第3話 仕上げで何打変わるのか

数字で見る「スコアメイクの正体」

前回は、

仕込みのミスは、仕上げである程度カバーできることがある。
しかし、仕上げのミスは、そのホールの中ではカバーしにくい。

という話を書きました。

今回は、その感覚的な話を、少し数字で見てみます。

ゴルフは感覚のゲームでもありますが、スコアそのものは極めて単純です。
何打で終えたか。
それだけです。

ですから、ショートアプローチとパットをまとめた仕上げが、実際にどれくらい打数差を生むのかを見ていくと、スコアメイクの中身がかなりはっきりしてきます。 “第3話 仕上げで何打変わるのか” の続きを読む

ヘッドスピードを上げたつもりが、なぜ軽く当たるのか

有効重量で考えるスインガースイング・第5話

前回は、有効重量を数字で考えてみました。

腕だけでクラブを動かしている場合の有効重量を、仮に 1〜2kg前後
身体とクラブが一体化している場合の有効重量を、仮に 5〜12kg前後

もちろん、これは実測値ではありません。
有効重量の考え方を分かりやすくするための推測値です。

しかし、この数字を使って運動エネルギーを考えると、非常に大切なことが見えてきます。

同じ速度でも、有効重量が違えば、エネルギーは大きく変わる。
つまり、ヘッドスピードだけでは、ボールに届くエネルギーを説明できないということです。

今回は、そこから一歩進めて考えます。

多くのゴルファーが、

ヘッドスピードを上げようとして、かえって軽く当たっている

という問題です。

“ヘッドスピードを上げたつもりが、なぜ軽く当たるのか” の続きを読む

第2話 仕込みは救えても、仕上げは救いにくい

前回、ゴルフは大きく分けると
仕込み仕上げ で考えると整理しやすい、という話を書きました。

  • 仕込み
    ティショットから、グリーン近くまで運ぶまでのショット
  • 仕上げ
    ショートアプローチとパット

仕込みは、そのホールを楽にするための下準備。
仕上げは、その下準備を実際の数字に変える工程です。

この見方をすると、ゴルフというゲームの少し厳しいところも見えてきます。

それは、

仕込みのミスは、仕上げである程度カバーできることがある。
しかし、仕上げのミスは、そのホールの中ではカバーしにくい。

ということです。
“第2話 仕込みは救えても、仕上げは救いにくい” の続きを読む

ヘッドスピードだけでは埋まらない、有効重量の差

有効重量で考えるスインガースイング・第4話

前回は、

軽く振った方が飛ぶ理由

について考えました。

軽く振ったから飛んだのではなく、軽く振ったことで身体とクラブの接続が切れず、有効重量が逃げなかったのではないか、という話です。

今回は、その有効重量をもう少し数字で考えてみたいと思います。

もちろん、これから出す数字は実測値ではありません。
有効重量は、体重そのものでも、クラブの重さそのものでもありません。

インパクトの瞬間に、ボールとの衝突にどれだけの重さが参加しているか。

それを分かりやすく考えるための推測値として、今回は数字を置いてみます。


まず、腕だけでクラブを動かしている場合を考えます。

この場合、クラブは速く動いているように見えても、身体との接続が切れていれば、ボールとの衝突に参加している重さは小さくなります。

私は、この状態の有効重量を、

1〜2kg前後

くらいで考えるとよいのではないかと思っています。

一方、身体とクラブが一体化している場合。

腕だけではなく、身体の重さがクラブを通じてボールへ届いている。
この状態では、有効重量は大きくなります。

この場合の有効重量は、

5〜12kg前後

くらいで考えると、イメージしやすいと思います。

繰り返しますが、これは体重5kgや12kgを直接ボールにぶつけているという意味ではありません。
身体とクラブが一体化することで、クラブヘッドの運動にどれだけ身体の質量が関与しているかを説明するための推測値です。


ここで、運動エネルギーの式を使います。

ここで、

  • E はエネルギー
  • m は有効重量
  • v は速度

です。

この式で大事なのは、エネルギーは速度だけで決まるわけではない、ということです。

速度も大切です。
しかし、重さも大切です。

つまり、ヘッドスピードだけを見ていては、ボールに届くエネルギーを正しく見られないのです。


仮に、速度を同じ 10m/s として考えてみます。

まず、腕だけでクラブを動かしている場合。
有効重量を1kgとすると、

有効重量を2kgとすると、

つまり、腕だけで動いている状態では、同じ10m/sでも、エネルギーはおよそ 50〜100J になります。

では、身体とクラブが一体化している場合はどうでしょうか。

有効重量を5kgとすると、

有効重量を12kgとすると、

つまり、同じ10m/sでも、エネルギーはおよそ 250〜600J になります。

かなり大きな差です。


整理すると、こうなります。

状態 推測される有効重量 速度 エネルギー
腕だけで動いている 1kg 10m/s 50J
腕だけで動いている 2kg 10m/s 100J
身体とクラブが一体 5kg 10m/s 250J
身体とクラブが一体 12kg 10m/s 600J

この表を見ると、ヘッドスピードだけでは説明できないことが分かります。

同じ速度でも、有効重量が違えば、エネルギーはまったく変わります。

腕だけの1kgと、身体とクラブが一体化した12kgでは、同じ速度でも計算上は 12倍 の差になります。

もちろん、この数字がそのままボール初速になるわけではありません。
実際には、打点、ロフト、フェース向き、入射角、スピン量、クラブヘッドの安定性など、さまざまな要素が関わります。

しかし、

同じ速度でも、有効重量が変われば、衝突エネルギーは大きく変わる

ということは、非常に重要です。


では、同じエネルギーを出すには、必要な速度はどう変わるでしょうか。

仮に、同じ 100J のエネルギーを出したいとします。

式を変形すると、

になります。

これで計算すると、次のようになります。

有効重量 100Jを出すために必要な速度
1kg 約14.1m/s
2kg 10.0m/s
5kg 約6.3m/s
12kg 約4.1m/s

ここがとても大切です。

有効重量が1kgしかなければ、100Jを出すには約14.1m/sの速度が必要です。
しかし、有効重量が12kgあれば、約4.1m/sで同じ100Jになります。

つまり、有効重量が大きければ、それほど速く動かさなくても同じエネルギーを出せるのです。

これが、

軽く振っているように見えるのに飛ぶ
コンパクトなのに飛ぶ
ゆっくり見えるのに球が強い

という現象の物理的な説明になります。


ここで、もう一度確認しておきたいことがあります。

この話は、

体重をボールにぶつければよい

という意味ではありません。

身体が前に突っ込む。
軸が流れる。
手で押し込む。
上から叩きつける。

これでは、身体の重さはあっても、ボールに正しく届きません。

むしろ、入射角が乱れたり、ロフトが変わったり、フェース向きが狂ったりします。
結果として、ボールスピードではなく、スピンや曲がり、打点のズレにエネルギーが逃げてしまいます。

大切なのは、身体とクラブが一体化した状態を保ち、その重さをクラブヘッドに伝えることです。

スインガーの考え方は、ここにあります。

速く振る前に、重さを逃がさない。
力を出す前に、方向を散らさない。
手で押す前に、身体とクラブの接続を切らない。

ここが重要です。


この数字の話から分かることは、非常にシンプルです。

ヘッドスピードは大切です。
しかし、ヘッドスピードだけでは足りません。

もしヘッドスピードを上げるために、身体とクラブの接続を切ってしまえば、有効重量は1〜2kgの世界に落ちてしまうかもしれません。

反対に、身体とクラブが一体化し、有効重量が5〜12kgの世界でボールに届けば、見た目にはそれほど強く振っていなくても、ボールは強く飛ぶ可能性があります。

つまり、

少し速く振ることより、重く当たることの方が大きな差になる場合がある

ということです。


多くのゴルファーは、飛距離が落ちると、まずヘッドスピードを上げようとします。

もっと速く振る。
もっと強く振る。
もっと手で走らせる。

しかし、その努力によって有効重量を失っているなら、結果は逆になります。

速く振っているのに飛ばない。
強く振っているのに球が弱い。
頑張っているのに曲がる。

それは、努力が足りないのではなく、努力の方向が違うのかもしれません。

スインガーの考え方では、クラブだけを速く動かすことを目指しません。

身体とクラブを一体化させ、有効重量を逃がさず、その重さをボールへ届ける。

その結果として、ボールスピードが出る。

ここが重要です。


有効重量は、目には見えません。
しかし、ボールの強さには現れます。

同じように振っているように見えても、球が強い人と弱い人がいる。
軽く振っているように見えて、よく飛ぶ人がいる。
コンパクトなトップなのに、強いボールを打つ人がいる。

その違いは、単なる才能やタイミングだけではありません。

ボールに届いている有効重量が違う。
そして、その有効重量がどれだけ逃げずに、正しい方向へ届いているかが違う。

私はそこに、スインガーの本質があると思っています。


今回の結論は、こうです。

ヘッドスピードだけでは、有効重量の差を埋められない場合がある。

腕だけで速く振るのか。
身体とクラブが一体化した状態で、重さを逃がさずに振るのか。

この違いは、少しのヘッドスピード差では埋まりません。

スインガーの飛距離は、力任せではありません。
単なる速さでもありません。

速さに、重さが乗っているのです。


次回は、この話をさらに進めて、

ヘッドスピードを上げたつもりが、なぜ軽く当たってしまうのか

を考えます。

腕でヘッドを走らせる。
手でクラブを急がせる。
フェースを返して飛ばそうとする。

これらは、一見すると飛ばす努力に見えます。
しかし、スインガー目線では、身体とクラブの接続を切り、有効重量を減らす原因にもなります。

次回は、ヘッドスピード信仰がなぜ飛距離を奪うことがあるのかを、もう少し掘り下げてみたいと思います。

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第1話 ゴルフは「ナイスショットの数」でできているわけではない

十分に100を切ることが出来ると思う生徒さんが、
「パー3でパーをとらないとスコアが出せない」
と話しているのを聞いて、私はハッとしました。

ああ、多くのゴルファーは、やはりスコアをこう見ているのだな、と思ったのです。

パー3なら、パーを取らなければいけない。
パー4なら、どこかでパーを拾わなければいけない。
パー5なら、できればパー、うまくいけばバーディー。

つまり、既定打数というものを、
ナイスショットを並べて達成する数字
だと捉えているわけです。

たしかに、その感覚はよく分かります。

パー3であれば、ティショットをグリーンに乗せて、2パット。
これがもっとも教科書的なパーの形です。
ですから、「パー3でパーを取れないと苦しい」と感じるのは自然です。

しかし、その言葉を聞いたときに、私は少し違うことを考えました。

本当にスコアとは、
ナイスショットを必要な回数だけ並べることで作るものなのか。

むしろ逆ではないか。
スコアというものは、ナイスショットの数ではなく、
必要打数の中で、どこまで破綻させずに進められるか
で決まっているのではないか。

そう考えると、ゴルフの見え方はかなり変わってきます。 “第1話 ゴルフは「ナイスショットの数」でできているわけではない” の続きを読む

軽く振った方が飛ぶ理由

有効重量で考えるスインガースイング・第3話

前回は、時速5キロの電車と三輪車の例から、有効重量について考えました。

同じ時速5キロでも、電車と三輪車では衝撃がまったく違います。
速度は同じでも、ぶつかってくるものの重さが違うからです。

ゴルフも同じです。

同じヘッドスピードでも、腕だけでクラブが動いているのか。
それとも、身体とクラブが一体化して動いているのか。

ここで、ボールに届く衝撃の重さは変わります。

今回は、多くのゴルファーが一度は経験している、

軽く振った方が飛ぶ

という現象について考えてみます。


ラウンド中や練習中に、こういう経験はないでしょうか。

思いきり振ったときより、少し抑えて振ったときの方が飛んだ。
飛ばそうとしたときより、軽く合わせたときの方がボールが強かった。
マン振りしたときより、力を抜いたときの方がミート率が良かった。

多くのゴルファーは、この現象を不思議に感じます。

なぜなら、普通に考えれば、

強く振れば飛ぶ
速く振れば飛ぶ
大きく振れば飛ぶ

と思っているからです。

しかし実際には、必ずしもそうなりません。

ここに、スインガースイングを考えるうえで大切なヒントがあります。


軽く振った方が飛ぶ。

この言葉をそのまま受け取ると、

力を抜けば飛ぶ

という話に聞こえるかもしれません。

しかし、私は少し違うと考えています。

軽く振ったから飛んだのではありません。
軽く振ったことで、身体とクラブの接続が切れなかったのです。

“軽く振った方が飛ぶ理由” の続きを読む

フィッティングをより深く考える④

数値は答えではなく、フィッティングへの問いです

PING Proving Grounds Episode 3「Fitting Matters」より

PING Proving Grounds Podcast Episode 3「Fitting Matters」を受けて、
ここまでフィッティングについて考えてきました。

第1話では、
フィッティングは上手くなってから受けるものではなく、
上手くなるために道具の前提条件を整える作業だと書きました。

第2話では、
ヘッドスピードだけでクラブを判断してはいけない、
という話をしました。

ヘッドスピードは入力側の数値です。
しかし、コースで結果として残るのは、
ボールスピード、打ち出し角、スピン量、落下角、左右のばらつきなど、
ボールがどう飛んだかです。

第3話では、
試打で一番飛んだ1球を信じすぎてはいけない、
という話をしました。

最高の1球は大切です。
そのクラブの可能性を示してくれます。

しかし、コースでスコアに残るのは、
最高の1球だけではありません。

平均値。
ミスした時の残り方。
左右の幅。
前後の距離差。
そして、その人が何度も出してしまう球。

ここを見るのがフィッティングです。

今回は、Episode 3 のまとめとして、
数値は答えではなく、フィッティングへの問いである
というテーマで考えてみたいと思います。


弾道計測器は、結果を示してくれる

現代の弾道計測器は非常に優秀です。

ヘッドスピード。
ボールスピード。
打ち出し角。
スピン量。
キャリー。
トータル距離。
最高到達点。
落下角。
左右のばらつき。

これらの数値を、かなり細かく見ることができます。

以前であれば、
「何となく高い」
「何となく吹けている」
「何となく右に出る」
という感覚で見ていたものが、
今は数字として確認できます。

これは、フィッティングにとって非常に大きな進歩です。

ただし、ここで勘違いしてはいけないことがあります。

弾道計測器は、
結果を示してくれます。

しかし、その結果を生んだ原因まで、
すべて自動で教えてくれるわけではありません。


数値が出ると、答えが出たように感じてしまう

試打室で数字が表示されると、
どうしてもその数字が答えのように見えます。

ボールスピードが速い。
だから良いクラブ。

スピン量が少ない。
だから良いクラブ。

キャリーが伸びた。
だから良いクラブ。

左右のブレが少ない。
だから良いクラブ。

もちろん、それぞれ大切な情報です。

しかし、その数値だけで判断してしまうと、
フィッティングはかなり危うくなります。

なぜなら、数値は単独で存在しているわけではないからです。

ボールスピードが出ている。
しかし、打ち出し角が低すぎる。

スピン量が減っている。
しかし、落下角が浅くなり、グリーンで止まりにくい。

キャリーが伸びている。
しかし、左右の幅も広がっている。

トータル距離は出ている。
しかし、コースでは止まる場所が読みにくい。

こういうことは、実際によくあります。

つまり、数値は単独で見るものではありません。
数値同士の関係を見なければなりません。


数値は、答えではなく問いである

私は、フィッティングにおける数値は、
答えではなく、問いだと思っています。

なぜ、このボールスピードなのか。

なぜ、この打ち出し角なのか。

なぜ、このスピン量なのか。

なぜ、右に出るのか。

なぜ、左に巻くのか。

なぜ、最高の1球は良いのに、平均値は悪いのか。

なぜ、試打室では良いのに、コースでは怖くなるのか。

ここを読むのがフィッティングです。

数値を見て終わりではありません。

その数値が、
クラブによって出ているのか。
スイングによって出ているのか。
アドレスによって出ているのか。
打点によって出ているのか。
それとも、それらが複合して出ているのか。

その原因を考える必要があります。


たとえば、右に出る球をどう読むか

たとえば、ボールが右に出るとします。

この時、単純に
「右に出るから、つかまるクラブにしましょう」
で終わってよいのでしょうか。

もちろん、それで改善するケースもあります。

しかし、右に出る理由はいくつもあります。

フェースが開いて当たっているのか。
クラブパスが右を向いているのか。
ライ角が合っていないのか。
長さが合わず、手元の位置がズレているのか。
シャフトが戻りにくいのか。
ヘッドタイプがその人に合っていないのか。
そもそもアドレスで右を向いているのか。

同じ「右に出る」という結果でも、
原因が違えば、提案するクラブも変わります。

ここを見ずに、
結果だけでクラブを決めてしまうと、
一時的には良く見えても、コースで再び問題が出ることがあります。


たとえば、スピン量が多い球をどう読むか

スピン量が多い場合も同じです。

スピン量が多い。
だからロースピンのヘッドにしましょう。

これも、必ずしも間違いではありません。

しかし、なぜスピンが多いのかを見なければなりません。

打点が下に入っているのか。
フェースが開いているのか。
ロフトが寝て当たっているのか。
入射角が強すぎるのか。
シャフトが合わず、インパクトでロフトが増えているのか。
ヘッドの重心特性が合っていないのか。

原因によって、
ロフトを変えるのか。
ヘッドを変えるのか。
シャフトを変えるのか。
長さを変えるのか。
あるいは、スイング側の課題として見るのか。

判断は変わります。

つまり、スピン量という数値そのものは答えではありません。
その数値が出た理由を考えるための入口です。


たとえば、ボールスピードが出ていない球をどう読むか

ボールスピードが出ていない場合も同じです。

ヘッドスピードはある。
しかし、ボールスピードが出ていない。

この場合、まず考えたいのは、
エネルギーがボールに効率よく伝わっているかどうかです。

打点がズレているのか。
フェースの向きが合っていないのか。
ロフト条件が悪いのか。
クラブが長すぎて芯に当たりにくいのか。
重すぎて振り遅れているのか。
軽すぎて手で合わせにいっているのか。
シャフトのタイミングが合っていないのか。

ボールスピードが出ないから、
もっと反発の良いヘッドにする。

それだけでは足りないことがあります。

なぜなら、ヘッドの性能以前に、
その人が芯で打ちやすい状態になっていない可能性があるからです。

フィッティングでは、
ボールスピードの数値そのものよりも、
なぜそのボールスピードになっているのか
を見る必要があります。


フィッターは、数値の通訳者である

弾道計測器は、数字を出してくれます。

しかし、その数字をどう読むかは、
フィッターの仕事です。

私は、フィッターは数値の通訳者でもあると思っています。

お客様にとって、
弾道計測器の数字は分かりやすいようで、
実は分かりにくいものです。

ボールスピードが高い。
スピン量が多い。
打ち出し角が低い。
左右のばらつきがある。

数字だけを見れば、そうです。

しかし、その数字が、
お客様のゴルフにとって何を意味するのか。

コースでどんなミスにつながるのか。
どのクラブを使う時に問題になるのか。
どこまでがクラブで整えられるのか。
どこからがスイング側の課題なのか。

そこを分かる言葉に置き換えるのが、
フィッターの役割だと思います。


試打室の数字と、コースの現実をつなげる

フィッティングで重要なのは、
試打室の数字を、コースの現実につなげることです。

試打室でキャリーが伸びた。
それは良いことです。

しかし、そのキャリーがコースで何を意味するのか。

ドライバーなら、
いつも越えられなかったバンカーを越えられるのか。
それとも、曲がった時にOBへ届きやすくなるのか。

アイアンなら、
番手間の距離がきれいに並ぶのか。
それとも、飛びすぎる1球が出て、グリーン奥が怖くなるのか。

ハイブリッドやフェアウェイウッドなら、
高さが出て、グリーンを狙えるのか。
それとも、低く強い球になりすぎて、止めにくいのか。

ウェッジなら、
スピン量が増えたことで止めやすくなるのか。
それとも、打ち出し角やキャリーが不安定になっているのか。

数字は試打室で出ます。
しかし、クラブを使うのはコースです。

ですから、フィッティングでは、
試打室の数字だけで終わらせず、
その数字がコースでどう働くのかを考える必要があります。


よくラウンドするコースも、フィッティングの情報になる

第3話でも書きましたが、
フィッターの役割は試打室の数値だけを見ることではありません。

お客様のスイングの特徴。
よくラウンドするコース。
想定されるミスの傾向。

ここまで踏まえて判断することが重要です。

たとえば、同じ右へのミスでも、
普段回るコースの右サイドがすぐOBなのか。
それとも、右は広くラフで止まるのか。

これによって、必要なクラブは変わります。

同じアイアンのキャリー不足でも、
よく行くコースのグリーン手前が安全なのか。
池やバンカーが多いのか。

これによって、見るべきポイントは変わります。

同じフェアウェイウッドでも、
セカンドでグリーンを狙うことが多いのか。
レイアップで前に進めることが多いのか。

これによって、求める高さや止まり方は変わります。

つまり、フィッティングは、
単に良い数字を出すクラブを探す作業ではありません。

その人が実際にプレーする環境で、
どのミスを減らし、どの結果を増やすべきかを考える作業です。


クラブで整えるべきことと、スイングで整えるべきこと

フィッティングで大切なのは、
クラブで整えるべきことと、
スイングで整えるべきことを分けて考えることです。

すべてをクラブのせいにしてはいけません。

しかし、すべてをスイングのせいにしてもいけません。

クラブが長すぎて芯に当たりにくい。
ライ角が合っていなくて方向に影響している。
シャフトが重すぎて振り切れない。
ヘッドタイプが合わず、ミスの幅が大きくなっている。

こうしたことは、クラブ側で整えられる可能性があります。

一方で、
アドレスの向き。
極端な打ち込み。
過度なフェース操作。
リズムの乱れ。
力み。

こうしたことは、スイング側の課題として見る必要があります。

大切なのは、
どちらか一方に決めつけないことです。

クラブ側で整えられることは整える。
そのうえで、スイング側の課題を見る。

この順番が、フィッティングを現実的なものにしてくれると思います。


PINGのフィッティング思想に感じること

PING Proving Grounds Podcast Episode 3 を聞いていて感じるのは、
PINGがフィッティングを単なる販売手段として見ていないことです。

クラブの性能を説明するだけではない。

ゴルファーの体格、スイング、ミスの傾向、弾道のデータを見て、
その人にとってクラブがどう働くかを考える。

ここにPINGのフィッティング思想があるのだと思います。

クラブには性能があります。

しかし、その性能は、
誰が使っても同じように出るわけではありません。

ある人にとっては非常にやさしいクラブが、
別の人にはつかまりすぎることがあります。

ある人にとっては強い弾道になるクラブが、
別の人には上がりにくいクラブになることがあります。

だからこそ、フィッティングが必要になります。

クラブの性能を、
その人のゴルフにどう結びつけるか。

それを考えるのが、
PINGが長年大切にしてきたフィッティングなのだと思います。


フィッティングは、試打では終わらない

試打は大切です。

実際に打ってみなければ分からないことは多いです。

構えた時の見え方。
振った時の重さ。
打った時の音。
打点の出方。
弾道の高さ。
ミスの出方。

これらは、試打によって初めて分かります。

しかし、フィッティングは試打で終わりではありません。

試打で出た数字を読み、
その数字がなぜ出たのかを考え、
お客様のゴルフにどう影響するかを判断する。

ここまで行って、フィッティングになります。

単に、
「これが一番飛びました」
「これが一番曲がりませんでした」
では、まだ浅いと思います。

なぜ飛んだのか。
なぜ曲がらなかったのか。
その結果は何度も出るのか。
コースで使えるのか。
ミスした時にどこまでで収まるのか。

そこまで見る必要があります。

最後に:クラブを替えるかどうかは、その後でいい

このシリーズの最後に、
店長として改めて書いておきたいことがあります。

フィッティングは、
必ずクラブを買い替えるためのものではありません。

まずは、今のクラブが自分に合っているのかを知ることです。

今のクラブが合っているなら、
それはとても良いことです。

安心して使えば良いと思います。

もし合っていない部分があるなら、
何が合っていないのかを知ることが大切です。

長さなのか。
重さなのか。
ライ角なのか。
ロフトなのか。
シャフトなのか。
ヘッドタイプなのか。
番手構成なのか。

それを知ったうえで、
今のクラブを調整するのか。
買い替えるのか。
練習の方向性を変えるのか。

その選択をすれば良いと思います。

クラブを替えるかどうかは、その後でいい。

まず大切なのは、
今のクラブが、今の自分のゴルフにどう働いているのかを知ることです。

そして、特にアイアンの場合は、
PINGのカラーコードチャートから大きく外さないことも大切だと思います。

もちろん、カラーコードチャートが絶対の答えという意味ではありません。
実際のスイング、構え方、インパクト、弾道を見ながら調整する必要があります。

しかし、身長や手首から床までの長さをもとにしたカラーコードは、
その人にとって自然に構えやすいライ角を考えるための重要な出発点です。

ここから大きく外れたアイアンを使うと、
ゴルファーがクラブに合わせて構え方や手元の通し方を補正してしまうことがあります。

ですから、アイアン選びでは、
「今の自分に合ったライ角の入口」から大きく外れていないか。

ここも、確認しておくべき大切なポイントだと思います。


まとめ

PING Proving Grounds Podcast Episode 3「Fitting Matters」を受けて、
4回に分けてフィッティングについて考えてきました。

フィッティングは、
上手くなってから受けるものではありません。

上手くなるために、
道具の前提条件を整える作業です。

ヘッドスピードは大切です。
しかし、それだけでクラブを決めるものではありません。

ボールスピード、打ち出し角、スピン量、落下角、左右のばらつき。
その結果、ボールがどう飛んだかを見る必要があります。

試打で一番飛んだ1球は大切です。
しかし、コースでスコアに残るのは、
平均値とミスの幅です。

そして、数値は答えではありません。

数値は問いです。

なぜそのボールスピードなのか。
なぜそのスピン量なのか。
なぜ右に出るのか。
なぜ最高の1球は良いのに、平均値は悪いのか。

そこを読むのがフィッティングです。

フィッティングとは、
クラブの性能を説明する作業ではありません。

ゴルファーとクラブの関係を読み解き、
その人がコースで繰り返すゴルフを、
少しでも良い方向へ動かす作業です。

週末に練習場へ行く方、
ラウンド予定のある方は、
ぜひ一度、自分のミスの傾向を見てみてください。

一番良かった球ではなく、
何度も出てしまう球。

そこに、フィッティングの入口があります。

時速5キロの電車と三輪車、どちらにぶつかりたいですか?

有効重量で考えるスインガースイング・第2話

前回は、ヘッドスピードとボールスピードの関係について書きました。

ヘッドスピードは入力です。
しかし、入力はヘッドスピードだけではありません。

打点。
ロフト。
フェース向き。
入射角。
クラブの姿勢。
そして、有効重量。

これらが衝突の瞬間に統合され、その結果としてボールスピードという出力が生まれます。

今回は、その中でも特に大切な 有効重量 について、もう少し分かりやすく考えてみたいと思います。

私は生徒さんに、よくこんな質問をします。

時速5キロの電車と、時速5キロの三輪車。
どちらかに必ずぶつからなければならないとしたら、どちらを選びますか?

この質問をすると、電車を選ぶ人はまずいません。

当然です。

どちらも時速5キロです。
速度は同じです。

しかし、ぶつかったときの衝撃はまったく違います。

三輪車なら、痛いかもしれませんが、まだ想像できます。
しかし、電車となると話は別です。

時速5キロであっても、電車には大きな質量があります。
その重さが動いているから、衝突の結果がまったく違うのです。

ここで大切なのは、

速度が同じでも、衝突の強さは同じではない

ということです。

多くのゴルファーは、飛距離をヘッドスピードで考えます。

ヘッドスピードが速い。
だから飛ぶ。

ヘッドスピードが遅い。
だから飛ばない。

もちろん、それは一部としては正しいです。
速さは大切です。

しかし、時速5キロの電車と三輪車の話を考えると、速度だけでは衝突を説明できないことが分かります。

ゴルフも同じです。

同じヘッドスピードでも、腕だけでクラブが動いているのか。
それとも、身体とクラブが一体化して動いているのか。

ここで、ボールに伝わる衝突の重さが変わります。

これを私は、有効重量として考えています。

有効重量とは、体重そのものではありません。
また、単にクラブヘッドの重さだけでもありません。

インパクトの瞬間に、ボールとの衝突に参加している重さです。

たとえば、腕だけでクラブを速く振っている場合。
見た目にはヘッドが速く動いているかもしれません。

しかし、身体との接続が切れていれば、ボールにぶつかっているのは、腕とクラブの軽い衝突に近くなります。

一方、身体とクラブが一体化して動いている場合。
見た目のヘッドスピードが同じでも、ボールに届く衝突は重くなります。

これは、三輪車と電車の違いに近いものです。

速度だけを見ると同じ。
しかし、ぶつかってくるものの重さが違う。

もちろん、ゴルフスイングで人間の身体全体が電車のようにボールへぶつかっているわけではありません。

ここを誤解してはいけません。

体重をボールにぶつけろ、という話ではないのです。

大切なのは、身体とクラブの接続です。

身体の重さが、クラブを通じてボールへ届いているか。
それとも、腕や手先だけでクラブを急がせているか。

この違いです。

体重があるだけでは、有効重量にはなりません。
体重が移動しているだけでも、有効重量にはなりません。

身体とクラブがつながっていて、インパクトでその重さが逃げずにボールへ届く。
それが有効重量です。

ここで、スインガーとヒッターの見え方の違いも出てきます。

ヒッター目線では、

コンパクトなトップなのに飛ぶ
軽く振っているのに飛ぶ
ゆっくり見えるのにボールが速い

という現象が、不思議に見えます。

なぜなら、ヒッター目線では飛距離を、振り幅や力感、ヘッドスピードで見やすいからです。

しかし、スインガー目線では違います。

トップがコンパクトでも、身体とクラブが一体化していれば、有効重量は大きくなります。
力感が少なく見えても、力の向きが散らずにボールへ届いていれば、ボールスピードは出ます。
ゆっくり見えても、衝突に参加している重さが大きければ、球は強くなります。

つまり、

コンパクトなのに飛ぶ

のではありません。

スインガー目線で見れば、

有効重量が乗っているから飛ぶ

のです。

多くの人は、飛距離を伸ばそうとしてヘッドスピードを上げようとします。

もちろん、ヘッドスピードを上げること自体が悪いわけではありません。

問題は、そのために有効重量を捨ててしまうことです。

腕を速く振る。
手でヘッドを走らせる。
フェースを強く返す。
インパクトで押し込む。

そうやってクラブだけを急がせると、たしかにスピード感は出ます。
しかし、身体とクラブの接続が切れれば、ボールに届く重さは小さくなります。

つまり、三輪車を一生懸命速く走らせているような状態です。

一方、スインガーは、軽いものを無理に速く動かすのではありません。
身体とクラブが一体化した状態を保ち、その重さを逃がさずにボールへ届けます。

見た目には、力んでいない。
しかし、当たりは重い。

ここにスインガーの飛距離があります。

この話をすると、年齢を重ねたゴルファーにも希望が出てきます。

加齢によって、筋肉の収縮スピードは落ちます。
若い頃のように、腕を速く振ることは難しくなります。

その結果、ヘッドスピードは落ちやすい。

しかし、私はそこでよくこう言います。

安心してください。
体重は減っていないでしょう。
むしろ若い頃より増えている方も多いですよね。

もちろん、これは冗談だけではありません。

年齢とともに失いやすいのは、速く動かす能力です。
しかし、身体の重さそのものまで失ったわけではありません。

だからこそ、年齢を重ねたゴルファーほど、腕だけを速く振る方向ではなく、身体の重さを有効重量として使う方向を考えた方がよいのです。

ただし、ここでも注意が必要です。

身体の重さを使うと言うと、体重をぶつけるように動く人がいます。

それは違います。

身体が前に流れる。
軸がずれる。
ロフトが寝る。
フェースが開く。
入射角が乱れる。

そうなれば、体重はあってもボールには届きません。
むしろ、ベクトルが分散してしまいます。

有効重量とは、体重をぶつけることではありません。

身体とクラブが一体化し、その重さがクラブを通じて、正しい方向へ届くことです。

時速5キロの電車と三輪車。

この例で伝えたいのは、ただ重い方が強いという単純な話ではありません。

速度だけを見ていては、衝突の本質は分からないということです。

ゴルフも同じです。

ヘッドスピードだけを見ていては、なぜ飛ぶのか、なぜ飛ばないのかを正しく説明できません。

同じヘッドスピードでも、ボールに届く有効重量が違えば、ボールスピードは変わります。
そして、その有効重量が正しい方向へ届かなければ、飛距離にはなりません。

だから、スインガーを考えるうえで大切なのは、

速く振ること

だけではありません。

重さを逃がさず、正しい方向へ届けること

です。

次回は、この話をさらに実感しやすい形で考えます。

多くのゴルファーが経験している、

軽く振った方が飛ぶ

という現象です。

本当に軽く振ったから飛んだのでしょうか。
それとも、軽く振ったことで、身体とクラブの接続が切れず、有効重量が逃げなかったのでしょうか。

次回は、ここを掘り下げてみたいと思います。

フィッティングをより深く考える③

試打で一番飛んだ1球を、信じすぎてはいけない理由

PING Proving Grounds Episode 3「Fitting Matters」より

PING Proving Grounds Podcast Episode 3「Fitting Matters」では、
フィッティングで見るべき数値についての話が出てきます。

前回は、ヘッドスピードだけでクラブを判断してはいけない、
という話をしました。

ヘッドスピードは大切です。
しかし、それは入力側の数値です。

実際にコースで結果として残るのは、
ヘッドスピードそのものではなく、
ボールがどう飛んだかです。

その意味で、
ボールスピード、打ち出し角、スピン量、落下角、左右のばらつきなどを見る必要があります。

そして今回は、もう一歩進んで、
試打で一番飛んだ1球を、信じすぎてはいけない理由
について考えてみたいと思います。 “フィッティングをより深く考える③” の続きを読む

フィッティングをより深く考える②

フィッティングで見るべき数値は、ヘッドスピードだけではありません

PING Proving Grounds Episode 3「Fitting Matters」より

PING Proving Grounds Podcast Episode 3「Fitting Matters」では、
フィッティングで見るべき数値についての話も出てきます。

現代の弾道計測器は、非常に多くの数値を出してくれます。

ヘッドスピード。
ボールスピード。
打ち出し角。
スピン量。
スマッシュファクター。
キャリー。
トータル距離。
左右のブレ。
落下角。

試打をすると、これらの数値が一気に表示されます。

数字がたくさん出ると、
それだけで何かが分かったような気になります。

しかし、Podcastの会話を聞いていて大切だと思ったのは、
測れる数値が増えたからといって、すべての数値を同じ重さで見てよいわけではない
ということです。 “フィッティングをより深く考える②” の続きを読む