重いシャフトなのに、なぜ軽く感じるのか?

シャフト選びの第二話となります。

前回、シャフト選びの第一歩は「重量」であるという話をしました。

今回は、その「重量」についてもう少し考えてみたいと思います。

フィッティングをしている時にシャフトのフィーリングをお聞きします。

その中で、非常によく聞く言葉があります。

「このシャフト、軽く感じます。」

ところが面白いことに、実際には、それまで打っていたシャフトより重いことがあります。

10g近く重いシャフトなのに、

「こっちの方が軽い」

と言われることさえあります。

なぜ、このようなことが起こるのでしょうか。

人間が感じる「重さ」は一つではない

人がクラブの重さを感じる場面は、大きく分けると二つあります。

一つは、クラブを持ったとき。

もう一つは、クラブを振ったときです。

クラブを手に持って静止していれば、基本的にはクラブの質量と、その重量がどこに分布しているかによって重さを感じます。

しかし、クラブを振り始めると話が変わってきます。

クラブには加速や減速が生まれ、ヘッドには慣性が働きます。

そしてシャフトは、まっすぐな状態のまま動いているわけではありません。

しなり、そして戻っています。

つまり、スイング中にゴルファーが感じている「重さ」は、カタログに書かれている何グラムという数字だけでは説明できません。

45インチの長いクラブを動かしている

もう少し具体的に考えてみましょう。

ダウンスイング初期では、まずグリップエンド方向へクラブを進めていきます。

しかし、そのままグリップエンド方向へ動かし続けるわけではありません。

やがてクラブはリリースを始めます。

このとき、人間は腕とクラブによるてこの作用も利用してクラブを動かしています。

ここで重要になってくるのが、シャフトのしなり戻りです。

ダウンスイングで生じたシャフトのしなりが、ちょうどリリースを始めたいタイミングで戻ってくればどうでしょう。

シャフトの復元する力が、てこの作用を助けてくれます。

ゴルファーが自分の力だけでクラブを動かす必要が少なくなるわけです。

だから、クラブを軽く感じます。

反対に、しなり戻りのタイミングが自分のリリースと合っていなかったらどうでしょう。

シャフトから十分な助けを得られません。

45インチ前後もある長いクラブを、自分の力で動かさなければならなくなります。

当然、大きな抵抗を感じます。

実際には軽いシャフトなのに、

「重い」「振りにくい」

と感じることがあるのは、このためだと私は考えています。

タイミングだけではない

もう一つ重要なのが、しなり戻りの方向です。

シャフトが戻ろうとしている方向と、自分がクラブを振りたい方向が一致していれば、余分な力は必要ありません。

シャフト自身が、クラブを進めたい方向へ動くことを助けてくれるからです。

しかし、両者がずれていたらどうでしょう。

自分はこっちへ振りたい。

ところがクラブは違う方向へ動こうとしている。

そうなれば、ゴルファーはその動きを修正しなければなりません。

当然、そこには余分な力が必要になります。

つまり、同じ重量のシャフトであっても、

しなり戻りのタイミングが合っているか。

そして、

しなり戻りの方向が合っているか。

によって、ゴルファーが感じる重さは変わってくるということです。

「軽く感じる」は重要なサイン

こう考えると、フィッティング中にお客様から聞く、

「このシャフトは軽く感じる」

という言葉の意味も変わってきます。

必ずしも、

「もっと重いシャフトを使える」

という意味ではありません。

むしろ、

そのシャフトの運動と、ゴルファーの運動が同調している。

その可能性を示しているのではないでしょうか。

実重量では重いのに軽く感じる。

これは決して矛盾ではありません。

ゴルファーがクラブと喧嘩せずに振れているから、軽く感じているのかもしれないのです。

元調子が振りやすいと感じる理由もここにある

ここで少しだけ「元調子」について触れておきます。

元調子は、手元側のしなりが大きいシャフトです。

手元に近いところで大きく曲がるため、スイング中には実質的に少し短いクラブを振っているような状態を作ることができます。

もちろん、45インチのクラブが物理的に短くなるわけではありません。

しかし、長い棒の途中が曲がることで、ゴルファーから見たクラブの運動は変わります。

これも、元調子を「振りやすい」「軽く感じる」と評価する人が多い理由の一つではないかと考えています。

ただし、

「だから元調子を選べばいい」

という話ではありません。

ここからが、シャフト選びの面白いところです。

なぜなら、シャフトには「しなり」だけでなく、

しなり戻り

があり、

さらに、

ねじれと、ねじれ戻り

もあるからです。

そして、それらはダウンスイングだけで起きているわけではありません。

シャフトは、テークバックを始めた瞬間からすでに動き始めています。

その動きがゴルファーのスイングとどのように組み合わさるのか。

次回は、そこから考えてみたいと思います。

飛ばないはずのBLUEPRINT Tが、一番飛んだ。

先日、フィッティングしたお客様に、その後の調子をお聞きしました。

フィッティングの際にも確認していた現象なのですが、現在も9番アイアンで150ヤード飛ぶということでした。

選択されたアイアンは、PINGのBLUEPRINT T

いわゆる「飛び系アイアン」ではありませんから、9番アイアンで150ヤードというのは、かなりの飛距離と言えるでしょう。

このお客様はクラブチャンピオンになるほどの腕前です。

ですから、今回のお話が多くのゴルファーにそのまま当てはまるとは思っていません。

ただ、

「こういうこともあるんだ」
「常識が、すべての人に常識として通用するわけではないんだ」

という一つの事例として、参考にしていただければと思います。

四十にして惑わず。でもゴルフクラブには惑う

「四十にして惑わず」と言います。

ところが40歳を超えて、逆に惑い始めるものがあります。

ゴルフクラブです。

40代といえば、少しずつ体力の衰えを感じ始める年代でもあります。

そこで考えるのが、

「年齢も年齢だし、そろそろ少しやさしいクラブを使おうか」

ということです。

これは40代に限った話ではありません。

還暦を迎える頃にも、同じようなクラブ選びの転換点がやってくるようです。

こちらについては、また別の機会に書きたいと思います。

「少しやさしいクラブ」に替えたけれど

今回のお客様も、一般的に「少しやさしい」と言われるハーフキャビティモデルをお使いでした。

年齢とともに少しずつ飛距離が落ち始め、方向性もぼやけてきたそうです。

スコア重視のお客様なので、i240、BLUEPRINT Sを含め、いくつかのアイアンを打っていただきました。

ところが結果は、少し意外なものになりました。

BLUEPRINT Tの方が、他のモデルより5ヤード以上飛んだのです。

しかも、飛んだだけではありません。

曲がらない。

一般的には「飛ばない」「難しい」と思われがちなBLUEPRINT Tが、なぜこのゴルファーにとっては、最も飛んで、最も曲がらないアイアンになったのでしょうか。

今回の少し不思議なフィッティング結果から、

「やさしいクラブとは何なのか」

を考えてみたいと思います。

「操作性」とは左右に曲げることだけなのか

ここでよく言われるのが、

「マッスルバックは操作性が高い」

という言葉です。

「操作性」というと、ボールを左右に曲げて弾道をコントロールすることを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。

しかし、ボールのコントロールは左右だけではありません。

上下にもコントロールできます。

高い球を打つ。

低い球を打つ。

特に今回のお客様は、もともとボールを抑えて打つ技術を持ったゴルファーです。

どうやら今回の結果には、この上下方向のコントロール性能が大きく関係しているようです。

一般的には「飛ばない」と思われがちなBLUEPRINT Tが、なぜ他のアイアンより飛んだのか。

なぜ弾道が高くなったのか。

そして、なぜ曲がらなかったのか。

次回は、この「なぜ?」を少し掘り下げてみたいと思います。

シャフト選びについて

毎年、メーカーは新しいシャフトを発表し、市場へ送り出しています。

一つのメーカーだけでも複数のシャフトシリーズがあり、それぞれに重量帯やフレックス違いがラインナップされています。さらに、メーカー純正シャフトも数多く用意されています。

最新のシャフトが誰にでも、どのヘッドにも合うのだったら、以前のシャフトは即座井に廃盤となるんですが、廃盤にならないのは、そうではないということを逆に証明しています。

その膨大な選択肢の中から、自分に本当に合う一本を探し出すことは、まさに至難の業です。

では、シャフトを選択する最初の基準となる項目は何でしょうか。 “シャフト選びについて” の続きを読む

スピンアウト 第4話 ボールに当てるのではない。ボールが当たるスイングへ。

私たちは、

「クラブが開いているから、良いダウンスイングになる」

と考えがちです。

しかし、順番は逆なのではないでしょうか。

右肘が自然に収束し、上体の回転によって左肩・右肘・グリップの三角形が運ばれる。

その結果として、クラブが開いて見え、ホーガンが示したダウンスイングプレーンが現れます。

つまり、目に見えているクラブの動きは原因ではなく、骨格が自然に働いた結果なのです。

もし、この考え方が正しいのであれば、ゴルファーが意識すべきことはクラブを操作することではありません。

人間の骨格が本来持っている働きを引き出し、その動きを邪魔しないこと。

私は、それこそがスイングをシンプルにし、再現性を高めるための本質ではないかと考えています。

そうであるならば、ボールに当てるのがスイングではなく、ボールが当たるのがスイングなのではないでしょうか。

そして、その自然な動きを引き出すためのお手伝いをするのが、フィッティングです。

もちろん、ボールに当てることを意識したスイングであっても、静的フィッティングの重要性は変わりません。人間の体の機能を使ってスイングする以上、クラブが骨格や構えに与える影響は避けられないからです。

だからこそ、すべてのゴルファーにとって、適切なフィッティングは重要だと私は考えています。

特に、これからゴルフを始める人が自分に合わないクラブを使うと、そのクラブに合わせたスイングを身につけてしまう可能性があります。

その結果、本来であれば必要のない動きを覚え、それが癖として残ってしまうこともあります。

また、努力しているにもかかわらず思うような結果が得られない人は、その原因が技術だけではなく、クラブに制約されていることにあるかもしれません。

もしそう感じるのであれば、一度フィッティングを受けてみることをお勧めします。

クラブが変わることで、今まで無意識に補っていた動きが必要なくなり、人間が本来持っている骨格の働きを、より自然に発揮できるようになるかもしれません。

私は、フィッティングとは単にクラブを選ぶ作業ではないと考えています。

ゴルファーが本来持っている能力を引き出し、人間の骨格が自然に働ける環境を整えること。

それこそが、本当のフィッティングの役割なのです。

スピンアウト 第3話 クラブが開いて見える本当の理由

ゴルフでは、

「クラブを開いて下ろす」

「フェースを開いたままダウンスイングする」

という言葉をよく耳にします。

確かに、トッププロのスロー映像を見ると、クラブフェースは開いているように見えます。

しかし、本当にクラブを開くことが目的なのでしょうか。

私は、そうは考えていません。

これまでお話ししてきたように、右肘が自然に鳩尾付近へ収束すると、

左肩・右肘・グリップ

で構成される三角形は、一つのユニットとして完成します。

そして、この三角形を動かしているのは、腕ではありません。

上体の回転です。

胸郭が回転すると、左肩が移動します。

右肘は鳩尾付近へ収束したままその位置関係を維持し、グリップも三角形の一辺として動き続けます。

つまり、ゴルファーが行っているのは、クラブを操作することではありません。

上体の回転によって、左肩・右肘・グリップの三角形全体を運んでいるのです。

ここで、二つのスイングを見比べることができます。

一つは、上体の回転と右肘の自然な収束によって三角形全体が運ばれるスイング。

もう一つは、腕や手でクラブを操作しながら動かしていくスイングです。

私は、この違いがスイングを理解する上で最も重要なポイントの一つだと考えています。

その結果、この三角形はホーガンが示した右向きのダウンスイングプレーン上を自然に移動します。

そして、その三角形に取り付けられたクラブは、プレーンに対して自然な姿勢を保ちながら運ばれるため、正面から見るとクラブが開いているように見えます。

つまり、クラブを意識的に開いているのではありません。

右肘の収束という骨格構造と、上体の回転によって三角形が運ばれた結果として、そのように見えているのです。

もし、この順番が正しいのであれば、

「クラブを開こう」

と考える必要はありません。

まず作るべきなのは、

  • 右肘が自然に収束できる構造
  • 左肩・右肘・グリップの三角形が安定する構造
  • その三角形を上体の回転で運ぶこと

です。

構造が整えば、クラブの向きも、ダウンスイングプレーンも、自然に決まります。

私は、ここに多くのレッスンとの違いがあるように感じています。

私たちは、

「クラブが開いているから、良いダウンスイングになる」

と考えがちです。

しかし、順番は逆なのではないでしょうか。

右肘が自然に収束し、上体の回転によって三角形が運ばれた結果として、クラブが開いて見える。

この因果関係を理解すると、クラブを操作しようとする意識は少なくなり、人間の骨格が本来持っている働きを、そのままスイングに生かせるようになるのではないかと私は考えています。

スピンアウト 第2話 三角形はプレーンを作るのではない。プレーンの上を動いている。

前回、私は本当に動いている三角形は、

左肩・右肘・グリップ

を結ぶ三角形ではないかという考えを紹介しました。

この三角形で考えると、これまで説明が難しかった現象が、とてもシンプルになります。

それは、ベン・ホーガンが提唱したダウンスイングプレーンです。

ホーガンは、ダウンスイングではクラブは右を向いたプレーン上を動くと説明しました。

しかし、多くのレッスンでは、

「右へ振りましょう。」

「プレーンに乗せましょう。」

というように、プレーンを意識して作ることが目的になっています。

私は、少し違う考え方をしています。

もし右肘が自然に鳩尾付近へ収束し、

左肩・右肘・グリップの三角形が一つのユニットになれば、この三角形はほとんど形を変える必要がありません。

つまり、スイング中に変化しているのは三角形ではありません。

三角形全体が空間の中を移動しているのです。

そして、その移動方向を人間が見たとき、

右を向いたプレーンの上を動いているように見えるのではないでしょうか。

つまり、プレーンは意識して作るものではありません。

右肘が自然に収束した結果として、三角形の移動経路がプレーンになるのです。

私は、ホーガンが観察したのは、この結果だったのではないかと考えています。

プレーンは原因ではなく結果。

そう考えると、右肘、パワーパッケージ、そしてホーガンのプレーンは、すべて同じ現象を別の角度から表現していることになります。

次回は、この三角形がなぜ形をほとんど変えずに運動できるのかを、人間の骨格という視点からもう少し掘り下げてみたいと思います。

スピンアウト 第1話 本当に動いている三角形はどれなのか

ゴルフでは昔から、

「肩と両腕で作る三角形を崩さない」

という言葉が使われてきました。

確かに、スイングをシンプルに考えるためには、とても分かりやすい考え方です。

そうなんです。誰もが途中までが三角形の説明になっているのです。

しかし、この三角形だけでは説明が難しい現象があります。

それが、トッププロのインパクトです。

インパクトでは、右肘は鳩尾付近へ自然に収束します。

すると、肩と肩、そしてグリップを結ぶ三角形は、右肘の動きによって形が変化してしまいます。

つまり、この三角形を固定したままスイングしているわけではありません。

では、本当に動いている三角形は何なのでしょうか。

私は、

左肩・右肘・グリップ

を結ぶ三角形ではないかと考えています。

この三角形であれば、右肘が鳩尾付近へ収束した時点で、三角形の形はほぼ決まります。

あとは、その三角形全体が移動し、回転するだけです。

つまり、腕や手をそれぞれ別々に動かしているのではなく、一つのユニットとして運動していると考えることができます。

この考え方に立つと、これまで別々に語られてきた

  • パワーパッケージ
  • 右肘の収束
  • インパクトの構造

が、一つの三角形として整理できるようになります。

もちろん、これは私自身の考察です。

しかし、人間の骨格という視点から見たとき、この三角形の方がスイングをよりシンプルに説明できるように感じています。

次回は、この三角形がスイング中にどのように動き、なぜ形をほとんど変える必要がないのかを考えてみたいと思います。

なぜPINGの静的フィッティングは成り立つのか

これまで私は、

「右肘は鳩尾付近へ収束する」

という現象を、人間の骨格という視点から考えてきました。

もし、人間の骨格が自然に選ぶインパクトの構造が存在するのであれば、フィッティングの考え方も変わります。

一般的には、

「スイングを見てクラブを選ぶ」

という順番が当たり前だと思われています。

しかし、PINGが長年取り組んできた静的フィッティングは、その逆の発想です。

まず、人間の体を測ります。

身長。

手首から床までの長さ。

そして、その人の骨格に合ったライ角やクラブ長を選択します。

なぜ、それだけで方向性が改善することがあるのでしょうか。

それは、人間には骨格が最も自然に働く構造があり、その構造へ無理なく収束できるクラブほど、インパクトが安定するからではないでしょうか。

つまり、静的フィッティングは「スイングを予測する」のではありません。

人間が本来持っている骨格の働きを邪魔しないクラブを探しているのです。

もちろん、そのようなことがPINGの資料に書かれているわけではありません。

しかし、このシリーズで考えてきたように、人間の骨格が自然な構造へ収束してインパクトが作られるのであれば、静的フィッティングはその骨格を基準にクラブを選んでいると考えることもできます。

私は、この推論は十分に成り立つのではないかと思っています。

その結果として、

  • グリップの位置
  • 左手首
  • 右手首
  • ラグ
  • 右肘

といった構造要件が自然に整い、クラブフェースもスクエアに戻りやすくなります。

もちろん、すべてのゴルファーが同じスイングをするわけではありません。

体格も柔軟性も筋力も違います。

だからこそ、一人ひとりに合ったクラブが必要になります。

フィッティングとは、理想のフォームを押し付けることではありません。

その人が本来持っている自然な骨格の働きを引き出すこと。

私は、それこそがフィッティングの本質だと考えています。

このシリーズでは、右肘という一つの現象から、人間の骨格、インパクトの構造、そしてフィッティングの意味まで考えてきました。

もし皆さんがクラブを選ぶ機会があれば、「このクラブは自分の骨格が自然に働けるクラブなのか」という視点でも、ぜひ見直してみてください。

右肘の答えは、赤ちゃんが知っている

前回、右肘は意識して作るものではなく、人間の骨格が自然に選ぶ位置ではないかというお話をしました。

では、その骨格は、なぜそのようにできているのでしょうか。

私は、その答えは赤ちゃんの動きにあるのではないかと考えています。

生まれたばかりの赤ちゃんは、ゴルフを知りません。

もちろん、スイング理論も知りません。

それでも、ハイハイをするときには、肩・腕・手を使って自分の体重を支えます。

このときの腕の使い方を観察すると、肘は無理に外へ張ることも、極端に内へ絞ることもありません。

肩から手へ力が自然に伝わる位置へ収まっています。

つまり、骨格だけで効率よく体重を支える構造を、本能的に使っているのです。

ゴルフのインパクトでも、クラブヘッドから大きな反力が返ってきます。

その力を筋力だけで受け止めようとすれば、タイミングや力加減が必要になります。

しかし、骨格で受けられる位置に右肘が収束すれば、力は肩から体幹へと自然に伝わります。

もしかすると、トッププロに共通する右肘の位置は、長年の練習で偶然身に付いたフォームではなく、人間が本来持っている骨格の使い方へ戻った結果なのかもしれません。

もちろん、これは私の考察です。

しかし、多くのトッププロのインパクトを見ていると、「人間にとって最も自然な構造」が、結果として同じような形を生み出しているように感じます。

そして、この視点に立つと、フィッティングの意味も変わります。

クラブに人間を合わせるのではありません。

人間が本来持っている骨格の働きを邪魔しないクラブを見つけること。

それが、フィッティングの本質なのではないでしょうか。

次回は、この考え方をもとに、「なぜPINGの静的フィッティングが成り立つのか」を考えてみたいと思います。

なぜ右肘は鳩尾へ収束するのか

前回は、右肘は意識して作るものではなく、インパクトの構造要件を満たした結果として現れる「指標」であるというお話をしました。

では、なぜ人間の体は、その位置を選ぶのでしょうか。

私は、その答えはゴルフの技術ではなく、人間の骨格そのものにあると考えています。

少し試してみてください。

左手首をフラットにし、右手首を背屈させたまま、両手を胸の中央へ持ってきます。

このとき、多くの人は無理に右肘を寄せなくても、自然と鳩尾付近へ収束します。

右肘を意識しなくても、その位置になるのです。

これは、ゴルフスイングだからではありません。

人間の肩、上腕、前腕、手首という骨格の組み合わせが、その位置を最も自然な位置として選んでいるからです。

つまり、右肘は「寄せる」のではなく、「収束する」のです。

ここで重要なのは、右肘だけを見てはいけないということです。

右肘が鳩尾付近にあるということは、

  • 左手首はフラット
  • 右手首は背屈
  • クラブヘッドラグが維持されている
  • グリップは両肩の中央付近にある

という構造要件が同時に満たされていることを意味します。

だからこそ、世界中のトッププロに似た右肘の位置が見られるのではないでしょうか。

これは、誰かに教えられた形を真似しているのではなく、人間の骨格が自然に導き出した結果なのかもしれません。

もし、この考え方が正しいとすれば、フィッティングの目的も変わります。

クラブに人間を合わせるのではありません。

人間の骨格が自然にこの構造へ収束したとき、ボールが真っ直ぐ飛ぶクラブを見つけること。

それが、本当のフィッティングなのではないでしょうか。

では、人間の骨格は、なぜこのような構造を持っているのでしょうか。

私は、そのヒントは人間が二足歩行になる以前の動きにあると考えています。

次回は、赤ちゃんのハイハイや四足歩行という視点から、この構造を考えてみます。