18番、同じレイアップが明暗を分けた

石川県加賀市の片山津ゴルフ倶楽部・白山コースで、「ソニー 日本女子プロゴルフ選手権大会」が開催されました。

父親が富山県、母親が石川県七尾市の出身である山下美夢有選手にとって、北陸は縁の深い土地です。

その石川県で、どうしても欲しかった日本女子プロのタイトルを、吉澤柚月選手とのプレーオフの末につかみ取りました。

ショットは決して本調子とはいえない状態でしたが、それでも最後には勝ち切る。そこに山下選手の強さがあったと思います。

テレビ中継を見ていましたが、随所に見応えのあるプレーがありました。

特に印象に残ったのが、勝みなみ選手の16番ホールです。見事なセカンドショットからイーグルを奪い、一気に優勝争いへ戻ってきました。

しかし、続く17番では痛恨の3パット。優勝まで、あとわずかに届きませんでした。

そして、優勝争いの明暗を分けたのが、18番ホールのセカンドショットでした。

正規ラウンドの18番、山下選手のティーショットは右の深いラフへ入りました。

グリーンを狙うべきライではなく、セカンドショットはレイアップしなければなりません。

ここで山下選手は、ハイブリッドによるハーフショットを選択しました。

ボールを確実にフェアウェイへ運び、残り88ヤード。そこから第3打をピン右手前約1メートルにつけ、1パットのパーでホールアウトしました。

そして、吉澤選手とのプレーオフ。舞台は再び18番ホールです。

山下選手がフェアウェイを捉えたのに対し、吉澤選手のティーショットは、先ほどの山下選手と同じ右の深いラフへ入りました。

吉澤選手もグリーンを狙わず、レイアップしてパーを取る戦略です。

つまり、二人の戦略は同じでした。

しかし、吉澤選手がレイアップにアイアンを選択したのを見た瞬間、店長は「これはまずい」と思いました。

その嫌な予感は的中します。

インパクトでネックに芝が絡み、フェースが閉じたことで、ボールは大きく左へ飛び出してフェアウェイバンカーへ。そこからの第3打もグリーン奥のカラーまでオーバーし、ボギーとなりました。

二人とも選んだのは、レイアップしてパーを取るという同じ戦略です。

それにもかかわらず、なぜ山下選手のハイブリッドは成功し、吉澤選手のアイアンは失敗したのでしょうか。

ハイブリッドは、幅が広く丸みを帯びたソールによって、芝の上を滑らせながらボールを運びやすい形状をしています。

また、一般的にアイアンよりもヘッドの慣性モーメントが大きいため、芝から偏った抵抗を受けても、フェースの向きが変わりにくいという特徴があります。

一方、アイアンはネックとフェースの境目がはっきりしています。そこに長い芝が絡んで強い抵抗が加わると、シャフト軸を中心にフェースを急激に閉じる力が働きます。

吉澤選手のショットが左へ飛び出したのは、この現象だったと考えられます。

「ラフに入ったらアイアン」と、最初から決めているゴルファーは多いと思います。

しかし、ラフから使うクラブは、芝の長さや密度、ボールがどの程度沈んでいるか、そして次にどこまで運べばよいかによって変わります。

ボールが完全に沈んでいれば、ロフトのあるアイアンやウェッジで上から入れなければならない場合もあります。

しかし、ボールがある程度浮いていて、グリーンを狙うのではなくフェアウェイへ運ぶことが目的なら、ハイブリッドのハーフショットが安全な選択になることもあります。

ラフからのショットで大切なのは、何番で打てば最も遠くへ飛ばせるかではありません。

芝の抵抗を受けてもフェースを管理し、次のショットを打てる場所までボールを運べるのは、どのクラブなのか。

クラブをコントロール下に置くとは、自分のスイングだけをコントロールすることではありません。ライから受ける抵抗まで考え、その中でフェースを管理できるクラブを選ぶことも含まれます。

これからラフにボールが入ったときには、今回の山下選手のハイブリッドによるレイアップを、ぜひ思い出してほしいと思います。

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