前回は、PINGがドライバーを、
ゴルフゲーム全体を成立させるための土台
と考えていることを紹介しました。
ドライバーがゲームの土台であるなら、自分のゲームを支えられるヘッドを選ばなければなりません。
現在のPING G440ドライバーには、
- G440 K
- G440 MAX
- G440 LST
- G440 SFT
という4つのモデルがあります。
このように複数のモデルが並んでいると、多くのゴルファーは、
LSTは上級者用
MAXは一般ゴルファー用
SFTは初心者用
Kは最もやさしいモデル
というように、ゴルファーの技量によって分類したくなります。
しかし、PINGはそのように考えていません。
G440の各モデルは、ゴルファーの技量の高さではなく、
どのような打ち出しとスピンが必要なのか
どちらのミスを抑えたいのか
によって分けられています。
Podcastの会話
01:45~04:00
シェーン:
本格的にドライバーのフィッティング工程へ入る前に、現在のG440シリーズについて説明してください。どのようなモデルがあり、それぞれどのようなプレーヤーへ向けられているのでしょうか。
マーティ:
少し歴史から説明しましょう。以前のPINGには、iシリーズのドライバーとGシリーズのドライバーがありました。
iシリーズは、比較的寛容性を抑えながら低スピンを目指したモデルでした。Gシリーズは、より高い寛容性を持つモデルでした。
しかし、私たちは、
「すべてのゴルファーに高い慣性モーメントが必要である」
と考えるようになりました。
実際、高MOIは上級者やヘッドスピードの速いプレーヤーにも、大きな恩恵を与えます。
そこで、すべてのモデルに高い寛容性を持たせ、そのうえでスピン特性の違いによってモデルを分けることにしました。
そこから、Low Spin TechnologyのLSTが生まれました。
また、ボールをより真っすぐ飛ばすためのStraight Flight Technology、SFTを同じシリーズの中へ組み込みました。
さらに最大限の寛容性を求め、慣性モーメント10,000の壁を超えた10Kを開発しました。
現在は、その考え方をKという名称へ発展させています。
現在のG440は、PING史上最も完成度の高いドライバー・ファミリーです。
G440 Kは、非常に高い寛容性を持ち、CG Shifterも搭載しています。
G440 MAXも高MOIですが、Kより少しスピンが多く、打ち出しも少し高くなります。
G440 LSTは、Low Spin Technologyです。やや小ぶりで空力性能に優れたヘッド形状を持ち、スピン量を抑えます。
G440 SFTは、Straight Flight Technologyです。フェースが少し開いて当たり、右打ちで右へミスしやすいゴルファーに適しています。
店長の解説
ここで最も重要なのは、PINGがかつて採用していた、
低スピンで操作性の高いモデル
高MOIでやさしいモデル
という分け方をやめたことです。
以前は、操作性や低スピンを求める上級者には小さく、慣性モーメントを抑えたヘッドを用意し、一般ゴルファーには大きく、慣性モーメントの高いヘッドを用意するという考え方がありました。
しかし、PINGは研究を進める中で、
高い慣性モーメントは、一般ゴルファーだけでなく、上級者や高ヘッドスピードのプレーヤーにも必要である
という結論に到達しました。
ヘッドスピードが速いプレーヤーほど、芯を外したときに発生するヘッドへの入力も大きくなります。
少しの打点差であっても、ボール初速、打ち出し角、スピン量、左右方向へ大きな変化が起こります。
そのため、上級者だから慣性モーメントが低くてもよいとは限りません。
むしろ、速いスピードで安定した弾道を繰り返すためには、高い慣性モーメントが必要になります。
現在のG440シリーズは、すべてのモデルで寛容性を確保したうえで、
どの程度の打ち出し角が必要か
どの程度のスピン量が必要か
左右どちらへのバイアスが必要か
によってモデルを分けているのです。
LSTは上級者用ではない
G440シリーズの中で、最も誤解されやすいのがLSTだと思います。
LSTは、
Low Spin Technology
の略です。
その名前のとおり、スピン量を抑えるためのモデルです。
しかし、多くのゴルファーはLSTを、
ヘッドスピードが速い人のためのモデル
ボールを自在に操作できる上級者向けモデル
芯を外さない人だけが使える難しいヘッド
と考えます。
Podcastでは、この点についても明確に説明しています。
Podcastの会話
04:04~05:45
シェーン:
ツアーでは、どのモデルが最も多く使われていますか。また、一般ゴルファーがフィッティングを受けた場合、どのモデルが最も多く選ばれるのでしょうか。
マーティ:
PGAツアーでは、LSTの使用比率が非常に高く、およそ80%です。ツアー選手はヘッドスピードが速く、LSTのヘッド形状を好みます。また、必要な打ち出しとスピン特性を得やすいからです。
しかし、一般ゴルファーだからといって、LSTを候補から外してはいけません。
ツアー選手ほどヘッドスピードが速くなくても、ドライバーをダウンブローに打ち、フェースを開いて当て、スピン量が多くなる人はいます。
LSTを、速いヘッドスピードや特定の技量だけに限定してはいけません。
LSTにも十分な寛容性があり、一般ゴルファーに適合する領域があります。
当社のエグゼクティブ・チェアマンであるジョン・ソルハイムも、スピン量が多くなりやすいプレーヤーです。
彼にはLSTを選び、CG Shifterをドロー位置へ動かし、スイングウェイトを少し軽くして、SFTに近い仕様へ組むことがあります。
その組み合わせが、彼には最適なのです。
一方、一般ゴルファーの多くは、K、MAX、SFTにフィットします。
さまざまな特性を持つモデルを、一つのファミリーの中に用意していることが、私たちの戦略の強みです。
スピンが多いのは、ヘッドスピードが速い人だけではない
LSTが合うかどうかを決めるのは、ゴルファーの技量ではありません。
実際に発生しているスピン量です。
ヘッドスピードがそれほど速くなくても、
- ドライバーをダウンブローに打つ
- インパクトでロフトが増える
- フェースが開いて当たる
- 打点がフェース下側へ集まる
- スピンロフトが大きくなる
という条件が重なれば、スピン量は多くなります。
そのゴルファーに対して、
ヘッドスピードが速くないからMAX
初心者だからK
LSTは難しいから使わせない
と決めつければ、さらにスピンが増えてしまう可能性があります。
打ち出し角が必要以上に高くなり、ボールが前へ進まず、風に弱い弾道になることもあります。
この場合には、LSTを使ってスピン量を抑えた方が、キャリーとランのバランスが整い、結果として飛距離が伸びることがあります。
LSTを選ぶ理由は、上級者だからではありません。
そのゴルファーにとって、スピン量を減らす必要があるから
です。
ツアー選手がLSTを使う本当の理由
Podcastでは、PING契約選手が使用するG440ドライバーの約80%がLSTであると説明されています。
この数字だけを見ると、
やはりLSTはプロや上級者のためのモデルではないか
と思うかもしれません。
しかし、順序が逆です。
ツアー選手だからLSTを使っているのではありません。
ツアー選手には、
- ヘッドスピードが速い
- ボール初速が高い
- 十分な打ち出し角を作れる
- スピン量が増えすぎると飛距離を失う
- 強風の中でも弾道を管理する必要がある
という特徴があります。
その条件に、LSTの低スピン性能が合っているため、使用率が高くなっているのです。
また、ツアー選手がLSTに求めているのは、低スピン性能だけではありません。
やや小ぶりに見えるヘッド形状、空力性能、構えたときの見え方、打音なども含めて選ばれています。
つまり、ツアーでの高い使用率は、技量による分類ではなく、ツアー選手に共通しやすい弾道条件の結果です。
LSTをSFTに近づけるという考え方
ジョン・ソルハイムの例は、PINGのフィッティング思想を理解するうえで非常に重要です。
ジョン・ソルハイムはスピン量が多くなりやすいため、ヘッドにはLSTが選ばれています。
しかし、そのままのLSTでは、左右方向のつかまりが不足する可能性があります。
そこで、
- CG Shifterをドロー位置へ動かす
- スイングウェイトを少し軽くする
- フェースを戻しやすくする
ことで、LSTをSFTに近い性格へ調整しています。
これは、
LSTかSFTか
という二者択一ではありません。
まず、スピン量を合わせるためにLSTを選びます。
その後、CG Shifterやヘッド重量を使って、左右方向の性格を調整します。
つまり、
ヘッドモデルですべてを決めるのではなく、必要な基本性能を持つモデルを選び、そのモデルをゴルファーに合わせて変化させる
ということです。
このように考えれば、LSTを選んだからといって、必ずつかまりを抑えた仕様にしなければならないわけではありません。
LSTの低スピン性能を使いながら、つかまりを増やすこともできます。
反対に、KやMAXを使いながら、左へのミスを抑える設定にすることもできます。
G440 Kは、初心者専用ではない
G440 Kは、PINGのドライバーの中でも最大級の慣性モーメントを持つモデルです。
このため、
最もやさしいモデル
初心者向けモデル
と説明されることがあります。
しかし、高MOIを必要としているのは初心者だけではありません。
上級者であっても、
- 打点の上下差によるスピン量の変化を抑えたい
- 左右の打点差による曲がりを減らしたい
- プレッシャーのかかる場面でも弾道を安定させたい
- 一発の操作性より、平均的な結果を良くしたい
という場合には、Kが適しています。
特にG440 KにはCG Shifterが搭載されています。
高い慣性モーメントを維持しながら、ウェイト位置によって左右方向のバイアスを調整できます。
これは、単に真っすぐしか打てないヘッドではありません。
高MOIを土台にしながら、そのゴルファーが消したいミスに合わせて調整できるヘッドです。
Kは、初心者のためのモデルではありません。
最大級の慣性モーメントを必要とするゴルファーのためのモデル
です。
MAXは、Kより劣るモデルではない
Kが最大級の慣性モーメントを持つと聞くと、
それなら全員がKを使えばよいのではないか
という疑問が出てきます。
しかし、MAXにはKとは異なる弾道特性があります。
Podcastでは、MAXはKより、
- 打ち出しが少し高い
- スピン量が少し多い
と説明されています。
ゴルファーによっては、この差が非常に重要です。
たとえば、
- 打ち出し角が低い
- キャリーが不足している
- スピン量が少なすぎる
- ボールがドロップする
- Kでは前へ強く飛びすぎて高さが出ない
という場合には、MAXの方が適正な弾道になる可能性があります。
慣性モーメントの数字だけを見れば、Kの方が大きいかもしれません。
しかし、フィッティングは数字の大小を競うものではありません。
必要な高さとスピンを得られなければ、どれだけ慣性モーメントが大きくても、そのゴルファーにとって最適とは言えません。
MAXはKの下位モデルではありません。
Kとは異なる打ち出しとスピンを作るモデル
です。
SFTは、単に左へ飛ばすモデルではない
SFTは、
Straight Flight Technology
の略です。
右打ちで、
- フェースが開いて当たる
- ボールが右へ出る
- 右へ曲がる
- ヘッドをスクエアへ戻しきれない
というゴルファーに適しています。
一般的には「つかまるドライバー」と説明されますが、単にボールを左へ飛ばすためのモデルではありません。
SFTの目的は、
開いて届くフェースを、よりスクエアに近い状態へ戻すこと
です。
フェースが開いたまま当たるゴルファーにとっては、SFTを使うことで初めて、真っすぐに近い弾道になります。
もともとフェースを閉じて届けるゴルファーが使えば、左へのミスが増える可能性があります。
つまり、SFTも初心者用ではありません。
インパクトでフェースが開いて届くゴルファーのためのモデル
です。
技量が高くても、右へのミスを確実に消したいゴルファーにはSFTが合う可能性があります。
すべてのモデルに共通する技術
PINGは、G440の各モデルを完全に別のドライバーとして設計しているわけではありません。
Podcastでは、
- Free Hosel Design
- Carbonfly Wrap
- Spin-Sistencyフェース
などの中核技術を、各モデルで共有していると説明しています。
Podcastの会話
05:46~06:59
シェーン:
今後も、一つのドライバー・ファミリーの中に、異なる特性を持つモデルを用意する方式が続くのでしょうか。マーティ:
はい。ツアー選手がG440を使っているのを見て、一般のゴルファーも同じG440シリーズを試すことができます。
そして、最終的にはフィッティングが中心になります。
すべてのドライバーは、Free Hosel Design、Carbonfly Wrap、Spin-Sistencyフェースなど、共通する中核技術を基礎にしています。
そのうえでモデルごとに、打ち出し、スピン、慣性モーメントを変えています。
LSTでは、特にツアープレーヤーを意識して、形状や打音も最適化しています。
SFTは、スライスに悩み、
「ボールを真っすぐにして、もっとフェアウェイを捉えたい」
というゴルファーのためのモデルです。
同じG440を、異なるゴルファーへ合わせる
G440という一つのシリーズ名に統一されていることには意味があります。
K、MAX、LST、SFTは別々の技量層へ向けた、まったく異なる製品ではありません。
共通する設計思想と中核技術を持ちながら、
- 慣性モーメント
- 打ち出し角
- スピン量
- 重心位置
- ヘッド形状
- 左右方向のバイアス
を変えています。
これは、
プロが使うドライバーと、一般ゴルファーが使うドライバーを分離しない
という考え方でもあります。
ツアー選手も一般ゴルファーも、同じG440ファミリーの中から、自分に必要な特性を選びます。
違うのは技量ではなく、必要な弾道です。
モデル名から選んではいけない
G440のモデルを選ぶとき、
一番やさしそうだからK
標準モデルだからMAX
上級者だからLST
スライサーだから必ずSFT
という選び方では不十分です。
必要なのは、実際の弾道を確認することです。
確認すべきなのは、
- ボール初速
- 打ち出し角
- スピン量
- 打点位置
- 打ち出し方向
- 曲がる方向
- 左右の散らばり
- 芯を外したときの変化
です。
同じ右へのミスでも、
- フェースが開いて右へ出る
- スピン軸が傾いて右へ曲がる
- 打点がヒールに寄って右へ曲がる
- ライ角やクラブ長によって構えが変わる
など、原因は違います。
原因が違えば、選ぶべきモデルも調整方法も変わります。
モデル名は、ゴルファーのレベルを表すものではありません。
そのヘッドが持つ弾道特性を表しているのです。
今回の結論
G440のK、MAX、LST、SFTは、
初心者
中級者
上級者
という技量別に分けられたモデルではありません。
すべてのモデルに高い寛容性を持たせたうえで、
- Kは、最大級の慣性モーメント
- MAXは、高めの打ち出しと適度なスピン
- LSTは、スピン量の抑制
- SFTは、開いて届くフェースの補正
という異なる役割を持たせています。
LSTを使うから上級者なのではありません。
スピン量を減らす必要があるから、LSTを使います。
Kを使うから初心者なのではありません。
最大級の慣性モーメントによって弾道を安定させる必要があるから、Kを使います。
SFTを使うから技量が低いのではありません。
フェースが開いて届くという、自分のクラブデリバリーに合わせるためにSFTを使います。
ドライバー選びで見るべきなのは、ゴルファーの肩書やハンディキャップではありません。
実際にボールがどのように飛んでいるのかです。
そしてPINGのフィッティングでは、モデルを選んだだけで終わりません。
モデルとロフトの組み合わせで、まず弾道の土台を作ります。
次回は、ドライバー・フィッティングを、
まず縦方向を合わせ、次に左右方向を合わせる
という二つの工程に分けて考えていきます。

