フィッティングをより深く考える④

数値は答えではなく、フィッティングへの問いです

PING Proving Grounds Episode 3「Fitting Matters」より

PING Proving Grounds Podcast Episode 3「Fitting Matters」を受けて、
ここまでフィッティングについて考えてきました。

第1話では、
フィッティングは上手くなってから受けるものではなく、
上手くなるために道具の前提条件を整える作業だと書きました。

第2話では、
ヘッドスピードだけでクラブを判断してはいけない、
という話をしました。

ヘッドスピードは入力側の数値です。
しかし、コースで結果として残るのは、
ボールスピード、打ち出し角、スピン量、落下角、左右のばらつきなど、
ボールがどう飛んだかです。

第3話では、
試打で一番飛んだ1球を信じすぎてはいけない、
という話をしました。

最高の1球は大切です。
そのクラブの可能性を示してくれます。

しかし、コースでスコアに残るのは、
最高の1球だけではありません。

平均値。
ミスした時の残り方。
左右の幅。
前後の距離差。
そして、その人が何度も出してしまう球。

ここを見るのがフィッティングです。

今回は、Episode 3 のまとめとして、
数値は答えではなく、フィッティングへの問いである
というテーマで考えてみたいと思います。


弾道計測器は、結果を示してくれる

現代の弾道計測器は非常に優秀です。

ヘッドスピード。
ボールスピード。
打ち出し角。
スピン量。
キャリー。
トータル距離。
最高到達点。
落下角。
左右のばらつき。

これらの数値を、かなり細かく見ることができます。

以前であれば、
「何となく高い」
「何となく吹けている」
「何となく右に出る」
という感覚で見ていたものが、
今は数字として確認できます。

これは、フィッティングにとって非常に大きな進歩です。

ただし、ここで勘違いしてはいけないことがあります。

弾道計測器は、
結果を示してくれます。

しかし、その結果を生んだ原因まで、
すべて自動で教えてくれるわけではありません。


数値が出ると、答えが出たように感じてしまう

試打室で数字が表示されると、
どうしてもその数字が答えのように見えます。

ボールスピードが速い。
だから良いクラブ。

スピン量が少ない。
だから良いクラブ。

キャリーが伸びた。
だから良いクラブ。

左右のブレが少ない。
だから良いクラブ。

もちろん、それぞれ大切な情報です。

しかし、その数値だけで判断してしまうと、
フィッティングはかなり危うくなります。

なぜなら、数値は単独で存在しているわけではないからです。

ボールスピードが出ている。
しかし、打ち出し角が低すぎる。

スピン量が減っている。
しかし、落下角が浅くなり、グリーンで止まりにくい。

キャリーが伸びている。
しかし、左右の幅も広がっている。

トータル距離は出ている。
しかし、コースでは止まる場所が読みにくい。

こういうことは、実際によくあります。

つまり、数値は単独で見るものではありません。
数値同士の関係を見なければなりません。


数値は、答えではなく問いである

私は、フィッティングにおける数値は、
答えではなく、問いだと思っています。

なぜ、このボールスピードなのか。

なぜ、この打ち出し角なのか。

なぜ、このスピン量なのか。

なぜ、右に出るのか。

なぜ、左に巻くのか。

なぜ、最高の1球は良いのに、平均値は悪いのか。

なぜ、試打室では良いのに、コースでは怖くなるのか。

ここを読むのがフィッティングです。

数値を見て終わりではありません。

その数値が、
クラブによって出ているのか。
スイングによって出ているのか。
アドレスによって出ているのか。
打点によって出ているのか。
それとも、それらが複合して出ているのか。

その原因を考える必要があります。


たとえば、右に出る球をどう読むか

たとえば、ボールが右に出るとします。

この時、単純に
「右に出るから、つかまるクラブにしましょう」
で終わってよいのでしょうか。

もちろん、それで改善するケースもあります。

しかし、右に出る理由はいくつもあります。

フェースが開いて当たっているのか。
クラブパスが右を向いているのか。
ライ角が合っていないのか。
長さが合わず、手元の位置がズレているのか。
シャフトが戻りにくいのか。
ヘッドタイプがその人に合っていないのか。
そもそもアドレスで右を向いているのか。

同じ「右に出る」という結果でも、
原因が違えば、提案するクラブも変わります。

ここを見ずに、
結果だけでクラブを決めてしまうと、
一時的には良く見えても、コースで再び問題が出ることがあります。


たとえば、スピン量が多い球をどう読むか

スピン量が多い場合も同じです。

スピン量が多い。
だからロースピンのヘッドにしましょう。

これも、必ずしも間違いではありません。

しかし、なぜスピンが多いのかを見なければなりません。

打点が下に入っているのか。
フェースが開いているのか。
ロフトが寝て当たっているのか。
入射角が強すぎるのか。
シャフトが合わず、インパクトでロフトが増えているのか。
ヘッドの重心特性が合っていないのか。

原因によって、
ロフトを変えるのか。
ヘッドを変えるのか。
シャフトを変えるのか。
長さを変えるのか。
あるいは、スイング側の課題として見るのか。

判断は変わります。

つまり、スピン量という数値そのものは答えではありません。
その数値が出た理由を考えるための入口です。


たとえば、ボールスピードが出ていない球をどう読むか

ボールスピードが出ていない場合も同じです。

ヘッドスピードはある。
しかし、ボールスピードが出ていない。

この場合、まず考えたいのは、
エネルギーがボールに効率よく伝わっているかどうかです。

打点がズレているのか。
フェースの向きが合っていないのか。
ロフト条件が悪いのか。
クラブが長すぎて芯に当たりにくいのか。
重すぎて振り遅れているのか。
軽すぎて手で合わせにいっているのか。
シャフトのタイミングが合っていないのか。

ボールスピードが出ないから、
もっと反発の良いヘッドにする。

それだけでは足りないことがあります。

なぜなら、ヘッドの性能以前に、
その人が芯で打ちやすい状態になっていない可能性があるからです。

フィッティングでは、
ボールスピードの数値そのものよりも、
なぜそのボールスピードになっているのか
を見る必要があります。


フィッターは、数値の通訳者である

弾道計測器は、数字を出してくれます。

しかし、その数字をどう読むかは、
フィッターの仕事です。

私は、フィッターは数値の通訳者でもあると思っています。

お客様にとって、
弾道計測器の数字は分かりやすいようで、
実は分かりにくいものです。

ボールスピードが高い。
スピン量が多い。
打ち出し角が低い。
左右のばらつきがある。

数字だけを見れば、そうです。

しかし、その数字が、
お客様のゴルフにとって何を意味するのか。

コースでどんなミスにつながるのか。
どのクラブを使う時に問題になるのか。
どこまでがクラブで整えられるのか。
どこからがスイング側の課題なのか。

そこを分かる言葉に置き換えるのが、
フィッターの役割だと思います。


試打室の数字と、コースの現実をつなげる

フィッティングで重要なのは、
試打室の数字を、コースの現実につなげることです。

試打室でキャリーが伸びた。
それは良いことです。

しかし、そのキャリーがコースで何を意味するのか。

ドライバーなら、
いつも越えられなかったバンカーを越えられるのか。
それとも、曲がった時にOBへ届きやすくなるのか。

アイアンなら、
番手間の距離がきれいに並ぶのか。
それとも、飛びすぎる1球が出て、グリーン奥が怖くなるのか。

ハイブリッドやフェアウェイウッドなら、
高さが出て、グリーンを狙えるのか。
それとも、低く強い球になりすぎて、止めにくいのか。

ウェッジなら、
スピン量が増えたことで止めやすくなるのか。
それとも、打ち出し角やキャリーが不安定になっているのか。

数字は試打室で出ます。
しかし、クラブを使うのはコースです。

ですから、フィッティングでは、
試打室の数字だけで終わらせず、
その数字がコースでどう働くのかを考える必要があります。


よくラウンドするコースも、フィッティングの情報になる

第3話でも書きましたが、
フィッターの役割は試打室の数値だけを見ることではありません。

お客様のスイングの特徴。
よくラウンドするコース。
想定されるミスの傾向。

ここまで踏まえて判断することが重要です。

たとえば、同じ右へのミスでも、
普段回るコースの右サイドがすぐOBなのか。
それとも、右は広くラフで止まるのか。

これによって、必要なクラブは変わります。

同じアイアンのキャリー不足でも、
よく行くコースのグリーン手前が安全なのか。
池やバンカーが多いのか。

これによって、見るべきポイントは変わります。

同じフェアウェイウッドでも、
セカンドでグリーンを狙うことが多いのか。
レイアップで前に進めることが多いのか。

これによって、求める高さや止まり方は変わります。

つまり、フィッティングは、
単に良い数字を出すクラブを探す作業ではありません。

その人が実際にプレーする環境で、
どのミスを減らし、どの結果を増やすべきかを考える作業です。


クラブで整えるべきことと、スイングで整えるべきこと

フィッティングで大切なのは、
クラブで整えるべきことと、
スイングで整えるべきことを分けて考えることです。

すべてをクラブのせいにしてはいけません。

しかし、すべてをスイングのせいにしてもいけません。

クラブが長すぎて芯に当たりにくい。
ライ角が合っていなくて方向に影響している。
シャフトが重すぎて振り切れない。
ヘッドタイプが合わず、ミスの幅が大きくなっている。

こうしたことは、クラブ側で整えられる可能性があります。

一方で、
アドレスの向き。
極端な打ち込み。
過度なフェース操作。
リズムの乱れ。
力み。

こうしたことは、スイング側の課題として見る必要があります。

大切なのは、
どちらか一方に決めつけないことです。

クラブ側で整えられることは整える。
そのうえで、スイング側の課題を見る。

この順番が、フィッティングを現実的なものにしてくれると思います。


PINGのフィッティング思想に感じること

PING Proving Grounds Podcast Episode 3 を聞いていて感じるのは、
PINGがフィッティングを単なる販売手段として見ていないことです。

クラブの性能を説明するだけではない。

ゴルファーの体格、スイング、ミスの傾向、弾道のデータを見て、
その人にとってクラブがどう働くかを考える。

ここにPINGのフィッティング思想があるのだと思います。

クラブには性能があります。

しかし、その性能は、
誰が使っても同じように出るわけではありません。

ある人にとっては非常にやさしいクラブが、
別の人にはつかまりすぎることがあります。

ある人にとっては強い弾道になるクラブが、
別の人には上がりにくいクラブになることがあります。

だからこそ、フィッティングが必要になります。

クラブの性能を、
その人のゴルフにどう結びつけるか。

それを考えるのが、
PINGが長年大切にしてきたフィッティングなのだと思います。


フィッティングは、試打では終わらない

試打は大切です。

実際に打ってみなければ分からないことは多いです。

構えた時の見え方。
振った時の重さ。
打った時の音。
打点の出方。
弾道の高さ。
ミスの出方。

これらは、試打によって初めて分かります。

しかし、フィッティングは試打で終わりではありません。

試打で出た数字を読み、
その数字がなぜ出たのかを考え、
お客様のゴルフにどう影響するかを判断する。

ここまで行って、フィッティングになります。

単に、
「これが一番飛びました」
「これが一番曲がりませんでした」
では、まだ浅いと思います。

なぜ飛んだのか。
なぜ曲がらなかったのか。
その結果は何度も出るのか。
コースで使えるのか。
ミスした時にどこまでで収まるのか。

そこまで見る必要があります。

最後に:クラブを替えるかどうかは、その後でいい

このシリーズの最後に、
店長として改めて書いておきたいことがあります。

フィッティングは、
必ずクラブを買い替えるためのものではありません。

まずは、今のクラブが自分に合っているのかを知ることです。

今のクラブが合っているなら、
それはとても良いことです。

安心して使えば良いと思います。

もし合っていない部分があるなら、
何が合っていないのかを知ることが大切です。

長さなのか。
重さなのか。
ライ角なのか。
ロフトなのか。
シャフトなのか。
ヘッドタイプなのか。
番手構成なのか。

それを知ったうえで、
今のクラブを調整するのか。
買い替えるのか。
練習の方向性を変えるのか。

その選択をすれば良いと思います。

クラブを替えるかどうかは、その後でいい。

まず大切なのは、
今のクラブが、今の自分のゴルフにどう働いているのかを知ることです。

そして、特にアイアンの場合は、
PINGのカラーコードチャートから大きく外さないことも大切だと思います。

もちろん、カラーコードチャートが絶対の答えという意味ではありません。
実際のスイング、構え方、インパクト、弾道を見ながら調整する必要があります。

しかし、身長や手首から床までの長さをもとにしたカラーコードは、
その人にとって自然に構えやすいライ角を考えるための重要な出発点です。

ここから大きく外れたアイアンを使うと、
ゴルファーがクラブに合わせて構え方や手元の通し方を補正してしまうことがあります。

ですから、アイアン選びでは、
「今の自分に合ったライ角の入口」から大きく外れていないか。

ここも、確認しておくべき大切なポイントだと思います。


まとめ

PING Proving Grounds Podcast Episode 3「Fitting Matters」を受けて、
4回に分けてフィッティングについて考えてきました。

フィッティングは、
上手くなってから受けるものではありません。

上手くなるために、
道具の前提条件を整える作業です。

ヘッドスピードは大切です。
しかし、それだけでクラブを決めるものではありません。

ボールスピード、打ち出し角、スピン量、落下角、左右のばらつき。
その結果、ボールがどう飛んだかを見る必要があります。

試打で一番飛んだ1球は大切です。
しかし、コースでスコアに残るのは、
平均値とミスの幅です。

そして、数値は答えではありません。

数値は問いです。

なぜそのボールスピードなのか。
なぜそのスピン量なのか。
なぜ右に出るのか。
なぜ最高の1球は良いのに、平均値は悪いのか。

そこを読むのがフィッティングです。

フィッティングとは、
クラブの性能を説明する作業ではありません。

ゴルファーとクラブの関係を読み解き、
その人がコースで繰り返すゴルフを、
少しでも良い方向へ動かす作業です。

週末に練習場へ行く方、
ラウンド予定のある方は、
ぜひ一度、自分のミスの傾向を見てみてください。

一番良かった球ではなく、
何度も出てしまう球。

そこに、フィッティングの入口があります。

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