クワイエット・アイは何を変えるのか(クワイエット・アイをPINGはどう見たのか)

おそらく店長が木場本先生と知さんからクワイエット・アイ(QE)という考え方を聞いたのは、2011年のこの論文が発表された後だったと思います。

この論文の中で引用されている最も古い研究は1990年のものでした。
つまり、QEという考え方は最近突然出てきたものではなく、すでにかなり長い蓄積を持ったテーマだということが分かります。

2011年の論文では、QEトレーニングの方法も紹介されています。
教わった内容も、だいたいその考え方に沿ったものです。

  1. 構えを取り、まずはボール後方からターゲットを確認する。
  2. ボールの上に構えたら、ホールを見る回数は多くしすぎない。
  3. そして最後は、ボール後方、あるいはボール背面の一点に視線を静かに固定する。
  4. QEはストローク開始前に始まり、2〜3秒続く。
  5. さらに、バックスイング中もフォアスイング中もクラブヘッドを目で追わない。
  6. そしてインパクト後も、視線はすぐに離さず、しばらくその場所にとどまる。

大まかに言えば、そのような内容です。

この研究では、平均ハンディキャップ2.7のエリートゴルファー22人を対象に、QEトレーニング群と対照群を比較しています。
その結果、QEトレーニング群のほうが、保持テストやプレッシャーテストで有意に良い成績を示し、競技ラウンドでも1ラウンドあたりのパット数が減り、6〜10フィートの成功率も改善しました。

ですから、
「パッティングにクワイエット・アイは役に立つのか」
という問いに対して、この2011年の論文はかなり強い根拠になると思います。

クワイエット・アイというものを最初に理解するうえでは、この論文は非常に分かりやすい入口です。
そしてCLUB PINGが説明している内容も、おそらくこの系統の考え方がベースになっているのだと思います。

一方で、QEとはそもそも何か、という定義を押さえるには、2019年の論文も役に立ちます。


こちらはバスケットボールの3ポイントシュートを題材にしていますが、QEは
「動作の重要局面の前に、特定の場所や対象へ向けられる最後の安定した注視」
として説明されています。
少なくとも100ミリ秒、視角3度以内という定義も示されており、クワイエット・アイとは、単に“見る”ことではなく、動作前の視線の静かな固定であることが分かります。

ただし、その後の研究では、
QEさえやればすべて解決する
というほど単純ではないことも見えてきます。

2020年には、QEだけがすべてではないという見方も示されました。
つまり、視線の長さや静けさだけで結果のすべてを説明することはできない、ということです。

その意味で、2024年のゴルフ・パッティング研究はとても重要です。
この研究では、眼球運動だけでなくEEG、つまり脳活動も調べています。

結論としては、成功したパットと失敗したパットで、平均QE時間には差が出なかった一方、脳活動には違いがありました。
成功したパットでは、打つ前に中央部ベータの抑制がより大きく、失敗したパットでは直前に前頭部シータが増えていました。
著者らはこれを、ためらい運動計画の修正と整合的だと解釈しています。

ここから分かるのは、クワイエット・アイの価値は、
長く見ていることそのもの
よりも、
その間にどのように運動準備が行われているか
にある、ということです。

簡単にまとめると、まず眼球の静かな固定があり、そのうえで思考の迷いが減る。
「向きは正しいのか」
「強さはどうなのか」
「ラインはこれでいいのか」
そうした雑念が減ることで、パットが決まる確率が上がる。
大づかみに言えば、そういう方向の話だと思います。

政治家が自分に不利なことを指摘されると目が泳ぐ、などと言いますが、あれも不安や迷いの表れとして語られます。
そう考えると、パッティングでも視線の落ち着きと心の迷いが無関係ではない、というのは興味深いところです。

以上が、QEに関する大まかな整理です。

そして面白いのは、これらの研究では、基本的にどんな器具を使うかまでは論じられていないことです。
店長自身も、QEとはあくまでパッティングスキル、あるいは注意の置き方の話だと思っていました。

ところがPINGは、それを道具の側に落とし込んできたわけです。

次回は、そのQEという考え方を、PINGがどのようにパターという道具に落とし込んだのかを見ていきたいと思います。

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