ライ角は、本当に方向だけの問題なのでしょうか?

ライ角の説明を受けたことがあるゴルファーなら、一度はこの図を見たことがあると思います。

アップライトになるとフェースは左を向く。

フラットになるとフェースは右を向く。

その結果、

  • アップライトなら左へ飛びやすい
  • フラットなら右へ飛びやすい

という説明です。

これはライ角の基本として広く知られており、PINGをはじめ、多くのクラブメーカーでも採用されている考え方です。

もちろん、この説明は間違いではありません。 “ライ角は、本当に方向だけの問題なのでしょうか?” の続きを読む

上級者がG740アイアンを使うとしたら(ロフト帯別・PINGアイアン番手対応表)

1. 金谷選手の例

上級者がG740を使うことは、決して不自然ではありません。

分かりやすい例が、金谷拓実選手のクラブセッティングです。
金谷選手は非常に高い技術を持つトッププレーヤーですが、長い番手側にはG系アイアンを組み合わせています。

これは、やさしさに逃げているという話ではありません。

長い番手で必要なのは、見た目の難しさではなく、必要なキャリーが出ること、十分な高さが出ること、そしてグリーンを狙ったときに止められる弾道になることです。

短い番手やミドルアイアンでは、プレーヤーズアイアンでスピン量、距離感、操作性を作る。
しかし、長い番手では、G系アイアンの高初速とやさしさを使って、キャリーと高さを確保する。

金谷選手のようなトッププレーヤーであっても、長い番手には役割に応じてやさしいヘッドを入れる。
この考え方は、上級者がG740を考えるうえで非常に参考になります。

2. ミドルアイアンより上をG740にする

上級者がG740を使う場合、現実的なのはミドルアイアンより上の番手です。

ショートアイアンまでG740にするというより、プレーヤーズアイアンでは高さやキャリーが不足する番手だけ、G740に置き換えるという考え方です。

大きい番手になるほど、入射角は緩やかになり、本来のG740アイアンの性能を引き出せるからです。

たとえば、i240の7番までは十分に打てる。
しかし、i240の6番になると高さが足りない。
さらに5番、4番になると構えただけで打てる気がしないならば、G740の7番、6番や5番が選択肢になります。

ただし、ここで注意しなければならないのは、番手表示です。

G740の5番アイアンは21度。
これは、i240の4番アイアン22度に近いロフトです。

G740の6番アイアンは24.5度。
これは、i240の5番アイアン25度に近いロフトです。

つまり、G740の5番はプレーヤーズアイアンの5番ではなく、実質的には4番相当。
G740の6番は、プレーヤーズアイアンの5番相当です。

上級者がG740をコンボに入れる場合は、番手で考えるのではなく、ロフト帯で考える必要があります。

3. ここで逆引き表を使う

PINGではモデル別に番手のフォルトを表示している票がありますが、非常に分かりにくいので、逆引き表を作成しました。

ロフト帯別・PINGアイアン番手対応表

※セル内は「番手・ロフト/シャフト長」

モデル\ロフト帯 19°前後 21〜22.5° 24.5〜26° 28〜29.5° 31.5〜33° 35.5〜37° 40〜42° 44.5〜47° 49.5〜52° 56°
G740 5I / 21°38.5 6I / 24.5°37.75 7I / 28°37 8I / 32°36.5 9I / 36°36 PW / 40°35.5 UW / 45°35.5 50° / 50°35.5 56° / 56°35.25
G440 4I / 19°39.25 5I / 22°38.5 6I / 25.5°37.75 7I / 29°37 8I / 33°36.5 9I / 37°36 PW / 42°35.5 UW / 47°35.5 52° / 52°35.5 56° / 56°35.25
i540 4I / 19°39.25 5I / 22°38.5 6I / 25.5°37.75 7I / 29°37 8I / 33°36.5 9I / 37°36 PW / 42°35.5 UW / 47°35.5
i240 3I / 19°39 4I / 22°38.5 5I / 25°38 6I / 28°37.5 7I / 31.5°37 8I / 35.5°36.5 9I / 40°36 PW / 44.5°35.5 UW / 49.5°35.5
BLUEPRINT S 3I / 19°39 4I / 22.5°38.5 5I / 26°38 6I / 29.5°37.5 7I / 33°37 8I / 37°36.5 9I / 41°36 PW / 45°35.5
BLUEPRINT T 3I / 19°38.75 4I / 22.5°38.25 5I / 26°37.75 6I / 29.5°37.25 7I / 33°36.75 8I / 37°36.25 9I / 41°35.75 PW / 45°35.5

この表を見ると、G740の役割がはっきりします。

G740の5番は21度、38.5。
これは、i240の4番22度、38.5に近いスペックです。

G740の6番は24.5度、37.75。
これは、i240の5番25度、38に近いスペックです。

つまり、上級者がG740を入れる場合、

G740の5番を入れる、
G740の6番を入れる、

ではなく、

21度の高弾道アイアンを入れる、
24.5度のやさしいロングアイアンを入れる、

と考えるべきです。

この考え方をすると、G740は単にやさしいアイアンではなく、長い番手の高さとキャリーを補うための明確な選択肢になります。

上級者がG740を使うなら、飛距離だけで選んではいけません。

G740は飛びます。
しかし、上級者にとって重要なのは、飛んだ距離ではなく、そのクラブがセットの中でどの役割を持つかです。

金谷選手のように、長い番手にやさしいヘッドを入れる考え方。
ミドルアイアンより上で、高さとキャリーを補う考え方。
そして、番手ではなくロフト帯で逆引きして選ぶ考え方。

この3つを組み合わせると、上級者にとってのG740の使い方が見えてきます。

G740は、上級者がやさしさに逃げるためのアイアンではありません。
長い番手の成功確率を上げるために、性能を使うアイアンです。

自分のライ角と合うタイプのクラブを知ることは大事です。

実は、かなり多い、ユーズドクラブの調整。

最近(と言ってもかなり前ですが)、ピンもマークダウンをやり始めて、安くなったので、クラブを買ったんですが、ちょっと合っていない気がすると、見てくださいとの要請をお受けします。

セカンドマーケットでクラブを購入された方もですね。

フィッティングスタジオや他店でフィッティングを受けて買ったんですが、いまいち合わない気がするとか。やはり、フィッターの個性が出ます。そのため、お客様が納得されることが一番です。

今のヘッドを利用して、何とか今の自分に合うようにとか、予算の関係で中古クラブで合うクラブをなど、いろいろ、ご相談に来られる方は多いです。

通常は、では新しいクラブを購入と言うことになるかと思いますが、ピンの偉いところは、ライ角、ロフト角変更、シャフト交換を含めて修理部門が存在するところです。

今年の7月、8月のフィッティング料金は無料としますよ。日曜日と、7月25日どの時間帯も対応はできません。

かなり問い合わせが多いショートウッド

試打会にでは、PINGのスライバーの画像が出回ったためか、ショートドライバー(ミニドラ)について、質問がありました。

ミニドラのロフトは11~14度が一般的で、PINGは公式にはミニドラは12度のヘッドを使って作成出来ると発表しています。

ショートドライバー・ビルドというドキュメントには

ショートドライバーを検討する条件として

  1. ティーショットで十分な飛距離がある(目安: 275y以上)
  2. 3Wと同等の距離で、より真っすぐやさしく打てるクラブを求めている
  3. 通常の3Wをラウンド中に地面からほとんど使わない

の3つがあります。

飛距離が出る人の方が、ミニドラを優位となるようです。

店長はG430LST 3Wを使用していますが、確かにボールの初速はドライバーと同等でキャリーは少しだけ落ちるイメージです。スプーンですので強振はしないので、コースではドライバーより少し飛ばないかなと思っています。

テストの結果ではLST3Wに比べて、フェアウェイキープ率が上がり、正確性が向上しています。

試打ヘッドに鉛をベタベタ貼ってバランスを出して、見ました。シャフトは5W用です。

しかし、私も含めて、私の周りには、第一条件のドライバーの飛距離の目安、275ヤード以上の人がおらず、ドライバーを短く持って降らなければいいし、スプーンで狙えばいいだけという人ばかりで、本当の評価がわからないと言うのが現状です。

今度、コースに行って打ってきたら、感想を書きたいと思います。

ガルシアとマキロイのスイングは、なぜ違うのか

なぜ、ガルシアとマキロイのスイングは違うのでしょうか。
そして、なぜマキロイの前傾角度は、インパクトでアドレス時と完全には一致しないのでしょうか。

結論を先に書くと、マキロイはヒッターだからです。

こう書くと、多くの人は違和感を覚えるかもしれません。

マキロイのスイングは、流れるように見えます。
リズムも美しく、フィニッシュも綺麗です。
ですから、一般的には「スインガータイプの理想的なスイング」と評価されやすいと思います。

しかし、スインガーとヒッターの違いは、見た目の美しさではありません。

違いは、クラブの動きをどのように作り出しているかです。

筋力、反力、体幹の出力を使ってクラブを動かすのがヒッター。
一方、体を振り子として使い、クラブの運動を効率よく引き出すのがスインガーです。

スインガーでは、左股関節が振り子の支点として機能します。
左股関節の上に上体が乗り、上体はバラバラに動くのではなく、接続された一つのパーツとして回転します。

ここで重要なのは、振り子の支点です。

振り子は、支点が大きく動くと効率が悪くなります。
ですので、スインガーはアドレスで作った前傾角度、手元の位置、シャフトプレーンを大きく変えずに、インパクトで元の構造に戻してくる必要があります。

つまり、スインガーにとっては、

前傾角度が維持されていること
手元が浮かないこと
インパクトでアドレス時のシャフトポジションに近く戻ること

が非常に重要になります。

ここでガルシアのスイングを見ると、非常に分かりやすいです。

見るべきポイントは、左股関節の位置の変化と、体の中心から大きくずれない手元と上体の関係です。

ガルシアはトップからクラブが大きく背後に落ちます。
一見すると、非常に特殊で、真似しにくいスイングに見えます。

しかし、インパクト付近だけを見ると、アドレス時のシャフトポジションに非常に近く戻っています。
前傾も崩れていません。
手元も浮いていません。

つまり、ガルシアは途中経過こそ独特ですが、インパクトでは非常にスインガー的な条件を満たしています。

一方、マキロイはどうでしょうか。

マキロイは、強烈な下半身の出力、右足の反力、背筋を使った体幹の回転力によってクラブを加速させます。
クラブが自然に振られているというより、身体能力でクラブを強く動かしている。

その結果、インパクトでは手元が低く見えます。
前傾も維持されているように見えます。
しかし、アドレス時のシャフトポジションと完全に一致しているわけではありません。

なぜなら、マキロイのインパクトは、アドレスの再現ではなく、強い出力のために作られた動的なインパクトだからです。

ヒッターは、筋力を使ってクラブを動かし、最終的にボールに当てます。
ですので、ボールに対して強く、正確に力を伝えられるなら、その方法は一つではありません。

多くのヒッターは、背筋を利用してクラブを加速させます。
前傾した状態で背中側の筋肉を強く使えば、当然、前傾角度は失われやすくなります。

つまり、マキロイの前傾角度がアドレス時と完全に一致しないのは、スイングが悪いからではありません。
強い出力を作るために、体を積極的に使っているからです。

では、なぜマキロイのスイングは流れるように見えるのでしょうか。

それは、いくら強い筋力を持つマキロイでも、クラブの慣性に逆らって急激に方向を変えれば、クラブに体が引き込まれてしまうからです。
そのため、急激な変化を少なくし、クラブの慣性を受け流しながら強い出力を加えている。

だから、マキロイのスイングは流れるように見えるのです。

しかし、それはスインガーだから流れているのではありません。
強いヒッターが、クラブの慣性に負けないために、滑らかに力を加えているのです。

ここに、一般的なスイング評価の落とし穴があります。

多くのスイング評価では、

手元が低い
前傾が維持されている
体の回転で打っている

という言葉が使われます。

しかし、これらの多くは、本来はスインガー型のスイングを評価するための言葉です。

ところが、マキロイは結果が圧倒的に良い。
飛距離が出る。
見た目も美しい。
だから、見る側は「素晴らしいスイング」と感じ、その印象に合う言葉を後から当てはめてしまいます。

つまり、マキロイがスインガーだから「手元が低い」「前傾が維持されている」と評価されているのではありません。

マキロイの結果が素晴らしいから、スインガー用の称賛語がマキロイに割り当てられている。

ここを分けて考える必要があります。

ヒッターの評価基準は、本来は違います。

ヒッターは、流れるように振れているかではなく、
強く、正確に叩けているか。
ここが評価の中心になります。

そのために、

背筋と右足の反力を使えているか
体幹と筋力でクラブを支配できているか
フェースを逃がさず、ボールに圧をかけられているか
強い出力を方向性に変換できているか

を見る必要があります。

この基準で見ると、マキロイは非常に優れたヒッターです。

一方、ガルシアは、一般的には「独特なスイング」と見られがちです。
しかし、インパクト構造だけを見ると、アドレスに戻る能力、前傾の維持、低い手元という点で、非常に優れています。

つまり、こう整理できます。

マキロイは、ヒッターとして非常に優れている。
ガルシアは、インパクト構造として非常に優れている。

問題は、評価する側がこの二つを分けていないことです。

スインガーの評価語でヒッターを褒める。
ヒッターの強さを、スインガー的な美しさとして説明する。
そして、ガルシアのように本質的に優れたインパクト構造を持つ選手を、途中経過が独特だからという理由で低く見てしまう。

ここに、一般的なスイング評価のズレがあります。

マキロイのスイングは素晴らしい。
しかし、それはスインガーとして素晴らしいのではなく、ヒッターとして極めて高い完成度を持っているという意味で素晴らしいのです。

そしてガルシアのスイングもまた、一般的な美しさとは違う意味で、極めて優れています。

スイングを見るときに大切なのは、
美しく見えるかどうかではなく、その動きが何によってクラブを動かしているのかを見ることです。

マキロイとガルシアの違いは、そこにあります。

MODUS³ TOUR 130とセルジオ・ガルシア

MODUS³ TOUR 130を考えるうえで、非常に分かりやすい選手がいます。

セルジオ・ガルシアです。

セルジオ・ガルシアは、2017年のマスターズ優勝時に、アイアンとウェッジでN.S.PRO MODUS³ TOUR 130Xを使用していました。

ガルシアのスイングは、切り返しでクラブが背後に深く落ち、強烈なラグを作ります。

手元は下へ、体は回転へ。
しかし、クラブヘッドは背後に残る。

この動きによって、シャフトには非常に大きな曲げ入力が入ります。

しかも、ガルシアはリリースが遅い。

インパクト直前までタメが残り、強いハンドファーストでボールに入っていきます。

このようなスイングでは、シャフトに求められるものは単なる硬さではありません。

強い入力を受け止めること。
しかし、棒のように突っ張らないこと。
遅れているヘッドを、インパクトに向けて自然に戻すこと。
そして、強いハンドファーストでもボールを上げる余地を残すこと。

ここが重要になります。 “MODUS³ TOUR 130とセルジオ・ガルシア” の続きを読む

ライ角が合うと、シャフトの違いが見えてくる

昨日のG440のフィッティングには、もう少し続きがあります。

今回のG440アイアンは、ライ角を変更することになりました。

ライボードで確認した結果、必要なカラーコードはグリーン。
つまり、まずはライ角を正しく合わせることが最優先です。

ただ、今回のお客様はかなりヘビーなお客様です。

せっかくここまで原因が見えてきたので、店長としては、もう一歩踏み込んでみたくなりました。

「では、このお客様に本当に合うシャフトは何なのか」

ということで、ついでと言っては何ですが、シャフトフィッティングにも入ることにしました。

最初の問題は、ライ角でした。

しかし、ライ角を合わせたうえで、さらにシャフトが合っているかどうかを見ていくと、クラブ全体の答えはよりはっきりしてきます。

なぜなら、ライ角はインパクト時のヘッドの向きを整えるための要素であり、いわば、クラブのトウ、ヒール方向の動きを正常化したのです。

このままでは、クラブの目標方向の動きは合わせていないという事になります。シャフトはそのヘッドをどのようなタイミングで、どのような力感で戻してくるかに関わる重要な要素です。今回の場合、トウハングが大きくなった状態で、目標方向の動きがお客様の要求する動きとなるかということです。

つまり、ライ角とシャフトは別々の問題ではありません。

(トウハングを含めたダイナミックな)ライ角が合っていない状態でシャフトを見ても、本当の答えは見えにくい。
逆に、ライ角が合ってくると、シャフトの違いもはっきり見えてきます。

今回のフィッティングは、まさにその順番でした。(これが、ヘッドを決定してからというフィッティングの順番となる理由です。)

まず、G440アイアンというヘッドに対して必要なライ角を確認する。
そのうえで、このお客様にとって、どのシャフトが一番自然にヘッドを戻してくれるのかを見ていく。

ここから、シャフトフィッティングの話に入っていきます。

これまでのお客様は、Dynamic Gold S300、S200といったシャフトをお使いでした。

ですので、重量のあるスチールシャフトに慣れているお客様です。

ただし、ここで問題になるのは、これまでここまで大きなヘッドのアイアンを使ってきた経験がない、という点です。

G440アイアンは、ミスヒットに強い大型ヘッドです。
しかし、ヘッドが大きくなるということは、重心距離が長くなり、ヘッドの動き方も変わります。

これまでのコンパクトなヘッドであれば、Dynamic Goldでも自然にヘッドがついてきた。
しかし、G440のような大型ヘッドになると、同じDynamic Goldでも、少しレスポンスが悪く感じる可能性があります。

ライ角は合わせました。

しかし、ライ角を合わせただけで、すべてが解決するわけではありません。

ライ角は、インパクト時のヘッドの向きを整えるための要素です。
一方で、シャフトは、スイング中にヘッドがどのタイミングで、どのように戻ってくるかに関わります。

今回の場合、Dynamic Goldではヘッドの追従性が少し落ちているはずだと考えました。

もちろん、Dynamic Goldが悪いという話ではありません。

ただ、G440アイアンのように重心距離の長いヘッドと組み合わせた時に、お客様のスイングに対してヘッドの戻りが少し遅れる。
あるいは、手元の動きに対してヘッドが自然についてこない。

そういう状態になっている可能性があります。

そこで店長としては、ある程度、試すべきシャフトの目安はついていました。

狙いは、シャフトのしなり感があり、ヘッドの追従性を上げることです。

ただ軽くするのではありません。
ただ柔らかくするのでもありません。

手元側にしなり感がありながら、レスポンスがいい。
手元から中間部にかけて、しっかりとした張りがあり、ヘッドが遅れすぎない。

そういうシャフトを探していきます。

重い、硬い、軽い、柔らかい、という単純な分類ではありません。

今回見たいのは、ヘッドがプレーヤーの動きに対して、どれだけ自然に追従してくるかです。

大型ヘッドのG440アイアンを使うのであれば、ヘッドの寛容性を活かしながら、同時にヘッドが遅れすぎないシャフトを選ぶ必要があります。

その中で、店長の本命として考えていたのが、N.S.PRO MODUS³ TOUR 130 Rです。

MODUS³ TOUR 130 Rは、単に重くて硬いシャフトというより、手元から中間部にかけての剛性が特徴的なシャフトです。

ここで大事なのは、カタログ上の「先調子」「中調子」「元調子」だけで判断しないことです。

シャフトは静止した状態で使うものではありません。

ダウンスイング中にプレーヤーから力が入力され、ヘッドの重さ、重心距離、慣性モーメントの影響を受けながら、動的にしなります。

特にG440アイアンのように、慣性モーメントが大きく、重心距離の長いヘッドでは、シャフトにかかる力の入り方も変わります。

その結果、実際のスイング中には、カタログ上の調子とは違う場所にしなりを感じることがあります。

つまり、静的なベンディングポイントと、実際に打った時に感じる動的なベンディングポイントは、必ずしも同じではありません。

今回欲しかったのは、単に手元が柔らかいシャフトではありません。

手元から中間部にかけてしなり感があり、プレーヤーがタイミングを取りやすい。
それでいて、ヘッドが置いていかれる感じがない。
しなったあとに、ヘッドが自然に戻ってくる。

この感覚です。

言い方を変えると、手元から先端にかけて、まるで釣り竿のように一体感をもってしなるシャフトが欲しかったのです。

部分的にだけ大きくしなるのではなく、全体としてしなりの流れがつながっている。
そのため、プレーヤーはしなりを感じやすく、しかも大型ヘッドであってもヘッドが置いていかれにくい。

この感覚が、今回のG440アイアンには必要だと考えていました。

Dynamic Goldの重量感に慣れているお客様に対して、いきなり軽量シャフトへ振るのではなく、重量感を大きく崩さずに、ヘッドの追従性とレスポンスを上げる。

この方向性で見ていくと、MODUS³ TOUR 130 Rはかなり有力な候補になります。

ここから、シャフトフィッティングは単なるスペック選びではなく、ヘッドとシャフトの動き方を合わせる作業になっていきます。

先調子、中調子、元調子という言葉だけにこだわるのではなく、動的にどのように力がかかり、それがシャフトに入力され、どのようにヘッドが戻ってくるのか。

そこを見る必要があります。

今回のフィッティングは、まさにその例でした。

お客様の感覚としては、これまで通り重量のあるシャフトでタイミングを取りたい。
しかし、G440アイアンのヘッド特性を考えると、Dynamic Goldのままではヘッドの追従性が少し足りない可能性がある。

だから、ただ軽くするのではなく、ただ柔らかくするのでもなく、手元から中間部にかけてのしなりと張りでヘッドを自然に戻す。

これが今回のシャフト選びの狙いでした。

つまり、言い方を変えると、

中調子を選択しているようで、結果として手元調子系の動きを使う。

これが今回の裏技です。

ライ角を合わせることで、ヘッドの向きが整う。
そこからシャフトを合わせることで、ヘッドの戻り方が整う。

大型ヘッドのG440アイアンを本当に活かすには、この順番が大事になります。

やさしいヘッドだから、シャフトは何でもよいわけではありません。

やさしいヘッドだからこそ、そのヘッドが自然に戻ってくるシャフトを選ぶ必要があります。

重心距離の長いアイアンは、ライ角にシビアです

店長が「シビア」という言葉を覚えたのは、漫画アクションに連載されていた『嗚呼!! 花の応援団』だったと思います。

たしか青田赤道が「厳しくいくよ〜」というような意味合いで使っていた記憶があります。

それで思い出すのが、YMOの教授が『RYDEEN』の演奏前に、コマネチから「くぇーっ、くぇっ」をやっているところです。今見ても妙な勢いがあります。

この動画を見てみて下さい。

こういう昭和の言葉や映像には、理屈では説明しにくい強さがあります。

そして、ゴルフクラブのフィッティングを長くやっていると、この「シビア」という言葉が実にしっくりくる場面があります。

それが、重心距離の長いアイアンのライ角です。

“重心距離の長いアイアンは、ライ角にシビアです” の続きを読む

シェフラーのパッティングから考える、パターの長さ

前回は、今年のPGAツアーで長め・中尺・長尺・カウンターバランス系のパターが目立っていることについて書きました。

今回は、先週のU.S. OpenとTravelers Championshipの動画を見ながら、Scottie Schefflerのパッティングについて考えてみたいと思います。

もしシェフラーのパッティングがもう少し決まっていれば、結果は違っていたかもしれません。

私が気になったのは、シェフラーのテークバックです。

シェフラーは、パターがややアウトサイドに上がる傾向があるように見えます。
もちろん、それでも世界ランキング1位の選手ですから、パッティングが悪いという話ではありません。

ただ、U.S. OpenやTravelers Championshipでは、勝負どころで決め切れていなかったように感じます。

今回注目したいのは、ストロークの癖そのものではありません。
その癖が、なぜ発生しているのかです。 “シェフラーのパッティングから考える、パターの長さ” の続きを読む

ちょっとまって、中尺・長尺パターは、勝率高くない?

前回は、Viktor Hovlandの優勝パターについて書きました。

36インチのPING PLD DS-72 Prototype。
そしてWinn 17インチの長めグリップ。

ホブランはクロスハンドではなく、基本的に順手です。
それでも、長めのパターと長めのグリップを組み合わせることで、手元側に重量を残し、パター全体を安定させているように見えます。

今回改めて気になったのは、今年のPGAツアーで、長めのパターを使った選手の優勝が目立っていることです。

Akshay Bhatiaは、44インチ級のブルームスティックパターで優勝。
Wyndham Clarkは、38インチのPING Scottsdale TEC Ally Blue Onset CBで優勝。
しかもClarkはこの仕様でUS OPENも勝っています。
そして今回のViktor Hovlandは、36インチの長め仕様に17インチグリップを組み合わせて優勝しました。

38インチ以上を中尺・長尺と厳密に見るなら、BhatiaとClarkが代表例です。
一方で、Hovlandの36インチ+17インチグリップまで「長め・カウンターバランス的な仕様」として含めると、今年のPGAツアーでは長めのパターがかなり目立っていることが分かります。

ここで重要なのは、単に「長いパターが流行っている」という話ではありません。

長めのシャフトにすることで、構えたときの手元位置、前傾角度、グリップエンドの余り方、そしてパター全体の慣性が変わります。
さらに17インチ前後の長いグリップを組み合わせると、手元側に重量を残しやすくなり、ヘッドの動きが落ち着きます。

つまり、長めのパターは、ストロークを手先で操作する道具ではなく、パター全体を安定して動かすための道具だと考えることができます。

グリップを余らせて打つ選手は、余ったグリップエンドと左手を結ぶ線が目標からずれないようにストロークします。

これほど、プロの世界で目立つという事は、一般ゴルファーも注目してもいいと思います。

特に手首の動きが大きい方、ショートパットでフェース向きが安定しない方、距離感でインパクトが緩みやすい方は、短いパターを無理に操作している可能性があります。

長めのパターにすることで、手元が安定し、ヘッドの暴れが減り、ストローク全体が落ち着くことがあります。
さらに長いグリップを余らせて使えば、カウンターバランス的な効果も得られます。

長め・中尺は距離感が難しくなる人もいますが、カウンターバランスなら通常パターに近い感覚で使えます。

中尺・長尺パターは、特殊な人だけの道具ではありません。
むしろ、手首の余計な動きを抑えたいアマチュアにとって、非常に合理的な選択肢です。

今回のホブランの優勝も、そのことを改めて示しているように感じます。

パターは、長さを合わせる道具です。
市販の34インチや35インチに、自分の構えを合わせる必要はありません。

自分の構えに合った長さを選ぶ。
そこから、パッティングの安定は始まります。

PING Co-PILOT パターレングス アプリを、ぜひ利用してください。

唐突ですが、すこし気持ちを緩めましょう。えっ、今週もUSOPENだったというトラベラーズの動画を紹介して次回に続きます。