フィッティングをより深く考える②

フィッティングで見るべき数値は、ヘッドスピードだけではありません

PING Proving Grounds Episode 3「Fitting Matters」より

PING Proving Grounds Podcast Episode 3「Fitting Matters」では、
フィッティングで見るべき数値についての話も出てきます。

現代の弾道計測器は、非常に多くの数値を出してくれます。

ヘッドスピード。
ボールスピード。
打ち出し角。
スピン量。
スマッシュファクター。
キャリー。
トータル距離。
左右のブレ。
落下角。

試打をすると、これらの数値が一気に表示されます。

数字がたくさん出ると、
それだけで何かが分かったような気になります。

しかし、Podcastの会話を聞いていて大切だと思ったのは、
測れる数値が増えたからといって、すべての数値を同じ重さで見てよいわけではない
ということです。

そして、もう一つ大切なのは、
ヘッドスピードだけを見てクラブを判断してはいけない
ということです。


ヘッドスピードは「入力」の一部にすぎない

日本のゴルファーは、ヘッドスピードをかなり気にします。

「自分はヘッドスピードがいくつだから、このシャフト」
「ヘッドスピードが上がったから飛ぶ」
「ヘッドスピードが足りないから飛ばない」

こういう会話は、店頭でもよくあります。

もちろん、ヘッドスピードは大切です。
飛距離に関係する重要な要素です。

しかし、ヘッドスピードはあくまでも、
クラブ側からボールに向かっていく入力側の数値です。

それに対して、実際にボールがどのように飛び出したかを示すのが、
ボールスピード、打ち出し角、スピン量などです。

つまり、ヘッドスピードだけを見ても、
そのエネルギーがどれだけボールに伝わったのかは分かりません。

同じヘッドスピードでも、
ボールスピードが高い人もいれば、低い人もいます。

同じヘッドスピードでも、
打ち出し角が適正な人もいれば、低すぎる人もいます。

同じヘッドスピードでも、
スピン量が適正な人もいれば、多すぎたり少なすぎたりする人もいます。

だから、ヘッドスピードだけでクラブを決めるのは危険です。


Podcastの会話を受けて感じたこと

Podcastの中では、
フィッティングで見るべき数値として、
ボールスピードや弾道のまとまりが重要である、
という趣旨の話が出てきます。

これを聞いて、私は非常に納得しました。

なぜなら、コースで結果として残るのは、
ヘッドスピードそのものではないからです。

コースで残るのは、ボールの結果です。

どれだけ前に飛んだのか。
どの高さで飛んだのか。
どれだけ曲がったのか。
グリーンに止まったのか。
OBまで行ったのか。
ラフで止まったのか。

つまり、フィッティングで見るべきなのは、
「クラブがどれだけ速く動いたか」だけではなく、
その結果、ボールがどうなったか
です。

ここを間違えると、
ヘッドスピードは上がったのに、コースでは結果が悪くなる、
ということが起こります。


ボールスピードは、フィッティングの重要な入口

PINGが重視する数値として、
まず考えるべきものの一つがボールスピードです。

ボールスピードは、
クラブがボールにどれだけ効率よくエネルギーを伝えたかを見るうえで、
非常に重要な数値です。

同じヘッドスピードでも、
打点が良い。
フェースの向きが良い。
ロフト条件が良い。
ヘッドとシャフトの相性が良い。

こうした条件が整えば、ボールスピードは上がります。

逆に、ヘッドスピードが出ていても、
打点がズレている。
ロフトが寝すぎている。
フェースが開いて当たっている。
スピン量が増えすぎている。
クラブの長さや重さが合っていない。

こうした場合、ボールスピードは思ったほど出ません。

ですから、フィッティングでは、
ヘッドスピードだけでなく、
ボールスピードを見る必要があります。

ただし、ここで誤解してはいけないのは、
ボールスピードが一番出たクラブが、必ず一番良いクラブではない
ということです。


ボールスピードは、車で言えばエンジン出力です

ボールスピードは大切です。

飛距離を考えるうえで、非常に重要な数値です。
クラブのエネルギー伝達効率を見るうえでも重要です。

車に例えるなら、
ボールスピードはエンジン出力のようなものです。

エンジン出力が高ければ、
その車には大きな力があります。

しかし、エンジン出力だけで、
その車が速く、安全に、思った通りに走れるかは決まりません。

タイヤが合っていなければ、路面に力は伝わりません。
サスペンションが合っていなければ、車体は安定しません。
ブレーキが弱ければ、速く走れても安心して止まれません。
車体バランスが悪ければ、コーナーで扱いにくくなります。

ゴルフクラブも同じです。

ボールスピードが出ていても、
打ち出し角が低すぎればキャリーは出ません。

ボールスピードが高くても、
スピン量が多すぎれば吹け上がります。

逆に、スピン量が少なすぎれば、
ドロップしてキャリーが出なかったり、
グリーンで止まらなかったりします。

ボールスピードが高くても、
左右のばらつきが大きければ、
コースでは使いにくいクラブになります。

つまり、ボールスピードは非常に重要です。
しかし、それだけでフィッティングが完結するわけではありません。

打ち出し角。
スピン量。
最高到達点。
落下角。
左右のばらつき。
前後の距離差。
ミスした時の残り方。

これらを一緒に見て、初めてフィッティングになります。


測れる数値と、判断に使う数値は違う

Podcastの会話で、特に日本のゴルファーに伝えたいと思ったのは、
測れる数値と、判断に使う数値は違う
ということです。

弾道計測器は優秀です。
たくさんの数値を出してくれます。

しかし、出てきた数値を全部同じ重さで見てしまうと、
かえって判断が難しくなります。

たとえば、

ヘッドスピードが速い。
でも、ボールスピードが出ていない。

ボールスピードは出ている。
でも、スピン量が多すぎる。

スピン量は減った。
でも、打ち出し角が低すぎる。

キャリーは伸びた。
でも、左右の幅が広がった。

トータル距離は出ている。
でも、コースでは止まる場所が読みにくい。

こういうことは、実際によくあります。

だから、数値は単独で見てはいけません。
それぞれの数値が、どうつながっているかを見る必要があります。


スマッシュファクターだけを見ても危ない

ヘッドスピードとボールスピードの関係で、
スマッシュファクター、いわゆるミート率を気にする方も多いと思います。

スマッシュファクターは、
ボールスピードをヘッドスピードで割った数値です。

たしかに、効率を見るうえで便利な数値です。

しかし、これも単独で見すぎると危険です。

スマッシュファクターが良くても、
打ち出し角が低すぎればキャリーは出ません。

スマッシュファクターが良くても、
スピン量が合っていなければ、弾道は安定しません。

スマッシュファクターが良くても、
その1球だけが良くて、平均値が悪ければ、
コースで使えるクラブとは言えません。

つまり、ミート率もまた、
結果を読むための一つの材料であって、
それだけで答えを出すものではありません。


フィッティングでは「なぜその数値になったのか」を読む

ここが、フィッティングの面白いところです。

数値を見るだけなら、誰でもできます。
計測器が表示してくれます。

しかし、フィッティングで本当に大切なのは、
その数値を見て、
なぜその数値になったのか
を読むことです。

なぜボールスピードが出ていないのか。
打点なのか。
ロフトなのか。
シャフトなのか。
クラブの長さなのか。
重さなのか。
それとも、スイングの問題なのか。

なぜスピン量が多いのか。
フェースが開いているのか。
入射角なのか。
ロフト条件なのか。
ヘッドタイプなのか。
シャフトの挙動なのか。

なぜ右に出るのか。
クラブが開いて戻っていないのか。
ライ角なのか。
アドレスなのか。
スイング軌道なのか。

数値は、答えではありません。
数値は、フィッターに対する問いです。

その問いに対して、
クラブ側から見るのか。
スイング側から見るのか。
それとも、その両方から見るのか。

ここにフィッティングの仕事があります。


店長目線で見る、ヘッドスピード信仰の危うさ

店頭で見ていると、
ヘッドスピードを基準にしてクラブを選ぼうとする方は多いです。

「ヘッドスピードが40m/sだから、このシャフト」
「45m/sあるから、これくらい硬くないといけない」
「ヘッドスピードがないから、軽いクラブがいい」

もちろん、完全に間違いではありません。

しかし、ヘッドスピードはあくまでも一つの情報です。

同じヘッドスピード40m/sでも、
切り返しが強い人と、ゆっくり加速する人では、
合うシャフトは違います。

同じヘッドスピード40m/sでも、
上から入る人と、アッパーに入る人では、
合うロフトやヘッドは変わります。

同じヘッドスピード40m/sでも、
フェースを開きやすい人と、閉じやすい人では、
合うヘッドタイプは変わります。

つまり、ヘッドスピードは入口にはなります。
しかし、出口ではありません。

最終的に見るべきなのは、
そのヘッドスピードによって、
ボールがどう飛んでいるのかです。


まとめ

PING Proving Grounds Podcast Episode 3「Fitting Matters」では、
フィッティングで見るべき数値について、
とても大切な考え方が語られています。

現代の弾道計測器は、多くの数値を出してくれます。

ヘッドスピード。
ボールスピード。
打ち出し角。
スピン量。
スマッシュファクター。
キャリー。
トータル距離。
左右のばらつき。

しかし、測れる数値が増えたからといって、
すべての数値を同じ重さで見るべきではありません。

ヘッドスピードは大切です。
しかし、それは入力側の数値です。

コースで結果として残るのは、
ヘッドスピードそのものではなく、
ボールがどう飛んだかです。

だからこそ、フィッティングでは、
ボールスピード、打ち出し角、スピン量、弾道のまとまりを見ます。

ボールスピードは、車で言えばエンジン出力のようなものです。
出力は大切です。
しかし、出力だけで、その車が速く、安全に、思った場所へ走れるかは決まりません。

ゴルフクラブも同じです。

ボールスピードが出ていても、
打ち出し角、スピン量、落下角、左右の幅、前後の距離差が合っていなければ、
コースで使いやすいクラブとは言えません。

数値は、答えではありません。
数値は、問いです。

なぜそのボールスピードなのか。
なぜそのスピン量なのか。
なぜその打ち出し角なのか。
なぜ右に出るのか。

その原因を読むこと。
そして、クラブ側で整えられることと、スイング側で整えるべきことを分けて考えること。

それが、フィッティングを試打で終わらせないために大切なことだと思います。


次回予告

次回は、
試打で一番飛んだ1球を、信じすぎてはいけない理由
について考えます。

試打室では、どうしても最高の1球が印象に残ります。

しかし、コースでスコアに残るのは、
最高の1球ではありません。

何度も出る球。
ミスした時の残り方。
左右の幅。
前後の距離差。

つまり、平均値とディスパージョンです。

次回は、
フィッティングでなぜ「最高値」ではなく「平均値」を見るべきなのかを掘り下げていきます。

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