握り方が違えば、適したグリップの太さも変わる

ここまで、グリップの太さと、保持や力の伝わり方について考えてきました。

最終回は、フィンガーグリップとパームグリップを比較しながら、太さの選び方を整理してみたいと思います。

指で保持するか、手のひら側で保持するか

フィンガーグリップは、主に指側でクラブを保持する握り方です。一方、パームグリップは、より手のひら側にグリップを収めて保持します。

実際の握り方には、その中間もあります。フィンガーでも手のひらに接触しますし、パームでも指を使います。ここでは、左手のどの位置で主に保持しているか、という違いとして考えてください。以下は右打ちの場合のお話です。

比較する点 フィンガーグリップ パームグリップ
主に保持する位置 指側 手のひら側
確認したいこと 曲げた指の内側に、十分な接触があるか 手のひら側に無理なく収まり、指でも支えられるか
握り込んだ際の動き グリップを巻き込んでいないか 接触位置がずれたり、クラブが回ったりしないか
太さを選ぶ出発点 チャートを基準に、指の掛かりと巻き込みを確認 チャートを基準に、収まりと保持感を確認

どちらが優れているかを決めるための比較ではありません。

同じ手の寸法、同じグリップの太さでも、保持する位置が違えば、接触の仕方も力の伝わり方も変わるということです。 “握り方が違えば、適したグリップの太さも変わる” の続きを読む

宇宙は数学(数式)の言語で書かれているなら、ゴルフも数学で書かれているのか? 第1話

第1話 ゴルフスイングは、なぜこんなに難しいのか?

いきなり壮大なタイトルで始まりましたが、今回から少し変わったシリーズを始めたいと思います。

「宇宙は数学という言語で書かれている」

これはガリレオ・ガリレイの有名な言葉です。

地球も宇宙の一部です。そして、私たちが楽しんでいるゴルフも、この宇宙で起きている現象です。

だったら、ゴルフも数学で書かれているのでしょうか?

テーマは「数学とゴルフ」。

数学と聞いただけで、読むのをやめようと思った方、ちょっと待ってください。

難しい数式を並べるつもりはありません。

そもそも数学とは、数式を計算することだけではなく、物事の関係や仕組みを論理的に考えることでもあると思うんです。

今回は、その考え方を使って、ゴルフスイングについて考えてみようと思います。

しかも、今回は店長一人ではありません。

今回のシリーズは、こうした一見ばらばらに見えるものが、実はつながっているのではないか、というところから始まります。

しかも、今回は店長一人ではありません。

最近、いろいろなことを議論しているAI、ChatGPTを相棒に話を進めていきたいと思います。

AIは膨大な知識を持っていますが、必ずしも店長の考えていることをすぐに理解してくれるわけではありません。

さて、どうなることでしょう。

ゴルフスイングは複雑なのか?

店長: 「ゴルフスイングって、そんなに複雑なものなんでしょうか?」

AI: 「ゴルフスイングは、身体の多数の関節が連動する複雑な三次元運動です。運動学、動力学、生体力学など、さまざまな分野から解析されています。」

店長: 「やっぱり、そういう答えになりますよね。」

現在では、ゴルフスイングを分析する技術も大きく進歩しています。

例えば、GEARSというスイング解析システムがあります。

複数のカメラと身体やクラブに取り付けたマーカーによって、ゴルファーの動きを三次元的に解析するシステムです。

身体のどの部分が、どのタイミングで、どの方向に動いているのか。

以前では考えられなかったほど詳細に分析できるようになりました。

もちろん、こうした計測技術は素晴らしいものです。

ただ、店長には一つ疑問があります。

それほど詳しく動きを調べられるようになったのに、ゴルフスイングは簡単になったのでしょうか?

ところが、上級者は難しそうなことをしているようには見えません。

いとも簡単に、狙ったところへボールを運んでいきます。

本当にゴルフスイングそのものが複雑なのでしょうか?

AI: 「測定によって動作を客観的に把握できますが、それだけでスイングが改善するとは限りません。」

店長: 「そうですよね。何が起きているか分かることと、なぜ起きているか分かることは違いますから。」

例えば、インパクトで手首が返っていたとします。

その動きを計測することはできます。

しかし、なぜ手首が返ったのでしょうか?

手首を積極的に動かしたのでしょうか?

それとも、身体の別の部分の動きによって、結果的に手首が返ったのでしょうか?

ここを間違えると、対策も違ってきます。

ゴルフを研究した二人のエンジニア

ゴルフの歴史には、工学的な発想によって大きな影響を与えた人物がいます。

一人は、PINGの創業者、カーステン・ソルハイム。

もう一人は、『The Golfing Machine』の著者、ホーマー・ケリーです。

カーステンは、クラブの構造を変えることで、ゴルファーがより良い結果を得られるようにしました。

一方、ケリーはゴルフス

グリップの太さに、店長の「味変」を加えてみます

前回は、グリップの種類と、PINGのグリップカラーコードチャートをご紹介しました。

今回は、そのチャートを出発点に、グリップの太さを少し違う角度から考えてみたいと思います。

まず、一般的に言われている説明を並べてみましょう。

細いグリップ 太いグリップ
手首を使いやすい 手首の余計な動きを抑える
フェースを返しやすく、球がつかまりやすい フェースの返りすぎを抑え、引っかけを防ぐ
操作性が高い 方向性が安定する
小さい手に合いやすい 大きい手に合いやすい

太いグリップには、「握る力を減らしやすい」「手の負担を軽減しやすい」という説明もあります。

経験上、思い当たる方もいらっしゃるでしょう。しかし、ここで考えたいのは、その変化が、なぜ起きるのかということです。

球がつかまったら、手首を使ったのでしょうか?

細いグリップに替えて、球がつかまるようになった。

この変化を、「手首を使いやすくなったから」と説明することがあります。しかし、フェースが閉じたことと、手首の関節が動いたことは、同じではありません。

試しに、クラブを左手だけで持ち、腕や手首の向きをできるだけ変えずに、指をゆっくり握り込んでみてください。

保持する位置や握り方によっては、グリップが手の中で巻き込まれ、フェースが閉じる方向に動くことがあります。

これは、指の動きがクラブの回転に変わったものです。

この動きによって球がつかまったのであれば、「手首を使いやすくなった」と説明するだけでは、実際に起きていることを見落としてしまいます。

PINGのチャートで、注目したいところ

前回のPINGのグリップチャートを、もう一度見てください。

同じ手の長さでも、指が長い方には、太いグリップが推奨されています。

指が長いから、太くする。

寸法の関係としては分かりますが、それが保持の仕方にどう関係するのでしょうか。

ここで、重いバッグを手で持つ場面を想像してください。

持ち手を握り潰すように締め付けなくても、指をフック状に曲げれば、その形で重さを受けられます。もちろん、指の形を保つ筋力は必要ですが、強く握り締めることとは違います。

店長は、ゴルフのグリップにも、この考え方を取り入れたいと思っています。

指を曲げた内側を、グリップが満たしているか

注目したいのは、指先から二つ目の関節、PIP関節です。

この関節を曲げ、指をフック状にしたとき、その内側にグリップが収まっていれば、指の形を利用して力を受けられます。

ところが、グリップが細すぎると、曲げた指の内側に十分な接触を作れず、保持するために、さらに指を閉じて握り込む方がいるのではないでしょうか。

その握り込みが、グリップを巻き込む動きにもつながる。これが、店長の考えている仕組みです。

「指で保持すること」と「指を握り込むこと」は、分けて考える必要があります。

太さを合わせる目的は、指を使わなくすることではありません。無理のない指の形で接触を作り、必要以上に握り締めずに保持できるようにすることです。

チャートに、握り方を加えて選ぶ

PINGのチャートは、手と指の寸法から太さの目安を示しています。ただし、そこで握り方まで定義しているわけではありません。

そこで当店では、次のような選び方を提案したいと思います。

握り方・傾向 比較する太さの目安
手のひら側で保持するパームグリップ チャートの推奨サイズを基本にする
指側で保持するフィンガーグリップで、フックが出やすい 推奨サイズより太めも比較する

フィンガーグリップの方に太めを提案するのは、手首を動かなくするためではありません。

指との接触を確保し、さらに握り込まなくても支えられるようにする。その結果、左手の握り込みによる、意図しないフェースの回転を減らせないかを確認するためです。

もちろん、フックの原因がすべて握り込みにあるわけではありません。太くすれば必ず改善する、という選び方でもありません。

チャートで寸法の基準を知り、握り方と実際の動きに合わせて調整する。

これが、今回加えたい店長の「味変」です。

次回は、バックラインと右手側の太さについて、保持と力の伝わり方から考えてみたいと思います。

細野勇策プロのクラブセッティングから考える ― なぜハイブリッドを使わないのか?

前回は、細野勇策プロが4種類のアイアンを組み合わせている理由について考えてみました。

今回は、もう一つ気になる部分について考察したいと思います。

それは、細野プロのセッティングには、ハイブリッド(HB)が1本も入っていないことです。

一般的には、ロングアイアンをやさしく打つためのクラブとして、ハイブリッドが広く使われています。

ところが細野プロは、G440 MAXの4Wと7W、i500の3番アイアン、そしてG440の5番・6番アイアンという組み合わせを採用しています。

なぜ、ハイブリッドを使用しないのでしょうか。

ハイブリッドはアイアンと同じスイングで打てるのか?

ハイブリッドは、フェアウェイウッドとアイアンの長所を組み合わせたクラブです。

フェアウェイウッドのようなボールの上がりやすさと、アイアンに近いシャフト長による扱いやすさ。

非常に合理的なクラブだと思います。

しかし、両方の長所を持っているということは、両方の弱点も持っているのではないでしょうか。 “細野勇策プロのクラブセッティングから考える ― なぜハイブリッドを使わないのか?” の続きを読む

細野勇策プロのクラブセッティングに見る、フィッティングの神髄!

実は、以前紹介した佐久間朱莉プロのクラブセッティングについてのコヤマカズヒロ氏の動画で、細野勇策プロのクラブセッティングにも言及されていました。

その中でコヤマ氏は、細野プロが「ピンを狙うのは9番アイアンから下のクラブ」と話していることを紹介しています。

これを根拠に考えるならば、それよりも長いクラブでは、ピンという一点ではなく、ある程度のゾーンを狙っているということになります。

例えば、あるクラブの左右の着弾分散が15ヤードあるとします。

ピンがグリーンのエッジから5ヤードの位置に切られている場合、ピンを直接狙えば、ショットの一部がグリーンを外れる可能性があります。

そこで、ピンを直接狙うのではなく、自分のショットの分散範囲ができるだけグリーン内に収まる位置を目標に設定します。 “細野勇策プロのクラブセッティングに見る、フィッティングの神髄!” の続きを読む

ダイナミックでいこう 最後に

ここまで、

「ダイナミックでいこう」

というタイトルで、ゴルフクラブとスイングを少し違った角度から考えてきました。

最初のきっかけは、

ウェッジのライ角を、アイアンの流れより2度ほどフラットにすると統一感が出る

という話でした。

スタティックに考えれば、

ライ角をフラットにするとフェースは相対的に右を向く。

それで説明は終わります。

しかし実際には、

ライ角を変えると手元の位置が変わり、

腕の位置が変わり、

人間とクラブの慣性関係が変わり、

時間差が変わり、

クラブパスやフェースの動きまで変わる可能性があります。

つまり、

止まっているクラブだけを見ても、動いているクラブのすべては説明できない。

そこから、このシリーズは始まりました。 “ダイナミックでいこう 最後に” の続きを読む

ダイナミックで行こう 現代のクラブはホーガンほどスタンスを変えなくていいのか

前回は、ホーガンのスタンス図に補助線を入れ、

接線は力の方向、支点から広がる扇形は回転量

として考えてみました。

そして、長いクラブほど扇形が大きく開いていることから、

クラブの慣性が大きくなるほど、人体側でもより大きな回転量を準備していたのではないか

という仮説を立てました。

では、ホーガンの時代と現代では、クラブの慣性はどれくらい違うのでしょうか。 “ダイナミックで行こう 現代のクラブはホーガンほどスタンスを変えなくていいのか” の続きを読む

ダイナミックで行こう 人間とクラブを一つの系として考える

クラブの数字を揃えることと、動きを揃えることは同じではない

という話をしました。

では、動きを揃えるためには何を見ればよいのでしょうか。

ここで、フィッティングの考え方を少し変えてみます。

先日、あるお客様からこんな相談がありました。

「アイアンは振り切れるようになった。でも今度はドライバーが暴れるようになった」

普通なら、

「では、ドライバーに問題があるのかもしれませんね。新しいドライバーを試してみましょう」

となりそうな場面です。

しかし私は、

「一度、スイングを見せてください」

と連絡しました。

なぜなら、変わったのはドライバーではありません。

お客様のスイングの方だったからです。

クラブと人間を分けて考えていいのか

“ダイナミックで行こう 人間とクラブを一つの系として考える” の続きを読む

ダイナミックでいこう 第4話 ホーガンのスタンス図を慣性で読む

前回は、スタンスの向きそのものよりも、

支点の位置と、そこからどちらへ力が向いているのか

の方が重要ではないか、という話をしました。

その考え方で見ると、ベン・ホーガンの有名なスタンス図は、かなり違って見えてきます。

ショートアイアンではオープン。

クラブが長くなるにつれてスクエアに近づき、

ロングアイアン、ウッドではクローズになっていく。

一般的には、

「クラブが長くなるほどスタンスをクローズにする」

という形で紹介されます。

しかし、それだけでは少し説明が足りません。

なぜクラブが長くなると、スタンスまで変える必要があるのでしょうか。

ここで、もう一度「慣性」を考えてみます。

長くなれば、慣性は大きくなる

クラブの回転のしにくさは、慣性モーメントで考えることができます。

質量が同じでも、回転軸から遠くなるほど、その影響は大きくなります。

つまりクラブが長くなれば、同じヘッド重量でも慣性モーメントは大きくなります。

長いクラブほど、

動き出しにくく、いったん動き出せば、その運動を保とうとする。

これは感覚的にも分かりやすいと思います。

短いウェッジと長いドライバーでは、同じ力で振ったときの反応が違います。

ところが、ホーガンの時代には、もうひとつ大きな違いがありました。

ウッドにもスチールシャフトが入っていた

現代のドライバーでは、50g前後のカーボンシャフトも珍しくありません。

しかし、ホーガンの時代のウッドにはスチールシャフトが使われていました。

つまり、

長いクラブに、重いシャフトが入っていた。

ということです。

これは非常に大きな違いです。

クラブの慣性を考えるとき、ヘッド重量だけを見ることはできません。

シャフトにも質量があります。

しかも、その質量はグリップからヘッドまで長く分布しています。

長くて重いスチールシャフトは、それ自体が大きな慣性を持ちます。

つまり、当時のウッドは、

ヘッドが重いから動かしにくい

だけではなく、

クラブ全体が大きな慣性体だった

と考える必要があります。

ホーガンは途中で調整していたのか

ここでひとつ疑問が出ます。

ショートアイアンからウッドまで、クラブの慣性特性が大きく変わる。

そのたびに、スイングの途中で人間が調整していたのでしょうか。

私は、そうではないように思います。

むしろ、

アドレスの段階で調整を終わらせていた

と考えた方が自然です。

ショートアイアンではオープン。

長くなるほどクローズ。

そうやって最初から人体側の配置を変えておけば、

切り返しから先では、余計な修正をしなくてもよい。

つまり、

クラブの慣性が変わっても、同じようなリニアフォースの方向を作れるように、スタンスをプリセットしていた

のではないでしょうか。

そう考えると、ホーガンのスタンス図は単なる構え方の一覧ではありません。

クラブごとの慣性差を、人間側の幾何学で補正する表

に見えてきます。

現代クラブで同じ補正は必要なのか

では、現代クラブでもホーガンと同じだけスタンスを変える必要があるのでしょうか。

ここで、これまでに簡単な計算をしてみました。

アイアンのシャフト重量を130gとし、

4番アイアンからPWまでのグリップ側を基準にした慣性モーメントを概算すると、

4番アイアン 約0.280
5番アイアン 約0.279
6番アイアン 約0.278
7番アイアン 約0.277
8番アイアン 約0.275
9番アイアン 約0.274
PW     約0.272

kg・m²程度になりました。

かなり揃っています。

長い番手ほどクラブ長は長くなります。

しかし、その分ヘッド重量は軽くなります。

そのため、

長さによる慣性の増加を、ヘッド重量の減少がかなり相殺している

と考えることができます。

さらに、

45.25インチ
ヘッド203g
シャフト50g

の現代的なドライバーを同じように概算すると、

約0.290kg・m²。

130gシャフトの4番アイアンが約0.280ですから、

思っていたほど大きな差ではありません。

現代クラブは、かなり揃えられている

ここが非常に面白いところです。

ホーガンの時代は、

クラブが長くなる。

シャフトも重い。

その結果、クラブ全体の慣性差も大きくなる。

だから、スタンスを大きく変えて補正する必要があった。

ところが現代クラブでは、

長いクラブほどシャフトを軽くし、

ヘッド重量も調整し、

番手間の慣性差をかなり小さくしている。

つまり、

クラブそのものが、昔よりも「同じように振れる方向」へ進化している

と考えることができます。

だとすれば、

現代のゴルファーがホーガンのスタンス図をそのままコピーする必要はありません。

ホーガンがやっていたことの本質は、

オープンに立つことでも、

クローズに立つことでもない。

クラブの慣性差に合わせて、力の方向を揃えること

だったのではないでしょうか。

ここを間違えると、

形だけを真似して、

目的を失うことになります。

形ではなく、結果を揃える

これはフィッティングにも通じます。

ライ角。

クラブ長。

シャフト重量。

ヘッド重量。

スタンス。

これらの数字を揃えることが、必ずしも統一感ではありません。

本当に揃えたいのは、

動いたときの反応

です。

スタティックに見れば不連続でも、

ダイナミックには揃っている。

ウェッジを2度フラットにするという話も、

もしかすると、まったく同じなのかもしれません。

数字の流れを壊してでも、

動きの流れを揃える。

それが、

ダイナミックなフィッティング

という考え方なのではないでしょうか。

次は、もう一度ウェッジに戻ります。

なぜ短くなったウェッジで、あえてライ角をフラットにすると「統一感」が出るのか。

ここまで考えてきた慣性と時間差を使って、もう少し深く考えてみたいと思います。