フィッティングをより深く考える③

試打で一番飛んだ1球を、信じすぎてはいけない理由

PING Proving Grounds Episode 3「Fitting Matters」より

PING Proving Grounds Podcast Episode 3「Fitting Matters」では、
フィッティングで見るべき数値についての話が出てきます。

前回は、ヘッドスピードだけでクラブを判断してはいけない、
という話をしました。

ヘッドスピードは大切です。
しかし、それは入力側の数値です。

実際にコースで結果として残るのは、
ヘッドスピードそのものではなく、
ボールがどう飛んだかです。

その意味で、
ボールスピード、打ち出し角、スピン量、落下角、左右のばらつきなどを見る必要があります。

そして今回は、もう一歩進んで、
試打で一番飛んだ1球を、信じすぎてはいけない理由
について考えてみたいと思います。


試打室では、最高の1球が記憶に残る

もちろん、フィッティングがかなり決まってくると、
最高に近い打球が連発することがあります。

これは、実際に店頭で見ていてもあります。

クラブがその人の動きを邪魔しなくなると、
無理に合わせにいかなくても、
良い打球が単発ではなく、続けて出るようになります。

ただし、試打の中では、
たまたま数球だけ、非常に良い結果が出ることもあります。

ここを見分ける必要があります。

試打をしていると、どうしても一番良かった球が印象に残ります。

一番飛んだ球。
一番真っすぐ飛んだ球。
一番気持ちよく振れた球。
一番ボール初速が出た球。

これは、ゴルファーとして自然なことです。

良い球が出ると、気持ちが動きます。

「これ、飛びますね」
「今のは良かったですね」
「このクラブ、合っているかもしれませんね」

こういう空気になります。

もちろん、その1球は大切です。
そのクラブが持っている可能性を示してくれるからです。

しかし、ここで注意しなければならないことがあります。

試打室で一番良かった1球が、コースで何度も出るとは限らない
ということです。


Podcastの会話を受けて感じたこと

Podcastの会話では、
フィッティングではボールスピードやディスパージョン、
つまり弾道のまとまりが重要である、
という趣旨の話が出てきます。

これを聞いて、私はかなり重要な点だと思いました。

なぜなら、試打室で見える数値と、
コースでスコアに残る結果には、少し違いがあるからです。

試打室では、
一番良かった1球が目立ちます。

しかし、コースでは、
一番良かった1球だけでスコアを作るわけではありません。

コースで問題になるのは、
良い球がどれくらい良いかだけではなく、
悪い球がどれくらい悪くならないかです。

ドライバーであれば、
少し当たり損ねた時に、OBまで行くのか。
それとも、ラフで止まってくれるのか。

アイアンであれば、
少し芯を外した時に、グリーン手前に大きくショートするのか。
それとも、まだグリーン周辺に残るのか。

ハイブリッドやフェアウェイウッドであれば、
上がらないミスが出るのか。
右に抜けるミスが強く出るのか。
それとも、多少のミスでも前に進んでくれるのか。

ここを見るのが、フィッティングです。

そしてフィッターの役割は、
試打室の数値だけを見ることではありません。

お客様のスイングの特徴、
よくラウンドするコース、
そして想定されるミスの傾向を踏まえて判断することこそ重要です。

最高の1球ではなく、
その人がコースで何度も出してしまう球を見る。

そこに、フィッティングの本質があると思います。


最高値ではなく、平均値を見る

フィッティングで大切なのは、
最高値だけを見ることではありません。

もちろん、最高値も見ます。

そのクラブでどこまで飛ばせる可能性があるのか。
どのくらいボールスピードが出るのか。
それを知ることには意味があります。

しかし、最高値だけでクラブを決めると、
コースでは苦しくなることがあります。

なぜなら、ゴルフは毎回ナイスショットできる競技ではないからです。

むしろ、スコアを作るうえで大切なのは、
ミスした時の残り方です。

10球打った時に、
1球だけものすごく飛ぶクラブ。

それに対して、
10球打った時に、平均して前に進み、左右の幅も収まるクラブ。

コースで強いのは、後者であることが多いです。

試打室では、最高の1球が記憶に残ります。
しかし、コースでは、平均値とミスの幅がスコアに残ります。

ここが非常に大切です。


ディスパージョンは、左右の幅だけではない

フィッティングでよく使われる言葉に、
ディスパージョンがあります。

日本語では、
「ばらつき」
と表現されることが多いと思います。

このディスパージョンを、
単に左右の幅だけだと思っている方も多いかもしれません。

しかし、私はそれだけでは足りないと思います。

ディスパージョンには、左右の幅だけでなく、
前後の距離差も含めて考える必要があります。

ドライバーなら、左右の幅が大切です。

右に出た時に、OBまで行くのか。
左に巻いた時に、林まで行くのか。
それとも、ラフで収まるのか。

ここは非常に重要です。

一方で、アイアンの場合は、左右だけでなく、
前後の距離差がとても大切になります。

7番アイアンで、
一番飛んだ球は150ヤード。
しかし、少しミスすると130ヤード。

この場合、最高飛距離だけを見れば良く見えます。
しかし、グリーンを狙うクラブとしては、
距離の階段が作りにくくなります。

ウェッジであれば、もっと明確です。

ウェッジでは、
一番飛ぶことよりも、
同じキャリーを何度も出せることの方が大切です。

つまり、ディスパージョンとは、
単なる左右のばらつきではありません。

左右の幅。
前後の距離差。
キャリーの落ち込み。
ミスヒット時の残り方。
そして、コースで許容できる範囲に収まっているか。

そこまで含めて見るべきものです。


ドライバーは「飛距離」と「残り方」を見る

ドライバーの試打では、どうしても飛距離に目が行きます。

これは仕方ありません。

ドライバーは飛ばすクラブです。
ボールスピードが出て、キャリーが伸びれば、
やはり魅力があります。

しかし、ドライバーで本当に大切なのは、
飛んだ時の飛距離だけではありません。

ミスした時に、どこまでで収まるかです。

たとえば、あるクラブは一番良い球で非常に飛ぶ。
しかし、少しタイミングがズレると、右へのミスが大きくなる。

別のクラブは、最高飛距離では少し劣る。
しかし、右に出ても曲がり幅が少なく、
フェアウェイ右サイドやラフで止まる。

この場合、どちらがコースでスコアにつながるか。

多くの場合、後者です。

もちろん、飛距離は大切です。

しかし、ドライバーのフィッティングでは、
最大飛距離と同じくらい、ミスした時の残り方を見る必要があります。

OBになる1球を減らせるなら、
それは飛距離以上にスコアに効くことがあります。


アイアンは「一番飛ぶ」より、距離の階段が大切

アイアンでは、話が少し変わります。

アイアンは、ドライバーのように最大飛距離だけを競うクラブではありません。

グリーンを狙うクラブです。

ですから、アイアンで大切なのは、
一番飛んだ距離ではなく、
狙った距離にどれだけ安定して届くかです。

7番アイアンが1球だけよく飛ぶ。
しかし、打点が少しズレるとキャリーが大きく落ちる。

この場合、練習場では飛ぶアイアンに見えるかもしれません。
しかし、コースでは距離が合わないクラブになる可能性があります。

逆に、最高飛距離は少し控えめでも、
キャリーの落ち込みが少ない。
打点が少しズレても、距離のばらつきが少ない。
番手間の距離の階段が作りやすい。

こういうアイアンは、コースで強いです。

アイアンのフィッティングでは、
「飛ぶかどうか」だけではなく、
距離がそろうかどうか
を見る必要があります。


ハイブリッドやフェアウェイウッドは、上がるか、前に進むか

ハイブリッドやフェアウェイウッドは、
多くのゴルファーにとって難しい番手です。

特にフェアウェイウッドは、
地面から打つ場合、
高さが出るかどうかが非常に大切になります。

試打室では、1球だけきれいに当たって飛ぶことがあります。

しかし、実際のコースでは、
ライが少し悪い。
芝の上から打つ。
プレッシャーがある。
狙いどころが狭い。

こうした条件が加わります。

その時に、
最高の1球だけを基準にして選んだクラブは、
急に難しく感じることがあります。

ハイブリッドやフェアウェイウッドでは、
最高飛距離よりも、

上がるか。
前に進むか。
右に抜けすぎないか。
ミスしても大きく距離を失わないか。

ここを見るべきです。

これは、トップエンドフィッティングにもつながる話です。

上の番手ほど、
一番良い1球ではなく、
平均して使えるかどうかが大切になります。


ウェッジは、飛距離よりキャリーの再現性

ウェッジでは、さらに話が変わります。

ウェッジで一番大切なのは、
飛距離ではありません。

どれだけ同じキャリーを出せるかです。

たとえば、50ヤードを打ちたい時に、
45ヤードから55ヤードの範囲に収まるのか。

それとも、
40ヤードになったり、60ヤードになったりするのか。

ここでスコアは大きく変わります。

ウェッジの場合、
最高の1球ではなく、
平均値とばらつきが特に重要です。

また、スピン量だけを見るのも危険です。

スピンが多くても、打ち出し角が高すぎれば止まり方は変わります。
スピンが少なくても、落下角が大きければ止まる場合もあります。

ウェッジもまた、
数値を単独で見るのではなく、
キャリー、打ち出し角、スピン量、落下角をセットで見る必要があります。


一番良い球ではなく、何度も出る球を見る

店頭でフィッティングをしていると、
お客様が一番良かった球を覚えていることは多いです。

これは自然なことです。

しかし、フィッターとして見なければならないのは、
その1球だけではありません。

むしろ、何度も出てしまう球を見る必要があります。

右に出やすいのか。
左に巻きやすいのか。
打点が下に入りやすいのか。
トップ気味になりやすいのか。
スピンが増えやすいのか。
キャリーが落ちやすいのか。

その人が繰り返し出してしまう球に、
フィッティングの入口があります。

最高の1球は、可能性を見せてくれます。
しかし、何度も出る球は、その人の現実を見せてくれます。

フィッティングで大切なのは、
この現実を少しでも良い方向に動かすことです。


最高の1球を否定しているわけではない

ここで誤解してほしくないのは、
最高の1球を否定しているわけではない、ということです。

最高の1球は大切です。

そのクラブが持っている可能性を示してくれます。
ゴルファーの気持ちを動かします。

「このクラブなら行けるかもしれない」

という感覚も大切です。

ただし、それだけで決めてはいけないということです。

最高の1球。
平均値。
ミスした時の残り方。
左右の幅。
前後の距離差。

これらを合わせて見ることで、
そのクラブが本当にコースで使えるかどうかが見えてきます。

つまり、最高の1球は見る。
しかし、最高の1球だけでは決めない。

ここが大切です。


店長目線で見る、フィッティングの本質

フィッティングは、
その場で一番良い数字を出す作業ではありません。

その人がコースで繰り返すゴルフを、
少しでも良い方向へ動かす作業です。

試打室で1球だけ飛んでも、
コースで怖くて振れなければ意味がありません。

練習場で真っすぐ飛んでも、
ラウンドでミスの幅が大きければ、
スコアにはつながりません。

アイアンで一番飛ぶ番手を選んでも、
前後の距離差が大きければ、
グリーンを狙うクラブとしては使いにくくなります。

だからこそ、フィッティングでは、
数字を見るだけでなく、
その数字がコースでどういう意味を持つのかを読む必要があります。

最高値ではなく、平均値。
最高飛距離ではなく、ミスの残り方。
単発のナイスショットではなく、何度も出る球。

ここを見ることが、
フィッティングを試打で終わらせないために大切なことだと思います。


まとめ

PING Proving Grounds Podcast Episode 3「Fitting Matters」では、
フィッティングで見るべきものとして、
ボールスピードやディスパージョンの重要性が語られています。

私は、ここにフィッティングの本質があると思います。

試打室では、最高の1球が記憶に残ります。
しかし、コースでは、平均値とミスの幅がスコアに残ります。

一番飛んだ1球。
一番真っすぐ飛んだ1球。
一番気持ちよく振れた1球。

それらは大切です。

しかし、それだけでクラブを決めると、
コースで苦しくなることがあります。

ドライバーなら、
ミスした時にOBまで行くのか、ラフで止まるのか。

アイアンなら、
前後の距離差がどれくらいあるのか。

ハイブリッドやフェアウェイウッドなら、
上がるのか、前に進むのか。

ウェッジなら、
同じキャリーを何度も出せるのか。

クラブによって、見るべきディスパージョンは変わります。

そして、その人が何度も出してしまう球に、
フィッティングの入口があります。

最高の1球は、可能性を見せてくれます。
しかし、何度も出る球は、その人の現実を見せてくれます。

フィッティングとは、
その現実を少しでも良い方向に動かす作業です。


次回予告

次回は、Episode 3 のまとめとして、
数値は答えではなく、フィッティングへの問いである
というテーマで考えます。

弾道計測器は、非常に多くの数値を出してくれます。

しかし、数値は結果を示すものであって、
原因をすべて自動で教えてくれるわけではありません。

なぜそのボールスピードなのか。
なぜそのスピン量なのか。
なぜ右に出るのか。
なぜ最高の1球は良いのに、平均が悪いのか。

そこを読むのが、フィッティングです。

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