普段は、
「それ、何を言っているんですか?」
と、メーカーのマーケティングに突っ込むことが多い店長です。
しかし今回は、褒めなくてはなりません。
昨年末、i240の日本仕様をコースで試打しました。
打った瞬間に感じたのは、
これは、かなり完成度の高いアイアンだぞ。
ということでした。

ヘッドはコンパクトで、構えた姿は競技志向。
それでいて、必要以上に難しくありません。
ボールはしっかり上がり、飛距離も出る。
そして何より、グリーン上でボールを止められる。
ところが、価格の影響もあるのでしょうか。
実際のマーケットからは、それほど大きな反応を感じません。

MYGOLFSPYの総合評価では目立たない
しかし、ここで少し評価軸を変えてみます。
競技ゴルファーがアイアンに本当に求めるものは何でしょうか。
単純な飛距離でしょうか。
それとも、ヘッドの見た目や打感でしょうか。
もちろん、それらも重要です。
しかし、競技でスコアを作るために欠かせないのは、
狙った距離を打ち、グリーン上でボールを止めること
です。
つまり、ストッピングパワーです。
ストッピングパワーで見ると、i240は別格
MYGOLFSPYのテストデータから、
- スピン量
- 最高到達点
- 落下角
- キャリーとトータル飛距離の差
を総合して見ると、ストッピング性能の上位は次のようになります。
- PING i240
- Takomo 201T MKII
- Titleist T100
- Ballistic CB
- Wilson Staff Model CB
i240の7番アイアンは、
| 項目 | テスト結果 |
|---|---|
| ロフト角 | 33° |
| キャリー | 156.77yd |
| スピン量 | 6,170rpm |
| 最高到達点 | 29.1m |
| 落下角 | 46.98° |
| 推定ラン | 4.96yd |
という結果です。
スピン量、最高到達点、落下角、着弾後のラン。
すべてが、今回のテストでトップクラスです。

しかもこれは、単にマッスルバックのようにロフトを寝かせ、スピンを増やした結果ではありません。
33°の7番アイアンでありながら、マッスルバックを上回るほどのストッピング性能を出しています。
PINGが公式に説明しているとおり、i240は低重心化によって高い打ち出しを生み、MOIを高めながら、グリーン上でボールを止めることを狙った設計です。
ただし、このテストはUS仕様
ここで重要なのは、MYGOLFSPYがテストしたのはUS仕様だということです。
US仕様のi240は、7番アイアンが標準で33°。
一方、日本仕様の標準ロフトは31.5°です。
| 仕様 | 7番アイアンのロフト |
|---|---|
| US標準仕様 | 33° |
| 日本標準仕様 | 31.5° |
USでは31.5°がPower Specとして用意されていますが、日本では、その31.5°が標準仕様として採用されています。
つまり日本仕様は、US仕様より1.5°ロフトを立てることで、飛距離性能を加えた仕様になっています。
日本仕様ではどうなるのか
もちろん、ロフトを33°から31.5°へ変更した場合の正確な数値は、同じテスター、同じボール、同じ打点条件で再計測しなければ分かりません。
それでも一般的な弾道変化から推定すると、おおよそ次のようになります。
| 項目 | 33°実測値 | 日本仕様31.5°の推定 |
|---|---|---|
| ボール初速 | 50.4m/s | 50.6~50.9m/s |
| キャリー | 156.77yd | 160~162yd |
| トータル | 161.73yd | 166~168yd |
| 打ち出し角 | 20.43° | 19.2~19.7° |
| スピン量 | 6,170rpm | 5,700~5,950rpm |
| 最高到達点 | 29.1m | 28.0~28.7m |
| 落下角 | 46.98° | 45.6~46.3° |
| 推定ラン | 4.96yd | 5.5~6.2yd |
ロフトが立つため、スピン量と落下角は少し減少すると考えられます。
その代わり、
- ボール初速が上がる
- キャリーが約3~5yd伸びる
- トータル飛距離も伸びる
という変化が見込まれます。
重要なのは、ロフトを1.5°立てても、推定落下角は45°を超え、スピン量も5,700~5,950rpm程度を維持できる可能性が高いことです。
つまり、日本仕様のi240は、
飛距離が出るだけのストロングロフトアイアンではありません。
飛距離を増やしながら、
- 十分な高さが出る
- 十分なスピンが入る
- 十分な落下角が確保される
- グリーン上でボールを止められる
という、競技アイアンとして必要な条件を残していると考えられます。
「飛ぶ」ではなく、「飛んで止まる」
多くの日本仕様アイアンは、ロフトを立てることで飛距離を作ります。
しかし、その結果として、
- 打ち出しが低くなる
- スピンが減る
- 落下角が浅くなる
- グリーンで止まりにくくなる
という問題が生じることがあります。
i240の日本仕様が面白いのは、元となるUS仕様に、十分すぎるほどの高さとスピン、落下角があることです。
その余裕を使ってロフトを1.5°立てる。
すると、ストッピング性能を完全には失わずに、日本のゴルファーが求める飛距離を加えることができます。
言い換えれば、
US仕様の余裕を、日本仕様では飛距離へ変換した
ということです。
31.5°という数字だけを見れば、競技志向アイアンとしては強めのロフトです。
しかし、低重心設計によって高さを出し、スピンと落下角を残すことができれば、単なるロフト商法ではありません。
飛んで、上がって、止まる。

店長がコースで感じた完成度の高さは、このバランスから生まれていたのだと思います。
今回は、PING GOLF JAPANのマーケティングの勝利
普段の店長なら、
「日本仕様だけロフトを立てて、飛距離を大きく見せただけでは?」
と疑うところです。
しかし、今回のi240は少し違います。
US仕様には、もともと圧倒的なストッピング性能があります。
その性能を土台として、日本仕様ではロフトを31.5°に設定。
ストッピング性能に多少の余裕を残しながら、飛距離を加えています。
これは、
止まる性能を削って飛距離を作ったのではなく、止まる性能の余裕を飛距離へ振り分けた
と見ることができます。
日本のゴルファーが求める飛距離。
競技ゴルファーが求める高さ、スピン、落下角。
その両方を狙った仕様です。
……認めたくはありませんが。
今回は、
PING GOLF JAPANのマーケティングの勝利です。
うぐぐぐぅ……。負けた!
コースでは3番アイアンも試打しています。

ロフトは19度、昔でいうと2番アイアンです。流石に立って見えますが、打ってみると高さが出て、ちゃんと飛んでいくんですよ。
