第4話 抑えられるから、もっと上げてみる

前回まで、なぜBLUEPRINT Tではボールを抑えて打つことが容易だったのかを考えてきました。

フィッティング中、お客様にボールを抑えて打つことについて確認すると、

「抑えるのは容易です」

という答えが返ってきました。

ここまでくると、フィッターとしては、

「それなら、とことんやってみましょう」

ということになります。

このお客様は、自分でダイナミックロフトを減らすことができます。

必要であれば、ボールを低く抑えることもできる。

それなら、クラブ側まで低い弾道を作る必要はありません。

むしろ逆です。

ダイナミックロフトをとことん減らしても、ボールが十分な高さまで上がればいい。

そう考えました。

飛距離ではなく「高さ」を見る

ここから、シャフト選びが始まりました。

今回、シャフトを選ぶときに基準にしたのは、飛距離ではありません。

弾道の高さです。

低く打つ能力は、すでにお客様が持っています。

ならばクラブに求めるのは、その能力をさらに強くすることではありません。

反対側の余裕を作ることです。

つまり、

もっと高く打てるようにする。

高いところまで使えるようになれば、そこから必要な高さまで自分で下げることができます。

低い弾道しか打てないクラブよりも、

高くも打てる。

低くも打てる。

その方が、このお客様が持っている能力をより広い範囲で使うことができます。

候補は二つ

そこで、重量を確保しながら高さを出せる可能性のあるシャフトを考えました。

候補になったのが、

N.S.PRO MODUS³ TOUR 130

そして、

Project X LZ

です。

今回のお客様が希望する重量帯まで考えると、Project X LZが候補になりました。

さらに話を聞いてみると、以前にもProject X LZを使用したことがあるとのことでした。

これは試してみる価値があります。

実際に打っていただきました。

すると、

ぴったりとはまりました。

高さを出したら、飛距離も出た

面白いのはここからです。

Project X LZを試した目的は、飛距離を伸ばすことではありません。

あくまで、

弾道の高さを確保すること

でした。

ところが結果として、飛距離も伸びました。

しかも、曲がらない。

そして現在、BLUEPRINT Tの9番アイアンで150ヤード。

お客様からは、

「30代の頃の飛距離が戻った」

という言葉まで出てきました。

なぜ、高さを求めた結果として飛距離まで戻ったのでしょうか。

ここには、今回のフィッティングを考える上でもう一つ重要な要素があります。

シャフトです。

クラブの性能を引き出すのか、ゴルファーの能力を引き出すのか

クラブフィッティングというと、

「このヘッドは飛ぶ」

「このシャフトはつかまる」

「このシャフトは球が上がる」

といった、クラブそのものの性能を比較することが多いと思います。

もちろん、それも重要です。

しかし、今回のフィッティングで私が見ていたのは、少し違うものでした。

このお客様は、何ができるのか。

ボールを抑えることができる。

ダイナミックロフトを減らすことができる。

クラブを自分のタイミングでリリースすることができる。

そうした能力をすでに持っています。

ならば、クラブに求めるべきなのは、その代わりをすることではありません。

その能力を、もっと引き出すことです。

BLUEPRINT Tによって、自分のタイミングでクラブを動かせるようになった。

そして、そこへProject X LZによって高さを加えた。

低くする能力を持っている人に、さらに低くするクラブを渡したわけではありません。

低くできる人だからこそ、高さを与えたのです。

結果として、お客様が使える弾道の範囲が広がりました。

そして、その中で通常のショットを打ったとき、飛距離まで戻ってきた。

今回起きたことを考えると、

フィッティングとは、クラブの性能をゴルファーに使ってもらうことだけではない。

むしろ、

ゴルファーがすでに持っている能力を、クラブによって引き出すこと。

それがフィッティングの一つの役割なのではないかと思います。

ただ、まだ一つ疑問が残っています。

なぜProject X LZだったのでしょうか。

同じように重量のあるシャフトは他にもあります。

単純に「球が上がるシャフトだったから」というだけでは、今回の結果を十分に説明できません。

Project X LZという名前の「LZ」は、

Loading Zone

を意味します。

次回は、このLoading Zoneが何をしているのか。

そして、お客様のリリースとシャフトの動きがどのようにつながったのか。

Project X LZそのものを、もう少し詳しく見てみたいと思います。

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