アメリカのPINGと日本のPINGでは、同じモデルなのにライ角の表記が違います。
この違いを見て、
「USのヘッドと日本のヘッドは別物なのですか?」
と聞かれたことはありません。
多分、そこまでスペック表を見比べている人がほとんどいないのでしょう。
店長のような、少し変わった人しか見ていないのかもしれません。
では実際に、
のスペックを比べてみると、ドライバー、フェアウェイウッド、ハイブリッドで、USの方が約1°フラットなライ角表記になっていることが分かります。
同じヘッドなのに、なぜでしょうか。
USには「平均ライ角」と書いてある
US PINGのスペック表には、次の記述があります。
Lie angle is an average of the five adjustable loft positions indicated on the hosel.
日本語にすると、
「ライ角は、ホーゼルに表示されている5つのロフト調整ポジションの平均値です。」
という意味です。
ここが重要です。
USのライ角表示は、Standardポジションのライ角そのものではありません。
5つのロフト調整ポジションのライ角を平均した値
をカタログスペックとして表示しているのです。
Trajectory Tuning 2.0をもう一度考えてみる
前回、Trajectory Tuning 2.0について、
シャフト軸がホーゼル中心軸に対して約1.5°傾いているのではないか
という仮説を立てました。
8ポジションなので、360°を8分割すれば45°刻みです。
この1.5°の傾きを45°ずつ回転させると、ロフト方向とライ方向への成分は概算で次のようになります。
| 位置 | ロフト変化 | ライ角変化 |
|---|---|---|
| Standard | 0° | 0° |
| Small + | +1.06° | −0.44° |
| Big + | +1.50° | −1.50° |
| Flat + | +1.06° | −2.56° |
| Flat | 0° | −3.00° |
| Flat − | −1.06° | −2.56° |
| Big − | −1.50° | −1.50° |
| Small − | −1.06° | −0.44° |
PING公式のロフト表記は、
- Standard:0°
- Small ±:±1°
- Big ±:±1.5°
- Flat:0°
- Flat ±:±1°
です。
計算値とかなりきれいに一致します。
そしてUS PINGがいう、
「5つのadjustable loft positions」
とは、
- Standard
- Small +
- Small −
- Big +
- Big −
の5ポジションと考えるのが自然です。
つまり、USのライ角表示は、このNormal側5ポジションの平均ライ角ということになります。
Normal Zoneの平均ライ角を計算すると
Standardからのライ角変化は、
- Standard:0°
- Small +:−0.44°
- Small −:−0.44°
- Big +:−1.50°
- Big −:−1.50°
です。
平均すると、
約−0.78°
になります。
つまり、Standardのライ角より、平均すると約0.8°フラットです。
カタログ値は0.5°刻みなどで表示されますから、日本とUSで約1°の差が出ていても不思議ではありません。
ここまで来ると、
USと日本でヘッドが違うのではなく、ライ角の表示方法が違う
と考える方が自然です。
USは「Normal Zone」と「Flat Zone」で考えている
ここから、Trajectory Tuning 2.0の考え方がさらに見えてきます。
USでは、ライ角を単純に、
Standard
Flat
の2点だけで考えているのではなく、
Normal Lie Zone
と
Flat Lie Zone
という2つの領域として捉えているのではないでしょうか。
Normal Zoneには、
- Standard
- Small ±
- Big ±
があり、
その中でロフトを、
標準
±1°
±1.5°
に設定する。
一方Flat Zoneには、
- Flat
- Flat ±
があり、
その中でロフトを、
標準
±1°
に設定する。
このように考えると、PINGの説明書の構成が非常に分かりやすくなります。
つまり、
まずライ角のゾーンを選び、その中でロフトを選ぶ。
これがTrajectory Tuning 2.0の本来の考え方なのではないでしょうか。
Flatも一つの角度ではなく「ゾーン」
私が最初にTrajectory Tuning 2.0の説明を受けた時、
「Flat Zoneは約2.6°フラット」
と聞いていました。
当時は単純に、
「Flatは2.6°フラットなのだ」
と理解していました。
しかし今回計算してみると、
- Flat +:約2.56°フラット
- Flat:3.00°フラット
- Flat −:約2.56°フラット
となります。
つまり、Flatは一つの固定ライ角ではありません。
約2.6〜3.0°フラットの範囲を持った“Flat Zone”
と考えれば、説明がきれいにつながります。
同じことはNormal Zoneにも言えます。
Normal Zoneでも、
- Standard:0°
- Small ±:約0.44°フラット
- Big ±:約1.5°フラット
と、実際にはライ角が変化しています。
つまり、
Normal Zoneの中でもライ角は一定ではない。
Flat Zoneの中でもライ角は一定ではない。
ということです。
日本の表記では、この考え方が少し見えにくくなる
一方、日本のPINGでは、ライ角をStandardポジションの値として表示しています。
これはスペック表としては非常に分かりやすいです。
しかし、Trajectory Tuning 2.0を
Normal Zone
Flat Zone
という考え方で理解しようとすると、少し説明が難しくなります。
日本の表記では、
「このクラブのライ角は59°です」
と見える。
しかし実際にはスリーブを回せば、
Normal Zoneの中でもライ角は変化し、
Flat Zoneではさらに大きくフラットになります。
つまり59°という数字は、
クラブそのものに固定されたライ角
というより、
Standardポジションに置いた時の基準ライ角
なのです。
USはNormal Zoneの平均値を表示し、
日本はStandardポジションの値を表示する。
同じクラブを、違う基準で表現しているわけです。
日本側が、この「ゾーン」という考え方まで意識してStandard値を採用したのかどうかは分かりません。
ただ、少なくともTrajectory Tuning 2.0の構造を考えると、USのAverage Lie Angleという表記はかなり合理的です。
同じヘッドなのに、ライ角が違って見える理由
結局、
USとJAPANでライ角が違うから、ヘッドが違う
という話ではありません。
同じヘッドでも、
USは、
Normal Zone内の5ポジションの平均ライ角
を表示し、
日本は、
Standardポジションのライ角
を表示している。
だから数字が違って見える。
そして、その表示の違いを追っていくと、
Trajectory Tuning 2.0は、単にロフトを変えるスリーブではなく、Normal ZoneとFlat Zoneという2つのライ角領域の中でロフトを組み合わせる機構
として見えてきます。
公式の説明だけを読んでいた時とは、かなり印象が変わってきませんか。
次回は、このTrajectory Tuning 2.0によるフェースアングルの変化まで考えてみたいと思います。
