ミニドライバーは、なぜ登場したのか?

前回、Thriverについて書きました。

店長の場合、ドライバーと3Wの間にもう1本クラブを入れる必要性を、それほど感じていないという話です。

しかし、ツアープロの世界ではミニドライバーを使用する選手が増え、各メーカーからも新しいモデルが登場しています。

そもそも、ドライバーはヘッドを大きくすることで進化してきました。

それなのに、なぜ今になって小さなドライバーが必要になったのでしょうか?

少し考えてみたいと思います。

ドライバーは大きくなる一方だった

かつて、ドライバーのヘッドは今よりずっと小さなものでした。

パーシモンからメタル、そしてチタンへ。

素材の進化とともに、ドライバーのヘッドは大型化してきました。

その目的の一つが、慣性モーメントを大きくすることです。

ヘッドの慣性モーメントが大きくなれば、芯を外したときにもヘッドが回転しにくくなり、ボール初速や方向性の損失を抑えやすくなります。

そして、ヘッド体積はルール上限の460ccに達しました。

現在では460ccが当たり前になっています。

ところが、ここで逆の動きが始まります。

わざわざヘッドを小さくしたドライバーが登場したのです。

ミニドライバーの出発点は3Wだった?

2013年のマスターズで、フィル・ミケルソン選手が「フランケンウッド」と呼ばれるクラブを使用して話題になりました。

通常の3Wより大きなヘッドを持ち、ティショットでの使用を意識したクラブです。

翌2014年には、テーラーメイドからSLDR S Mini Driverが登場します。

ヘッド体積260cc、クラブ長43.5インチ。

当時のドライバーよりかなり小さく、短いクラブでした。

このクラブの開発背景には、3Wをフェアウェイからだけでなく、ティショットで使用するゴルファーが多いという着眼点がありました。

それならば、ティショットに適した3Wを作ればよいのではないか。

つまり、ミニドライバーは単純にドライバーを小さくしたのではなく、3Wの役割を見直すところから生まれたとも言えるわけです。

しかし、ミニドライバーがすぐに一般化したわけではありません。

一時は目立たなくなったカテゴリーでしたが、2019年のOriginal One、2021年の300 Mini Driver、2023年のBRNR Mini Driverと、再び存在感を高めてきました。

では、なぜなのでしょうか?

ツアープロの飛距離が伸びた

一つは、ツアープロの飛距離が伸びたことだと思います。

現在、300ヤードという飛距離はツアープロにとって決して珍しいものではありません。

もちろん全員が同じように飛ばすわけではありませんが、トップクラスの飛ばし屋さんになれば、300ヤードを大きく超えるショットもあります。

これによって、コース攻略の考え方が変わってきました。

例えば、以前ならドライバーで打って、残りをショートアイアンで狙うようなホールでも、現在では3Wで十分な距離まで運べることがあります。

ドライバーを使う必要がなくなるわけです。

しかし、それだけではありません。

コースをセッティングする側も、選手の飛距離に対応しなければなりません。

ツアーコースの設定も変わってきた

ツアーコースは、選手の飛距離が伸びるにつれて、単純に距離を長くするだけでは対応できなくなっています。

もちろん、500ヤード近いパー4など、距離によって難易度を高めるホールもあります。

一方で、300ヤード前後の短いパー4も、非常に面白い存在です。

例えば、TPCスコッツデールの17番は、300ヤード台前半の短いパー4として知られています。

飛ばし屋さんなら、ドライバーで十分にグリーンを狙える距離です。

しかし、グリーン周辺には池や難しい地形があり、ただ飛ばせばよいというホールではありません。

ここで選手は選択を迫られます。

ドライバーでグリーンを狙うのか。

それとも、距離を抑えて安全な場所に運び、ウェッジでバーディを狙うのか。

300ヤードという距離が、選手によってはドライバーで思い切り打つには短すぎる。しかし、3Wでは少し足りない。

そういう設定が成立するわけです。

しかも、グリーンの近くまで行けば必ず有利になるとは限りません。

グリーンの手前が広くても、奥は池。あるいは左右に深いバンカーがある。

そうなると、飛距離の最大値ではなく、ボールを止めたい距離に運ぶ能力が求められます。

これまでドライバーは、できるだけ遠くへ飛ばすことを目的として進化してきました。

ところが、現代のツアーコースでは、ドライバーの最大飛距離を使わない方が有利になる場面もあるのです。

スコアの分散が大きいホール

ここでもう一つ、コースをセッティングする側の視点から考えてみます。

300ヤード前後の短いパー4は、統計でいうところの「スコアの分散」が大きくなりやすいホールでもあります。

イーグルもあれば、ダブルボギーもある。

選手の判断やショットの結果によって、スコアに大きな差が生まれる可能性があるのです。

そして、このようなホールは、トーナメントの興行としての価値を高める要素にもなります。

特に終盤に配置されていれば、一打で順位が大きく入れ替わる可能性があります。

安全にレイアップするのか。

それとも、リスクを承知でグリーンを狙うのか。

その選択自体が、観客にとっての見どころになるわけです。

つまり、短いパー4は単に距離が短いホールではありません。

飛距離が伸びた現代のツアープロに、あえて難しい選択を迫るホールとも言えます。

そして面白いのは、コースをセッティングする側がリスクとリターンの差を大きくしようとする一方で、選手はクラブ選択によって、そのリスクをコントロールしようとすることです。

この関係も、ミニドライバーが注目される背景の一つではないでしょうか。

300ヤードをどう打つのか?

例えば、ドライバーの飛距離が330ヤードの選手がいたとします。

その選手が300ヤード先の目標を狙いたい場合、どうすればよいのでしょうか?

ドライバーで30ヤード落として打つ。

3Wで思い切り打つ。

あるいは、300ヤードを打つための専用クラブを使う。

どの方法が最も安定するのでしょうか?

単に飛距離を落とすだけなら、ドライバーを短く持ったり、スイングを調整したりする方法もあります。

しかし、スイングの速度や力加減が変われば、クラブの動きやリリースのタイミングも変わる可能性があります。

だからといって、3Wを思い切り振れば必ず方向性が良くなるわけでもありません。

ここで、前回書いたクラブ全体の慣性モーメントの問題が出てきます。

3Wは本当に方向性が良いのか?

一般的に、3Wはドライバーより短いので方向性が良いと言われます。

確かに、クラブが短くなれば操作しやすくなる面はあります。

しかし、店長は必ずしもそれがメリットになるとは考えていません。

クラブ全体の慣性モーメントは、クラブの長さに大きく影響されます。

シャフトが短くなると、回転軸からクラブ各部までの距離が短くなり、慣性モーメントは小さくなる方向に働きます。

もちろん3Wの方がヘッドは重いので、実際の慣性モーメントは重量配分を含めて比較しなければなりません。

しかし、クラブ全体の慣性モーメントが小さいほど、同じトルクに対して回転運動は変化しやすくなります。

店長の場合、3Wをティアップして気持ちよく振ると、ヘッドが手元よりも先行して、コントロールを失うことがあります。

短いから操作しやすい。

しかし、操作しやすいからこそ、意図しない動きも起こりやすい。

それならば、慣性モーメントの大きいドライバーを少し短く持って、弾道を抑えて打った方がコントロールしやすいというのが店長の感覚です。

ミニドライバーは何を解決するのか?

ここでミニドライバーの存在意義を考えてみます。

通常の3Wよりも大きなヘッド。

通常のドライバーよりも短いシャフト。

ヘッドの慣性モーメントを確保しながら、クラブ全体の慣性モーメントや長さを調整することができます。

ただし、ヘッドを大きくしたからといって、クラブ全体の慣性モーメントまで大きくなるとは限りません。

重要なのは、ヘッド単体の慣性モーメントと、クラブ全体の慣性モーメントは別のものだということです。

そして、もう一つ重要なのが飛距離です。

ツアープロが通常のドライバーでは330ヤード、3Wでは280ヤード飛ばすとします。

ここに300ヤード前後を狙えるクラブがあれば、コース攻略の選択肢が増えます。

ウェッジのロフト間を埋めるギャップウェッジと同じように、ドライバーと3Wの間を埋めるギャップドライバーです。

ミニドライバーは、単にドライバーより短くて扱いやすいクラブというだけではなく、コース攻略のために必要な飛距離を打ち分けるクラブとして考えることができるのではないでしょうか。

飛ばせるからこそ、飛ばさないクラブが必要になる

前回、S.K.ホ選手が所属コースの18番で、ドライバーではなく5Wを使っていたという話を書きました。

ドライバーを使えば2オンを狙えるホールでも、5Wでティショットを打ち、簡単に3オンしてバーディを取ってしまう。

これは、飛ばせるからといって飛ばす必要はないということです。

現在のツアープロにも同じことが言えると思います。

ただし、昔と違うのは、その飛距離の大きさです。

300ヤードを超えて飛ばせる選手にとっては、300ヤードをどのように打つかという問題が生まれます。

店長のように、ドライバーで220ヤードを打てれば十分というゴルファーとは、必要とするクラブの役割が違ってくるわけです。

アマチュアゴルファーにも必要なのか?

では、一般のアマチュアゴルファーにとって、ミニドライバーは必要なのでしょうか?

例えば、普段プレーするコースに240ヤード程度のパー4がたくさんあれば、ミニドライバーは本当の意味でブームになるかもしれませんね。

しかし、白マークから240ヤードのパー4があるとすれば、かなりトリッキーなコースでしょう。

一般的なコースでは、少し狭く感じるからといってドライバーをミニドライバーに持ち替えることが、本当にスコアにつながるのでしょうか?

もちろん、ドライバーでは大きく曲がり、ミニドライバーなら安定するゴルファーもいるでしょう。

しかし、単に飛距離を落として安全だと思っているだけなら、かえってスコアを犠牲にしている可能性もあります。

なぜなら、ティショットの飛距離が短くなれば、その分、次のショットが難しくなるからです。

必要なのは、ミニドライバーなら曲がらないという思い込みではなく、どれだけ飛距離を失い、どれだけショットの分散が小さくなるのかという比較です。

例えば、ドライバーで240ヤード、ミニドライバーで220ヤードというゴルファーがいたとします。

その20ヤードの差によって、次のショットで持つクラブが変わります。

ミニドライバーに持ち替えることで、OBやペナルティの危険性が十分に減るのであれば意味があります。

しかし、方向性が大して変わらないのであれば、単に20ヤードを失っているだけということにもなります。

つまり、飛距離を落とすことと、スコアが良くなることは同じではないのです。

そして、これからどうなるのか?

現在、ゴルフボールの飛距離規制が議論されています。

もしボールの飛距離が短くなり、ドライバーと3Wの飛距離差も縮小するとすれば、ミニドライバーの必要性は変わってくるかもしれません。

ただし、飛距離差が必ず縮まるとは限りませんし、特定の距離を打ちたいという需要がなくなるわけでもありません。

結局のところ、ミニドライバーが定着するかどうかは、そのクラブが何ヤード飛ぶかではなく、コース攻略の中でどのような役割を果たせるかによって決まるのでしょう。

もちろん、ブームになれば一定数は売れると思います。

しかし、売れていることと、そのクラブが本当に必要であることは別の話です。

店長は、今回のミニドライバーブームを単なるクラブの流行としてではなく、飛距離の進化によって生まれた、新しいクラブセッティングの考え方として見ています。

そして、忘れてはいけないのは、ツアープロと一般のアマチュアゴルファーでは、必要とするクラブの役割が違うということです。

ツアープロが300ヤードを打つために選ぶクラブが、一般ゴルファーすべてにとって必要なクラブとは限らないのです。

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