ヘッドスピードは入力、ボールスピードは出力。けれど入力はそれだけではない

有効重量で考えるスインガースイング・第1話

多くのゴルファーは、飛距離を伸ばすために、まずヘッドスピードを上げようとします。

もちろん、ヘッドスピードは大切です。
ヘッドスピードがなければ、ボール初速も出にくい。
これは間違いありません。

しかし、私の目から見ると、ここに大きな落とし穴があります。

それは、ヘッドスピードを上げることが目的になりすぎて、実際にボールへ届くエネルギーを見失っていることです。

ゴルフは、クラブを速く動かす競技ではありません。
最終的には、クラブとボールの衝突です。

つまり、本当に見るべきなのは、

「クラブがどれだけ速く動いたか」

だけではなく、

「その速さが、どれだけボールに伝わったか」

です。

ここが、今回のシリーズの入口になります。


PINGのマーティやジェイソンが、クラブフィッティングの話の中で、

「ヘッドスピードではなく、ボールスピードを使ってください」

という趣旨の話をしています。

私はこの言葉を聞いたとき、やはりPINGはきちんと物理としてクラブフィッティングを理解しているのだと感じました。

ヘッドスピードは、あくまでもクラブ側の数値です。
言い換えれば、入力のひとつです。

一方、ボールスピードは、クラブとボールが衝突した結果です。
つまり、出力です。

どれだけ速くクラブを動かしたかではなく、
その動きがどれだけボールに伝わったか。

ここを見ているから、ボールスピードを重視するわけです。


ただし、ここで大事なのは、

ヘッドスピードは入力だが、入力はヘッドスピードだけではない

ということです。

同じヘッドスピードでも、打点が違えばボールスピードは変わります。
ロフトが違えば、打ち出し角やスピン量が変わります。
フェース向きが違えば、ボールの飛び出す方向も変わります。
入射角が違えば、エネルギーの伝わり方も変わります。

そして、今回のシリーズで特に大切にしたいのが、

有効重量

です。

ボールスピードという出力は、ヘッドスピードだけで決まるものではありません。

ヘッドスピード。
打点。
フェース向き。
ロフト。
入射角。
スピン量。
クラブの姿勢。
シャフトの挙動。
ヘッドの安定性。
そして、有効重量。

これらが衝突の瞬間に統合された結果として、ボールスピードが生まれます。

だから、ヘッドスピードだけを追いかけても、必ずしも飛距離につながるとは限らないのです。


有効重量とは、簡単に言えば、インパクトでボールに参加している重さです。

腕だけでクラブを振っている場合、ボールにぶつかっているのは、腕とクラブの軽い衝突に近くなります。

一方、身体とクラブが一体化して動いている場合、ボールには身体の重さを伴った衝突が起こります。

もちろん、本当に体重すべてがボールにぶつかっているわけではありません。
しかし、身体とクラブの接続が保たれていれば、ボールに伝わる衝突は重くなります。

ここを見落とすと、ヘッドスピードだけを追いかけることになります。

そして多くの場合、ヘッドスピードを上げようとして、逆に有効重量を減らしてしまうのです。


腕を速く振る。
手でヘッドを走らせる。
インパクトで強く押し込もうとする。
フェースを返して飛ばそうとする。

こうした動きは、一見するとヘッドスピードを上げる努力に見えます。

しかし、それによって身体とクラブの接続が切れれば、ボールに届く有効重量は小さくなります。

つまり、

ヘッドスピードは上がった。
しかし、有効重量は下がった。

この状態では、ボールに届くエネルギーは思ったほど増えません。

さらに悪いことに、クラブが身体から切り離されることで、力の向きも散ります。

これを私は、ベクトル分散と考えています。

 


速く振っているのに飛ばない。
力を入れているのに球が弱い。
ヘッドスピードは出ているのに、ボールスピードが伸びない。
スピンが増える。
曲がる。
打点が散る。

こういう現象は、単なるミスではありません。

ヘッドスピードを上げるために、有効重量を失い、さらに力の向きが分散している可能性があります。

つまり、クラブは速く動いている。
しかし、ボールを飛ばす方向へ、重さと力が集まっていない。

これでは、飛距離につながりにくいのです。


ここで大切なのは、ヘッドスピードを否定しているわけではないということです。

ヘッドスピードは必要です。
速さは大切です。

ただし、問題はその速さに何が乗っているかです。

軽いものを速く動かしているのか。
重いものが、正しい方向へ動いているのか。

この違いです。

スインガーのスイングを考えるとき、ここは非常に重要になります。

スインガーは、単にクラブを速く動かす人ではありません。
身体とクラブを一体化させ、有効重量を逃がさず、ボールへ届ける人です。

そして、その結果としてボールスピードが出る。

だから、スインガーを考えるうえでは、ヘッドスピードだけを見ていてはいけません。

見るべきなのは、ボールスピードです。
さらに言えば、そのボールスピードが、どのような入力から生まれているのかです。


ヘッドスピードは入力です。
しかし、入力はヘッドスピードだけではありません。

ボールスピードは、複数の入力が衝突の瞬間に統合された出力です。

ここを理解すると、飛距離の見方は大きく変わります。

飛ばすために、もっと速く振るのか。
それとも、今あるスピードに、より大きな有効重量を乗せるのか。

スインガーの考え方は、後者です。

速さを否定するのではありません。
速さに、重さと方向を加えるのです。


次回は、この有効重量をもっと分かりやすく考えるために、私が生徒さんによくする質問を使って説明します。

時速5キロの電車と、時速5キロの三輪車。
どちらかに必ずぶつからなければならないとしたら、どちらを選びますか?

速度は同じです。
しかし、衝撃はまったく違います。

この話から、ヘッドスピードだけでは飛距離を説明できない理由を、もう少し掘り下げてみたいと思います。

カテゴリーPING

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