第1話 ライ角は、フェースの向きではなく「手元の高さ」である

左に低く飛ぶ人が、アップライトで改善する理由

左に低く飛ぶ傾向がある人に、アップライトなクラブをすすめると、症状が改善することがあります。

一見すると、不思議に思われるかもしれません。

なぜなら、一般的には、

アップライトにすると左へ行きやすい

と言われているからです。

左に飛ぶ人に、さらに左へ行きやすいはずのアップライトなクラブをすすめる。
普通に考えれば、症状が悪化しそうに見えます。

しかし、実際のフィッティングでは、逆のことが起きる場合があります。

左に低く飛んでいたボールが、少し高くなり、左へのひっかけが弱まり、センター方向へ戻ってくる。

こういうケースがあります。

では、なぜそんなことが起きるのでしょうか。

理由は、ライ角を単に、

フェースの向きを変える調整

として見ていると分かりません。

ライ角には、もう一つ大きな役割があります。

それは、

手元の高さを変える

という役割です。


ライ角が変わると、まず手元の高さが変わる

多くの方は、ライ角を方向性の調整だと考えています。

アップライトにすると左。
フラットにすると右。

もちろん、これは間違いではありません。

クラブ単体で見れば、ライ角がアップライトになれば、ロフトのあるクラブほどフェース面は左を向きやすくなります。
その意味では、アップライトは左方向へ影響する調整です。

しかし、実際にクラブを振るのは人間です。

人間がクラブを振る以上、ライ角が変われば、フェースの向きだけではなく、構え方やスイングの通り道も変わります。

特に大きいのが、手元の高さです。

たとえば7番アイアンで、ライ角を1度アップライトにすると、手元はおおよそ7〜8mm高くなります。

たった8mmと思うかもしれません。

しかし、ゴルフスイングでは、この8mmがかなり大きい。

手元が8mm変われば、

  • 腕の下がり方
  • 肘の位置
  • 前傾の保ち方
  • 手元の通り道
  • シャフトプレーン
  • ヘッドの入り方
  • ロフトの残り方

まで変わる可能性があります。

つまり、ライ角とは単にフェースの向きを変える調整ではありません。

クラブをどの手元高さで使わせるかを決める調整

でもあるのです。


左に低く飛ぶ原因は「つかまりすぎ」だけではない

ここで大切なのは、左に低く飛ぶ原因を単純に考えないことです。

左に飛ぶ。
だからフェースが返りすぎている。
だからフラットにする。

この判断だけでは危険な場合があります。

なぜなら、左に低く飛ぶ人の中には、実際には、

  • 手元が低くなりすぎている
  • クラブが外から入っている
  • ロフトが立ちすぎている
  • フェースを手で合わせている
  • 力のベクトルが左下へ向いている

という状態の人がいるからです。

この場合、左に飛んでいる原因は、単に「クラブがアップライトだから」ではありません。

むしろ、手元が低くなりすぎ、クラブが外から入り、ロフトが立ち、フェースを手で左へ向けている。
その結果として、低いひっかけが出ているわけです。

このタイプの人に、さらにフラットなクラブを渡すとどうなるでしょうか。

手元はもっと低くなりやすくなります。
クラブはさらに外へ逃げやすくなります。
それを戻そうとして、さらに手を使います。
結果として、もっと低い左球になる可能性があります。


アップライトにすると、左への構造が弱まることがある

このような人にアップライトなクラブを持たせると、手元の高さが少し上がります。

手元が上がると、クラブが体の近くを通りやすくなります。
クラブが体の近くを通ると、外からかぶせる動きが弱まることがあります。
外から入る力が弱まると、ロフトが残りやすくなります。
ロフトが残ると、ボールは少し高くなります。
フェースを手で合わせる必要も減ります。

その結果、左に低く飛んでいたボールが、センター方向へ戻ることがあります。

ここで起きているのは、

アップライトにしたから左へ行った

ではありません。

むしろ、

アップライトにしたことで、左へ低く飛ばすスイング構造が弱まった

ということです。

これが、フィッティングで実際に起こる面白い現象です。


ライ角は「方向」ではなく「入力条件」

ライ角を方向だけで見ると、

左へ行くならフラット。
右へ行くならアップライト。

という単純な判断になります。

しかし、ライ角は方向を後から補正するだけのものではありません。

ライ角は、その人がクラブをどの高さで使うかを決める、入力条件でもあります。

手元の高さが変われば、クラブの通り道が変わります。
クラブの通り道が変われば、ヘッドの入り方が変わります。
ヘッドの入り方が変われば、ボールに加わる力のベクトルが変わります。

つまり、ライ角は、

フェースの向きだけでなく、インパクトへ向かう力の向きを整える調整

でもあるのです。

ここを理解しないと、ライ角フィッティングは非常に危険になります。


PINGカラーコードチャートが見ているもの

PINGのカラーコードチャートは、単なるライ角表ではありません。

身長と、手首から床までの長さをもとに、クラブ長とライ角の基準を出します。

これは、単に、

「この人は左に行きそうだからフラット」
「この人は右に行きそうだからアップライト」

と決めているわけではありません。

その人の体格に対して、

クラブをどの手元高さで使うのが自然か

を見ているわけです。

ここが非常に重要です。

PINGは公式に、

「アウトサイドインの人はアップライトにしましょう」

とは言っていません。

しかし、カラーコードチャートそのものが、手元高さの問題をかなり吸収しています。

身長が高い人。
腕が短い人。
前傾が浅くなりやすい人。
手元が低くなりすぎるとクラブが外から入りやすい人。

こうした条件を、静的な寸法からまず整理し、そこから実際の試打で微調整していく。

つまり、PINGのカラーコードチャートは、ライ角表であると同時に、

手元高さの初期設定表

でもあるのです。


まとめ

左に低く飛ぶ人に、アップライトなクラブをすすめると改善することがあります。

これは一見、常識に反しているように見えます。

しかし、ライ角をフェースの向きだけでなく、手元の高さとして見ると理解できます。

ライ角が変わる。
手元の高さが変わる。
クラブの通り道が変わる。
ヘッドの入り方が変わる。
ボールに加わる力のベクトルが変わる。

だから、アップライトにしたことで、左へ行くのではなく、左へ低く飛ばしていた構造そのものが弱まることがある。

ここが、ライ角フィッティングの非常に大切なところです。

ライ角とは、フェースの向きではありません。

ライ角とは、手元の高さである。

この視点を持つと、PINGのカラーコードチャートの意味も、長いクラブが難しくなる理由も、かなり見え方が変わってきます。

次回は、

アップライトにすると、なぜ低いひっかけが減ることがあるのか

を、もう少し詳しく考えていきます。

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