見えないものを見る 第8話 スピンは、本当に摩擦だけで生まれるのか

前回は、フェースを開く目的を、単にロフトを増やしてボールを高く上げるためではなく、

ライに対して、ボールとクラブのコンタクト位置を合わせるため

と考えました。

フェースを開くと、

  • リーディングエッジの高さ
  • 実効バンス
  • ソールの接地点
  • ヘッドの沈み込み
  • フェース上の打点
  • ボール側のコンタクトポイント

が同時に変わります。

つまり、フェースを開くことは、クラブの見た目を変える操作ではありません。

ボールへどこから、どの方向へ、どのように力を伝えるかを変える操作です。

では、その接触によって生まれるスピンとは、いったい何なのでしょうか。

一般には、

スピンは、クラブフェースとボールの摩擦によって生まれる

と説明されます。

もちろん、摩擦は重要です。

しかし、摩擦だけで十分に説明できるのでしょうか。

今回は、フェースとボールが接触する、極めて短い時間の中で何が起きているのかを、ボール側から考えてみます。

超スローでは、離れてから回り始めたように見える

インパクトの超スロー映像を見ると、興味深い現象があります。

クラブフェースに押しつぶされている間、ボールは大きく変形しています。

そして、フェースから離れた直後に、急に回転がはっきり見えるようになります。

映像だけを見ると、

ボールはフェースから離れてから回り始めた

ようにも見えます。

しかし、実際にはそうではありません。

ボールは接触中に、すでに回転のための角運動量を受け取っています。

ただし、その瞬間のボールは、完全な球体ではありません。

大きく押しつぶされ、表面も内部も変形しています。

そのため、接触中の動きを、硬い球がそのまま回転しているようには見ることができません。

フェースから離れ、ボールが元の形へ戻る過程で、内部に蓄えられていた変形と回転方向のエネルギーが、一つの回転運動として現れます。

つまり、

スピンは離れてから突然生まれたのではなく、接触中に与えられた角運動量が、離脱後に見える形になった

と考えるべきです。

フェースはボールをこすっているのか

「摩擦でスピンがかかる」と聞くと、クラブフェースがボール表面を長くこすっているように感じます。

しかし、実際の接触時間は極めて短いものです。

クラブフェースがボールを数センチにわたってこすり続けているわけではありません。

インパクトでは、

  • ボールを押しつぶす力
  • ボール表面をずらす力
  • ボールカバーを引き伸ばす力

が同時に働きます。

フェースがボールへ垂直に押し込む力は、主にボールスピードを作ります。

一方、フェース面に沿ってボール表面をずらそうとする力は、ボールカバーをせん断方向へ変形させます。

このせん断方向の力が、ボールへ回転を与える重要な要素です。

したがって、スピンは、

フェースがボールをこすった結果

というより、

ボールを圧縮しながら、表面と内部を回転方向へ変形させた結果

と考えた方が、実際の現象に近いように思えます。

ボールに与えられるのは、力ではなく力積である

インパクトは、一瞬の出来事です。

そのため、ボールへ加わる力の大きさだけを見るのでは不十分です。

重要なのは、

どの方向の力が、どれだけの時間加わったか

です。

力を時間で積み重ねたものを、力積と呼びます。

目標方向へ大きな力積が加われば、ボールスピードが生まれます。

回転方向へ力積が加われば、角運動量が生まれます。

つまり、スピン量を決めるのは、摩擦係数の大きさだけではありません。

  • 接触圧力
  • 接触時間
  • 力の方向
  • 力が作用した位置
  • ボールカバーの変形量
  • 変形を保持できるかどうか

が関係します。

同じ摩擦係数を持つ素材であっても、接触圧力が小さければ、大きな回転方向の力積を伝えることはできません。

反対に、ボールがフェースへ強く押し付けられ、表面が食いつけば、短い接触時間でも大きな角運動量を与えることができます。

摩擦はスピンの原因なのか

ここで、摩擦の位置づけを考え直してみます。

摩擦がまったくなければ、フェース面に沿う方向の力をボールへ伝えることはできません。

その意味で、摩擦は不可欠です。

しかし、

摩擦が大きければ、それだけスピンが増える

と単純には言えません。

摩擦は、ボールへ回転方向の力を伝えるための結合条件です。

ボールがフェース上を完全に滑ってしまえば、十分な回転方向の力積は伝わりません。

一方、ボール表面がフェースへ食いつきすぎても、変形によるエネルギー損失が大きくなる可能性があります。

必要なのは、

押し付けられた状態で、適度に変形し、回転方向の力を保持すること

です。

したがって、摩擦はスピンそのものではありません。

フェースからボールへ、回転方向の力積を伝えるための接続機構

と考える方が適切です。

ボールカバーは何をしているのか

ここで重要になるのが、ボールカバーの材質です。

ゴルフボールの表面は、硬い金属ではありません。

変形するポリマー素材です。

特にツアー系ボールで使われる柔らかいウレタンカバーは、インパクト時に変形しやすくなっています。

カバーが適度に柔らかければ、

  • フェースとの実接触面積が広がる
  • 溝や微細な凹凸へ入り込む
  • 表面がフェースへ食いつく
  • 接線方向へ伸びる
  • せん断方向の力を保持する

ことができます。

つまり、柔らかいカバーは、単に「摩擦が大きい」のではありません。

フェースから与えられた回転方向の力を、一時的な変形として受け止める

ことができます。

そして、フェースから離れるとき、その変形が元へ戻ろうとします。

その復元とともに、ボール全体へ回転が現れます。

このように考えると、ボールカバーは単なる表面材ではありません。

回転方向の力積を受け取り、蓄え、角運動量へ変換する部品

と見ることができます。

柔らかければ柔らかいほどよいのか

ただし、カバーが柔らかければ柔らかいほど、必ずスピンが増えるわけではありません。

柔らかすぎれば、

  • 変形が大きくなりすぎる
  • 力が内部で逃げる
  • 復元が遅れる
  • エネルギー損失が増える
  • ボールスピードが下がる
  • 表面が傷つきやすくなる

可能性があります。

必要なのは、単なる柔らかさではありません。

  • どれだけ伸びるか
  • どれだけせん断力を保持できるか
  • どの速度で元へ戻るか
  • どれだけの圧力に耐えられるか

が重要です。

つまり、スピン性能を決めるのは、硬度だけではありません。

カバーの厚み、弾性、粘り、復元性、その内側にある層の硬さまで関係します。

柔らかい表面の下に、適度に硬い層があると、カバーはフェースと内層の間に挟まれます。

表面は変形できる。

しかし、奥へ逃げすぎない。

そのため、フェースへ強く押し付けられた状態で、接線方向の力を受け止めやすくなります。

これは、柔らかいタイヤ表面を、内部の構造が支えていることに少し似ています。

フェースの溝は、スピンを直接作っているのか

ウェッジの溝は、スピンを増やすためのものだと説明されます。

しかし、乾いた状態でボールとフェースが直接接触できるなら、フェース表面そのものでも大きなスピンは生まれます。

溝が特に重要になるのは、

  • 水分
  • 汚れ

がフェースとボールの間に入ったときです。

溝は、それらを逃がす空間を作ります。

その結果、ボールカバーとフェース面が直接接触できる面積を確保します。

つまり、溝の役割は、

ボールを爪で引っかけて回すこと

ではなく、

フェースとカバーの結合を邪魔する異物を排出すること

と考える方が自然です。

接触がクリーンになれば、ボールカバーはフェースへ押し付けられ、せん断方向の力を受け取りやすくなります。

スピンを作るのは溝単独ではありません。

  • フェース面
  • ボールカバー
  • 接触圧力
  • 打点
  • ライ

が一つの接触系として働きます。

打点によってスピンが変わる理由

同じクラブ、同じロフト、同じアタックアングルでも、フェース上の打点が変わればスピン量は変わります。

フェース上部へ当たれば、

  • 接触圧力
  • ヘッドの回転
  • ボールカバーの変形
  • 芝の介在量

が変わります。

一般に高打点では、スピンが減りやすくなります。

一方、リーディングエッジ直上の適正な低打点では、

  • ボールを十分に圧縮できる
  • フェースとの直接接触を確保しやすい
  • カバーへ接線方向の力を伝えやすい
  • 芝や水分の介在を抑えやすい

という条件が作られます。

ただし、低ければ低いほどよいわけではありません。

リーディングエッジそのものへ当たれば、トップやブレードショットに近づきます。

必要なのは、

フェース下部でありながら、ボールを十分に面で受けられる位置

です。

フェースを開き、バンスでヘッドを支える操作は、この適正な低打点を再現するためのものとも考えられます。

バンスがフェースをボールへ押し付ける

以前、ジャンボ尾崎さんが、アプローチにおいて、

バンスがクラブフェースをボールへ押し付ける

という趣旨の表現をしたことがあったと記憶しています。

この表現は、感覚的なものに見えます。

しかし、ここまでの考察とつなげると、非常に本質的です。

バンスが地面や芝から反力を受けると、

  • ヘッドが地面へ潜りすぎない
  • フェースの通過高さが安定する
  • ヘッド姿勢が急激に変わりにくい
  • ボールとの接触圧力が抜けにくい

という状態を作れます。

つまり、バンスは単にダフリを防ぐのではありません。

フェースとボールの接触を支持し、カバーへ回転方向の力積を伝えやすくする

役割を持つ可能性があります。

「フェースを押し付ける」という表現は、接触時間を何倍にも延ばすという意味ではないでしょう。

そうではなく、

接触中に、フェース法線方向の圧力が急に抜けるのを防ぐ

という意味に近いと考えられます。

ボールをフェースへ押し付ける力が保たれれば、接線方向の力も伝えやすくなります。

その結果、カバーのせん断変形が大きくなり、角運動量も増えます。

クラブ側とボール側が結合して初めてスピンになる

ここまで考えると、スピンはクラブ単独の性能ではないことが分かります。

クラブ側には、

  • フェース面
  • ロフト
  • 打点
  • バンス
  • ヘッドの進入方向

があります。

ボール側には、

  • カバー材
  • カバー厚
  • 内部構造
  • 変形量
  • 復元性
  • 表面状態

があります。

さらに、その間には、

  • 水分
  • 接触圧力
  • 接触位置

があります。

これらが結合したとき、初めてスピンが生まれます。

したがって、

このウェッジはスピンがかかる

という表現も、

このボールはスピンがかかる

という表現も、単独では不完全です。

正確には、

このクラブと、このボールと、このライと、この打点の組み合わせでは、回転方向の力積が効率よく伝わる

ということです。

スピンロフトだけでは見えないもの

弾道計測では、スピンロフトがスピン量を考える重要な指標として使われます。

クラブの進行方向とフェース姿勢の差が大きくなれば、フェース面に沿う相対運動も大きくなります。

そのため、スピンロフトとスピン量には強い関係があります。

しかし、スピンロフトが同じでも、

  • 打点
  • カバー材
  • 接触圧力
  • 芝や水分
  • バンスの働き
  • フェースとの滑り方

が変われば、スピン量は変わります。

つまり、スピンロフトは、

クラブ側から見た入力条件

を表しています。

しかし、ボールがその入力をどれだけ角運動量として受け取ったかまでは示していません。

ここに、クラブ側から見える数値と、ボール側で起きている現象の間があります。

摩擦から、結合へ

これまで、スピンは摩擦によって生まれると説明されてきました。

その説明は間違いではありません。

しかし、摩擦という一語だけでは、現象の一部しか見えていません。

より正確に表現するなら、

スピンは、フェースとボールが接触中に結合し、ボールカバーへ回転方向の力積が伝えられた結果として生まれる

となります。

摩擦は、その結合を成立させる要素です。

カバーは、その力積を受け取る要素です。

バンスは、その接触を支える要素です。

打点は、その力がどこへ作用するかを決める要素です。

スピンは、それらすべてが組み合わされた結果です。

見える回転と、見えない変形

弾道計測器には、スピン量が表示されます。

超スロー映像では、ボールが回転して飛び出す様子が見えます。

しかし、その回転が生まれるまでに、

  • カバーがどれだけ伸びたのか
  • どこへ圧力が集中したのか
  • どの部分が滑り、どの部分が食いついたのか
  • どの方向へ力積が伝わったのか
  • 離脱時にどのように復元したのか

は見えていません。

見えるのは、回転という結果です。

見えないのは、その回転を作った接触中の変形です。

しかし、ボール側から考えることで、見えていない過程を推測することはできます。

次回は、これまでスピンを説明する中心的な考え方として使われてきた、スピンロフトについて改めて考えます。

スピンロフト45度付近でスピンが最大になるという説明は、何を表しているのでしょうか。

そして、そのモデルには、ボール側のコンタクトポイント、カバー変形、バンスによる支持が、どこまで含まれているのでしょうか。

ウインダム・クラークがPINGとSCOTTSDALE TECパター契約

昨日のXに、PING GOLF(@PingTour)から次のような投稿がありました。

Signed and gaming a Scottsdale TEC. We’re excited to announce that Wyndham Clark has signed an agreement to exclusively play a Scottsdale TEC putter. Since switching to an Ally Blue Onset, Wyndham set a Strokes Gained: Putting record for a PGA Tour event (+12.573) and notched his fourth PGA Tour title. #PlayYourBest

どうやら、ウインダム・クラークがSCOTTSDALE TECパターの使用契約をPINGと交わしたようです。

営業さんに確認してもらったところ、契約については事実との返事がありました。
ただし、PINGで過去にこのような契約があったのかについては、現在も確認中です。 “ウインダム・クラークがPINGとSCOTTSDALE TECパター契約” の続きを読む

見えないものを見る 第7話 フェースを開く本当の目的は何か

前回は、番手が変わると、

  • ロフト
  • クラブ長
  • アタックアングル
  • バンス
  • ソール形状

が一つの組み合わせとして働き、適正なコンタクト状態を作っている可能性を考えました。

ロングアイアンでは、ロフトが小さく、アタックアングルは比較的浅く、バンスも小さい。

ショートアイアンやウェッジでは、ロフトが大きく、アタックアングルは深くなり、バンスも大きくなる。

これらは、それぞれ別の数字として存在しているのではありません。

ボールとクラブがどの高さで、どの位置に、どの姿勢で接触するか。

その接触状態を整えるために、一つの系として組み合わされている可能性があります。

では、アプローチでフェースを開く操作は、この中でどのような意味を持つのでしょうか。

一般には、

フェースを開くのは、ロフトを増やしてボールを高く上げるため

と説明されます。

もちろん、フェースを開けばロフトは増えます。

しかし、変わるのはロフトだけではありません。

フェースを開くと、

  • リーディングエッジの向き
  • リーディングエッジの高さ
  • 実効バンス
  • ソールの接地点
  • ヘッドの沈み込み
  • フェース上の打点
  • ボール側のコンタクトポイント

まで、すべてが同時に変化します。

そう考えると、フェースを開く操作を、単なるロフト調整として説明するだけでは足りないように思えます。

今回は、

フェースを開く本当の目的は、ボールを高く上げることではなく、ライに対して適正なコンタクトポイントを作ることではないか

という視点から考えていきます。

ライが変われば、ボールの高さも変わる

ゴルフボールは、いつも同じ高さにあるわけではありません。

練習マットでは、ボールの底はほぼ一定の高さにあります。

しかし、実際のコースでは、

  • 芝が薄い
  • 芝の上に少し浮いている
  • 柔らかい地面に沈んでいる
  • ラフの上に浮いている
  • 芝の間に深く沈んでいる

など、ライによってボール中心の高さが変わります。

さらに、ボールの高さだけでなく、クラブヘッドが地面へどの程度入るかも変わります。

 

硬い地面では、ソールは沈みにくい。

柔らかい芝では、ヘッドは深く入りやすい。

ラフでは、ヘッドとボールの間に芝が入りやすい。

つまり、実際の打点を決めるのは、

ボールがどれだけ高く支持されているか

だけではありません。

クラブヘッドがどれだけ地面へ入り、どの高さを通過したか

との相対関係によって決まります。

同じクラブ、同じスイング、同じアタックアングルでも、ライが変われば、ボールとフェースの位置関係は変わります。

スクエアフェースでは合わないライがある

ボールが適度に浮いたライを考えます。

フェースをスクエアにしたまま、通常どおりヘッドを地面へ入れると、クラブヘッドはボールに対して低い位置を通過する可能性があります。

すると、フェース上ではボールが高い位置へ当たりやすくなります。

反対に、ボールが沈んだライでは、同じようにソールを使うと、リーディングエッジがボールの下へ入りにくくなることがあります。

つまり、ライが変わると、

ボールの高さと、フェースが通る高さが一致しなくなる

ことがあります。

ここでフェースを開く操作が必要になります。

フェースを開くと、クラブの接地の仕方が変わります。

ソールのどこが地面へ触れるのか。

バンスがどの方向へ働くのか。

リーディングエッジがどの高さを通るのか。

それらを変えることで、ライに対するヘッドの通過高さを調整できるからです。

フェースを開くと、リーディングエッジの高さが変わる

ウェッジをスクエアに置いた状態からフェースを開くと、一般にリーディングエッジは地面から高くなります。

同時に、ソール後方やヒール側が接地しやすくなり、実効バンスも増えます。

このとき、ヘッドは地面へ深く潜りにくくなります。

つまり、フェースを開くことで、

  • リーディングエッジが上がる
  • ソールの接地点が変わる
  • バンスによる支持が強くなる
  • ヘッドの通過位置が高くなる

という変化が起こります。

これを単に「ロフトが増えた」とだけ説明すると、重要な部分が抜け落ちます。

フェースを開くことは、

クラブヘッドが地面に対して、どの高さを通るかを調整する操作

でもあるのです。

ボールが浮いたライでは、なぜ開くのか

ボールが芝の上に少し浮いている場合、ボール中心は通常より高い位置にあります。

このとき、スクエアフェースのままヘッドを低く入れると、フェース上部でボールを受けやすくなります。

フェース上部での接触は、

  • ボール初速の低下
  • スピン量の低下
  • 打ち出しの不安定化
  • 芝の介在

につながる可能性があります。

そこでフェースを開きます。

フェースを開くことで、バンスが地面からヘッドを支え、ヘッドの沈み込みを抑えます。

同時に、リーディングエッジの通過高さが上がります。

その結果、浮いたボールに対して、フェース下部の適正な位置を合わせやすくなります。

つまり、ボールが浮いたライでフェースを開くのは、

高い球を打ちたいから

という以前に、

高い位置にあるボールへ、クラブの接触位置を合わせるため

と考えることができます。

球が高く上がるのは、その操作に伴ってロフトが増えた結果でもあります。

ボールが沈んだライでは、開きすぎてはいけない

反対に、ボールが芝の中へ沈んでいる場合を考えます。

このときボールは低い位置にあります。

フェースを大きく開くと、

  • リーディングエッジが高くなる
  • バンスが強く働く
  • ヘッドが地面へ入りにくくなる

ため、ボールの下へクラブを届かせにくくなることがあります。

そのため、沈んだライでは、

  • フェースを開きすぎない
  • リーディングエッジを低く使う
  • バンスを減らす
  • より深いアタックアングルを使う

といった対応が必要になります。

つまり、フェースを開くことが常に正解なのではありません。

ライに対して、

ボールの高さとクラブの通過高さを一致させる

ことが目的です。

フェース開度は、そのための調整手段の一つです。

フェースを開くと、ボール側のコンタクトポイントも変わる

フェースを開けば、フェース面の向きが変わります。

ボールを球体として考えると、フェース開度は経度を変えます。

同時に、ロフトが増えることで、コンタクトポイントはより下側の緯度へ移ります。

つまり、フェースを開くと、

  • 左右方向の位置
  • 上下方向の位置

の両方が変化します。

ここで重要なのは、フェース開度が大きくなっても、ロフトが増えることで、左右方向の実距離は必ずしも大きくならないことです。

以前考えたように、球面上では南極に近づくほど、同じ経度差でも左右方向の距離は小さくなります。

したがって、フェースを開く操作は、

フェースを右へ向ける操作

であると同時に、

コンタクトポイントをボール下部へ移し、左右方向への作用腕を小さくする操作

とも考えられます。

高ロフトのアプローチでフェースを大きく開いても、想像するほど右へ飛び出さないことがあるのは、この構造と関係している可能性があります。

リーディングエッジそのものを当てるのか

ここで「リーディングエッジをボールへ合わせる」という表現には注意が必要です。

リーディングエッジそのものがボールへ衝突すれば、トップやブレードショットに近づきます。

理想は、エッジそのものを当てることではありません。

リーディングエッジ直上のフェース下部を、ボールの適正な位置へ合わせる

ことです。

ウェッジで強いスピンがかかるとき、フェース中央よりもやや下部、下から数本目の溝付近で接触していることがあります。

そこでは、

  • ボールを十分に圧縮できる
  • フェース面との接触を保てる
  • 芝や水分の介在を抑えやすい
  • ボールカバーへ接線方向の力を伝えやすい

という条件が作られます。

フェースを開く操作は、この低い適正打点へ、ヘッドの通過位置を合わせる役割を持つ可能性があります。

バンスがヘッドを支える

フェースを開くと、実効バンスが大きくなります。

バンスは地面から反力を受け、ヘッドが深く潜りすぎるのを防ぎます。

その結果、

  • フェースの通過高さが安定する
  • リーディングエッジが急激に下がらない
  • ヘッド姿勢が大きく変化しにくい
  • ボールとの接触位置が揃いやすい

という状態を作れます。

つまり、バンスは単にダフリを防ぐのではありません。

フェース下部の適正な打点を、ボールへ通すためにヘッドを支持する

機能を持っていると考えられます。

この見方をすると、フェースを開くこととバンスを使うことは、別々の技術ではありません。

フェースを開くことでバンスの働き方を変え、バンスによってクラブの通過高さを調整し、ボールとのコンタクトポイントを合わせる。

一連の操作として理解できます。

フェースを開くのは、ロフトを増やすためなのか

ここまで考えると、従来の説明に一つの問いが生まれます。

フェースを開くからロフトが増え、ボールが高く上がる。

これは結果として正しい。

しかし、プレーヤーが本当に行っていることは、

ロフトを増やすこと

なのでしょうか。

それとも、

ライに対して、クラブヘッドの通過高さ、バンスの接地、フェース下部の打点を調整すること

なのでしょうか。

もし後者だとすれば、ロフトの増加は主目的ではありません。

適正なコンタクト位置を作るためにフェースを開いた結果、ロフトも増えているという順序になります。

これは、見えているクラブ側の変化と、見えていないボール側の目的を入れ替えて考えることです。

見えているのは、フェースが開いたことです。

見えていないのは、その操作によって、ボールとクラブの接触位置が整えられたことです。

フェースを開けば、スピンが増えるのか

一般には、フェースを開くとロフトが増え、スピンが増えると説明されます。

しかし、実際にはフェースを開けば、必ずスピンが増えるわけではありません。

開きすぎれば、

  • ボールがフェース上を滑る
  • 接触圧力が不足する
  • ボールスピードが落ちる
  • 打点が高くなる
  • 芝や水分が介在する

ことで、スピンが減ることもあります。

したがって、スピンを増やすのはフェース開度そのものではありません。

フェースを開くことで、

  • 適正な低い打点へ合わせる
  • バンスでヘッドを支持する
  • ボールとフェースをクリーンに接触させる
  • カバーへ十分な圧力とせん断を与える

という条件が作られたとき、スピン効率が高まると考える方が自然です。

つまり、

フェースを開くことがスピンを作るのではない。
フェースを開くことで、スピンを作りやすい接触状態を作っている。

ということです。

ロフト中心の説明から、コンタクト中心の説明へ

フェースを開くという動作をクラブ側から見れば、

  • フェース向きが変わる
  • ロフトが増える
  • バンスが増える

と説明できます。

しかし、ボール側から見れば、

  • コンタクトポイントが移る
  • クラブの通過高さが変わる
  • 接触圧力が変わる
  • カバーの変形方向が変わる
  • 力積の作用位置が変わる

という現象が起きています。

どちらも同じインパクトを見ています。

ただし、見ている中心が違います。

クラブ中心に見れば、フェースを開いてロフトを増やした。

ボール中心に見れば、ライに対して適正な接触位置を作った。

どちらがプレーヤーの目的をより正確に表しているのでしょうか。

見えるフェース開度と、見えない接触の調整

現在の弾道計測器では、フェースが何度開いていたかを測ることができます。

しかし、その開度によって、

  • リーディングエッジが何ミリ上がったか
  • ソールのどこが地面へ接触したか
  • ヘッドがどれだけ沈み込んだか
  • ボールのどこへ接触したか
  • フェースのどの高さでボールを受けたか

までを、常に正確に表示できるわけではありません。

見えているのはフェース開度です。

見えていないのは、その開度を使って何を調整したかです。

しかし、ライ、バンス、打点、ボールの変形を合わせて考えれば、フェースを開く目的が少し違って見えてきます。

フェースを開くのは、単に球を高く上げるためではない。

ボールの高さに対して、クラブのコンタクト位置を合わせるため

ではないでしょうか。

次回は、その接触によってスピンがどのように生まれるのかを考えます。

スピンは、本当に摩擦だけで説明できるのでしょうか。

フェースとボールが接触する短い時間の中で、ボールカバーはどのように変形し、どの方向の力積を受け取り、離脱後の回転へ変えているのでしょうか。

天晴!PING GOLF JAPAN

普段は、

「それ、何を言っているんですか?」

と、メーカーのマーケティングに突っ込むことが多い店長です。

しかし今回は、褒めなくてはなりません。

昨年末、i240の日本仕様をコースで試打しました。

打った瞬間に感じたのは、

これは、かなり完成度の高いアイアンだぞ。

ということでした。

ヘッドはコンパクトで、構えた姿は競技志向。

それでいて、必要以上に難しくありません。

ボールはしっかり上がり、飛距離も出る。

そして何より、グリーン上でボールを止められる。

ところが、価格の影響もあるのでしょうか。

実際のマーケットからは、それほど大きな反応を感じません。

MYGOLFSPYの総合評価では目立たない

しかし、ここで少し評価軸を変えてみます。

競技ゴルファーがアイアンに本当に求めるものは何でしょうか。

単純な飛距離でしょうか。

それとも、ヘッドの見た目や打感でしょうか。

もちろん、それらも重要です。

しかし、競技でスコアを作るために欠かせないのは、

狙った距離を打ち、グリーン上でボールを止めること

です。

つまり、ストッピングパワーです。


ストッピングパワーで見ると、i240は別格

MYGOLFSPYのテストデータから、

  • スピン量
  • 最高到達点
  • 落下角
  • キャリーとトータル飛距離の差

を総合して見ると、ストッピング性能の上位は次のようになります。

  1. PING i240
  2. Takomo 201T MKII
  3. Titleist T100
  4. Ballistic CB
  5. Wilson Staff Model CB

i240の7番アイアンは、

項目 テスト結果
ロフト角 33°
キャリー 156.77yd
スピン量 6,170rpm
最高到達点 29.1m
落下角 46.98°
推定ラン 4.96yd

という結果です。

スピン量、最高到達点、落下角、着弾後のラン。

すべてが、今回のテストでトップクラスです。

しかもこれは、単にマッスルバックのようにロフトを寝かせ、スピンを増やした結果ではありません。

33°の7番アイアンでありながら、マッスルバックを上回るほどのストッピング性能を出しています。

PINGが公式に説明しているとおり、i240は低重心化によって高い打ち出しを生み、MOIを高めながら、グリーン上でボールを止めることを狙った設計です。

ただし、このテストはUS仕様

ここで重要なのは、MYGOLFSPYがテストしたのはUS仕様だということです。

US仕様のi240は、7番アイアンが標準で33°。

一方、日本仕様の標準ロフトは31.5°です。

仕様 7番アイアンのロフト
US標準仕様 33°
日本標準仕様 31.5°

USでは31.5°がPower Specとして用意されていますが、日本では、その31.5°が標準仕様として採用されています。

つまり日本仕様は、US仕様より1.5°ロフトを立てることで、飛距離性能を加えた仕様になっています。


日本仕様ではどうなるのか

もちろん、ロフトを33°から31.5°へ変更した場合の正確な数値は、同じテスター、同じボール、同じ打点条件で再計測しなければ分かりません。

それでも一般的な弾道変化から推定すると、おおよそ次のようになります。

項目 33°実測値 日本仕様31.5°の推定
ボール初速 50.4m/s 50.6~50.9m/s
キャリー 156.77yd 160~162yd
トータル 161.73yd 166~168yd
打ち出し角 20.43° 19.2~19.7°
スピン量 6,170rpm 5,700~5,950rpm
最高到達点 29.1m 28.0~28.7m
落下角 46.98° 45.6~46.3°
推定ラン 4.96yd 5.5~6.2yd

ロフトが立つため、スピン量と落下角は少し減少すると考えられます。

その代わり、

  • ボール初速が上がる
  • キャリーが約3~5yd伸びる
  • トータル飛距離も伸びる

という変化が見込まれます。

重要なのは、ロフトを1.5°立てても、推定落下角は45°を超え、スピン量も5,700~5,950rpm程度を維持できる可能性が高いことです。

つまり、日本仕様のi240は、

飛距離が出るだけのストロングロフトアイアンではありません。

飛距離を増やしながら、

  • 十分な高さが出る
  • 十分なスピンが入る
  • 十分な落下角が確保される
  • グリーン上でボールを止められる

という、競技アイアンとして必要な条件を残していると考えられます。


「飛ぶ」ではなく、「飛んで止まる」

多くの日本仕様アイアンは、ロフトを立てることで飛距離を作ります。

しかし、その結果として、

  • 打ち出しが低くなる
  • スピンが減る
  • 落下角が浅くなる
  • グリーンで止まりにくくなる

という問題が生じることがあります。

i240の日本仕様が面白いのは、元となるUS仕様に、十分すぎるほどの高さとスピン、落下角があることです。

その余裕を使ってロフトを1.5°立てる。

すると、ストッピング性能を完全には失わずに、日本のゴルファーが求める飛距離を加えることができます。

言い換えれば、

US仕様の余裕を、日本仕様では飛距離へ変換した

ということです。

31.5°という数字だけを見れば、競技志向アイアンとしては強めのロフトです。

しかし、低重心設計によって高さを出し、スピンと落下角を残すことができれば、単なるロフト商法ではありません。

飛んで、上がって、止まる。

店長がコースで感じた完成度の高さは、このバランスから生まれていたのだと思います。


今回は、PING GOLF JAPANのマーケティングの勝利

普段の店長なら、

「日本仕様だけロフトを立てて、飛距離を大きく見せただけでは?」

と疑うところです。

しかし、今回のi240は少し違います。

US仕様には、もともと圧倒的なストッピング性能があります。

その性能を土台として、日本仕様ではロフトを31.5°に設定。

ストッピング性能に多少の余裕を残しながら、飛距離を加えています。

これは、

止まる性能を削って飛距離を作ったのではなく、止まる性能の余裕を飛距離へ振り分けた

と見ることができます。

日本のゴルファーが求める飛距離。

競技ゴルファーが求める高さ、スピン、落下角。

その両方を狙った仕様です。

……認めたくはありませんが。

今回は、

PING GOLF JAPANのマーケティングの勝利です。

うぐぐぐぅ……。負けた!

コースでは3番アイアンも試打しています。

ロフトは19度、昔でいうと2番アイアンです。流石に立って見えますが、打ってみると高さが出て、ちゃんと飛んでいくんですよ。

見えないものを見る 第1話 コペルニクスは、なぜ中心を入れ替えたのか

コペルニクス的発想の転換とは、既存の理論に新しい説明を付け加えることではありません。

自分が立っている場所そのものを、別の位置から見直すことです。

かつて人類は、地球を中心に太陽や星が動いていると考えていました。

なぜ、人類は間違えたのでしょうか。

当時の人々の観察力が低かったからではありません。

地球が動いていることが、見えなかったからです。

地面に立っていても、地球が自転している感覚はありません。

一方、太陽は東から昇り、西へ沈んで見えます。

夜空の星も、時間とともに空を移動していきます。

見えているものだけを素直に受け取れば、空が動き、地球は止まっていると考える方が自然です。

しかし、コペルニクスは、見えている天体の動きに説明を付け足したのではありません。

地球を中心から外し、地球そのものが動いていると考えました。

現象を見る中心を入れ替えたのです。

人間は、網膜に映った画像を、そのまま脳内へ転写しているわけではありません。

目に入った情報を、知識や経験、身体感覚と組み合わせて、意味のある世界へ再構成しています。

その証拠に、現代人が夜空の星や太陽の動きを見ても、それをそのまま天体が地球の周囲を回っている証拠だとは考えません。

網膜に映る景色は、昔の人々とほとんど変わらないはずです。

変わったのは、画像を処理するための知識です。 “見えないものを見る 第1話 コペルニクスは、なぜ中心を入れ替えたのか” の続きを読む

G LEはどう変わったか? パター編

ドライバー、フェアウェイウッド、ハイブリッド、アイアンに続いて、今回はパターです。

G LE 3からG LE 4への変化を見ると、パターはラインアップが4モデルから3モデルへ整理されました。

まず、新旧のラインアップを比較してみます。

ストロークタイプ G LE 3 G LE 4
セミアーク ANSER ANSER 2D
アーク LOUISE LOUISE
ストレート FETCH/KETSCH G OSLO

G LE 3では4モデルが用意されていましたが、G LE 4では、

ANSER 2D
LOUISE
OSLO

の3モデルになりました。

モデル数は減りましたが、

セミアーク
アーク
ストレート

という3種類のストロークタイプを、きちんとカバーしています。

つまり、単に選択肢を減らしたというより、役割の重複を整理し、それぞれのストロークタイプに合うモデルを分かりやすくしたと考える方がよいでしょう。

ANSERからANSER 2Dへ

G LE 3では、ブレード型のANSERが採用されていました。

G LE 4では、これがANSER 2Dに変わりました。

ANSER 2Dは、通常のANSERよりもヘッドの奥行きが大きい、ワイドブレード形状です。

ブレード型の操作性を残しながら、ヘッドの奥行きを大きくすることで、打点がズレた時のブレを抑えています。

G LE 3のANSERも、周辺重量配分によって操作性と寛容性を両立したモデルでした。

しかし、G LE 4ではANSER 2Dへ変更することで、構えた時の安心感とミスヒットへの強さを、さらに高めています。

見た目はブレード型。
しかし、性能はミッドマレットに近い。

これがANSER 2Dの特徴です。

パターでは、ブレード型を好むゴルファーが多くいます。

構えやすい。
フェースの向きを感じやすい。
距離感を出しやすい。
操作しやすい。

その一方で、一般的なブレード型は、大型マレットよりもミスヒットに弱いという問題があります。

ANSER 2Dは、その弱点を奥行きのあるヘッド形状で補っています。

G LE 3のANSERが「感性で打てるピン型」だったとすれば、G LE 4のANSER 2Dは、

ブレード型の感性を残しながら、さらに安心感を増したパター

です。

ヘッド重量も5g重くなりました。

これにより、ストローク中にヘッドの位置を感じやすくなり、小さなストロークでもテンポを安定させやすくなっています。

LOUISEは継続

LOUISEは、G LE 3からG LE 4へ継続された唯一のモデルです。

丸みを帯びたミッドマレット形状で、ショートスラントネックを採用しています。

ストロークタイプはアークです。

フェースを開閉しながらストロークするゴルファーに合わせやすいモデルです。

LOUISEが継続されたことからも、この形状が高く評価されていたことが分かります。

構えた時に大きすぎない。
ブレード型より安心感がある。
大型マレットほど動かしにくくない。
フェースの開閉も感じやすい。

この中間的な位置にあるのがLOUISEです。

G LE 4のLOUISEでは、軽量のアルミボディと高比重のステンレスプレートを組み合わせた複合素材構造が採用されています。

軽い素材と重い素材を組み合わせることで、重量をヘッドの低い位置や外周へ配分できます。

これにより、重心を低くしながら慣性モーメントを高めています。

見た目は操作しやすいミッドマレットですが、内部構造ではミスヒットへの強さも高められています。

ヘッド重量はこちらも5g重くなりました。

軽量クラブを使うゴルファーであっても、パターまで軽くしすぎると、ストローク中にヘッドの位置が分かりにくくなることがあります。

パターには、飛距離を出すための軽さは必要ありません。

むしろ、適度なヘッド重量によって、

ヘッドの位置が分かる。
ストロークのテンポが安定する。
小さな動きでもボールへ力を伝えられる。

ということが重要です。

G LE 4では、ドライバーやアイアンは軽く振りやすくしながら、パターには適度なヘッド重量を持たせています。

ここは、クラブごとの役割を考えた設計だと思います。

FETCHとKETSCH GをOSLOへ集約

G LE 4では、FETCHとKETSCH Gの2モデルがなくなり、ストレートタイプのモデルとしてOSLOが採用されました。

OSLOは、安心感のある大型マレットです。

フェースバランス設計で、フェースの開閉を抑えたストレートタイプのストロークに対応します。

ヘッド中央には太い白いアライメントラインが入り、目標に対してフェースを合わせやすくなっています。

G LE 4のOSLOは、

構えやすい。
目標へ合わせやすい。
ミスヒットに強い。
直進性が高い。

という、ストレートタイプに必要な性能へ集中したモデルだと考えられます。

ヘッド重量は360gです。

これはG LE 3のKETSCH Gと同じ重量です。

大型マレットとして十分な重量があり、ストローク中のヘッド挙動を安定させやすくなっています。

フェースインサートの変更

2層PEBAXから1層PEBAXへ

フェースインサートも変更されました。

G LE 3では、硬さの異なるPEBAXを組み合わせた2層構造のインサートが採用されていました。

G LE 4では、新しい1層構造のPEBAXインサートへ変更されています。

このインサートは、柔らかい打感を持ちながら、必要な反発性も確保しています。

G LE 3では、柔らかさと反発性を、硬さの異なる素材を組み合わせることで作り分けていました。

G LE 4では、1層の素材でその両方を成立させようとしています。

構造をシンプルにしながら、

柔らかく感じる。
しかし、ボールはしっかり転がる。
距離感がぼやけにくい。

という性能を狙っています。

パターは、打感が柔らかければよいとは限りません。

柔らかすぎると、インパクトの強さが手に伝わりにくくなり、距離感がぼやけることがあります。

反対に、硬すぎるとボールが弾き出される感覚が強くなり、短い距離でタッチを合わせにくくなることがあります。

G LE 4の1層PEBAXインサートは、柔らかさと転がりのバランスを狙った変更だと考えられます。

複合素材による低重心化

ANSER 2Dは、17-4ステンレススチールを主体としたヘッドです。

一方、LOUISEとOSLOは、軽量のアルミボディと高比重のステンレスプレートを組み合わせています。

軽い素材と重い素材を組み合わせることで、重量をヘッドの低い位置や外周へ配置できます。

その結果、

重心が低くなる。
慣性モーメントが高くなる。
打点がズレてもフェースがブレにくい。
ボールの打ち出しと転がりが安定する。

という効果が期待できます。

ドライバーやアイアンでは、低重心化によってボールを上げやすくしていました。

一方、パターで低重心化する目的は、ボールを高く上げることではありません。

インパクト時のヘッド挙動を安定させ、打ち出し方向と転がりをそろえることです。

G LE 4では、パターでも「ミスを減らし、結果をそろえる」という考え方が採用されています。

グリップの変更

G LE 4では、PP58 TOUR M LILACグリップが標準装着されています。

グリップに関しては、フルモデルチェンジです。

適度な太さを持つピストル型グリップで、レディスモデルに合わせて、よりソフトな素材が使われています。

グリップが細すぎると、手首や指先の動きが増えやすくなります。

反対に、太すぎると手の感覚が薄れ、フェースの向きを感じにくくなることがあります。

PP58 TOUR Mは、

余計な手首の動きを抑える。
フェースの向きは感じ取れる。
強く握りすぎにくい。

というバランスを狙ったグリップだと思います。

単なるカラー変更ではなく、手とパターをつなぐ重要な機能部品として見なければなりません。

まとめ

G LE 3からG LE 4へのパターの変化を整理すると、

ANSERから、より安心感のあるANSER 2Dへ。
LOUISEは、複合素材構造を採用して継続。
FETCHとKETSCH Gを、直進性の高いOSLOへ整理。
2層構造のPEBAXから、柔らかさと反発性を両立した1層PEBAXへ。
ANSER 2DとLOUISEは、ヘッド重量を5g増加。
グリップはPP59からPP58 TOUR Mへ変更。

という進化です。

モデル数を減らしながら、

操作性。
寛容性。
アライメント。
転がり。
ストロークタイプ。

この5つを、より分かりやすく整理したのがG LE 4パターです。

G LE 3は、4つのモデルから好みの形状を選ぶパターシリーズでした。

G LE 4は、3つのストロークタイプを基準に、自分に合う性能を選びやすくしたパターシリーズです。

G LE 4パターの進化は、モデルを増やすことではなく、必要な選択肢を整理し、それぞれの役割を明確にしたことにあると思います。

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G LEはどう変わったか? 第4話 アイアン編

ドライバー、フェアウェイウッド、ハイブリッドに続いて、今回はアイアンです。

G LE 3からG LE 4への変化を見ると、アイアンはフェアウェイウッドやハイブリッドほど、スペック表上の違いは大きくありません。

まず、新旧のロフトを比較してみます。

番手 G LE 3 G LE 4
6I 25° 25°
7I 29.5° 29.5°
8I 35° 35°
9I 41° 41°
PW 46° 46°
UW 52° 52°
SW 56° 56°

番手構成もロフトも、基本的にはG LE 3から変わっていません。

これは意外に感じるかもしれません。

G LE 4は、アイアン単体ではなく、ハイブリッドと組み合わせたコンボ・ソリューションとして設計されています。 “G LEはどう変わったか? 第4話 アイアン編” の続きを読む

G LEはどう変わったか? 第2話 フェアウェイウッド編

ドライバー編に続いて、今回はフェアウェイウッドです。

G LE 3からG LE 4への変化を見ると、フェアウェイウッドはドライバー以上に分かりやすく変わっています。

その理由は、単純に新しいテクノロジーが入っただけではなく、番手ごとのロフト構成そのものが大きく変わっているからです。 “G LEはどう変わったか? 第2話 フェアウェイウッド編” の続きを読む

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GLEはどう変わったのか? 第1話 ドライバー

今春、GLE3に変わってGLE4が発表されました。今年の春はいろいろな記事が多くなってしまって、ようやくGLE4の記事を書くことが出来ました。

余りかのサイト:https://ping.com/en-us/golf-clubs/womens

日本のサイト:https://clubping.jp/product/product2026_gle4.html

そしてより詳しく知るために

を参考により詳しく掘り下げていこうと思います。

先ずはドライバーからです。

“GLEはどう変わったのか? 第1話 ドライバー” の続きを読む