時速5キロの電車と三輪車、どちらにぶつかりたいですか?

有効重量で考えるスインガースイング・第2話

前回は、ヘッドスピードとボールスピードの関係について書きました。

ヘッドスピードは入力です。
しかし、入力はヘッドスピードだけではありません。

打点。
ロフト。
フェース向き。
入射角。
クラブの姿勢。
そして、有効重量。

これらが衝突の瞬間に統合され、その結果としてボールスピードという出力が生まれます。

今回は、その中でも特に大切な 有効重量 について、もう少し分かりやすく考えてみたいと思います。

私は生徒さんに、よくこんな質問をします。

時速5キロの電車と、時速5キロの三輪車。
どちらかに必ずぶつからなければならないとしたら、どちらを選びますか?

この質問をすると、電車を選ぶ人はまずいません。

当然です。

どちらも時速5キロです。
速度は同じです。

しかし、ぶつかったときの衝撃はまったく違います。

三輪車なら、痛いかもしれませんが、まだ想像できます。
しかし、電車となると話は別です。

時速5キロであっても、電車には大きな質量があります。
その重さが動いているから、衝突の結果がまったく違うのです。

ここで大切なのは、

速度が同じでも、衝突の強さは同じではない

ということです。

多くのゴルファーは、飛距離をヘッドスピードで考えます。

ヘッドスピードが速い。
だから飛ぶ。

ヘッドスピードが遅い。
だから飛ばない。

もちろん、それは一部としては正しいです。
速さは大切です。

しかし、時速5キロの電車と三輪車の話を考えると、速度だけでは衝突を説明できないことが分かります。

ゴルフも同じです。

同じヘッドスピードでも、腕だけでクラブが動いているのか。
それとも、身体とクラブが一体化して動いているのか。

ここで、ボールに伝わる衝突の重さが変わります。

これを私は、有効重量として考えています。

有効重量とは、体重そのものではありません。
また、単にクラブヘッドの重さだけでもありません。

インパクトの瞬間に、ボールとの衝突に参加している重さです。

たとえば、腕だけでクラブを速く振っている場合。
見た目にはヘッドが速く動いているかもしれません。

しかし、身体との接続が切れていれば、ボールにぶつかっているのは、腕とクラブの軽い衝突に近くなります。

一方、身体とクラブが一体化して動いている場合。
見た目のヘッドスピードが同じでも、ボールに届く衝突は重くなります。

これは、三輪車と電車の違いに近いものです。

速度だけを見ると同じ。
しかし、ぶつかってくるものの重さが違う。

もちろん、ゴルフスイングで人間の身体全体が電車のようにボールへぶつかっているわけではありません。

ここを誤解してはいけません。

体重をボールにぶつけろ、という話ではないのです。

大切なのは、身体とクラブの接続です。

身体の重さが、クラブを通じてボールへ届いているか。
それとも、腕や手先だけでクラブを急がせているか。

この違いです。

体重があるだけでは、有効重量にはなりません。
体重が移動しているだけでも、有効重量にはなりません。

身体とクラブがつながっていて、インパクトでその重さが逃げずにボールへ届く。
それが有効重量です。

ここで、スインガーとヒッターの見え方の違いも出てきます。

ヒッター目線では、

コンパクトなトップなのに飛ぶ
軽く振っているのに飛ぶ
ゆっくり見えるのにボールが速い

という現象が、不思議に見えます。

なぜなら、ヒッター目線では飛距離を、振り幅や力感、ヘッドスピードで見やすいからです。

しかし、スインガー目線では違います。

トップがコンパクトでも、身体とクラブが一体化していれば、有効重量は大きくなります。
力感が少なく見えても、力の向きが散らずにボールへ届いていれば、ボールスピードは出ます。
ゆっくり見えても、衝突に参加している重さが大きければ、球は強くなります。

つまり、

コンパクトなのに飛ぶ

のではありません。

スインガー目線で見れば、

有効重量が乗っているから飛ぶ

のです。

多くの人は、飛距離を伸ばそうとしてヘッドスピードを上げようとします。

もちろん、ヘッドスピードを上げること自体が悪いわけではありません。

問題は、そのために有効重量を捨ててしまうことです。

腕を速く振る。
手でヘッドを走らせる。
フェースを強く返す。
インパクトで押し込む。

そうやってクラブだけを急がせると、たしかにスピード感は出ます。
しかし、身体とクラブの接続が切れれば、ボールに届く重さは小さくなります。

つまり、三輪車を一生懸命速く走らせているような状態です。

一方、スインガーは、軽いものを無理に速く動かすのではありません。
身体とクラブが一体化した状態を保ち、その重さを逃がさずにボールへ届けます。

見た目には、力んでいない。
しかし、当たりは重い。

ここにスインガーの飛距離があります。

この話をすると、年齢を重ねたゴルファーにも希望が出てきます。

加齢によって、筋肉の収縮スピードは落ちます。
若い頃のように、腕を速く振ることは難しくなります。

その結果、ヘッドスピードは落ちやすい。

しかし、私はそこでよくこう言います。

安心してください。
体重は減っていないでしょう。
むしろ若い頃より増えている方も多いですよね。

もちろん、これは冗談だけではありません。

年齢とともに失いやすいのは、速く動かす能力です。
しかし、身体の重さそのものまで失ったわけではありません。

だからこそ、年齢を重ねたゴルファーほど、腕だけを速く振る方向ではなく、身体の重さを有効重量として使う方向を考えた方がよいのです。

ただし、ここでも注意が必要です。

身体の重さを使うと言うと、体重をぶつけるように動く人がいます。

それは違います。

身体が前に流れる。
軸がずれる。
ロフトが寝る。
フェースが開く。
入射角が乱れる。

そうなれば、体重はあってもボールには届きません。
むしろ、ベクトルが分散してしまいます。

有効重量とは、体重をぶつけることではありません。

身体とクラブが一体化し、その重さがクラブを通じて、正しい方向へ届くことです。

時速5キロの電車と三輪車。

この例で伝えたいのは、ただ重い方が強いという単純な話ではありません。

速度だけを見ていては、衝突の本質は分からないということです。

ゴルフも同じです。

ヘッドスピードだけを見ていては、なぜ飛ぶのか、なぜ飛ばないのかを正しく説明できません。

同じヘッドスピードでも、ボールに届く有効重量が違えば、ボールスピードは変わります。
そして、その有効重量が正しい方向へ届かなければ、飛距離にはなりません。

だから、スインガーを考えるうえで大切なのは、

速く振ること

だけではありません。

重さを逃がさず、正しい方向へ届けること

です。

次回は、この話をさらに実感しやすい形で考えます。

多くのゴルファーが経験している、

軽く振った方が飛ぶ

という現象です。

本当に軽く振ったから飛んだのでしょうか。
それとも、軽く振ったことで、身体とクラブの接続が切れず、有効重量が逃げなかったのでしょうか。

次回は、ここを掘り下げてみたいと思います。

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