いやいや、本当にすごい内容でした。
ということで、優勝を決めたパットのシーンをご紹介します。
最後のパッティングは 動画の11分あたり からです。
バックスイングは速いテンポでクラブヘッドを上に上げています。
この映像ではバックスイングの大きさがやや分かりにくいのですが、
上の映像と合わせて見ると、彼女のテイクバックは意外と高く、しっかりと振り上げていることが分かります。
テンポの速いバックスイングでクラブヘッドを上方向へ引き上げる――
これが山下美夢有選手のストロークの特徴です。
🔹1. 前半:スインガー的な“慣性生成”
バックスイングの始動は、肩と腕の自然な連動によるアーク(弧)運動。
手で引くというよりも、肩の回転でクラブを「放り上げる」ように 動かしています。
この動きによって、ヘッドは重力と慣性を得てエネルギーを貯める(=スインガー要素)。
前半のテンポが軽快でリズミカルなのはそのためです。
体の動きに対してヘッドが“遅れず”、自然な位置関係を保ったまま上がる。
まさに振り子運動の延長線上でヘッドが上方向へ動く理想的な動きです。
🔹2. 後半:ヒッター的な“圧縮とリリース”
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ダウンスイングでは、右手と胸の前で一瞬“止め”を作り、
その反動でヘッドを押し出すようにリリースします。これは典型的なヒッター型の「押し込み」「押さえ込み」動作。
特にインパクト直前〜直後にかけて、右手の掌圧で
エネルギーを送り出すようなリリースが見られます。つまり、バックスイングで生み出した慣性エネルギーを、
ヒッター的な押圧動作でコントロールされた方向性と距離感に変換しているのです。小さく見えるテイクバックも後半はヒッター特有の力積が大きいパッティングのため、しっかりボールが転がるんですね。
🔹3. ハイブリッド型の妙
山下選手のパッティングは、まさに スインガーとヒッターのハイブリッド型。
特にこの優勝パットはスライスラインだったため、
引っかかりを防ぐ目的でテイクバックのスインガー要素を強調し、
カップ左サイドから流し込むように打っているように見えます。
バックスイングで、ヘッドを高く上げ、エネルギーを作り出し、ダウンスイング以降は、ヒッター要素の大きい力積の効果でしっかりボールが打ち出されています。
本当に見事なパッティングでした。
速いテンポの中に「慣性の流れ」と「掌圧の制御」が見事に共存しており、
まさに彼女の強さを象徴するストロークだったと思います。
両方の良いとこ取り、理想のハイブリッド・パッティング
スインガーとヒッター、両方のパッティングスタイルの「良いとこ取り」。
――これはなかなか簡単にはできません。やはり練習が必要ですね。
私のような“ゆるいゴルファー”は、
つい ひょいと上げてそのまま下ろすスインガースタイル に頼りがちです。
それでも、ラインの読みが合えばスッと入ってくれる。
そんな「流れに任せる感覚」で楽しんでいます。
ただし、どうしても“入れなければならないパット”、
つまり勝負どころの一打を確実に沈めたい時には、
やはりこのハイブリッド型パッティングを身につける価値があると思います。
スインガーのリズム感と、ヒッターの押し出し精度。
その両方を融合できたとき、パッティングの再現性は一段と高まる――
山下美夢有選手の優勝パットは、その好例でした。
