安定性を高めてきました。

そして現在のB63は、

「安定したブレード」から「操作できるマレット」へ

進化したモデル、と見ることができるのではないでしょうか。

岡本綾子プロ、Sirニック・ファルド。
名手たちの勝利を支えてきたBシリーズが、時代を越え、今度は朱莉プロのツアー優勝を支えました。
その瞬間は、B60からB63へと系譜をつないできたPINGの開発陣にとっても、特別なものだったのではないでしょうか。

前田陽子プロのセッティングから見えてくるもの。

塚田プロは、i540の性能をロング〜ミドルアイアンに集中して使う、非常に合理的なセッティングでした。

今回紹介する前田陽子プロのセッティングは、また別の意味で、

「そんな考え方があったのか」

と気付かせてくれます。

PING公式によると、前田プロのセッティングは、

G440 MAX フェアウェイウッド #4・#7
G440 ハイブリッド #4〜#7
i540 #8・#9・PW・UW

となっています。

これを見るまで店長も気付きませんでしたが、かなり筋の通った構成です。

なぜか。

素材を見てみます。

モデル フェース素材 ボディ
G440 FW(MAX/SFT) 鍛造マレージング鋼 C300 17-4ステンレス+カーボンクラウン
G440 HB 鍛造 マレージング鋼 C300 17-4ステンレス+カーボンクラウン
i540 IRON 鍛造マレージング鋼 C300 17-4ステンレス

G440 FWとHBにはさらにカーボンクラウンがありますが、アイアンには当然クラウンそのものがありません。

それを除けば、

フェースはC300マレージング鋼。
ボディは17-4ステンレス。

という基本構成が、FWからHB、そしてi540まで共通しています。

これは非常に興味深いところです。

正確性を重視するゴルファーにとって、クラブが変わるたびにインパクトの感触やボールの弾き方が大きく変わらないことには、大きなメリットがあります。

もちろん、FW、HB、アイアンではヘッド形状も内部構造も違いますから、打感まで完全に同じになるわけではありません。

しかし、少なくともボールと直接接触するフェース素材を同じC300マレージング鋼でつないでいる。

ここには一つの統一感があります。

さらにi540では、中空アイアン特有の打音・打感の問題を抑えるために、inR-Airテクノロジーを採用しています。PINGは、フェース裏側のエアポケットによって不要な振動を減衰させる技術だと説明しています。

そう考えると前田プロのセッティングは、

FW → HB → i540

とクラブの形は変わっていきますが、

C300マレージング鋼フェースを軸に、同じ方向性の高初速クラブを連続させている

と見ることができます。

言い換えれば、

i540は、フェアウェイウッドとハイブリッドからアイアンへつなぐための「アイアン形状の高初速クラブ」と考えることもできる。

前田プロは、それを8番からUWまで使っています。

これは塚田プロとはまったく違うi540の使い方です。

塚田プロは、i540をロングアイアンとして使う。

前田プロは、G440 FW・G440 HBから続く流れの中で、i540をアイアン部分として使う。

同じi540でも、使い方はまったく違います。

そして、どちらにも筋が通っています。

ここがPINGのクラブセッティングの面白いところではないでしょうか。

下衆な話ですが、このようなセッティングであるならば、こちらも最大で4本までですので、お高いi540アイアンでも手の届く存在と言えるのでは?と思います。

i540アイアンの使用例最高パターン!そんな考え方があったのか!

日本ではPINGのクラブを使ったらこの人の右に出る人はいないと言っても過言ではありません。

その塚田Pのセッティングを見てみましょう。

5番から7番をi540

7番からPWをBLUEPRINT T

です。

アイアンをセットでなかればならないというように考えていないようですよ。

  • ドライバー
  • フェアウェイウッド
  • ハイブリッド
  • ロングアイアン
  • ショートアイアン
  • ウェッジ
  • パター

とゴルフクラブを7つのジャンルに分けるという考えです。ハイブリッドとアイアンの間にロングアイアンというジャンルのクラブを入れる。

いやはや、実にスマートな考え方です。

この考え方の良いところは、ちょっとお高いi540アイアンを最大4本までしか買わなくてもいいという事です。塚田Pが5番からですので一般の方はおそらく最大で3本です。

流石、塚田Pですね。シッカリ、「i540は4〜7番にタングステンソールウェイトを入れている」という事を理解されています。

次回は、もう一人の日本のPING PROを紹介したいと思います。

i540をもう一度勉強するぞ!

3月のジョン・K・ソルハイム、PING社CEO兼社長のコメントを含めた投稿確認でもう一度i540アイアンを勉強しましょう。

プレーヤー向けデザインでありながら、より速いスピードを求めるゴルファーのために設計された、快適な打感を実現するプレミアムアイアン「i540」が本日PINGより発表されました。スコアアップ性能を追求したカスタムエンジニアリングが施されたこのi540アイアンは、本日より世界中のPING正規ゴルフショップにて、カスタムフィッティングおよび予約注文が可能です。

「i540アイアンには多くのテクノロジーが詰め込まれています。ヘッド内部では、タングステンソールウェイトが重心を低くし、鍛造マレージング鋼フェースと相まって、ボールスピードを向上させます。さらに、打感と打音を改善するためにinR-AIRテクノロジーを採用しました。これはフェース裏側の空気ポケットが振動を減衰させ、より優れたインパクト感を実現します。外観は、カバードキャビティ設計により、すっきりとしたハイテクな印象を与えます。」

—ジョン・K・ソルハイム、PING社CEO兼社長

「プレーヤーズディスタンスアイアンの人気は、ブレードスタイルの外観でより速いボールスピードを求めるゴルファーが増えていることから、ますます高まっています」と、PINGのCEO兼社長であるジョン・K・ソルハイム氏は述べています。「i540アイアンには多くのテクノロジーが詰め込まれています。ヘッド内部では、タングステンソールウェイトが重心を下げ、鍛造マレージングスチールフェースと相まってボールスピードを向上させます。また、打感と打音を改善するためにinR-Airテクノロジーを採用しました。これはフェース裏側の空気ポケットで、振動を減衰させ、より優れたインパクト体験をもたらします。外観は、カバードキャビティデザインにより、すっきりとしたハイテクな印象を与えます。」

「飛距離を最優先するゴルファーにとって、このアイアンはまさに理想的です。i540アイアンは、飛距離重視のアイアンとしては珍しいほどの寛容性も備えています。見た目も素晴らしく、打感も抜群。そして何よりも、スコアアップとコースでの楽しさの向上につながるでしょう。」

プレーヤーの飛距離と制動力

i540アイアンは、飛距離アップを実現する複数の要素を備えています。例えば、4番から7番アイアンにはタングステンソールウェイトを採用し、重心を低くすることでボールスピードを向上させています。また、鍛造された高柔軟性マレージング鋼C300フェースは、17-4ステンレススチール製のボディに精密に溶接されており、金属と木材を融合させたようなしなりを生み出し、ボールスピードの向上と最大飛距離の増加を実現し、より強力なストッピングパワーを発揮します。

i540アイアンは、重心位置を最適化したロフト角により、飛距離アップとグリーン上でのボールの最高到達点向上を実現します。カスタムフィッティングでは、ゴルファーの打ち出し条件を最適化するために、3種類のロフト角(スタンダード、パワー、レトロ)から選択可能です。

「i540は、飛距離重視のアイアンにさらなるコントロール性をもたらします。飛距離を最優先に考えながらも、プレーヤー向けアイアンのサイズ感や外観を好むゴルファーに最適です。」

—ジョン・K・ソルハイム、PING社CEO兼社長

「i540は、飛距離重視のアイアンにさらなるコントロール性をもたらします」とソルハイム氏は語ります。「飛距離アップを最優先に考えながらも、プレーヤーズアイアンのサイズ感や外観を好むゴルファーに最適です。場合によっては、長年の間に失ってしまったボールスピードを取り戻したいと考えているゴルファーにも適しています。ブレードアイアン愛好家は、薄いトップライン、狭いソール、浅いフェース高といった、このアイアンの洗練された高級感あふれる外観を高く評価するでしょう。i540アイアンは、スピードと精度を兼ね備えた、非常に魅力的なデザインです。」

中身:inR-Airテクノロジー

打感と打音を向上させるため、i540アイアンにはinR-Airテクノロジーが採用されています。これは、PINGのイノベーションチームが改良を重ね、昨年iDiドライビングアイアンで初めて導入された技術です。特許出願中のこの技術は、フェース裏側のクラブ内部に戦略的に配置されたエアポケットを利用して、インパクト時に発生する不要な周波数を減衰させます。また、i540アイアンの17-4ステンレススチール製ボディ内部に統合されたi-Beam構造も、サポート力を高めるとともに、打音と打感の向上に貢献しています。

「このタイプのアイアン構造は、常に打音と打感の面で課題を抱えています」とソルハイム氏は語る。「i540アイアン内部の空気ポケットは、振動周波数を抑え、インパクト時の打感を向上させる優れたソリューションです。iDiドライビングアイアンで既に高い効果が実証されており、この技術をアイアンセット全体に採用し、ゴルファーの皆様にお届けできることを大変嬉しく思っています。」

以上です。

一番重要な部分だけ抜き出すと

記事で使うなら、この5点で十分だと思います。

① 4〜7番にタングステンソールウェイト
→ 低重心化

② C300マレージング鋼フェース
→ 大きなたわみと高初速

③ 高さを確保
→ 飛距離だけではなくストッピングパワー

本文にはレトロロフトが紹介されていますが、PW,UWを除きロフト設定で対応できます。
4~7のソールウェイトによる高弾道化も貢献しています。

④ inR-Air
→ 中空・薄肉フェース特有の振動を抑えて打感・打音を改善

⑤ 「失ったボールスピードを取り戻したいゴルファー」

i540の説明を読むと、もちろんセット全体として完成度の高いアイアンであることは分かります。

しかし、今回あらためて注目したいのは、

4番から7番にだけタングステンソールウェイトが入っている

という点です。

これは非常に重要です。

PING自身が、i540の中でもロング〜ミドルアイアン側に対して、明確に

低重心化
ボールスピード向上
高弾道化
ストッピングパワー向上

を狙った設計を入れているということだからです。

つまりi540は、単純にセット全体を「飛び系」にしたアイアンではありません。

むしろ、

飛距離が落ちやすい番手に、集中的に飛距離性能を与えたアイアン

と見ることができます。

年齢とともに最初に苦しくなりやすいのは、ショートアイアンではなく、やはり5番、6番、場合によっては7番です。

昔は普通に打てていた5番アイアンが、だんだん飛ばなくなる。

6番との差がなくなる。

無理に振らなければ高さも出ない。

そうなると、5番アイアンそのものをバッグから抜くことになります。

i540は、まさにその領域に対して設計上の手当てをしているわけです。

私自身、i540の5番アイアンを使ってみて、それを強く感じています。

ロフトを標準より2度寝かせ、シャフトも標準より短くしているにもかかわらず、それでも十分すぎるほど飛びます。

その結果、これまで使用していたiDiの4番がバッグから外れました。

代わりに入ったのがG425の9番ウッドです。

つまり、i540の5番アイアンが飛ぶようになったことで、その上のクラブに「さらに飛ばす」という役割を求める必要がなくなった。

そこで、

200ヤードを飛ばすクラブではなく、200ヤード先で止めるクラブ

を入れられるようになったわけです。

そう考えると、i540の価値は単純な飛距離だけではありません。

4番〜7番の飛距離性能を上げることで、バッグ全体の構成を変えられる。

ここがi540の非常に面白いところだと思います。


「i540は高価なアイアンですが、全部の番手を入れる必要はありません。まず5番、6番だけでも意味があります」

次回は、i540アイアンの好使用例を紹介したいと思います。

ドライバー・FWオプションシャフトが追加さました。

今年もシャフトメーカーの新しいシャフトの発売とともに新しいオプションシャフトが追加となります。

つ生かされるシャフトは計10本、昨年なぜかつかされなかったATTAS RX ULTRA BLACKもラインナップされました。

UST MAMIYAさんは

  • UST Mamiya ATTAS RX ULTRA BLACK
  • UST Mamiya LIN-Q PowerCore WHITE
  • UST Mamiya LIN-Q PowerCore RED
  • UST Mamiya ATTAS RX PURE BLUE

FUJIKURAさんは

  • FUJIKURA 26 VENTUS TR BLACK
  • FUJIKURA 26 VENTUS TR RED
  • FUJIKURA 26 VENTUS TR BLUE
  • FUJIKURA SPEEDER NX WHITE

グラファイトデザインは

  • GRAPHITE DESIGN TOUR AD EK

三菱ケミカルさんは

  • 三菱ケミカル TENSEI 1K PRO ORANGE RIP+

です。 “ドライバー・FWオプションシャフトが追加さました。” の続きを読む

Trajectory Tuning 2.0 はロフトとライ角だけか?

Trajectory Tuning 2.0 によって、変化するのはロフトとライ角だけでしょうか?

昨日の図では、固定されたヘッドに対してシャフトの方向がどのように変化するかを示しました。

この方法でロフトとライ角が変化するのは、ゴルファーが実際にはシャフトを一定の方向に構えて使うからです。

つまり、ゴルファー側から見れば、

シャフトが動いているというより、ヘッドの姿勢が変わっている

と考えた方が分かりやすいわけです。

そして私たちが扱っているクラブは、当然ながら3次元空間に存在しています。

そうであれば、

ロフトだけが変わる。
ライ角だけが変わる。

ということはありません。

もう一つ変化するものがあります。

そうです。

フェースアングルです。

フェースアングルも変わっている

例えば、Standardのライ角を59°として近似計算すると、次のようになります。

位置 ロフト変化 ライ角変化 実ライ角 フェースアングル変化※
Standard 0° 0° 59.00° 0°
Small + +1.06° −0.44° 58.56° 約1.73° Closed
Big + +1.50° −1.50° 57.50° 約2.35° Closed
Flat + +1.06° −2.56° 56.44° 約1.60° Closed
Flat 0° −3.00° 56.00° 0°
Flat − −1.06° −2.56° 56.44° 約1.60° Open
Big − −1.50° −1.50° 57.50° 約2.35° Open
Small − −1.06° −0.44° 58.56° 約1.73° Open

ライ角60°で同じように計算すると

位置 ロフト変化 ライ角変化 実ライ角 フェースアングル変化※
Standard 0° 0° 60.00° 0°
Small + +1.06° −0.44° 59.56° 約1.80° Closed
Big + +1.50° −1.50° 58.50° 約2.45° Closed
Flat + +1.06° −2.56° 57.44° 約1.66° Closed
Flat 0° −3.00° 57.00° 0°
Flat − −1.06° −2.56° 57.44° 約1.66° Open
Big − −1.50° −1.50° 58.50° 約2.45° Open
Small − −1.06° −0.44° 59.56° 約1.80° Open

59°基準より60°基準の方が、同じロフト変化でもフェースアングルの変化が少し大きくなります。

つまり、ライ角がアップライトになるほど、ロフト調整によるフェースの開閉への影響も大きくなっていきます。

※フェースアングルはPING公式公称値ではなく、今回の幾何モデルによる近似値です。

「見た目」はフィッティングで無視できない

ここは、実際のフィッティングではかなり重要です。

人によってはフェースアングルを非常に気にします。

Closed、俗にいう**「かぶって見える」**状態を嫌う人は少なくありません。

特に左へのミス、フックを嫌うゴルファーは、構えた瞬間にフェースが少し閉じて見えるだけでも違和感を持つことがあります。

反対に、もともとボールをつかまえることが苦手なゴルファーの場合は、フェースが開いて見えることを嫌います。

つまり、同じ実ロフトが欲しいからといって、単純にスリーブだけでロフトを調整すればよいとは限らないのです。

例えば10°のロフトが欲しい場合でも、

9°のヘッドを+側に調整して10°に近づける

方法と、

10.5°や12°など、よりロフトの大きなヘッドを−側に調整して10°付近へ持ってくる

方法では、構えた時のフェースアングルが違って見えます。

前者ならフェースはClosed方向へ。

後者ならOpen方向へ。

同じようなリアルロフトになったとしても、ゴルファーから見えるクラブは別物になるわけです。

だから「何度にしたか」だけでは足りない

フィッティングでは、

最終的なロフトが何度になったか

だけを見ても十分ではありません。

同時に、

ライ角はどうなったのか。
フェースアングルはどう見えるのか。
その見え方をゴルファー本人がどう感じるのか。

まで見なければなりません。

ですから私は、その人に合わせて、

一つロフトの少ないヘッドを使って+側へ調整する

こともあれば、

一つロフトの多いヘッドを使って−側へ調整する

こともあります。

目的は単にロフトを合わせることではありません。

必要なリアルロフトを作りながら、その人が構えやすいフェースアングルまで作ること。

これもフィッティングの仕事です。

Trajectory Tuning 2.0を「ロフト調整機能」とだけ考えてしまうと、この部分を見落としてしまいます。

実際には、

ロフト
ライ角
フェースアングル
シャフト長

という4つが同時に関係しています。

そして、その3つの組み合わせによって、

ボールの飛び方だけでなく、ゴルファーがアドレスした時に感じるクラブの見え方まで変わる。

ここまで考えて初めて、Trajectory Tuning 2.0をフィッティングに活かすことができるのではないでしょうか。

USのライ角とJAPANのライ角は1度違う!

アメリカのPINGと日本のPINGでは、同じモデルなのにライ角の表記が違います。

この違いを見て、

「USのヘッドと日本のヘッドは別物なのですか?」

と聞かれたことはありません。

多分、そこまでスペック表を見比べている人がほとんどいないのでしょう。

店長のような、少し変わった人しか見ていないのかもしれません。

では実際に、

US PING

PING GOLF JAPAN

のスペックを比べてみると、ドライバー、フェアウェイウッド、ハイブリッドで、USの方が約1°フラットなライ角表記になっていることが分かります。

同じヘッドなのに、なぜでしょうか。

USには「平均ライ角」と書いてある

US PINGのスペック表には、次の記述があります。

Lie angle is an average of the five adjustable loft positions indicated on the hosel.

日本語にすると、

「ライ角は、ホーゼルに表示されている5つのロフト調整ポジションの平均値です。」

という意味です。

ここが重要です。

USのライ角表示は、Standardポジションのライ角そのものではありません。

5つのロフト調整ポジションのライ角を平均した値

をカタログスペックとして表示しているのです。

Trajectory Tuning 2.0をもう一度考えてみる

前回、Trajectory Tuning 2.0について、

シャフト軸がホーゼル中心軸に対して約1.5°傾いているのではないか

という仮説を立てました。

8ポジションなので、360°を8分割すれば45°刻みです。

この1.5°の傾きを45°ずつ回転させると、ロフト方向とライ方向への成分は概算で次のようになります。

位置 ロフト変化 ライ角変化
Standard 0° 0°
Small + +1.06° −0.44°
Big + +1.50° −1.50°
Flat + +1.06° −2.56°
Flat 0° −3.00°
Flat − −1.06° −2.56°
Big − −1.50° −1.50°
Small − −1.06° −0.44°

PING公式のロフト表記は、

  • Standard:0°
  • Small ±:±1°
  • Big ±:±1.5°
  • Flat:0°
  • Flat ±:±1°

です。

計算値とかなりきれいに一致します。

そしてUS PINGがいう、

「5つのadjustable loft positions」

とは、

  • Standard
  • Small +
  • Small −
  • Big +
  • Big −

の5ポジションと考えるのが自然です。

つまり、USのライ角表示は、このNormal側5ポジションの平均ライ角ということになります。

Normal Zoneの平均ライ角を計算すると

Standardからのライ角変化は、

  • Standard:0°
  • Small +:−0.44°
  • Small −:−0.44°
  • Big +:−1.50°
  • Big −:−1.50°

です。

平均すると、

約−0.78°

になります。

つまり、Standardのライ角より、平均すると約0.8°フラットです。

カタログ値は0.5°刻みなどで表示されますから、日本とUSで約1°の差が出ていても不思議ではありません。

ここまで来ると、

USと日本でヘッドが違うのではなく、ライ角の表示方法が違う

と考える方が自然です。

USは「Normal Zone」と「Flat Zone」で考えている

ここから、Trajectory Tuning 2.0の考え方がさらに見えてきます。

USでは、ライ角を単純に、

Standard
Flat

の2点だけで考えているのではなく、

Normal Lie Zone

と

Flat Lie Zone

という2つの領域として捉えているのではないでしょうか。

Normal Zoneには、

  • Standard
  • Small ±
  • Big ±

があり、

その中でロフトを、

標準
±1°
±1.5°

に設定する。

一方Flat Zoneには、

  • Flat
  • Flat ±

があり、

その中でロフトを、

標準
±1°

に設定する。

このように考えると、PINGの説明書の構成が非常に分かりやすくなります。

つまり、

まずライ角のゾーンを選び、その中でロフトを選ぶ。

これがTrajectory Tuning 2.0の本来の考え方なのではないでしょうか。

Flatも一つの角度ではなく「ゾーン」

私が最初にTrajectory Tuning 2.0の説明を受けた時、

「Flat Zoneは約2.6°フラット」

と聞いていました。

当時は単純に、

「Flatは2.6°フラットなのだ」

と理解していました。

しかし今回計算してみると、

  • Flat +:約2.56°フラット
  • Flat:3.00°フラット
  • Flat −:約2.56°フラット

となります。

つまり、Flatは一つの固定ライ角ではありません。

約2.6〜3.0°フラットの範囲を持った“Flat Zone”

と考えれば、説明がきれいにつながります。

同じことはNormal Zoneにも言えます。

Normal Zoneでも、

  • Standard:0°
  • Small ±:約0.44°フラット
  • Big ±:約1.5°フラット

と、実際にはライ角が変化しています。

つまり、

Normal Zoneの中でもライ角は一定ではない。
Flat Zoneの中でもライ角は一定ではない。

ということです。

日本の表記では、この考え方が少し見えにくくなる

一方、日本のPINGでは、ライ角をStandardポジションの値として表示しています。

これはスペック表としては非常に分かりやすいです。

しかし、Trajectory Tuning 2.0を

Normal Zone
Flat Zone

という考え方で理解しようとすると、少し説明が難しくなります。

日本の表記では、

「このクラブのライ角は59°です」

と見える。

しかし実際にはスリーブを回せば、

Normal Zoneの中でもライ角は変化し、

Flat Zoneではさらに大きくフラットになります。

つまり59°という数字は、

クラブそのものに固定されたライ角

というより、

Standardポジションに置いた時の基準ライ角

なのです。

USはNormal Zoneの平均値を表示し、

日本はStandardポジションの値を表示する。

同じクラブを、違う基準で表現しているわけです。

日本側が、この「ゾーン」という考え方まで意識してStandard値を採用したのかどうかは分かりません。

ただ、少なくともTrajectory Tuning 2.0の構造を考えると、USのAverage Lie Angleという表記はかなり合理的です。

同じヘッドなのに、ライ角が違って見える理由

結局、

USとJAPANでライ角が違うから、ヘッドが違う

という話ではありません。

同じヘッドでも、

USは、

Normal Zone内の5ポジションの平均ライ角

を表示し、

日本は、

Standardポジションのライ角

を表示している。

だから数字が違って見える。

そして、その表示の違いを追っていくと、

Trajectory Tuning 2.0は、単にロフトを変えるスリーブではなく、Normal ZoneとFlat Zoneという2つのライ角領域の中でロフトを組み合わせる機構

として見えてきます。

公式の説明だけを読んでいた時とは、かなり印象が変わってきませんか。

次回は、このTrajectory Tuning 2.0によるフェースアングルの変化まで考えてみたいと思います。

ハイブリッドの左ミスを考える ― ライ角から考えられること

先週、ジュニア君たちのラウンドを見ていた時のことです。

本来であれば、距離を欲張るよりも方向性を重視して使いたい場面で、ハイブリッドのショットがかなり左へミスしていました。それが今回のシリーズを考えるきっかけになっています。

ハイブリッドは、ロングアイアンの弱点を補うための「お助けクラブ」として位置づけられています。

それなのに、そのクラブでスコアメイクできないのであれば問題です。

特にヘッドスピードの速いゴルファーやハードヒッターにとって、ハイブリッドの大きな弱点となるのが、

左へのミス

です。

一般的には、その理由として、

  • 深い重心
  • ヘッド形状
  • オフセット
  • フェースの返りやすさ

などが挙げられます。

もちろん、それらも関係しているでしょう。

しかし、今回スペックを改めて比較してみると、

それだけでは説明しきれない別の理由

が見えてきました。

ハイブリッドは「ロングアイアンを簡単にしたクラブ」なのか

そもそもハイブリッドは、

ロングアイアンをそのまま簡単にしたクラブ

として作られたというより、

ロングアイアンで打っていた距離を、もっと簡単に出すためのクラブ

として発達してきたと考えた方がよさそうです。

ロングアイアンの弱点は、単にボールが上がりにくいことだけではありません。

短めのクラブ長と小さなヘッドで、必要なキャリーを出すための十分なヘッドスピードを確保しなければならない。

そこでハイブリッドでは、

深い重心でボールを上げやすくし、ヘッドを大きくしてミスに強くし、さらにシャフトを長くしてヘッドスピードを稼ぐ

という方向へ進みました。

今回比較したスペックでは、

クラブ ロフト ライ角 長さ
3I 19° 59.0° 39.0″
HB #3 20° 58.5° 40.25″
FW #5 19° 58.0° 42.5″

ほぼ同じロフトでも、

Iron 39.0″
↓
HB 40.25″
↓
FW 42.5″

と、ハイブリッドはちょうど中間に位置しています。

これはメーカー側から見れば非常に合理的です。

FWほど長くないので当てやすい。

アイアンより長いのでヘッドスピードを出しやすい。

深重心なのでボールも上がりやすい。

これによって、「難しいロングアイアンの代わりになるクラブ」が成立します。

しかし、ここに別の問題が生まれます。

同じロフトでも、手元の高さが違う

ライ角とクラブ長から、ソールを基準通りに置いた時の手元高さを単純な幾何計算で推定すると、

手元高さ ≒ クラブ長 × sin(ライ角)

となります。

19〜20°付近を比較すると、

クラブ 推定手元高さ
FW #5 36.04″
HB #3 34.32″
3I 33.43″

HB #3は、3Iより約0.89インチ手元が高くなります。

ところが、ハイブリッドは見た目も構え方もアイアンに近い。

そのためプレーヤーは、無意識にアイアンと同じような高さへ手元を置こうとします。

しかし実際には、シャフトが1.25インチ長い。

この長さをアイアンと同じ構えの中へ押し込もうとすると、クラブのどこかで帳尻を合わせなければなりません。

手元を下げればトウ側は浮きます。

そしてスイング中には、

長さを処理するためにリリースを早める

という補償動作が起こる可能性もあります。

ハードヒッターでは、このアーリーリリースによってフェースの閉じるタイミングが早くなれば、左へのミスにつながりやすくなります。

FWでは、なぜ同じ問題が目立ちにくいのか

FWもHB以上にシャフトは長い。

しかしFWでは、ライ角もそれに合わせてかなりフラットになっています。

19°前後なら、

FW #5:42.5″・58.0°

です。

長さによって手元は高くなりますが、その一方でライ角はフラットです。

つまり、

長さによる手元高さの上昇

と、

フラットなライ角によるつかまりの抑制

が、ある程度相殺されています。

一方HBは、

3Iより1.25インチしか長くなっていないのに、ライ角は0.5°になっっています。

PINGのTrajectory Tuning 2.0には、ロフト調整だけでなく、最大約3°フラット

までライ角を変えられるポジションがあります。

ですので、実際にポジションを変えてみてください。

次回は、PINGのTrajectory Tuning 2.0について考えます。