今季、米女子ツアー3勝目。ソニー日本女子プロ選手権、欧州ツアーのアラムコ韓国選手権を含めると5勝。
何故、これほどまでに強いのでしょうか?
この動画では、私なりに整理すると、次の3点が強調されていま
- セカンドショットの距離感。 ピンの方向だけでなく、狙った距離に打てれば、バーディの機会を増やしながら大きなミスも減らせます。飛距離の差を補う、得点に直結する技術です。
- 追われても自分の判断を崩さないこと。 相手がイーグルを取ると、無理に取り返したくなるものです。そこで必要以上に攻めず、チャンスを待てる。接戦では、この判断が大きいと思います。
- 自分の勝ち方を理解していること。 飛距離、ショットの精度、パットをどう組み合わせれば最少打数で上がれるか。その組み立てが明確だから、相手のプレーに振り回されにくいのでしょう。
と解説しています。確かにそう見えるのは事実ですが、果たして本当にそうなんでしょうか?
山下美夢有選手の2026年LPGA主要スタッツです。11月3日に確認した掲載値で、シーズン途中の数字です。出典:LPGA日本公式サイトパートナー・ALBA
| 項目 | 数値 | ツアー順位 |
|---|---|---|
| 平均飛距離 | 252.62ヤード | 138位 |
| フェアウェイキープ率 | 80.50% | 4位 |
| パーオン率 | 72.58% | 9位 |
| 平均パット数/ラウンド | 28.79 | 4位タイ |
| パーオン時の平均パット数 | 1.73 | 2位タイ |
| 平均スコア | 69.474 | 3位 |
| バーディ数 | 336 | 2位 |
| 60台のラウンド数 | 36回 | 1位タイ |
| トップ10入り | 13回 | 1位 |
確かに素晴らしいスタッツです。
平均飛距離は1位:ライリー・スミスの288.55ヤードと比べると35.93ヤードの差。
69位のチェン・ペイユン/ステファニー・キリアコウと比べても、263.53ヤードで10.91ヤードの差があります。
ですので、フェアウェイキープ率4位、パーオン率9位という成績からショットに目が行きがちなのが分かります、しかも、物語としては飛ばないのにセカンドショットが凄いからとなれば、インパクトがありますから。
でも、山下美夢有選手のストロークス・ゲインド(SG)各項目を調べると、違う特徴が見えてきます。LPGA公式の掲載値を11月3日に確認しました。出典:LPGA公式
| 項目 | 内容 | SG/ラウンド | 順位 |
|---|---|---|---|
| Off the Tee | パー4・5のティーショット | +0.08打 | 78位 |
| Approach | グリーンを狙うショット | +0.31打 | 51位 |
| Around the Green | グリーン周り | +0.16打 | 60位 |
| Putting | パッティング | +1.63打 | 1位 |
| Tee to Green | パット以外の合計 | +0.55打 | 41位 |
| Total | 総合 | +2.25打 | 3位 |
各項目は公式掲載値。総合と各部門の合計には不一致があり、集計条件は未確認。
パッティング以外も基準以上ですが、突出しているのはパッティングです。
では、ストロークゲインドパッティングの上位10人を調べてみましょう。
2026年LPGA・SGパッティング上位10人です。11月3日に公式ランキング表で確認しました。出典:LPGA公式(Sub Categoryで「SG Putting」を選択)
| 順位 | 選手 | SG/ラウンド | 計測ラウンド数 |
|---|---|---|---|
| 1位 | 山下美夢有 | +1.63打 | 69 |
| 2位 | ガビー・ロペス | +1.05打 | 54 |
| 3位 | ジジ・ストール | +0.95打 | 18 |
| 4位 | ヒラ・ナビード | +0.93打 | 14 |
| 5位 | ジェシカ・ポーバスニック | +0.91打 | 29 |
| 6位 | ハナ・グリーン | +0.88打 | 47 |
| 7位 | アンナ・ノルドクビスト | +0.86打 | 48 |
| 8位 | アルピチャヤ・ユボル | +0.85打 | 42 |
| 9位タイ | メラニー・グリーン | +0.82打 | 54 |
| 9位タイ | キアラ・タンブリーニ | +0.82打 | 50 |
では、山下選手の強さを「セカンドショットの精度」で説明してよいのでしょうか。
ここで比較すべきなのは、パーオン率とSGパッティングではなく、SGアプローチとSGパッティングです。
パーオン率は、規定の打数以内にグリーンに乗せた割合です。しかし、どの距離から打ったのか、ピンまでどれだけ寄せたのかまでは分かりません。一方、SGアプローチは、ショット前後の状況を踏まえて、その一打がどれだけ打数を稼いだかを評価します。
確認した掲載値では、山下選手のSGアプローチは1ラウンド平均+0.31打で51位。SGパッティングは+1.63打で1位です。
ショットでも基準以上に打数を稼いでいます。ただ、他の選手との差を大きく生んでいるのは、パッティングです。
ショットを近くに寄せた価値はSGアプローチに、その残り距離から期待以上に少ない打数でカップに収めた価値はSGパッティングに表れます。したがって、この高いSGパッティングは、単に「ショットが寄るからパット数が少ない」という説明では片づけられません。
ただし、年間のスタッツと、一大会の勝因は分けて考える必要があります。今回のメイバンク選手権では、セカンドショットの距離感が勝利を支えた可能性もあります。その点を確かめるには、大会単独のSGが必要です。ここで言えるのは、今季を通じた山下選手の強さを説明するうえで、パッティングの突出した貢献を外せない、ということです。
動画で語られる距離感や冷静な判断は、勝利の大切な要素でしょう。しかし、年間の数字から強さを説明するなら、中心に据えるべきは、突出したパッティングの貢献です。
「飛ばないけれど、セカンドショットがすごい」。その印象を、データはもう一歩掘り下げます。
山下選手は、ショットでも打数を稼ぎながら、グリーン上でさらに大きな差をつけている。それが、掲載されたSGから読み取れる強さです。
