これまで、シェフラーは右足で地面を蹴ることによって、ボディーを回転させているのではないと説明してきました。
ダウンスイングでは右足の荷重を抜き、左股関節だけを支点とします。
左足一支点によって円の中心を定め、パワーパッケージによって円の半径を維持する。
これによって、インパクトにおける接線の向きと有効質量を安定させています。
しかし、シェフラーが右足の地面反力をまったく使っていない、という意味ではありません。
右足には、時間の異なる三つの役割があります。
最初の役割は、支点から外れること
ダウンスイングの大部分では、右足の荷重を抜きます。
右足を使って身体を回すのではなく、右足を支点として使えない状態にするのです。
右足が支点から外れることで、身体を支えるのは左足だけになります。
左股関節を中心とした一つの円運動が成立し、身体、腕、クラブが同調してインパクトへ向かいます。
この局面における右足の役割は、力を加えることではありません。
むしろ、余計な支点をつくらないことです。
二つ目の役割は、カウンターとして動くこと
シェフラーは、インパクト直前までスインガーとしてクラブを円運動させます。
そして、インパクト直前の短い時間だけ、クラブに直線的なヒッターの力を加えます。
クラブを一方向へ加速させれば、身体には反対方向への反動が返ってきます。
通常のヒッターであれば、その反動を荷重の残った右足で受け止めます。
しかし、シェフラーの右足はすでに荷重が抜けています。
反動を受け止める土台がないため、右足そのものが身体の回転とは反対方向へ動きます。
これが、シェフラー独特の右足のスライドです。
右足を反対方向へ動かすからクラブが加速するのではありません。
クラブに加えた力の反動として、自由になっている右足が反対方向へ動いているのです。
三つ目の役割は、再び地面に接地すること
カウンターとして動いた右足は、そのまま空中に浮き続けるわけではありません。
やがて、再び地面に接地します。
それまで自由に動いていた右足が地面に触れると、右足の運動は地面によって受け止められます。
右足が地面へ力を加えれば、地面からは反対向きの力が返ってきます。
地面反力です。
この反力は、後方へ動いていた右足を止めるだけではありません。
右足から股関節、骨盤へ伝わり、左股関節を中心として回転を続ける身体をアシストします。
一度抜いた右足の荷重を、必要なタイミングで再び利用しているのです。
地面反力を捨てたのではなく、使う時間を変えた
「シェフラーは地面反力を使わない」という説明と、「右足の再接地によって地面反力を使う」という説明は、矛盾しているように見えるかもしれません。
しかし、二つは時間が違います。
インパクトへ向かう円運動では、右足の荷重を抜く。
それによって支点を左股関節の一つに絞り、クラブを正確に運ぶ。
そして、右足がカウンターとして動いた後、再び接地したところで地面反力を受ける。
つまりシェフラーは、右足の地面反力をなくしたのではありません。
円の中心を安定させたい局面では使わず、インパクト付近からその後の回転を支えたい局面で、改めて利用しているのです。
ここが、最初から右足に荷重を残しているゴルファーとの大きな違いです。
一般的なゴルファーは、右足をベースとして身体の回転をつくります。
シェフラーは、まず右足をベースから外すことで、一支点の円運動を完成させます。
そして、その役割が終わった後に右足を再接地させ、今度は回転を支えるベースとして使います。
右足はアクセルではなく、切り替え装置
シェフラーの右足は、最初から最後まで同じ仕事をしているわけではありません。
荷重を抜いて支点から外れる。
直線的な入力の反動によって、カウンターとして動く。
再接地した後は、地面反力を受けて回転を支える。
役割が時間とともに切り替わっているのです。
したがって、右足を横へ滑らせる形だけをまねしても、シェフラーのスイングにはなりません。
左足一支点の円運動も、パワーパッケージも、インパクト直前の入力もないまま右足だけを動かせば、単にバランスを崩すだけです。
重要なのは右足がどのように見えるかではなく、いつ荷重を抜き、なぜ動き、いつ再び地面から力を受けるかです。
このように右足の役割を切り替えていたゴルファーは、シェフラーだけではありません。
ジャック・ニクラウス、グレッグ・ノーマン、デビッド・デュバル、そしてスコッティ・シェフラー。
加えて、ベン・ホーガンもそうですね。
次回は、各時代を代表するボールストライカーに受け継がれてきた「右足スライドの系譜」を見ていきます。
