難コース、シネコック・ヒルズを制したのは
PING PUTTER PRO
ウインダム・クラーク

です。これで全米オープン2勝目我慢大会に強いプロですね。
でもですね、朝起きて、スコアを崩していたのでどうしようかと思いましたよ。周りの人にどれだけ優勝予想したか、昨日の試打会でもです。嘘つきになるかならないかの緊張感を味わいました。 “PING PUTTER PRO ウインダム・クラークが全米オープンを制しました。” の続きを読む

Play your best.
難コース、シネコック・ヒルズを制したのは
PING PUTTER PRO
ウインダム・クラーク

です。これで全米オープン2勝目我慢大会に強いプロですね。
でもですね、朝起きて、スコアを崩していたのでどうしようかと思いましたよ。周りの人にどれだけ優勝予想したか、昨日の試打会でもです。嘘つきになるかならないかの緊張感を味わいました。 “PING PUTTER PRO ウインダム・クラークが全米オープンを制しました。” の続きを読む
USオープン2日目も、ウインダム・クラークが首位をキープしています。
ここまでくると、最近のクラークのパターの変遷を調べておかなければなりません。
現時点でのクラークのパター変遷は、次のように整理できます。
| 時期 | パター | 位置づけ |
|---|---|---|
| 2023年 全米オープン優勝時 | Odyssey O-Works Versa Jailbird系 | 38〜39インチ級のカウンターバランス系。Rickie Fowler型の流れ |
| 2024年〜2025年頃 | Odyssey Jailbird系を中心に試行錯誤 | 成功した形をベースにしつつ、安定感を探る時期 |
| 2025年後半〜2026年初め | L.A.B. DF3、Toulon Le Mans、Scotty Cameron Tour T-11などをテスト | ゼロトルク系・大型マレット系・別ブランドを広く試す |
| 2026年3月 THE PLAYERS頃 | Bettinardi Antidote SB1 | Whisper Rockのプロショップで見つけた通常長さ系のゼロトルクパター |
| 2026年3月 Houston Open | PING Scottsdale TEC Ally Blue Onset | まず標準長さに近い仕様で投入 |
| 2026年4月 RBC Heritage以降 | PING Scottsdale TEC Ally Blue Onset CB | 38インチ、17インチグリップ、重ヘッドのカウンターバランス仕様 |
| 2026年 CJ Cup Byron Nelson | PING Scottsdale TEC Ally Blue Onset CB | SG: Putting +12.573でPGAツアー記録、優勝 |
| 2026年 全米オープン2日目 | PING Scottsdale TEC Ally Blue Onset CB | 2日目終了時点で首位キープ |
こうして見ると、クラークはかなりパターを入れ替えています。
そのクラークが、使用期間3か月にも満たない段階で、しかもパターだけの契約をPINGと結んだ。
これはかなり驚きです。 “ウインダム・クラークのパター変遷を見ると、PING Scottsdale TEC Ally Blue Onset CBの意味が見えてくる” の続きを読む
前回は、フェースを開く目的を、単にロフトを増やしてボールを高く上げるためではなく、
ライに対して、ボールとクラブのコンタクト位置を合わせるため
と考えました。
フェースを開くと、
が同時に変わります。
つまり、フェースを開くことは、クラブの見た目を変える操作ではありません。
ボールへどこから、どの方向へ、どのように力を伝えるかを変える操作です。
では、その接触によって生まれるスピンとは、いったい何なのでしょうか。
一般には、
スピンは、クラブフェースとボールの摩擦によって生まれる
と説明されます。
もちろん、摩擦は重要です。
しかし、摩擦だけで十分に説明できるのでしょうか。
今回は、フェースとボールが接触する、極めて短い時間の中で何が起きているのかを、ボール側から考えてみます。
インパクトの超スロー映像を見ると、興味深い現象があります。
クラブフェースに押しつぶされている間、ボールは大きく変形しています。
そして、フェースから離れた直後に、急に回転がはっきり見えるようになります。
映像だけを見ると、
ボールはフェースから離れてから回り始めた
ようにも見えます。
しかし、実際にはそうではありません。
ボールは接触中に、すでに回転のための角運動量を受け取っています。
ただし、その瞬間のボールは、完全な球体ではありません。
大きく押しつぶされ、表面も内部も変形しています。
そのため、接触中の動きを、硬い球がそのまま回転しているようには見ることができません。
フェースから離れ、ボールが元の形へ戻る過程で、内部に蓄えられていた変形と回転方向のエネルギーが、一つの回転運動として現れます。
つまり、
スピンは離れてから突然生まれたのではなく、接触中に与えられた角運動量が、離脱後に見える形になった
と考えるべきです。
「摩擦でスピンがかかる」と聞くと、クラブフェースがボール表面を長くこすっているように感じます。
しかし、実際の接触時間は極めて短いものです。
クラブフェースがボールを数センチにわたってこすり続けているわけではありません。
インパクトでは、
が同時に働きます。
フェースがボールへ垂直に押し込む力は、主にボールスピードを作ります。
一方、フェース面に沿ってボール表面をずらそうとする力は、ボールカバーをせん断方向へ変形させます。
このせん断方向の力が、ボールへ回転を与える重要な要素です。
したがって、スピンは、
フェースがボールをこすった結果
というより、
ボールを圧縮しながら、表面と内部を回転方向へ変形させた結果
と考えた方が、実際の現象に近いように思えます。
インパクトは、一瞬の出来事です。
そのため、ボールへ加わる力の大きさだけを見るのでは不十分です。
重要なのは、
どの方向の力が、どれだけの時間加わったか
です。
力を時間で積み重ねたものを、力積と呼びます。
目標方向へ大きな力積が加われば、ボールスピードが生まれます。
回転方向へ力積が加われば、角運動量が生まれます。
つまり、スピン量を決めるのは、摩擦係数の大きさだけではありません。
が関係します。
同じ摩擦係数を持つ素材であっても、接触圧力が小さければ、大きな回転方向の力積を伝えることはできません。
反対に、ボールがフェースへ強く押し付けられ、表面が食いつけば、短い接触時間でも大きな角運動量を与えることができます。
ここで、摩擦の位置づけを考え直してみます。
摩擦がまったくなければ、フェース面に沿う方向の力をボールへ伝えることはできません。
その意味で、摩擦は不可欠です。
しかし、
摩擦が大きければ、それだけスピンが増える
と単純には言えません。
摩擦は、ボールへ回転方向の力を伝えるための結合条件です。
ボールがフェース上を完全に滑ってしまえば、十分な回転方向の力積は伝わりません。
一方、ボール表面がフェースへ食いつきすぎても、変形によるエネルギー損失が大きくなる可能性があります。
必要なのは、
押し付けられた状態で、適度に変形し、回転方向の力を保持すること
です。
したがって、摩擦はスピンそのものではありません。
フェースからボールへ、回転方向の力積を伝えるための接続機構
と考える方が適切です。
ここで重要になるのが、ボールカバーの材質です。
ゴルフボールの表面は、硬い金属ではありません。
変形するポリマー素材です。
特にツアー系ボールで使われる柔らかいウレタンカバーは、インパクト時に変形しやすくなっています。
カバーが適度に柔らかければ、
ことができます。
つまり、柔らかいカバーは、単に「摩擦が大きい」のではありません。
フェースから与えられた回転方向の力を、一時的な変形として受け止める
ことができます。
そして、フェースから離れるとき、その変形が元へ戻ろうとします。
その復元とともに、ボール全体へ回転が現れます。
このように考えると、ボールカバーは単なる表面材ではありません。
回転方向の力積を受け取り、蓄え、角運動量へ変換する部品
と見ることができます。
ただし、カバーが柔らかければ柔らかいほど、必ずスピンが増えるわけではありません。
柔らかすぎれば、
可能性があります。
必要なのは、単なる柔らかさではありません。
が重要です。
つまり、スピン性能を決めるのは、硬度だけではありません。
カバーの厚み、弾性、粘り、復元性、その内側にある層の硬さまで関係します。
柔らかい表面の下に、適度に硬い層があると、カバーはフェースと内層の間に挟まれます。
表面は変形できる。
しかし、奥へ逃げすぎない。
そのため、フェースへ強く押し付けられた状態で、接線方向の力を受け止めやすくなります。
これは、柔らかいタイヤ表面を、内部の構造が支えていることに少し似ています。
ウェッジの溝は、スピンを増やすためのものだと説明されます。
しかし、乾いた状態でボールとフェースが直接接触できるなら、フェース表面そのものでも大きなスピンは生まれます。
溝が特に重要になるのは、
がフェースとボールの間に入ったときです。
溝は、それらを逃がす空間を作ります。
その結果、ボールカバーとフェース面が直接接触できる面積を確保します。
つまり、溝の役割は、
ボールを爪で引っかけて回すこと
ではなく、
フェースとカバーの結合を邪魔する異物を排出すること
と考える方が自然です。
接触がクリーンになれば、ボールカバーはフェースへ押し付けられ、せん断方向の力を受け取りやすくなります。
スピンを作るのは溝単独ではありません。
が一つの接触系として働きます。
同じクラブ、同じロフト、同じアタックアングルでも、フェース上の打点が変わればスピン量は変わります。
フェース上部へ当たれば、
が変わります。
一般に高打点では、スピンが減りやすくなります。
一方、リーディングエッジ直上の適正な低打点では、
という条件が作られます。
ただし、低ければ低いほどよいわけではありません。
リーディングエッジそのものへ当たれば、トップやブレードショットに近づきます。
必要なのは、
フェース下部でありながら、ボールを十分に面で受けられる位置
です。
フェースを開き、バンスでヘッドを支える操作は、この適正な低打点を再現するためのものとも考えられます。
以前、ジャンボ尾崎さんが、アプローチにおいて、
バンスがクラブフェースをボールへ押し付ける
という趣旨の表現をしたことがあったと記憶しています。
この表現は、感覚的なものに見えます。
しかし、ここまでの考察とつなげると、非常に本質的です。
バンスが地面や芝から反力を受けると、
という状態を作れます。
つまり、バンスは単にダフリを防ぐのではありません。
フェースとボールの接触を支持し、カバーへ回転方向の力積を伝えやすくする
役割を持つ可能性があります。
「フェースを押し付ける」という表現は、接触時間を何倍にも延ばすという意味ではないでしょう。
そうではなく、
接触中に、フェース法線方向の圧力が急に抜けるのを防ぐ
という意味に近いと考えられます。
ボールをフェースへ押し付ける力が保たれれば、接線方向の力も伝えやすくなります。
その結果、カバーのせん断変形が大きくなり、角運動量も増えます。
ここまで考えると、スピンはクラブ単独の性能ではないことが分かります。
クラブ側には、
があります。
ボール側には、
があります。
さらに、その間には、
があります。
これらが結合したとき、初めてスピンが生まれます。
したがって、
このウェッジはスピンがかかる
という表現も、
このボールはスピンがかかる
という表現も、単独では不完全です。
正確には、
このクラブと、このボールと、このライと、この打点の組み合わせでは、回転方向の力積が効率よく伝わる
ということです。
弾道計測では、スピンロフトがスピン量を考える重要な指標として使われます。
クラブの進行方向とフェース姿勢の差が大きくなれば、フェース面に沿う相対運動も大きくなります。
そのため、スピンロフトとスピン量には強い関係があります。
しかし、スピンロフトが同じでも、
が変われば、スピン量は変わります。
つまり、スピンロフトは、
クラブ側から見た入力条件
を表しています。
しかし、ボールがその入力をどれだけ角運動量として受け取ったかまでは示していません。
ここに、クラブ側から見える数値と、ボール側で起きている現象の間があります。
これまで、スピンは摩擦によって生まれると説明されてきました。
その説明は間違いではありません。
しかし、摩擦という一語だけでは、現象の一部しか見えていません。
より正確に表現するなら、
スピンは、フェースとボールが接触中に結合し、ボールカバーへ回転方向の力積が伝えられた結果として生まれる
となります。
摩擦は、その結合を成立させる要素です。
カバーは、その力積を受け取る要素です。
バンスは、その接触を支える要素です。
打点は、その力がどこへ作用するかを決める要素です。
スピンは、それらすべてが組み合わされた結果です。
弾道計測器には、スピン量が表示されます。
超スロー映像では、ボールが回転して飛び出す様子が見えます。
しかし、その回転が生まれるまでに、
は見えていません。
見えるのは、回転という結果です。
見えないのは、その回転を作った接触中の変形です。
しかし、ボール側から考えることで、見えていない過程を推測することはできます。
次回は、これまでスピンを説明する中心的な考え方として使われてきた、スピンロフトについて改めて考えます。
スピンロフト45度付近でスピンが最大になるという説明は、何を表しているのでしょうか。
そして、そのモデルには、ボール側のコンタクトポイント、カバー変形、バンスによる支持が、どこまで含まれているのでしょうか。
昨日のXに、PING GOLF(@PingTour)から次のような投稿がありました。
Signed and gaming a Scottsdale TEC. We’re excited to announce that Wyndham Clark has signed an agreement to exclusively play a Scottsdale TEC putter. Since switching to an Ally Blue Onset, Wyndham set a Strokes Gained: Putting record for a PGA Tour event (+12.573) and notched his fourth PGA Tour title. #PlayYourBest

どうやら、ウインダム・クラークがSCOTTSDALE TECパターの使用契約をPINGと交わしたようです。
営業さんに確認してもらったところ、契約については事実との返事がありました。
ただし、PINGで過去にこのような契約があったのかについては、現在も確認中です。 “ウインダム・クラークがPINGとSCOTTSDALE TECパター契約” の続きを読む
前回は、番手が変わると、
が一つの組み合わせとして働き、適正なコンタクト状態を作っている可能性を考えました。
ロングアイアンでは、ロフトが小さく、アタックアングルは比較的浅く、バンスも小さい。
ショートアイアンやウェッジでは、ロフトが大きく、アタックアングルは深くなり、バンスも大きくなる。
これらは、それぞれ別の数字として存在しているのではありません。
ボールとクラブがどの高さで、どの位置に、どの姿勢で接触するか。
その接触状態を整えるために、一つの系として組み合わされている可能性があります。
では、アプローチでフェースを開く操作は、この中でどのような意味を持つのでしょうか。
一般には、
フェースを開くのは、ロフトを増やしてボールを高く上げるため
と説明されます。

もちろん、フェースを開けばロフトは増えます。
しかし、変わるのはロフトだけではありません。
フェースを開くと、
まで、すべてが同時に変化します。
そう考えると、フェースを開く操作を、単なるロフト調整として説明するだけでは足りないように思えます。
今回は、
フェースを開く本当の目的は、ボールを高く上げることではなく、ライに対して適正なコンタクトポイントを作ることではないか
という視点から考えていきます。
ゴルフボールは、いつも同じ高さにあるわけではありません。
練習マットでは、ボールの底はほぼ一定の高さにあります。
しかし、実際のコースでは、
など、ライによってボール中心の高さが変わります。
さらに、ボールの高さだけでなく、クラブヘッドが地面へどの程度入るかも変わります。
硬い地面では、ソールは沈みにくい。
柔らかい芝では、ヘッドは深く入りやすい。
ラフでは、ヘッドとボールの間に芝が入りやすい。
つまり、実際の打点を決めるのは、
ボールがどれだけ高く支持されているか
だけではありません。
クラブヘッドがどれだけ地面へ入り、どの高さを通過したか
との相対関係によって決まります。
同じクラブ、同じスイング、同じアタックアングルでも、ライが変われば、ボールとフェースの位置関係は変わります。
ボールが適度に浮いたライを考えます。

フェースをスクエアにしたまま、通常どおりヘッドを地面へ入れると、クラブヘッドはボールに対して低い位置を通過する可能性があります。
すると、フェース上ではボールが高い位置へ当たりやすくなります。
反対に、ボールが沈んだライでは、同じようにソールを使うと、リーディングエッジがボールの下へ入りにくくなることがあります。
つまり、ライが変わると、
ボールの高さと、フェースが通る高さが一致しなくなる
ことがあります。
ここでフェースを開く操作が必要になります。
フェースを開くと、クラブの接地の仕方が変わります。
ソールのどこが地面へ触れるのか。
バンスがどの方向へ働くのか。
リーディングエッジがどの高さを通るのか。
それらを変えることで、ライに対するヘッドの通過高さを調整できるからです。
ウェッジをスクエアに置いた状態からフェースを開くと、一般にリーディングエッジは地面から高くなります。
同時に、ソール後方やヒール側が接地しやすくなり、実効バンスも増えます。
このとき、ヘッドは地面へ深く潜りにくくなります。
つまり、フェースを開くことで、
という変化が起こります。
これを単に「ロフトが増えた」とだけ説明すると、重要な部分が抜け落ちます。
フェースを開くことは、
クラブヘッドが地面に対して、どの高さを通るかを調整する操作
でもあるのです。
ボールが芝の上に少し浮いている場合、ボール中心は通常より高い位置にあります。
このとき、スクエアフェースのままヘッドを低く入れると、フェース上部でボールを受けやすくなります。
フェース上部での接触は、
につながる可能性があります。
そこでフェースを開きます。
フェースを開くことで、バンスが地面からヘッドを支え、ヘッドの沈み込みを抑えます。
同時に、リーディングエッジの通過高さが上がります。
その結果、浮いたボールに対して、フェース下部の適正な位置を合わせやすくなります。
つまり、ボールが浮いたライでフェースを開くのは、
高い球を打ちたいから
という以前に、
高い位置にあるボールへ、クラブの接触位置を合わせるため
と考えることができます。
球が高く上がるのは、その操作に伴ってロフトが増えた結果でもあります。
反対に、ボールが芝の中へ沈んでいる場合を考えます。
このときボールは低い位置にあります。
フェースを大きく開くと、
ため、ボールの下へクラブを届かせにくくなることがあります。
そのため、沈んだライでは、
といった対応が必要になります。
つまり、フェースを開くことが常に正解なのではありません。
ライに対して、
ボールの高さとクラブの通過高さを一致させる
ことが目的です。
フェース開度は、そのための調整手段の一つです。
フェースを開けば、フェース面の向きが変わります。
ボールを球体として考えると、フェース開度は経度を変えます。
同時に、ロフトが増えることで、コンタクトポイントはより下側の緯度へ移ります。
つまり、フェースを開くと、
の両方が変化します。
ここで重要なのは、フェース開度が大きくなっても、ロフトが増えることで、左右方向の実距離は必ずしも大きくならないことです。
以前考えたように、球面上では南極に近づくほど、同じ経度差でも左右方向の距離は小さくなります。
したがって、フェースを開く操作は、
フェースを右へ向ける操作
であると同時に、
コンタクトポイントをボール下部へ移し、左右方向への作用腕を小さくする操作
とも考えられます。
高ロフトのアプローチでフェースを大きく開いても、想像するほど右へ飛び出さないことがあるのは、この構造と関係している可能性があります。
ここで「リーディングエッジをボールへ合わせる」という表現には注意が必要です。
リーディングエッジそのものがボールへ衝突すれば、トップやブレードショットに近づきます。
理想は、エッジそのものを当てることではありません。
リーディングエッジ直上のフェース下部を、ボールの適正な位置へ合わせる
ことです。
ウェッジで強いスピンがかかるとき、フェース中央よりもやや下部、下から数本目の溝付近で接触していることがあります。
そこでは、
という条件が作られます。
フェースを開く操作は、この低い適正打点へ、ヘッドの通過位置を合わせる役割を持つ可能性があります。
フェースを開くと、実効バンスが大きくなります。
バンスは地面から反力を受け、ヘッドが深く潜りすぎるのを防ぎます。
その結果、
という状態を作れます。
つまり、バンスは単にダフリを防ぐのではありません。
フェース下部の適正な打点を、ボールへ通すためにヘッドを支持する
機能を持っていると考えられます。
この見方をすると、フェースを開くこととバンスを使うことは、別々の技術ではありません。
フェースを開くことでバンスの働き方を変え、バンスによってクラブの通過高さを調整し、ボールとのコンタクトポイントを合わせる。
一連の操作として理解できます。
ここまで考えると、従来の説明に一つの問いが生まれます。
フェースを開くからロフトが増え、ボールが高く上がる。
これは結果として正しい。
しかし、プレーヤーが本当に行っていることは、
ロフトを増やすこと
なのでしょうか。
それとも、
ライに対して、クラブヘッドの通過高さ、バンスの接地、フェース下部の打点を調整すること
なのでしょうか。
もし後者だとすれば、ロフトの増加は主目的ではありません。
適正なコンタクト位置を作るためにフェースを開いた結果、ロフトも増えているという順序になります。
これは、見えているクラブ側の変化と、見えていないボール側の目的を入れ替えて考えることです。
見えているのは、フェースが開いたことです。
見えていないのは、その操作によって、ボールとクラブの接触位置が整えられたことです。
一般には、フェースを開くとロフトが増え、スピンが増えると説明されます。
しかし、実際にはフェースを開けば、必ずスピンが増えるわけではありません。
開きすぎれば、
ことで、スピンが減ることもあります。
したがって、スピンを増やすのはフェース開度そのものではありません。
フェースを開くことで、
という条件が作られたとき、スピン効率が高まると考える方が自然です。
つまり、
フェースを開くことがスピンを作るのではない。
フェースを開くことで、スピンを作りやすい接触状態を作っている。
ということです。
フェースを開くという動作をクラブ側から見れば、
と説明できます。
しかし、ボール側から見れば、
という現象が起きています。
どちらも同じインパクトを見ています。
ただし、見ている中心が違います。
クラブ中心に見れば、フェースを開いてロフトを増やした。
ボール中心に見れば、ライに対して適正な接触位置を作った。
どちらがプレーヤーの目的をより正確に表しているのでしょうか。
現在の弾道計測器では、フェースが何度開いていたかを測ることができます。
しかし、その開度によって、
までを、常に正確に表示できるわけではありません。
見えているのはフェース開度です。
見えていないのは、その開度を使って何を調整したかです。
しかし、ライ、バンス、打点、ボールの変形を合わせて考えれば、フェースを開く目的が少し違って見えてきます。
フェースを開くのは、単に球を高く上げるためではない。
ボールの高さに対して、クラブのコンタクト位置を合わせるため
ではないでしょうか。
次回は、その接触によってスピンがどのように生まれるのかを考えます。
スピンは、本当に摩擦だけで説明できるのでしょうか。
フェースとボールが接触する短い時間の中で、ボールカバーはどのように変形し、どの方向の力積を受け取り、離脱後の回転へ変えているのでしょうか。
前回は、ダウンブローになることで、ボールへ力を加える方向と実効的な作用位置が変わり、方向性が安定する可能性を考えました。
プロがグリーンを狙う場面では、最大飛距離を求めたフルショットよりも、右手首の角度を保ち、適正なダウンブローでラインを出すショットが多く見られます。
その理由は、単にスピンを増やすためではありません。
ボールへ力を加える位置と方向を揃え、左右方向と縦距離の両方を安定させるためではないか。
それが前回までの考察でした。
では、クラブの番手が変わると、なぜアタックアングルも変わるのでしょうか。
ロングアイアンでは比較的浅く入り、ショートアイアンやウェッジでは、より深いダウンブローになる傾向があります。
同時に、クラブのロフトは増え、バンスも大きくなっていきます。
これは偶然なのでしょうか。
今回は、ロフト、アタックアングル、バンスの関係を、ボールとの接触から考えてみます。
まず、中学校で習う円の基本性質を思い出します。
円の中心から接点へ引いた半径は、その接点における接線と必ず垂直になります。
円の中心を O、接点を P、接線を l とすれば、
OP丄 l
です。

これは、ゴルフボールとクラブフェースの関係を考えるうえで、非常に重要な性質です。
ゴルフボールを完全な球体、クラブフェースを平面として考えると、最初に接触する瞬間には、
になります。
つまり、クラブフェースの向きが決まれば、球面上の幾何学的なコンタクトポイントも決まります。
フェース開度が経度を決め、ロフトが緯度を決めるという前回までの説明は、この接線の性質を土台にしています。
ロフトの小さいクラブでは、フェースは比較的立っています。
そのため、ボール中心から接点へ向かう半径は、地面に対して比較的水平に近くなります。
地球に例えれば、コンタクトポイントは赤道に近い位置です。
一方、ロフトが大きくなると、フェースは上を向きます。
フェース面に垂直な半径も下向きに傾くため、ボール側のコンタクトポイントは、より下側へ移ります。
地球に例えれば、南極に近づいていくことになります。
したがって、
ロフトが増えるほど、クラブフェースはボールの下側へ接触する
という関係が生まれます。
これは、ロフトがボールを高く上げるという結果だけではなく、ボール球面上のどこへ接触するかを決めているということです。
ここで、二つの打点を分ける必要があります。
一つは、ボール球面上のどこへ接触したかという、ボール側のコンタクトポイントです。
もう一つは、クラブフェースのどの高さでボールを受けたかという、フェース側の打点です。
この二つは関連しますが、同じものではありません。
同じロフトのクラブでも、
という違いによって、フェース上の打点は変わります。
したがって、ロフトが大きいから必ずフェース下部へ当たるとは限りません。
フェース側の打点を決めるには、クラブヘッドがどの高さを通過し、地面からどのような反力を受けたかまで考える必要があります。
一般に、ロングアイアンでは比較的浅いダウンブローになります。
ショートアイアンやウェッジになるほど、アタックアングルは深くなる傾向があります。
しかし、プロが番手ごとにまったく別の打ち方をしているわけではありません。
番手が短くなると、
ため、同じスイング構造の中でも、インパクト時の進入角は自然に深くなります。
つまり、番手別のアタックアングルは、
番手ごとに意識して打ち込んだ結果
というより、
クラブ長とボール位置が変化した結果
として生まれている部分が大きいと考えられます。
ここで、一見すると矛盾する関係が現れます。
ロフトが大きくなると、ボール側のコンタクトポイントは下へ移ります。
それに加えて、アタックアングルも深くなれば、クラブヘッドはさらに下方向へ進みます。
そのままなら、ショートアイアンやウェッジでは、
ように見えます。
しかし、実際にはそうならないように、もう一つの構造が用意されています。
それがバンスです。
バンスとは、リーディングエッジよりもソール後方が低く配置されている構造です。
一般には、
バンスはダフリを防ぐもの
と説明されます。
これは間違いではありません。
しかし、ダフリを防ぐという説明だけでは、バンスの役割を十分に表していません。
バンスが地面や芝へ接触すると、地面から反力を受けます。
その反力によって、
ことができます。
つまり、バンスは、
ヘッドを跳ねさせるためのもの
ではなく、
ヘッドの侵入深さと通過高さを管理する支持機構
と考えることができます。
ダウンブローが深くなるほど、クラブヘッドは地面へ深く入ろうとします。
一方、バンスが大きくなるほど、ソールは地面から強い反力を受けやすくなり、ヘッドの潜り込みを抑えます。
つまり、
という、反対方向の作用を持っています。
この二つが適切に組み合わされれば、
ダウンブローで入っても、ヘッドは必要以上に潜らず、適正な高さを通過する
ことができます。
番手が短くなるほどアタックアングルが深くなり、同時にバンスも大きくなる傾向があるのは、両者が一つの組み合わせとして働いているからではないでしょうか。
ここで注意したいのは、
アタックアングルが5度なら、バンスも5度あれば相殺される
という単純な話ではないことです。
実際のソールと地面の関係には、
が影響します。
バンス角は、一つの静的な設計値です。
一方、インパクトではクラブ姿勢と地面条件によって、実際に働く実効バンスが変わります。
したがって、アタックアングルとバンスは、数値として単純に引き算するものではありません。
それでも、
深い進入に対して、バンスが地面からヘッドを支持する
という基本的な役割は変わりません。
ロングアイアンは、
という組み合わせです。
フェースが立っているため、ボール側のコンタクトポイントは赤道に近くなります。
アタックアングルも浅いため、大きなバンスによる支持を必要としません。
一方、ショートアイアンやウェッジは、
という組み合わせです。
フェースはボールの下側へ接触します。
クラブヘッドも深い角度で地面へ向かいます。
そこでバンスが地面からヘッドを支え、リーディングエッジの通過高さを整えます。
このように見ると、番手ごとの設計は、
ロフト、長さ、アタックアングル、バンスが別々に存在している
のではなく、
適正なコンタクト状態を作るために、一つの系として組み合わされている
ことが分かります。
さらに、実際のゴルフでは、ボールは完全に地面へ接しているとは限りません。
フェアウェイの芝は、ボールを数ミリ持ち上げています。
薄いライでは地面に近く、芝の上に浮いたライでは、ボール中心はより高い位置にあります。
一方、クラブヘッドも芝や地面へ入ります。
したがって、フェース上の打点を決めるのは、
の差です。
ボールが高く浮いていても、ヘッドが同じだけ深く入れば、打点は大きく変わりません。
しかし、バンスによってヘッドの沈み込みが抑えられれば、フェース上の打点は高くなります。
反対に、硬い地面でバンスが強く反発すれば、リーディングエッジが浮き、ボール下部を薄く捉える可能性もあります。
つまり、ライが変わると、
ボールの高さとヘッドの通過高さの関係
が変わります。
クラブ設計者が番手ごとに変えているのは、ロフトと長さだけではありません。
まで調整されています。
これらは、番手ごとに異なる進入条件でも、フェースの適正な位置でボールを受けるための設計と考えることができます。
ロングアイアンとウェッジでは、クラブの動きも、ボール側の接触位置も異なります。
それでも、極端に打点が上下しないように、クラブ側の形状が整えられているのです。
つまり、
番手が変わるから打点が変わる
だけではなく、
番手が変わっても適正な打点を維持するために、クラブ設計が変えられている
と考える方が自然です。
自動車では、エンジンの力がそのまま路面へ伝わるわけではありません。
シャシー、サスペンション、タイヤを通じて、路面へ力が伝えられます。
サスペンションは、車体を上下に動かすためだけのものではありません。
タイヤの接地を保ち、路面へ安定して力を伝えるための装置です。
ゴルフクラブにおけるバンスにも、似た役割があるのかもしれません。
バンスは、ヘッドを地面から支え、
を安定させます。
そう考えると、バンスは単なるダフリ防止機能ではありません。
クラブフェースとボールの接触を支えるサスペンション
と表現することもできます。
ここまで考えると、アプローチでフェースを開く意味も変わって見えてきます。
一般には、
フェースを開くのは、ロフトを増やしてボールを高く上げるため
と説明されます。
しかし、フェースを開けば、ロフトだけでなく、
も同時に変わります。
そうであれば、フェースを開く主な目的は、
ロフトを増やすこと
ではなく、
ライとアタックアングルに対して、適正なコンタクト位置を作ること
なのかもしれません。
ロフトが増えるのは、その操作に伴って起きる結果の一つにすぎない可能性があります。
私たちは、クラブを見ればロフトを確認できます。
弾道計測器を使えば、アタックアングルも確認できます。
カタログを見れば、バンス角も分かります。
しかし、それらがインパクトでどのように組み合わされ、
までは、直接には見えません。
見えている数値は、それぞれ独立しているように見えます。
しかし、実際のインパクトでは、すべてが一つの接触状態を作っています。
番手が変われば、ロフトが変わる。
クラブ長が変わり、アタックアングルも変わる。
その進入角に対応するように、バンスとソール形状も変わる。
それらすべてが、適正な打点とボール出力を作るために組み合わされているのではないでしょうか。
次回は、フェースを開く操作を、単にロフトを増やす動作としてではなく、
ボールとフェースのコンタクトポイントをライに合わせて調整する動作
として考えていきます。
普段は、
「それ、何を言っているんですか?」
と、メーカーのマーケティングに突っ込むことが多い店長です。
しかし今回は、褒めなくてはなりません。
昨年末、i240の日本仕様をコースで試打しました。
打った瞬間に感じたのは、
これは、かなり完成度の高いアイアンだぞ。
ということでした。

ヘッドはコンパクトで、構えた姿は競技志向。
それでいて、必要以上に難しくありません。
ボールはしっかり上がり、飛距離も出る。
そして何より、グリーン上でボールを止められる。
ところが、価格の影響もあるのでしょうか。
実際のマーケットからは、それほど大きな反応を感じません。

MYGOLFSPYの総合評価では目立たない
しかし、ここで少し評価軸を変えてみます。
競技ゴルファーがアイアンに本当に求めるものは何でしょうか。
単純な飛距離でしょうか。
それとも、ヘッドの見た目や打感でしょうか。
もちろん、それらも重要です。
しかし、競技でスコアを作るために欠かせないのは、
狙った距離を打ち、グリーン上でボールを止めること
です。
つまり、ストッピングパワーです。
MYGOLFSPYのテストデータから、
を総合して見ると、ストッピング性能の上位は次のようになります。
i240の7番アイアンは、
| 項目 | テスト結果 |
|---|---|
| ロフト角 | 33° |
| キャリー | 156.77yd |
| スピン量 | 6,170rpm |
| 最高到達点 | 29.1m |
| 落下角 | 46.98° |
| 推定ラン | 4.96yd |
という結果です。
スピン量、最高到達点、落下角、着弾後のラン。
すべてが、今回のテストでトップクラスです。

しかもこれは、単にマッスルバックのようにロフトを寝かせ、スピンを増やした結果ではありません。
33°の7番アイアンでありながら、マッスルバックを上回るほどのストッピング性能を出しています。
PINGが公式に説明しているとおり、i240は低重心化によって高い打ち出しを生み、MOIを高めながら、グリーン上でボールを止めることを狙った設計です。
ここで重要なのは、MYGOLFSPYがテストしたのはUS仕様だということです。
US仕様のi240は、7番アイアンが標準で33°。
一方、日本仕様の標準ロフトは31.5°です。
| 仕様 | 7番アイアンのロフト |
|---|---|
| US標準仕様 | 33° |
| 日本標準仕様 | 31.5° |
USでは31.5°がPower Specとして用意されていますが、日本では、その31.5°が標準仕様として採用されています。
つまり日本仕様は、US仕様より1.5°ロフトを立てることで、飛距離性能を加えた仕様になっています。
もちろん、ロフトを33°から31.5°へ変更した場合の正確な数値は、同じテスター、同じボール、同じ打点条件で再計測しなければ分かりません。
それでも一般的な弾道変化から推定すると、おおよそ次のようになります。
| 項目 | 33°実測値 | 日本仕様31.5°の推定 |
|---|---|---|
| ボール初速 | 50.4m/s | 50.6~50.9m/s |
| キャリー | 156.77yd | 160~162yd |
| トータル | 161.73yd | 166~168yd |
| 打ち出し角 | 20.43° | 19.2~19.7° |
| スピン量 | 6,170rpm | 5,700~5,950rpm |
| 最高到達点 | 29.1m | 28.0~28.7m |
| 落下角 | 46.98° | 45.6~46.3° |
| 推定ラン | 4.96yd | 5.5~6.2yd |
ロフトが立つため、スピン量と落下角は少し減少すると考えられます。
その代わり、
という変化が見込まれます。
重要なのは、ロフトを1.5°立てても、推定落下角は45°を超え、スピン量も5,700~5,950rpm程度を維持できる可能性が高いことです。
つまり、日本仕様のi240は、
飛距離が出るだけのストロングロフトアイアンではありません。
飛距離を増やしながら、
という、競技アイアンとして必要な条件を残していると考えられます。
多くの日本仕様アイアンは、ロフトを立てることで飛距離を作ります。
しかし、その結果として、
という問題が生じることがあります。
i240の日本仕様が面白いのは、元となるUS仕様に、十分すぎるほどの高さとスピン、落下角があることです。
その余裕を使ってロフトを1.5°立てる。
すると、ストッピング性能を完全には失わずに、日本のゴルファーが求める飛距離を加えることができます。
言い換えれば、
US仕様の余裕を、日本仕様では飛距離へ変換した
ということです。
31.5°という数字だけを見れば、競技志向アイアンとしては強めのロフトです。
しかし、低重心設計によって高さを出し、スピンと落下角を残すことができれば、単なるロフト商法ではありません。
飛んで、上がって、止まる。

店長がコースで感じた完成度の高さは、このバランスから生まれていたのだと思います。
普段の店長なら、
「日本仕様だけロフトを立てて、飛距離を大きく見せただけでは?」
と疑うところです。
しかし、今回のi240は少し違います。
US仕様には、もともと圧倒的なストッピング性能があります。
その性能を土台として、日本仕様ではロフトを31.5°に設定。
ストッピング性能に多少の余裕を残しながら、飛距離を加えています。
これは、
止まる性能を削って飛距離を作ったのではなく、止まる性能の余裕を飛距離へ振り分けた
と見ることができます。
日本のゴルファーが求める飛距離。
競技ゴルファーが求める高さ、スピン、落下角。
その両方を狙った仕様です。
……認めたくはありませんが。
今回は、
PING GOLF JAPANのマーケティングの勝利です。
うぐぐぐぅ……。負けた!
コースでは3番アイアンも試打しています。

ロフトは19度、昔でいうと2番アイアンです。流石に立って見えますが、打ってみると高さが出て、ちゃんと飛んでいくんですよ。
緊急投稿です。
以前の担当の営業さんとSCOTTSDALE TECについて、かなりいいパターだよと言っていたら。
私はそれに加えて、BSさんの限定ボールを使ってますからと聞かされ、気を失いそうにになりました。ドットが2つあるのでどちらを見たらいいのか悩みますとも付け加えてくれました。
どうも、フェースぎりぎりのところにドットがあるのかわかっていないようでしたのでマーケさんの代わりに説明しておきました。

ちょうどSCOTRSDALE TECのドットの位置は円の接線の接点になります。この時、フェースが正しく目標に向いているとします。つまりドットはボールの中心を通り、目標に完全に向いています。そのドットに集中して、ストローク中ドットが構えた位置にあるとして、その点でインパクトすると、必ずストロークパスがインサイドアウトであろうと、アウトサイドインであろうと、また、フェースが開いて閉じたとしても、インパクトのフェースの向きは必ず目標にスクエアです。
中学校で、円の中心を O、円周上の接点を P、その点での接線を とすると、
OP⊥l
ですと習ったでしょ。つまり、
接点へ引いた半径は、その点の接線に必ず垂直になる
という性質があるんだからと説明しました。
ストロークがどうであれ、目標に向かって打ち出されるんだよ説明しました。
そうしたら、彼は、ボールのドットを見ええるか見えない位置して目標の反対側に合わせればいいんですねと。
おおそうきたか!
一理あるので、それに関しては否定しませんでした。
私も以前はそうだったんですが、パターの動きを目で追う癖のある人はそれを直して試してくださいね。
第2話では、クラブのフェース向きだけを見るのではなく、球体であるボールのどこへ接触したのかを考えました。
ボールの重心を原点に置き、左右方向をx軸、上下方向をz軸として考えると、同じフェース開度であっても、ロフトによってコンタクトポイントの位置は変わります。
低ロフトのクラブでは、フェース向きの変化が、ボール重心から見た左右方向のズレとして大きく現れます。
一方、ボールウッドの実験の結果がそうであったように、ロフトが大きくなるほど、その左右方向のズレは小さくなります。
この関係を単純化した式で表すと、

となります。
フェース開度 (F) が同じであっても、ロフト (L) が大きくなるほど、cos L は小さくなります。
したがって、ボール重心から見た左右方向のズレ (x) も小さくなります。
ここから、ロフトが大きいクラブほど、フェース向きの変化に対する左右方向の感度が下がる理由が見えてきます。
ここで誤解してはいけないのは、
ロフトが増えると、フェース向きの影響がなくなる
ということではありません。
フェースが右を向けば、右方向への影響は残ります。
左を向けば、左方向への影響も残ります。
ただし、その影響がボール重心から見た左右方向へ現れる割合が、小さくなるのです。
ロフトが大きくなると、フェースの向きによって生じる接触位置の変化は、左右方向だけではなく、上下方向にも分配されるようになります。
つまり、
ロフトが増えるほど、フェース向きの変化が左右方向へ集中しにくくなる
と考えられます。

これが、高ロフトのクラブほど直進性が高く見える一つの理由です。
たとえば、ドライバーとサンドウェッジのフェースが、それぞれ目標に対して2度右を向いていたとします。
クラブ側の測定値だけを見れば、どちらも同じ「2度オープン」です。
しかし、ボール側から見ると、同じ2度ではありません。
低ロフトのドライバーでは、フェース向きの変化がボール重心から見た左右方向の偏位として大きく現れます。
そのため、打ち出し方向も右へ変化しやすくなります。
一方、ロフトの大きいサンドウェッジでは、同じ2度のフェース開度でも、左右方向の偏位は小さくなります。
接触位置の変化は、左右よりも上下方向へ多く配分されます。
したがって、ドライバーとウェッジでは、
同じ2度のフェース開度でも、ボールにとっての意味は同じではない
ということになります。
測定器に表示される角度が同じでも、球体であるボールとの関係は変わるのです。
フェースが5度開いていると仮定します。
ボール半径 (R) はすべて同じなので、左右方向の偏位を比較するためには、

の値を見れば十分です。
おおよその値は次のようになります。
| ロフト | 左右方向の偏位を示す係数 |
|---|---|
| 10度 | 0.0858 |
| 20度 | 0.0819 |
| 30度 | 0.0755 |
| 40度 | 0.0668 |
| 50度 | 0.0560 |
| 60度 | 0.0436 |
ロフト10度と60度を比べると、同じ5度のフェース開度でも、左右方向の偏位はほぼ半分になります。
フェースの開きが半分になったわけではありません。
クラブ側の角度は同じです。
しかし、ボール重心から見た左右方向への作用は、小さくなっています。
これが、ロフトによってフェース向きの影響率が変化する理由として考えられます。
ただし、
ロフトが大きいクラブなら、必ず真っすぐ飛ぶ
という意味ではありません。
実際の弾道には、ほかにも多くの条件が関係します。
これらが加われば、高ロフトのクラブでも左右へ飛び、曲がります。
ここでいう直進性とは、
同じフェース開閉量に対して、左右方向の出力変化が小さくなる
という意味です。
高ロフトになるほど、フェース向きに対する左右方向の感度が下がる。
その結果として、低ロフトのクラブよりも、左右方向への変化が小さく見えるのです。
一般に、ロングアイアンよりショートアイアンの方が、方向を合わせやすいと感じる人は多いでしょう。
これまでは、
と説明されてきました。
もちろん、それらも影響します。
しかし、ボール側から見ると、もう一つ理由があります。
ロフトが大きくなることで、同じフェース向きの誤差が、ボール重心から見た左右方向へ現れにくくなるからです。
つまり、ショートアイアンやウェッジは、単に扱いやすいのではなく、
球体であるボールに対して、左右方向の誤差が大きく伝わりにくい幾何学的な条件を持っている
と考えられます。
一般的な飛球理論では、ボールの打ち出し方向は、主にフェース向きによって決まると説明されます。
実用上、この説明は有効です。
しかし、今回のようにロフトによって影響率が変わることを考えると、フェース向きを単独の原因として扱うことには疑問が残ります。
もし、フェース向きそのものがボール方向を直接決めているなら、同じフェース角の変化は、ロフトが変わっても同じように作用するはずです。
しかし、実際にはそうなりません。
ロフトが変わることで、ボール球面上のコンタクトポイントが変わる。
ボール重心から見た左右方向の偏位が変わる。
その結果、ボールへ加わる力の方向と配分も変わる。
つまり、フェース向きは、
ボールの飛び方を単独で決める原因
というより、
ボール上の接触位置と力の方向を決める条件の一つ
と考えた方が、現象を説明しやすくなります。
クラブを正面から見れば、フェースが何度開いているかは測定できます。
しかし、ボール側から見れば重要なのは、
です。
低ロフトでは、フェース向きの変化が左右方向の偏位として大きく現れる。
高ロフトでは、その左右方向の偏位が小さくなり、上下方向への成分が大きくなる。
この構造を考えると、ロフトが増えるほど直進性が上がる理由は、
ロフトそのものがボールを真っすぐ飛ばすから
ではなく、
同じフェース向きの誤差が、ボール重心から見た左右方向へ伝わりにくくなるから
と説明できます。
弾道計測器には、フェース向きが2度開いていたと表示されます。
その数字は正しいのでしょう。
しかし、その2度がボールにどのように作用したかは、ロフトによって変わります。
見えているのは、クラブ側の2度です。
見えていないのは、その2度によって、
という、ボール側の変化です。
同じ数字でも、現象の意味は同じではありません。
知識というフィルターを通して見えない部分を考えると、表示された角度の向こう側にある構造が見えてきます。
次回は、アイアンの番手が変わると、ロフトだけでなく、アタックアングル、バンス、ボールの支持高さがどのように変化し、それによって打点がどう移動するのかを考えていきます。
前作より5ヤード飛ぶ」
「ボール初速が上がる」
「300ヤードを超えた」
こうした表現は分かりやすく、数字で比較できます。
新しいクラブを買う理由にもなります。
一方で、
正しい場所へ運びやすい。
縦距離が安定する。
左右のミスを限定できる。
球筋を管理しやすい。
次のショットを打ちやすい場所へ置ける。
といった性能は、一言では伝わりません。
そのためメーカーは、クラブの価値を飛距離で説明するようになりました。
そしてゴルフメディアも、その価値観を繰り返し伝えてきました。
何ヤード飛んだのか。
どの番手で打ったのか。
ボール初速はどれくらいだったのか。
パー5で2オンしたのか。
こうした情報は、テレビでも記事でも扱いやすいものです。
しかし本来、ゴルフで重要なのは、何ヤード飛んだかだけではありません。
なぜそのクラブを選んだのか。
どちら側を狙ったのか。
どのミスを消したのか。
次のショットをどこから打とうとしたのか。
そこまで説明しなければ、良いショットの意味は伝わりません。
遠くへ飛んだショットは、一目で価値が分かります。
しかし、20ヤード抑えて正しい場所へ置いたショットは、解説されなければ地味に見えます。
その結果、観客もゴルファーも、
飛ばす選手は優れている。
短いクラブを持つ選手は有利である。
狭いコースは質が低い。
ドライバーを振れないコースは面白くない。
と考えるようになりました。
ここで、商業と競技の主従が逆転します。
本来は、優れたゴルフをどう見せ、どう伝えるかを考えるべきでした。
ところが実際には、売りやすいゴルフに合わせて、競技の方が変えられていきました。
飛距離が映えるコースを使う。
大観衆の前でドライバーを振らせる。
パー5の2オンや短いパー4のワンオンを見せ場にする。
その結果、飛距離のある選手が上位に来る。
そして、その結果を見て、
やはり飛距離が最も重要だ。
という評価がさらに強くなる。
メーカーが飛距離を売る。
メディアが飛距離を賞賛する。
PGAツアーが飛距離の映える舞台を用意する。
そこでロングヒッターが勝つ。
その勝利を使って、また飛距離が商品として売られる。
この循環が、現代ゴルフの価値観を作ってきたのではないでしょうか。
問題は、ロングヒッターが勝つことではありません。
ロングヒッターにも、高い技術があります。
問題は、飛距離以外の技術が見えなくなったことです。
例えばベン・ホーガンは、サム・スニードほど飛ぶ選手ではありませんでした。
それでもホーガンは、飛距離を追うのではなく、ボールをコントロールする道を選びました。
ドローで距離を求めるゴルフから、フェードで曲がり幅と停止地点を管理するゴルフへ変えた後、メジャーで大きな成功を収めています。
これは、当時のゴルフが飛距離だけを評価していなかったことを示しています。
飛距離を少し失っても、方向、球筋、着弾地点、停止位置を管理できれば、勝つことができた。
ジャック・ニクラスも、当時としては飛距離のある選手でした。
しかし、彼が帝王になった理由は、単に遠くへ飛ばしたからではありません。
飛距離を含め、ボールの高さ、曲がり、距離、着弾地点をコントロールできたからです。
彼らは、パワーを捨てたのではありません。
パワーをコントロールの中に置いたのです。
日本でも、似た問題を見ることができます。
宮里藍選手が米国へ主戦場を移した頃、スポンサーやメディアは、飛距離を強く強調しました。
彼女の本来の強みは、正確性、距離感、コースマネジメント、パッティングを含めた総合的なゲームでした。
しかし、米国で戦うためには飛距離が必要だという評価が強くなれば、選手自身も、その尺度で戦おうとしてしまう可能性があります。
相手の長所と同じ土俵で戦おうとすれば、自分が勝ってきた方法を見失うことがあります。
宮里選手が後に世界ランキング1位まで上がったのは、飛距離で他の選手を圧倒したからではありません。
自分のリズム、正確性、ショートゲーム、パッティングを中心に、再び自分のゴルフを作り上げたからでしょう。
商業は、選手の弱点を分かりやすく示します。
「もっと飛ばせ」
そう言えば、クラブもボールも売れます。
しかし、その言葉を選手やゴルファーが受け入れすぎると、本来持っていた勝ち方まで失うことがあります。
商業そのものが悪いわけではありません。
メーカーも、メディアも、プロツアーも、商業によって成り立っています。
問題は、商業が競技を支えるのではなく、競技の価値を決めるようになったことです。
ゴルフの一部である飛距離を、ゴルフ全体として売った。
その結果、ゴルファーは「何が上手いのか」を誤解するようになりました。
遠くへ飛ばしたショットが、必ずしも良いショットではありません。
必要な距離を、必要な方向へ運び、次のボールを止める条件を作ったショットこそ、価値のあるショットです。
戻すべきなのは、ボールの飛距離だけではありません。
メーカー、メディア、ツアーが、何を価値として伝えるのか。
その基準そのものです。
次回は、ゴルフが本来どのように選手の技術を評価してきた競技なのか。
そして、なぜ現在のゴルフが、総合技術を問う競技から、最大出力を競う陸上競技のようになってしまったのかを考えます。