ALLY BLUE ONSETは、マレットのやさしさとブレードの感覚をつなぐ
PING SCOTTSDALE TEC ALLY BLUE ONSET は、日米で驚異的なパッティング成績を生んでいます。
その理由を読み解く鍵として、PINGのマーティ・ジャートソンが紹介しているのが、Episode 77: Putter Torque featuring Dr. Erik Henrikson です。
このシリーズでは、このエピソードをもとに、パターの重心、トルク、視覚、触覚、フェース向きの再現性を整理していきます。
前回は、引っかける人、押し出す人。パター選びはミスの方向から考えるという話をしました。
パター選びは、ストロークタイプだけでは決まりません。
ストレートに動かすのか。
軽いアークなのか。
強いアークなのか。
もちろん、それは重要です。
しかし、それだけでは足りません。
右へ押し出すのか。
左へ引っかけるのか。
インパクトでフェースが開いているのか。
閉じすぎているのか。
構えた時点で向きがズレているのか。
ストローク中にフェースが戻り切らないのか。
ここまで見て、パターを合わせる必要があります。
なぜなら、最終的にスコアに直結するのは、ストロークの見た目ではなく、ボールがどこへ出るかだからです。
今回は、いよいよこのシリーズの入口に戻ります。

SCOTTSDALE TEC ALLY BLUE ONSET です。
ALLY BLUE ONSETを見たとき、まず目に入るのは独特の形です。
白いヘッド。
大きなマレット形状。
フェース全体が見えやすい構え。
ホーゼルが視界を邪魔しにくいオンセット構造。
そして、EYE Qアライメント。
見た目だけでも、かなり個性的なパターです。
しかし、このパターを単に「白いマレット」や「変わったオンセットパター」として見てしまうと、本質を見落とします。
Episode 77で語られている内容から考えると、ALLY BLUE ONSETの本質は、そこではありません。
このパターの面白さは、
マレットのやさしさを持ちながら、ブレードのようなフェース感覚を残していること
にあります。
つまり、単なる大型マレットではありません。
見える。
感じる。
合わせる。
再現する。
この流れを、現代的な形でまとめたパターだと考えるべきです。
まず、大型マレットとしてのやさしさがあります。
マレット型のメリットは、一般的には分かりやすいです。
ヘッドが大きい。
構えたときに安心感がある。
重心が深い。
慣性モーメントを高めやすい。
芯を外したときにヘッドがブレにくい。
短いパットでフェースの向きが安定しやすい。
パターでミスヒットに強いことは、当然メリットです。
パッティングでは、わずかな打点のズレでも転がりや距離感が変わります。
芯を外したときに、ボールスピードが落ちすぎる。
フェースがブレる。
距離が合わない。
狙ったラインに乗らない。
こうした問題を減らすうえで、大型マレットの許容性は大きな武器になります。
しかし、ここで問題もあります。
大型マレットは、やさしい一方で、手の中のフェース感覚が薄くなることがあります。
ヘッドが大きい。
重心が深い。
慣性モーメントが高い。
フェースが動きにくい。
これは安心感につながります。
しかし人によっては、ヘッドがどこにあるのか、フェースがどこを向いているのか、手の中で感じにくくなることがあります。
このシリーズで繰り返してきたように、パターはただ「動かない」ことが正解ではありません。
プレーヤーがフェースを感じられることが重要です。
一方、ブレード型には別の魅力があります。
ブレード型は、ヘッドが小さく、重心も比較的浅く、フェースの向きを手の中で感じやすい。
自分でフェースを開く。
自分でフェースを戻す。
ヘッドの重さや向きが手に伝わる。
距離感を出しやすい。
操作している感覚がある。
こうした理由で、今でもブレードを好むプレーヤーは多くいます。
特にフェースローテーションを使うプレーヤーにとって、ブレードの感覚は非常に大切です。
しかし、ブレードにはミスヒットへの許容性という点で限界があります。
芯を外したときにブレやすい。
打点ズレが距離や方向に出やすい。
短いパットでわずかなフェース角のズレが結果に出やすい。
つまり、ブレードには感覚の良さがある。
マレットには許容性の高さがある。
多くのゴルファーは、この間で迷います。
やさしさを取るのか。
感覚を取るのか。
この問いに対して、ALLY BLUE ONSETはかなり面白い答えを出しているように見えます。
Episode 77では、ALLY BLUE ONSETについて、非常に重要な説明がされています。
このパターは、オンセット構造によってシャフト軸を重心に近づけています。
完全に重心と一致させているわけではありません。
ゼロトルクにしているわけでもありません。
しかし、通常のマレットよりも、手の中の感覚がブレードに近づくように設計されています。
マーティ・ジャートソンとエリック・ヘンリクソンの会話では、このモデルは、マレットでありながら、手の中ではAnserやB60に近い感覚を持つという趣旨の話が出てきます。


これは非常に重要です。
つまり、ALLY BLUE ONSETは、
マレットの形をしたブレード感覚のパター
と見ることもできます。
もちろん、完全にブレードと同じではありません。
ヘッドサイズも重心深度も慣性モーメントも違います。
しかし、手の中で感じるフェースの情報を、できるだけ消さないようにしている。
ここが、このパターの核心です。
オンセット構造の意味も、ここで考える必要があります。
一般的なオフセットパターでは、シャフトやホーゼルがフェースより前に出るように見えます。
これは多くのパターで見慣れた形です。
Anser型のプラマーズネックも、オフセットによってフェースの見え方や重心の引かれ方を作っています。
一方、ALLY BLUE ONSETでは、フェース全体が非常に見えやすくなっています。
ホーゼルが視覚的に邪魔になりにくい。
トップレールが見える。
フェース面が見える。
ボールに対して、どこを向いているのかが分かりやすい。
これは視覚的なメリットです。
しかし、オンセットの意味は見た目だけではありません。
シャフト軸と重心の関係が変わることで、ストローク中に手に入ってくる情報も変わります。
つまりオンセットは、
見え方の設計
であり、同時に
感じ方の設計
でもあります。
ここを理解すると、ALLY BLUE ONSETは単なる奇抜な形ではなくなります。
さらに、Episode 77では、オンセットが左へのミスを抑える選択肢になり得ることも語られています。
ここは、前回の「ミスの方向を見る」という話につながります。
フェースバランス系のマレットを使っている。
構えやすい。
安心感もある。
しかし、短いパットで左に引っかける。
フェースが被って届く。
ボールが左へ出る。
こういう人がいます。
では、ヒールシャフトのパターにすればよいのか。
それも一つの方法です。
しかし、ヒールシャフトにすると、ストローク中のフェース感覚が大きく変わることがあります。
トルクの感じ方も変わる。
フェースローテーションの感覚も変わる。
マレットの安心感も減る場合があります。
そこで、オンセットという選択肢が出てきます。
マレットの安心感は残す。
フェース全体の見やすさも残す。
しかし、デリバリーとしては左へのミスを抑える方向に働く可能性がある。
つまり、ALLY BLUE ONSETは、単に「マレットが好きな人向け」ではありません。
フェースバランスのマレットでは左に行く。
でもブレードや強いトゥハングには行きたくない。
その中間にある新しい選択肢。
こう考えると、このパターの位置づけがかなり明確になります。
ここで、日米での結果に戻ります。
日本では、SCOTTSDALE TEC ALLY BLUE ONSETを使用した鈴木愛選手のパッティングが注目されました。
アメリカでは、Wyndham Clarkがこのパターで驚異的な Strokes Gained: Putting を記録しました。
もちろん、プロの結果をそのまま一般ゴルファーに当てはめることはできません。
しかし、トッププロほど、パターに対する要求は厳しい。
構えたときに、少しでも違和感があれば使わない。
フェースがわずかに違う方向を向けば結果に出る。
1メートル、2メートルのパットで、その差がスコアに出る。
試合では、その1打が勝敗を分ける。
そのレベルで結果が出たということは、このパターが単に目立つだけのモデルではないことを示しています。
少なくとも、使った選手にとって、
構えやすい。
フェースを合わせやすい。
ストローク中に感覚がある。
インパクトでフェースを再現しやすい。
ミスの方向を抑えやすい。
こうした要素がうまく噛み合った可能性があります。
このパターをお客様に説明するときも、単に「白くて見やすいですよ」だけでは足りません。
もちろん、それは事実です。
白いヘッドは、グリーン上で輪郭が出やすい。
黒いアライメントとのコントラストも強い。
EYE Qアライメントによって、視線の置き場を作りやすい。
しかし、それだけでは、このパターの本質には届きません。
説明すべきなのは、次の部分です。
マレットのやさしさを持ちながら、フェースを感じやすい。
オンセットによって、フェース全体が見えやすい。
ブレードに近い感覚を残しながら、マレットの許容性を持っている。
左へのミスを抑える選択肢になる可能性がある。
視覚と触覚の両方から、フェース向きの再現性を助ける。
ここまで説明すると、ALLY BLUE ONSETの意味が伝わります。
パター選びでよくあるのは、こういう会話です。
「マレットはやさしいですよね」
「ブレードは感覚がいいですよね」
これは間違いではありません。
しかし、もう一歩進めたいところです。
本当に見るべきなのは、
その人がどのようにフェースを感じているか
その人がどちらへミスしているか
その人に必要な抵抗はどれくらいか
その人が構えたときに、フェースをスクエアに向けられるか
インパクトでフェースがどちらへ届くか
です。
ALLY BLUE ONSETは、この問いに対して、非常に現代的な答えを持っています。
マレットの許容性。
ブレード的な感覚。
オンセットによる見やすさ。
左へのミスを抑える可能性。
EYE Qアライメントによる視線の安定。
これらをひとつのヘッドにまとめようとしている。
だから、日米で結果が出ていることにも意味があります。
今回の結論です。
ALLY BLUE ONSETは、マレットのやさしさとブレードの感覚をつなぐパターです。
大型マレットの安心感があります。
高い許容性があります。
フェース全体が見えやすい構えがあります。
視線を安定させるアライメントがあります。
しかし、それだけではありません。
手の中でフェースを感じるための情報を残している。
重心とシャフト軸の関係によって、マレットでありながらブレードに近い感覚を持たせている。
オンセットによって、ミスの方向に対する新しいフィッティングの選択肢を作っている。
つまり、これは単なる新形状ではありません。
フェースを感じ、フェースを合わせ、フェースを再現するための現代的なパター設計です。
SCOTTSDALE TEC ALLY BLUE ONSETが示しているのは、パター選びの新しい見方です。
やさしさか、感覚か。
その二択ではなく、
やさしさの中に、フェースを感じる情報を残す。
ここに、このパターの価値があります。
次回は、このシリーズの最終話です。
パター選びは、好みの問題ではありません。
スコアを守るためのフィッティングです。
最終話では、
パター選びは、スコアメイクである
というテーマで、シリーズ全体をまとめます。
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