シェフラーのボールストライクがなぜうらやましいのか?

ここからが本題です。

フェデックスカップ・プレーオフ最終戦「ツアー選手権」が開催されました。

3日目を終えて首位に立っていたホブランを最終日に逆転し、シェフラーが年間王者に輝きました。

大会後、ホブランはシェフラーについて、こう述べています。

“He knows where the ball’s going.”

「彼は、ボールがどこへ行くか分かっている」

一方、自分については「行方を予測できる持ち球が欲しい」と話しています。

最初の3日間は、決してスイングの感触が良かったわけではありません。それでも、ボールは真っすぐ飛んでいました。

つまりホブランには、当たりがそれほど良くなくても、ボールさえ真っすぐ飛んでくれればゲームを組み立てられる、という自信があったのです。

以前、アプローチに苦しんでいた頃のホブランを考えれば、これは相当な成長です。

ところが最終日は、同じようにスイングの感触が良くなかったにもかかわらず、今度はボールが曲がってしまいました。

一方、シェフラーのボールは、最後まで狙った方向へ飛び続けていました。

シェフラーが持っている「ボールの行方を予測できるショット」を自分も手に入れたい。それが手に入れば、自分も年間王者になれる。

ホブランの言葉には、そのような意味が含まれているのだと思います。

では、なぜシェフラーはボールの行方を予測でき、ホブランは同じスイングの感触でも、結果が変わってしまうのでしょうか。

ここまで読んだ皆さんは、

「シェフラーはスインガーで、ホブランはヒッターだから」

と思うかもしれません。

しかし、それだけではありません。

史上最強のボールストライカーといえば、皆さんご存じのモー・ノーマンです。

店長は、モー・ノーマンをどちらかといえばヒッターに分類しています。

モー・ノーマンをスインガーだと説明する人もいます。しかし、彼のクラブはトップから斜め下へ移動しています。

支点を中心とした単純な振り子であれば、クラブは円弧に沿って動きます。ところがモー・ノーマンは、ベースからクラブまでの距離を変えながらボールを打っています。

したがって、店長の定義ではヒッターです。

それでもモー・ノーマンは、ボールの行方をほぼ完全に予測できたといわれるほど正確でした。

つまり、

「ヒッターだからボールが曲がる」

ということではありません。

では、同じヒッターでありながら、モー・ノーマンとホブランでは何が違うのでしょうか。

違いは、クラブに力を伝えるために使っている支点の数です。

モー・ノーマンは、左肩を一つの支点としてクラブを動かしています。店長には、それ以外の支点を積極的に組み合わせているようには見えません。

一方、ホブランは複数の支点を組み合わせ、それぞれの動きをクラブの加速につなげています。

一つの支点でクラブを動かす場合、運動の構造は比較的単純です。

二つの支点を組み合わせれば、それぞれの動きを加算できるため、より大きなクラブスピードを生み出せます。しかし同時に、二つの動きを正確に同調させなければなりません。

三つの支点を組み合わせれば、さらに大きなスピードを生み出せますが、組み合わせは一層複雑になります。一つでもタイミングがずれれば、クラブの位置やフェースの向きも変わってしまいます。

クラブスピードを上げる可能性が大きくなる一方で、ばらつきが生まれる可能性も大きくなるということです。

もちろん、ホブランはPGAツアーのトップレベルで戦う選手です。並外れた運動能力を持っているため、普段は複数の支点を高い精度で同調させ、ボールを真っすぐ飛ばすことができます。

しかし、調子が悪くなり、支点同士のズレがある一線を越えると、急にクラブのコントロールが難しくなります。

最初の3日間は、スイングの感触が良くなくても、支点同士のズレが許容範囲に収まっていたのでしょう。

ところが最終日は、そのズレが許容範囲を越えた。その結果、それまで真っすぐ飛んでいたボールが、横へ曲がり始めたのだと考えられます。

一方、モー・ノーマンのように、一つの支点を基準としてクラブを動かすヒッターは、運動の構造が単純です。そのため、非常に高い再現性を得ることができます。

そして、スインガーであるシェフラーのボールが正確に飛んでいくのも、クラブの運動を支配する中心的な支点が一つだからです。

モー・ノーマンとシェフラーは、一方がヒッター、もう一方がスインガーです。

クラブに力を与える方法は異なります。

しかし、

「クラブの運動を支配する支点が一つである」

という点では共通しています。

正確性を決めるのは、スインガーかヒッターかという分類だけではありません。

クラブを動かすために、いくつの支点を組み合わせているのか。

そして、その運動がどれだけ単純に構成されているのかが重要なのです。

実際、シェフラーの今季の成績を見ると、その正確性が数字にも表れています。

  • Scoring Average:1位
  • SG: Total:1位
  • SG: Approach the Green:2位
  • Greens in Regulation Percentage:1位

大事な場面でパットを決めきれない印象のあったシェフラーですが、今季はSG: Puttingでも6位。ショットだけでなく、ほとんど隙のない選手になっています。

では、ここでもう一つ疑問が生まれます。

モー・ノーマンもシェフラーも、クラブの運動を支配する支点は一つです。どちらも、ボールの行方を予測できるほど正確です。

それにもかかわらず、なぜ二人の飛距離には違いが生まれるのでしょうか。

シェフラーのドライビングディスタンスは312.7ヤードで35位。飛距離だけでツアーを圧倒しているわけではありませんが、PGAツアーの平均を十分に上回っています。

一つの支点による正確性を維持しながら、シェフラーはどこから現代のPGAツアーで戦えるクラブスピードを生み出しているのでしょうか。

モー・ノーマンとシェフラーの飛距離を分けているものは何なのか。

次回は、その違いについて考えてみたいと思います。

 

 

 

 

 

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