シェフラーの右足は、なぜ反対方向へ動くのか

少し前まで、「地面反力」という、いささか怪しげな言葉がゴルフ界で流行していました。

右足で地面を蹴り、その力によってヒップを回転させるという考え方です。

ところがシェフラーは、その右足の地面反力を使わないことで、ボディーを回転させています。

ほとんどのゴルファーは、ダウンスイングでも右足に荷重を残しています。そのため、右足をベースとして、自分の筋力で身体の回転を生み出さなければなりません。

一方、シェフラーはダウンスイングの大部分を、スインガーの円運動によって構成しています。

右足の荷重を抜き、左股関節だけを支点とすることで、前傾した上体を重力によって回転させます。

ヒップ、上体、腕、そしてクラブが同調し、一つの大きな円運動としてインパクトへ向かっていきます。

右足で地面を蹴って身体を回しているのではありません。

右足を支点から外すことで、上体が重力によって回転できる状態をつくっているのです。

身体全体が左股関節を中心に回転しているのであれば、本来、荷重の抜けた右足も身体と一緒に、回転方向へ運ばれてよいはずです。

ところが、シェフラーの右足はそうなりません。

身体の回転方向とは反対側へ動いています。

なぜ、身体が回転している方向とは反対に、右足が動くのでしょうか。

ここに、シェフラーが単に重力だけでクラブを振っているのではないことが表れています。

シェフラーは、インパクト直前までスインガーとしてクラブを円運動させています。しかし、インパクト直前のわずかな時間だけ、そこへ直線的なヒッターの力を加えています。

クラブに直線的な力を加えれば、身体にはその反対方向への反動が返ってきます。

通常のヒッターであれば、その反動を荷重の残った右足で受け止めます。

しかし、シェフラーの右足には、すでに荷重がありません。反動を受け止めるベースがないため、右足そのものが反対方向へ動くのです。

つまり、右足を反対方向へ動かすから、クラブが加速するのではありません。

クラブに直線的な力を加えた反動によって、右足が反対方向へ動いているのです。

実際に、左足一本で立ち、身体をダウンスイング方向へ回しながら腕を振ってみてください。

腕を振った反動によって、浮いている右足は自然に反対方向へ動きます。

今度は逆に、右足を意図的に後方へ引いてみてください。その反作用によって、腕はスイング方向へ動きます。

この動きだけを見れば、右足を後方へ引くことで腕を速く振れるように思えます。

しかし、右足が宙に浮いている間は、右足と腕を身体の内部で反対方向へ動かしているにすぎません。

腕を左へ動かせば、右足は右へ動く。

右足を右へ動かせば、腕は左へ動く。

互いがカウンターとなっているため、全身として新しい回転が生み出されたわけではありません。身体内部で運動の方向を振り分けているだけです。

ですから、空中で右足を後方へ引くだけなら、全体としてはプラスマイナスゼロに近いと考えられます。

シェフラーの右足の動きは、飛距離を生み出すために意図的につくられた動作ではありません。

スインガーの円運動に、インパクト直前だけヒッターの力を加えた結果として現れる、カウンターの動きなのです。

シェフラーは、どうやってボディーをターンさせているのか

シェフラーのスイングで注目されているのは右足です。その独特な動きが、シェフラーの飛距離の秘密だとよく紹介されています。

しかし、その説明に入る前に考えなければならないことがあります。

そもそもシェフラーは、どうやってボディーをターンさせているのでしょうか。

地面を蹴る右足はありません。

一般的なスイングでは、右足で地面を蹴り、その反力を利用してヒップをターンさせると説明されます。

しかしシェフラーは、ダウンスイングで右足の荷重が抜け、インパクト付近では右足が浮くほど身体を左へ移しています。

地面を蹴るはずの右足が浮いているのですから、右足の反力でボディーをターンさせているとは考えにくいでしょう。

では、なぜシェフラーは右足が浮くほど左へ移るのでしょうか。

それは、左股関節だけを支点とするためです。

両足に荷重が残っていれば、身体には右足と左足という二つの支点ができます。右足で地面を蹴、左足で受け止めながらヒップを回すのであれば、二つの支点を組み合わせた運動になります。

シェフラーは、そのようにボディーをターンさせているのではありません。

右足の荷重を抜き、右足を支点として使えない状態にすることで、左股関節だけを支点とした回転をつくっています。

つまり、右足が浮くのはバランスを崩しているからではありません。

完全な一支点の運動を成立させるためです。

そして、もう一つ重要なのが、シェフラーはヒップターンを抑えているということです。

もちろん、実際のスイングではヒップも回っています。しかし、自分の筋力でヒップを積極的に回しているのではありません。

ここでいう「ヒップターンを抑える」とは、腰をまったく回さないという意味ではありません。

左股関節の位置を動かさず、ヒップだけを先行して回そうとしないという意味です。

もし最初から筋力でヒップを強く回せば、左股関節の位置も動きます。すると支点が移動し、身体全体が左へ流れてしまいます。

これでは、一つの支点を中心とした円運動にはなりません。

シェフラーは、まず右足の荷重を抜いて左股関節を支点とし、その位置を保ちます。

その支点の上にあるのが、前傾によって斜めになった上体です。

斜めになった上体の重心には、常に重力が働いています。しかも上体の重心は、左股関節の真上にはありません。

左股関節から離れた位置に重心があるため、上体の重さは左股関節に対して回転させる力として働きます。

回転モーメント=重力×重力の作用線から支点までの垂直距離

左股関節の位置が保たれていれば、重力によって下降する上体は、そのまま直線的に落ちることができません。

左股関節を中心として、傾いた面の上を円運動することになります。

これが、シェフラーのボディーターンです。

一般的には、

ヒップを回すから、上体が回る

と考えられています。

しかしシェフラーの場合は、順序が逆です。

左股関節を支点として、斜めになった上体が重力によって回転する。その結果として、ヒップも回る。

つまり、ヒップターンはボディーを回す原因ではなく、上体が回転した結果なのです。

そのため、シェフラーのデリバリーゾーンでは、ヒップだけが先に回ることも、手だけが前へ出ることもありません。

ヒップ、上体、腕が同調し、一つの大きな円運動としてクラブを運んでいます。

見た目には非常に激しく、力いっぱい身体を回しているように見えます。

しかし実際には、筋力で無理にヒップを回しているわけではありません。

右足の荷重を抜いて支点を一つにする。

左股関節の位置を保つ。

そして、斜めになった上体を重力によって回転させる。

これが、シェフラーのヒップターンの真相です。

シェフラーは、ヒップを回して上体を動かしているのではありません。上体が重力によって回転するから、ヒップも一緒に回っているのです。

では、シェフラーの右足がインパクト付近で反対方向へ動くのは、なぜなのでしょうか。

その動きには、ここまで説明した一支点の回転とは別の力が関係しています。

シェフラーのボールストライクがなぜうらやましいのか?

ここからが本題です。

フェデックスカップ・プレーオフ最終戦「ツアー選手権」が開催されました。

3日目を終えて首位に立っていたホブランを最終日に逆転し、シェフラーが年間王者に輝きました。

大会後、ホブランはシェフラーについて、こう述べています。

“He knows where the ball’s going.”

「彼は、ボールがどこへ行くか分かっている」

一方、自分については「行方を予測できる持ち球が欲しい」と話しています。

最初の3日間は、決してスイングの感触が良かったわけではありません。それでも、ボールは真っすぐ飛んでいました。

つまりホブランには、当たりがそれほど良くなくても、ボールさえ真っすぐ飛んでくれればゲームを組み立てられる、という自信があったのです。

以前、アプローチに苦しんでいた頃のホブランを考えれば、これは相当な成長です。

ところが最終日は、同じようにスイングの感触が良くなかったにもかかわらず、今度はボールが曲がってしまいました。

一方、シェフラーのボールは、最後まで狙った方向へ飛び続けていました。

シェフラーが持っている「ボールの行方を予測できるショット」を自分も手に入れたい。それが手に入れば、自分も年間王者になれる。

ホブランの言葉には、そのような意味が含まれているのだと思います。

では、なぜシェフラーはボールの行方を予測でき、ホブランは同じスイングの感触でも、結果が変わってしまうのでしょうか。

ここまで読んだ皆さんは、

「シェフラーはスインガーで、ホブランはヒッターだから」

と思うかもしれません。

しかし、それだけではありません。

史上最強のボールストライカーといえば、皆さんご存じのモー・ノーマンです。

店長は、モー・ノーマンをどちらかといえばヒッターに分類しています。

モー・ノーマンをスインガーだと説明する人もいます。しかし、彼のクラブはトップから斜め下へ移動しています。

支点を中心とした単純な振り子であれば、クラブは円弧に沿って動きます。ところがモー・ノーマンは、ベースからクラブまでの距離を変えながらボールを打っています。

したがって、店長の定義ではヒッターです。

それでもモー・ノーマンは、ボールの行方をほぼ完全に予測できたといわれるほど正確でした。

つまり、

「ヒッターだからボールが曲がる」

ということではありません。

では、同じヒッターでありながら、モー・ノーマンとホブランでは何が違うのでしょうか。

違いは、クラブに力を伝えるために使っている支点の数です。

モー・ノーマンは、左肩を一つの支点としてクラブを動かしています。店長には、それ以外の支点を積極的に組み合わせているようには見えません。

一方、ホブランは複数の支点を組み合わせ、それぞれの動きをクラブの加速につなげています。

一つの支点でクラブを動かす場合、運動の構造は比較的単純です。

二つの支点を組み合わせれば、それぞれの動きを加算できるため、より大きなクラブスピードを生み出せます。しかし同時に、二つの動きを正確に同調させなければなりません。

三つの支点を組み合わせれば、さらに大きなスピードを生み出せますが、組み合わせは一層複雑になります。一つでもタイミングがずれれば、クラブの位置やフェースの向きも変わってしまいます。

クラブスピードを上げる可能性が大きくなる一方で、ばらつきが生まれる可能性も大きくなるということです。

もちろん、ホブランはPGAツアーのトップレベルで戦う選手です。並外れた運動能力を持っているため、普段は複数の支点を高い精度で同調させ、ボールを真っすぐ飛ばすことができます。

しかし、調子が悪くなり、支点同士のズレがある一線を越えると、急にクラブのコントロールが難しくなります。

最初の3日間は、スイングの感触が良くなくても、支点同士のズレが許容範囲に収まっていたのでしょう。

ところが最終日は、そのズレが許容範囲を越えた。その結果、それまで真っすぐ飛んでいたボールが、横へ曲がり始めたのだと考えられます。

一方、モー・ノーマンのように、一つの支点を基準としてクラブを動かすヒッターは、運動の構造が単純です。そのため、非常に高い再現性を得ることができます。

そして、スインガーであるシェフラーのボールが正確に飛んでいくのも、クラブの運動を支配する中心的な支点が一つだからです。

モー・ノーマンとシェフラーは、一方がヒッター、もう一方がスインガーです。

クラブに力を与える方法は異なります。

しかし、

「クラブの運動を支配する支点が一つである」

という点では共通しています。

正確性を決めるのは、スインガーかヒッターかという分類だけではありません。

クラブを動かすために、いくつの支点を組み合わせているのか。

そして、その運動がどれだけ単純に構成されているのかが重要なのです。

実際、シェフラーの今季の成績を見ると、その正確性が数字にも表れています。

  • Scoring Average:1位
  • SG: Total:1位
  • SG: Approach the Green:2位
  • Greens in Regulation Percentage:1位

大事な場面でパットを決めきれない印象のあったシェフラーですが、今季はSG: Puttingでも6位。ショットだけでなく、ほとんど隙のない選手になっています。

では、ここでもう一つ疑問が生まれます。

モー・ノーマンもシェフラーも、クラブの運動を支配する支点は一つです。どちらも、ボールの行方を予測できるほど正確です。

それにもかかわらず、なぜ二人の飛距離には違いが生まれるのでしょうか。

シェフラーのドライビングディスタンスは312.7ヤードで35位。飛距離だけでツアーを圧倒しているわけではありませんが、PGAツアーの平均を十分に上回っています。

一つの支点による正確性を維持しながら、シェフラーはどこから現代のPGAツアーで戦えるクラブスピードを生み出しているのでしょうか。

モー・ノーマンとシェフラーの飛距離を分けているものは何なのか。

次回は、その違いについて考えてみたいと思います。

 

 

 

 

 

ビクトル・ホブランとスコッティ・シェフラースイング比較

今日は、PING契約プロのビクトル・ホブランと、世界ナンバーワンのスコッティ・シェフラーのスイングを比較します。

まずは、こちらの動画を見比べてください。

二人では、クラブに力を加える仕組みが違うことに気づくでしょうか。

手の使い方やスエーといった、細かな動きの違いではありません。実は、シェフラーはスインガーの代表格、ホブランはヒッターの代表格といっても過言ではないほど、力の生み出し方が異なります。

その違いが最も分かりやすく現れるのが、インパクト前後のデリバリーゾーンです。

ホブランも腰がまったく動いていないわけではありません。しかし、デリバリーゾーンでは腰の動きに対して手の動きが大きく、手でクラブを押し込んでいるように見えます。

一方のシェフラーは、腰の回転と腕の動きが同調しています。

ホブランは、右足を力を受け止めるベースとして使い、そこからボールを叩いています。つまり、ヒッターです。

対するシェフラーは、左足側を支点として体と腕を一体で回転させています。そのため、ホブランのように右足を「叩くためのベース」として残す必要がありません。インパクト付近ですでに右足が浮き始めていることも、その違いをよく表しています。

整理すると、

「支点を中心に回転する」のがスイング、つまり振り子運動。

「ベースから作用点までの距離を変えながら力を加える」のがヒット、つまり叩く動きです。

一見すると、シェフラーのスイングは激しく、力いっぱいボールを叩いているように見えます。

しかし実際には、左足側に支点をつくり、腰と腕を同調させて回転する、由緒正しいスインガーなのです。

PGAの年間王者はスコッティ・シェフラーでした。

先週、フェデックスカップのプレーオフ最終戦「ツアー選手権」が開催されました。3日目を終えて首位に立っていたホブランを逆転し、シェフラーが年間王者に輝きました。

ホブランは大会後、シェフラーについてこう述べています。

“He knows where the ball’s going.”
「彼はボールがどこへ行くか分かっている」

一方、自身については、行方を予測できる持ち球が欲しいと話しています。最初の数日はスイングの感触が良くなくても真っすぐ飛んでいたのに、最終日は同じように良くない感触で、今度は曲がってしまった、と。

店長はこのコメントを読んで、ホブランがシェフラーのすごさの「質」に気づいたのではないかと思いました。

もちろん、シェフラーが世界ランキング1位の優れた選手であることは、誰もが知っています。しかし、ここでいうすごさは、単に「飛ぶ」「曲がらない」という話ではありません。

二人は同組ではありませんでしたが、厳しいコンディションの中で優勝を争うことで、ホブランはショットの確かさに大きな違いを感じたのではないでしょうか。

店長には、シェフラーのショットは、風まで計算に入れたうえで、ピンに重なるように飛んでいくように見えました。一方、ホブランは、持てる技術と集中力を総動員し、ぎりぎりのところでボールをコントロールしているように見えました。

まるでシェフラーのボールは、打つ前から行き先が決まっている。

ホブランの言葉には、そんな実感が含まれていたのではないかと思います。

店長は、この違いを、究極のスインガースイングともいえるシェフラーと、ヒッターであるホブランの違いとして捉えています。

シェフラーは、狙う球筋に合わせて構え、あとはただ振るだけに見える。風に乗せる球も、曲げる球も、低く抑える球も、まるであらかじめ描かれた道筋をたどるように飛んでいきます。

対してホブランは、一球一球に最大限の注意を払い、狙った場所へボールを運ぼうとしているように見えるのです。

もちろん、シェフラーが何も考えず、何も調整せずに打っているという意味ではありません。

ただ、同じ「ボールをコントロールする」にも、卓越した調整能力で成立させるショットと、調整を必要とする部分が少なく、結果を予測しやすいショットがある。

ホブランが感じたのは、単なる技術の優劣ではなく、この違いだったのではないでしょうか。

Bの変化

前回の投稿で、BシリーズがPINGの歴史の中でもかなり正統な系譜を持つパターであることがお分かりいただけたと思います。

初期のステンレス製B60を見ると、

トップブレードがかなり薄いことが分かります。

そのためネックも、現在のパターのようにトップブレードの上から立ち上がっているというより、フェース背面に取り付けられているように見える形状になっています。

一方、店長のコレクションにあるB60 BeCu(ベリリウムカッパー)は、

初期のステンレスモデルと比較すると、トップブレードがかなり厚くなっています。

この違いから考えると、初期型ではトウ側・ヒール側に重量を多く配分するため、トップブレード部分に十分な重量を使えなかった可能性もあるのではないかと思います。

ただし、BeCuのB60にも初期ステンレスモデルと同じようにトップブレードの薄いものがあります。

したがって、単純な素材の違いというより、製造時期や金型による形状差と考える方がよさそうです。

打感についても違いがあります。

店長の感覚では、ステンレスモデルの方が硬く、そしてヘッドが軽く感じます。

もう一つ、初期B60を見て気になるのが、プル角、つまりシャフトとフェース面の関係です。

初期型は、現在のB60やB63と比較するとシャフトの傾きが強く見えます。

この形状を見ると、ボールをスタンス中央よりやや右側に置き、手元を少し先行させた状態で構えることを想定していたのではないか、とも考えられます。

もちろん、これがPINGの明確な設計意図だったと断定することはできません。

ただ、パターの構え方やストロークの考え方が現在とは少し違っていた可能性はありそうです。

その後、パターヘッドの重量は徐々に重くなっていきます。

それに伴って、トップブレードも厚くなり、ネックの取り付け位置も変化していきました。

そして現在のScottsdale B63を見ると、

トップブレードの厚さはANSER系に近くなり、ネックもフェース背面から付いているというより、トップブレード上部から自然に立ち上がる形状に変わっています。

さらに大きな変化が、ヘッドの奥行きです。

B60は世代を追うごとに少しずつ奥行きが増し、現在のB63ではかなりマレット的な印象が強くなっています。

image

ここに、Bシリーズの進化の方向がよく表れているように思います。

初期のB60は、ANSERに近い操作感を重視したブレード系パターでした。

そこから、

トップブレードを厚くする
→ ヘッド重量を増やす
→ 奥行きを増やす
→ 周辺重量配分を強くする

という方向へ進み、少しずつ安定性を高めてきました。

そして現在のB63は、

「安定したブレード」から「操作できるマレット」へ

進化したモデル、と見ることができるのではないでしょうか。

岡本綾子プロ、Sirニック・ファルド。
名手たちの勝利を支えてきたBシリーズが、時代を越え、今度は朱莉プロのツアー優勝を支えました。
その瞬間は、B60からB63へと系譜をつないできたPINGの開発陣にとっても、特別なものだったのではないでしょうか。

Bの系譜!

佐久間朱莉プロを再び優勝へ導いたPING B63のルーツであるB60はどのようなパターなのでしょうか?

おそらく、日本で最初に話題になったのは、LPGAツアーで賞金女王になった岡本綾子プロが使用してことしょう。

B60は1978年ごろ丸みを帯びたワイドブレード形状に持ち、おそらくステンレスのパターとして登場したと思います。

PINGのクラシックパターで有名な

THE BANK OF PUTTERSさん

ではステンレスパターで登場します。岡本綾子プロが使用したのはおそらく1980年台だと思います。

次に注目を浴びたのは、私も知りませんでしたが、1992年のミュアフィールド行われた全英オープンでのニック・ファルドです。BuCuのB60で優勝しています。

2000年代はG5i / i-Series / iWi / iN B60の中のモデルとしてB60が販売されます。

2007年頃〜はKarsten Series B60として、クラシックなB60形状を現代的な重量・素材で再構成しています。このころ、PING PROだったビリー・ホーシェルに実戦使用例があります。

2017年にはPEBAX系インサートでB60が登場します。この時に女子選手の優勝回数が多いパターはB60 であると紹介されています。

2019年にはチャールズ・ハウエルIIIの要請?をうけPLD B60が登場します。

2024年には2024 B60が登場します。このモデルはヘッド重量が350gとなります。

そして現在のScottsdale B63となります。

また、バッバ・ワトソンもジュニア時代に使用していたようです。

ANSERにははるかに及びませんが、

B60は、PINGの歴史の中で女子選手の優勝回数が最も多いパター形状のひとつです。

そのBの系譜を受け継ぎ、より高MOI化したB63が、再び女子ツアーで優勝しました。

前田陽子プロのセッティングから見えてくるもの。

塚田プロは、i540の性能をロング〜ミドルアイアンに集中して使う、非常に合理的なセッティングでした。

今回紹介する前田陽子プロのセッティングは、また別の意味で、

「そんな考え方があったのか」

と気付かせてくれます。

PING公式によると、前田プロのセッティングは、

G440 MAX フェアウェイウッド #4・#7
G440 ハイブリッド #4〜#7
i540 #8・#9・PW・UW

となっています。

これを見るまで店長も気付きませんでしたが、かなり筋の通った構成です。

なぜか。

素材を見てみます。

モデル フェース素材 ボディ
G440 FW(MAX/SFT) 鍛造マレージング鋼 C300 17-4ステンレス+カーボンクラウン
G440 HB 鍛造 マレージング鋼 C300 17-4ステンレス+カーボンクラウン
i540 IRON 鍛造マレージング鋼 C300 17-4ステンレス

G440 FWとHBにはさらにカーボンクラウンがありますが、アイアンには当然クラウンそのものがありません。

それを除けば、

フェースはC300マレージング鋼。
ボディは17-4ステンレス。

という基本構成が、FWからHB、そしてi540まで共通しています。

これは非常に興味深いところです。

正確性を重視するゴルファーにとって、クラブが変わるたびにインパクトの感触やボールの弾き方が大きく変わらないことには、大きなメリットがあります。

もちろん、FW、HB、アイアンではヘッド形状も内部構造も違いますから、打感まで完全に同じになるわけではありません。

しかし、少なくともボールと直接接触するフェース素材を同じC300マレージング鋼でつないでいる。

ここには一つの統一感があります。

さらにi540では、中空アイアン特有の打音・打感の問題を抑えるために、inR-Airテクノロジーを採用しています。PINGは、フェース裏側のエアポケットによって不要な振動を減衰させる技術だと説明しています。

そう考えると前田プロのセッティングは、

FW → HB → i540

とクラブの形は変わっていきますが、

C300マレージング鋼フェースを軸に、同じ方向性の高初速クラブを連続させている

と見ることができます。

言い換えれば、

i540は、フェアウェイウッドとハイブリッドからアイアンへつなぐための「アイアン形状の高初速クラブ」と考えることもできる。

前田プロは、それを8番からUWまで使っています。

これは塚田プロとはまったく違うi540の使い方です。

塚田プロは、i540をロングアイアンとして使う。

前田プロは、G440 FW・G440 HBから続く流れの中で、i540をアイアン部分として使う。

同じi540でも、使い方はまったく違います。

そして、どちらにも筋が通っています。

ここがPINGのクラブセッティングの面白いところではないでしょうか。

下衆な話ですが、このようなセッティングであるならば、こちらも最大で4本までですので、お高いi540アイアンでも手の届く存在と言えるのでは?と思います。

i540アイアンの使用例最高パターン!そんな考え方があったのか!

日本ではPINGのクラブを使ったらこの人の右に出る人はいないと言っても過言ではありません。

その塚田Pのセッティングを見てみましょう。

5番から7番をi540

7番からPWをBLUEPRINT T

です。

アイアンをセットでなかればならないというように考えていないようですよ。

  • ドライバー
  • フェアウェイウッド
  • ハイブリッド
  • ロングアイアン
  • ショートアイアン
  • ウェッジ
  • パター

とゴルフクラブを7つのジャンルに分けるという考えです。ハイブリッドとアイアンの間にロングアイアンというジャンルのクラブを入れる。

いやはや、実にスマートな考え方です。

この考え方の良いところは、ちょっとお高いi540アイアンを最大4本までしか買わなくてもいいという事です。塚田Pが5番からですので一般の方はおそらく最大で3本です。

流石、塚田Pですね。シッカリ、「i540は4〜7番にタングステンソールウェイトを入れている」という事を理解されています。

次回は、もう一人の日本のPING PROを紹介したいと思います。

朱莉プロ。今季2勝目!その勝因は?

朱莉プロのニトリレディス優勝インタビューです。

勝因のひとつは、やはりパッティングだったようです。

今大会で使用していたパターは、

Scottsdale B63

長さ:32インチ
グリップ:SUPER STROKE PISTOL GT 1.0
ライ角:1度フラット(69度)
ストロークタイプ:セミアーク

です。

これまでは、

Scottsdale DS72

長さ:32インチ
グリップ:SUPER STROKE PISTOL GT 1.0
ライ角:1度フラット(69度)
ストロークタイプ:ストレート

を使用していました。

開幕戦での優勝以降、少しずつパッティングのイメージと実際の転がりにズレが生じていたようですが、今回パターを変更したことで、そのイメージと転がりが再び一致したのだと思います。

B63とDS72は、構えたときの見た目に極端な違いがあるわけではありません。

オフセットも大きくは変わりません。

しかし、ストロークタイプは明確に違います。

DS72はストレートタイプ。
B63はセミアークタイプです。

おそらく、開幕戦以降、ストローク中の左右方向のブレ幅が少し大きくなっていたのではないでしょうか。

ストレートタイプのパターでは、フェースの開閉をできるだけ抑えながら真っ直ぐ動かすことが求められます。

一方、セミアークタイプは、ある程度自然なフェースローテーションを許容します。

その結果、無理にストロークを真っ直ぐにしようとするよりも、自分の動きに合った軌道で振ることができ、打ち出し方向と転がりのイメージを合わせやすくなった可能性があります。

それが今回の好結果につながったのではないかと思います。