パターはフェースを感じる道具である Episode 77: Putter Torque featuring Dr. Erik Henrikson 第7話

ALLY BLUE ONSETは、マレットのやさしさとブレードの感覚をつなぐ

PING SCOTTSDALE TEC ALLY BLUE ONSET は、日米で驚異的なパッティング成績を生んでいます。

その理由を読み解く鍵として、PINGのマーティ・ジャートソンが紹介しているのが、Episode 77: Putter Torque featuring Dr. Erik Henrikson です。

このシリーズでは、このエピソードをもとに、パターの重心、トルク、視覚、触覚、フェース向きの再現性を整理していきます。

前回は、引っかける人、押し出す人。パター選びはミスの方向から考えるという話をしました。

パター選びは、ストロークタイプだけでは決まりません。

ストレートに動かすのか。
軽いアークなのか。
強いアークなのか。

もちろん、それは重要です。

しかし、それだけでは足りません。

右へ押し出すのか。
左へ引っかけるのか。
インパクトでフェースが開いているのか。
閉じすぎているのか。
構えた時点で向きがズレているのか。
ストローク中にフェースが戻り切らないのか。

ここまで見て、パターを合わせる必要があります。

なぜなら、最終的にスコアに直結するのは、ストロークの見た目ではなく、ボールがどこへ出るかだからです。

今回は、いよいよこのシリーズの入口に戻ります。

SCOTTSDALE TEC ALLY BLUE ONSET です。


ALLY BLUE ONSETを見たとき、まず目に入るのは独特の形です。

白いヘッド。
大きなマレット形状。
フェース全体が見えやすい構え。
ホーゼルが視界を邪魔しにくいオンセット構造。
そして、EYE Qアライメント。

見た目だけでも、かなり個性的なパターです。

しかし、このパターを単に「白いマレット」や「変わったオンセットパター」として見てしまうと、本質を見落とします。

Episode 77で語られている内容から考えると、ALLY BLUE ONSETの本質は、そこではありません。

このパターの面白さは、

マレットのやさしさを持ちながら、ブレードのようなフェース感覚を残していること

にあります。

つまり、単なる大型マレットではありません。

見える。
感じる。
合わせる。
再現する。

この流れを、現代的な形でまとめたパターだと考えるべきです。


まず、大型マレットとしてのやさしさがあります。

マレット型のメリットは、一般的には分かりやすいです。

ヘッドが大きい。
構えたときに安心感がある。
重心が深い。
慣性モーメントを高めやすい。
芯を外したときにヘッドがブレにくい。
短いパットでフェースの向きが安定しやすい。

パターでミスヒットに強いことは、当然メリットです。

パッティングでは、わずかな打点のズレでも転がりや距離感が変わります。
芯を外したときに、ボールスピードが落ちすぎる。
フェースがブレる。
距離が合わない。
狙ったラインに乗らない。

こうした問題を減らすうえで、大型マレットの許容性は大きな武器になります。

しかし、ここで問題もあります。

大型マレットは、やさしい一方で、手の中のフェース感覚が薄くなることがあります。

ヘッドが大きい。
重心が深い。
慣性モーメントが高い。
フェースが動きにくい。

これは安心感につながります。

しかし人によっては、ヘッドがどこにあるのか、フェースがどこを向いているのか、手の中で感じにくくなることがあります。

このシリーズで繰り返してきたように、パターはただ「動かない」ことが正解ではありません。

プレーヤーがフェースを感じられることが重要です。


一方、ブレード型には別の魅力があります。

ブレード型は、ヘッドが小さく、重心も比較的浅く、フェースの向きを手の中で感じやすい。

自分でフェースを開く。
自分でフェースを戻す。
ヘッドの重さや向きが手に伝わる。
距離感を出しやすい。
操作している感覚がある。

こうした理由で、今でもブレードを好むプレーヤーは多くいます。

特にフェースローテーションを使うプレーヤーにとって、ブレードの感覚は非常に大切です。

しかし、ブレードにはミスヒットへの許容性という点で限界があります。

芯を外したときにブレやすい。
打点ズレが距離や方向に出やすい。
短いパットでわずかなフェース角のズレが結果に出やすい。

つまり、ブレードには感覚の良さがある。
マレットには許容性の高さがある。

多くのゴルファーは、この間で迷います。

やさしさを取るのか。
感覚を取るのか。

この問いに対して、ALLY BLUE ONSETはかなり面白い答えを出しているように見えます。


Episode 77では、ALLY BLUE ONSETについて、非常に重要な説明がされています。

このパターは、オンセット構造によってシャフト軸を重心に近づけています。

完全に重心と一致させているわけではありません。
ゼロトルクにしているわけでもありません。
しかし、通常のマレットよりも、手の中の感覚がブレードに近づくように設計されています。

マーティ・ジャートソンとエリック・ヘンリクソンの会話では、このモデルは、マレットでありながら、手の中ではAnserやB60に近い感覚を持つという趣旨の話が出てきます。

これは非常に重要です。

つまり、ALLY BLUE ONSETは、

マレットの形をしたブレード感覚のパター

と見ることもできます。

もちろん、完全にブレードと同じではありません。
ヘッドサイズも重心深度も慣性モーメントも違います。

しかし、手の中で感じるフェースの情報を、できるだけ消さないようにしている。

ここが、このパターの核心です。


オンセット構造の意味も、ここで考える必要があります。

一般的なオフセットパターでは、シャフトやホーゼルがフェースより前に出るように見えます。

これは多くのパターで見慣れた形です。
Anser型のプラマーズネックも、オフセットによってフェースの見え方や重心の引かれ方を作っています。

一方、ALLY BLUE ONSETでは、フェース全体が非常に見えやすくなっています。

ホーゼルが視覚的に邪魔になりにくい。
トップレールが見える。
フェース面が見える。
ボールに対して、どこを向いているのかが分かりやすい。

これは視覚的なメリットです。

しかし、オンセットの意味は見た目だけではありません。

シャフト軸と重心の関係が変わることで、ストローク中に手に入ってくる情報も変わります。

つまりオンセットは、

見え方の設計
であり、同時に
感じ方の設計
でもあります。

ここを理解すると、ALLY BLUE ONSETは単なる奇抜な形ではなくなります。


さらに、Episode 77では、オンセットが左へのミスを抑える選択肢になり得ることも語られています。

ここは、前回の「ミスの方向を見る」という話につながります。

フェースバランス系のマレットを使っている。
構えやすい。
安心感もある。
しかし、短いパットで左に引っかける。
フェースが被って届く。
ボールが左へ出る。

こういう人がいます。

では、ヒールシャフトのパターにすればよいのか。

それも一つの方法です。

しかし、ヒールシャフトにすると、ストローク中のフェース感覚が大きく変わることがあります。
トルクの感じ方も変わる。
フェースローテーションの感覚も変わる。
マレットの安心感も減る場合があります。

そこで、オンセットという選択肢が出てきます。

マレットの安心感は残す。
フェース全体の見やすさも残す。
しかし、デリバリーとしては左へのミスを抑える方向に働く可能性がある。

つまり、ALLY BLUE ONSETは、単に「マレットが好きな人向け」ではありません。

フェースバランスのマレットでは左に行く。
でもブレードや強いトゥハングには行きたくない。
その中間にある新しい選択肢。

こう考えると、このパターの位置づけがかなり明確になります。


ここで、日米での結果に戻ります。

日本では、SCOTTSDALE TEC ALLY BLUE ONSETを使用した鈴木愛選手のパッティングが注目されました。

アメリカでは、Wyndham Clarkがこのパターで驚異的な Strokes Gained: Putting を記録しました。

もちろん、プロの結果をそのまま一般ゴルファーに当てはめることはできません。

しかし、トッププロほど、パターに対する要求は厳しい。

構えたときに、少しでも違和感があれば使わない。
フェースがわずかに違う方向を向けば結果に出る。
1メートル、2メートルのパットで、その差がスコアに出る。
試合では、その1打が勝敗を分ける。

そのレベルで結果が出たということは、このパターが単に目立つだけのモデルではないことを示しています。

少なくとも、使った選手にとって、

構えやすい。
フェースを合わせやすい。
ストローク中に感覚がある。
インパクトでフェースを再現しやすい。
ミスの方向を抑えやすい。

こうした要素がうまく噛み合った可能性があります。


このパターをお客様に説明するときも、単に「白くて見やすいですよ」だけでは足りません。

もちろん、それは事実です。

白いヘッドは、グリーン上で輪郭が出やすい。
黒いアライメントとのコントラストも強い。
EYE Qアライメントによって、視線の置き場を作りやすい。

しかし、それだけでは、このパターの本質には届きません。

説明すべきなのは、次の部分です。

マレットのやさしさを持ちながら、フェースを感じやすい。
オンセットによって、フェース全体が見えやすい。
ブレードに近い感覚を残しながら、マレットの許容性を持っている。
左へのミスを抑える選択肢になる可能性がある。
視覚と触覚の両方から、フェース向きの再現性を助ける。

ここまで説明すると、ALLY BLUE ONSETの意味が伝わります。


パター選びでよくあるのは、こういう会話です。

「マレットはやさしいですよね」
「ブレードは感覚がいいですよね」

これは間違いではありません。

しかし、もう一歩進めたいところです。

本当に見るべきなのは、

その人がどのようにフェースを感じているか
その人がどちらへミスしているか
その人に必要な抵抗はどれくらいか
その人が構えたときに、フェースをスクエアに向けられるか
インパクトでフェースがどちらへ届くか

です。

ALLY BLUE ONSETは、この問いに対して、非常に現代的な答えを持っています。

マレットの許容性。
ブレード的な感覚。
オンセットによる見やすさ。
左へのミスを抑える可能性。
EYE Qアライメントによる視線の安定。

これらをひとつのヘッドにまとめようとしている。

だから、日米で結果が出ていることにも意味があります。


今回の結論です。

ALLY BLUE ONSETは、マレットのやさしさとブレードの感覚をつなぐパターです。

大型マレットの安心感があります。
高い許容性があります。
フェース全体が見えやすい構えがあります。
視線を安定させるアライメントがあります。

しかし、それだけではありません。

手の中でフェースを感じるための情報を残している。
重心とシャフト軸の関係によって、マレットでありながらブレードに近い感覚を持たせている。
オンセットによって、ミスの方向に対する新しいフィッティングの選択肢を作っている。

つまり、これは単なる新形状ではありません。

フェースを感じ、フェースを合わせ、フェースを再現するための現代的なパター設計です。

SCOTTSDALE TEC ALLY BLUE ONSETが示しているのは、パター選びの新しい見方です。

やさしさか、感覚か。

その二択ではなく、

やさしさの中に、フェースを感じる情報を残す。

ここに、このパターの価値があります。

次回は、このシリーズの最終話です。

パター選びは、好みの問題ではありません。
スコアを守るためのフィッティングです。

最終話では、
パター選びは、スコアメイクである
というテーマで、シリーズ全体をまとめます。

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パターはフェースを感じる道具である Episode 77: Putter Torque featuring Dr. Erik Henrikson 第6話

引っかける人、押し出す人。パター選びはミスの方向から考える

PING SCOTTSDALE TEC ALLY BLUE ONSET は、日米で驚異的なパッティング成績を生んでいます。

その理由を読み解く鍵として、PINGのマーティ・ジャートソンが紹介しているのが、Episode 77: Putter Torque featuring Dr. Erik Henrikson です。

このシリーズでは、このエピソードをもとに、パターの重心、トルク、視覚、触覚、フェース向きの再現性を整理していきます。

前回は、PINGパターの原点は重心を引くことにあったという話をしました。

PING 1Aでは、ヒール・トゥ重量配分によってミスヒットへの許容性を高めました。

Anserでは、プラマーズネックと重心の関係によって、フェースの向きを感じやすくしました。

そして現代のSCOTTSDALE TEC ALLY BLUE ONSETでは、マレットのやさしさを持ちながら、ブレードに近いフェース感覚を残そうとしている。

形は変わっても、PINGが見ているものは変わりません。

どうすれば、ゴルファーはフェースを感じられるのか。
どうすれば、インパクトでフェースを再現できるのか。
どうすれば、パターがスコアメイクを助ける道具になるのか。

今回は、より実用的なフィッティングの話に入ります。

テーマは、
引っかける人、押し出す人。パター選びはミスの方向から考える
です。


パター選びでは、よく「ストロークタイプ」が話題になります。

ストレートバック・ストレートスルー。
軽いアーク。
強いアーク。
フェースローテーションが少ない。
フェースを大きく開閉する。

もちろん、これは非常に重要です。

PINGも、iPINGなどのフィッティング思想の中で、ストロークタイプを重視してきました。

その人がどのようにパターを動かしているのか。
フェースがどれくらい開閉しているのか。
ヘッドがどのような軌道で動いているのか。

これらを見ることは、パター選びの基本です。 “パターはフェースを感じる道具である Episode 77: Putter Torque featuring Dr. Erik Henrikson 第6話” の続きを読む

パターはフェースを感じる道具である Episode 77: Putter Torque featuring Dr. Erik Henrikson 第5話

PINGパターの原点は「重心を引く」ことにあった

PING SCOTTSDALE TEC ALLY BLUE ONSET は、日米で驚異的なパッティング成績を生んでいます。

その理由を読み解く鍵として、PINGのマーティ・ジャートソンが紹介しているのが、Episode 77: Putter Torque featuring Dr. Erik Henrikson です。

このシリーズでは、このエピソードをもとに、パターの重心、トルク、視覚、触覚、フェース向きの再現性を整理していきます。

前回は、抵抗があるから、精密に動かせるという話をしました。

パターは軽ければよいわけではありません。
トルクが少なければよいわけでもありません。
何も感じないことが、常に良いわけでもありません。

適度な抵抗があるから、ヘッドの位置が分かる。
適度な重さがあるから、フェースの向きが分かる。
適度なトルクがあるから、重心の方向が分かる。

その情報があるから、インパクトでフェースを狙った方向に戻す手がかりになります。

今回は、PINGの歴史に戻ります。

なぜKarsten Solheimは、重心を「押す」のではなく「引く」と考えたのか。
そして、なぜプラマーズネックが生まれたのか。

ここには、PINGパターの原点があります。 “パターはフェースを感じる道具である Episode 77: Putter Torque featuring Dr. Erik Henrikson 第5話” の続きを読む

パターはフェースを感じる道具である Episode 77: Putter Torque featuring Dr. Erik Henrikson 第4話

抵抗があるから、精密に動かせる

PING SCOTTSDALE TEC ALLY BLUE ONSET は、日米で驚異的なパッティング成績を生んでいます。

その理由を読み解く鍵として、PINGのマーティ・ジャートソンが紹介しているのが、Episode 77: Putter Torque featuring Dr. Erik Henrikson です。

このシリーズでは、このエピソードをもとに、パターの重心、トルク、視覚、触覚、フェース向きの再現性を整理していきます。

前回は、ゼロトルクだけが正解ではないという話をしました。

トルクは、フェースを乱すだけのものではありません。
手の中にフェースの向きや重心の位置を知らせる、感覚のシグナルになることがあります。

では、なぜそのようなシグナルが必要なのでしょうか。

今回のテーマは、ここです。

抵抗があるから、精密に動かせる。 “パターはフェースを感じる道具である Episode 77: Putter Torque featuring Dr. Erik Henrikson 第4話” の続きを読む

パターはフェースを感じる道具である Episode 77: Putter Torque featuring Dr. Erik Henrikson 第3話

ゼロトルクだけが正解ではない

PING SCOTTSDALE TEC ALLY BLUE ONSET は、日米で驚異的なパッティング成績を生んでいます。

その理由を読み解く鍵として、PINGのマーティ・ジャートソンが紹介しているのが、Episode 77: Putter Torque featuring Dr. Erik Henrikson です。

このシリーズでは、このエピソードをもとに、パターの重心、トルク、視覚、触覚、フェース向きの再現性を整理していきます。

第1話では、パターは「目」だけで打っているわけではない、という話をしました。

第2話では、パットのスタート方向は、ほぼフェース角で決まる、という話をしました。

では、そのフェース角をどうやって感じ、どうやって再現するのか。

ここで出てくるのが、今回のテーマです。

トルクです。

最近、パターの世界では「ゼロトルク」や「低トルク」という言葉をよく聞くようになりました。

もちろん、それはひとつの考え方です。
フェースが勝手に開閉しにくい。
ヘッドの余計な動きが少ない。
手で操作しなくても、フェースが安定しやすい。

そういうパターが合う人もいます。

しかし、PING Proving Grounds Podcast Episode 77を聞くと、PINGの考え方はもう少し深いところにあることが分かります。

PINGは、トルクを単純に「消すべき悪いもの」とは見ていません。

むしろ、トルクはゴルファーにフェースの向きを知らせる感覚の信号になることがある、と考えています。 “パターはフェースを感じる道具である Episode 77: Putter Torque featuring Dr. Erik Henrikson 第3話” の続きを読む

パターはフェースを感じる道具である Episode 77: Putter Torque featuring Dr. Erik Henrikson 第2話

パットのスタート方向は、ほぼフェースで決まる

PING SCOTTSDALE TEC ALLY BLUE ONSET は、日米で驚異的なパッティング成績を生んでいます。

その理由を読み解く鍵として、PINGのマーティ・ジャートソンが紹介しているのが、Episode 77: Putter Torque featuring Dr. Erik Henrikson です。

このシリーズでは、このエピソードをもとに、パターの重心、トルク、視覚、触覚、フェース向きの再現性を整理していきます。

第1話では、パターは「目」だけで打っているわけではない、という話をしました。

構えた瞬間は、目が大きな役割を果たします。
しかし、ストロークが始まったあとは、手の中の感覚が非常に重要になります。

ヘッドの重さ。
トゥ側が落ちる感じ。
フェースが少し開こうとする気配。
重心がどちらへ動こうとしているか。

こうした情報を、ゴルファーは無意識に感じ取りながらストロークしています。

では、なぜそこまでフェースの向きを感じることが重要なのでしょうか。

答えはシンプルです。

パットのスタート方向は、ほぼフェースで決まるからです。 “パターはフェースを感じる道具である Episode 77: Putter Torque featuring Dr. Erik Henrikson 第2話” の続きを読む

パターはフェースを感じる道具である Episode 77: Putter Torque featuring Dr. Erik Henrikson 第1話

パターは「目」だけで打っているわけではない

日米で驚異的な記録をたたき出しているパターがあります。

それが、PING SCOTTSDALE TEC ALLY BLUE ONSET です。

日本では最小パット数
アメリカでは、Strokes Gained: Puttingが12を超えるという驚異的な数字。

なぜ、このパターでそこまでの結果が出るのか。

その理由を考えるうえで、PINGのマーティ・ジャートソンが、非常に重要な案内をしています。

「ここで起こっている科学について興味があるなら、Episode 77: Putter Torque featuring Dr. Erik Henriksonを聴いてみてください」

つまり、このパターの結果は、単なる偶然でも、単なる話題性でもありません。

そこには、PINGが長年研究してきた、パターの重心、トルク、視覚、触覚、そしてフェース向きの再現性という科学があります。

今回から、そのEpisode 77の内容をもとに、SCOTTSDALE TEC ALLY BLUE ONSETがなぜ結果につながるのかを、詳しく分析していきます。

第1話では、まずここから始めます。

パターは「目」だけで打っているわけではない。 “パターはフェースを感じる道具である Episode 77: Putter Torque featuring Dr. Erik Henrikson 第1話” の続きを読む

第5話 弾道計測機だけでは見えにくいフィッティングの盲点

結果は見える。しかし、原因は別にある

弾道計測機は、基本的に結果を見ています。

ボールがどちらへ飛んだか。
どれくらい打ち出されたか。
どれくらい曲がったか。
スピン量はどうだったか。
クラブパスはどうだったか。
フェース向きはどうだったか。

これらは、インパクトで起きた結果を数字として見せてくれます。

もちろん、それは非常に重要です。
弾道計測機があることで、ボール初速、打ち出し角、スピン量、キャリー、クラブパス、フェース向きといった情報を、かなり正確に確認できるようになりました。

しかし、ここで注意しなければならないことがあります。

結果を見ているだけでは、原因を見誤ることがある。

たとえば、ボールが左に飛んだとします。

そこで単純に、

「ボールが左に飛ぶ=ライ角がアップライトすぎる」

と判断してしまうと、原因を見ていない可能性があります。

なぜなら、ボールが左に飛んだ原因は、ライ角そのものだけとは限らないからです。

手元が低くなりすぎていたのかもしれない。
クラブが長すぎて、手元が体から離れていたのかもしれない。
クラブが外から入っていたのかもしれない。
ロフトが立ちすぎていたのかもしれない。
フェースを手で合わせていたのかもしれない。

つまり、弾道計測機に出ている数値は、あくまで結果です。

その結果が、クラブ長によるものなのか。
ライ角によるものなのか。
手元高さによるものなのか。
それともスイングの動きによるものなのか。

ここを判断しなければ、本当のフィッティングにはなりません。


原因は、正しい動画で判断する必要がある

この原因を判断するには、弾道計測機だけでは足りません。

正しいカメラ位置で撮影されたスイング動画が必要です。

AGLメソッドでは、正しいカメラ位置から動画を取得し、身体とクラブの関係を見ます。

アドレスで手元がどこにあるのか。
クラブ長に対して、手元が体から離れていないか。
ライ角によって、手元高さが合っているのか。
腕が張っていないか。
クラブが外から入りやすい構えになっていないか。
インパクトへ向かうクラブの通り道がどうなっているのか。

これらは、弾道計測機の数値だけでは判断しきれません。

最終的には、正しい動画を見たうえで、インストラクターが判断するしかありません。

ここが非常に重要です。


クラブ長とライ角を見なければ原因を間違える

ここまで述べてきたように、クラブフィッティングでは、クラブ長とライ角の判断が絶対に必要です。

ライ角は、フェースの向きだけを変えるものではありません。

ライ角が変わると、手元の高さが変わります。
手元の高さが変わると、クラブの通り道が変わります。
クラブの通り道が変わると、ラインオブコンプレッションが保てるかどうかも変わります。

さらに、クラブ長も重要です。

クラブが長くなると、ボールは遠くなります。
ボールが遠くなると、手元の位置が変わります。
手元の位置が変わると、クラブの通り道が変わります。

つまり、クラブ長とライ角は別々の問題ではありません。

どちらも、手元位置とクラブの通り道を変えます。

そして、その結果として、ボールに加わる力のベクトルが変わります。


弾道計測機だけだと、ライ角だけのフィッティングになりやすい

弾道計測機でフィッティングをすると、どうしてもボールの打ち出し方向や曲がりに目が行きます。

左へ飛ぶ。
右へ飛ぶ。
フェースが開いている。
フェースが閉じている。
クラブパスが外から入っている。

すると、判断がライ角方向に寄りやすくなります。

左へ行くならフラット。
右へ行くならアップライト。
つかまらないならアップライト。
ひっかかるならフラット。

もちろん、それで合う場合もあります。

しかし、クラブ長の問題を見落としたまま、ライ角だけで調整すると、根本解決にならないことがあります。

一時的に球筋が良くなっても、クラブ長と手元位置の問題が残っていれば、あとで同じ症状が出ることがあります。

だから、フィッティングでは弾道計測機の結果だけでなく、

そのクラブ長とライ角が、その人に自然な手元位置を作っているか

を見なければいけません。


ラインオブコンプレッションは、スイングだけでは保てない

フェードとスライスの違いを考えるとき、私はラインオブコンプレッションを非常に重要視しています。

フェードは、ラインオブコンプレッションを保ったまま、スピン軸だけを少し右へ傾けた球です。

一方、スライスは、ラインオブコンプレッションが外れ、力が右へ逃げた球です。

では、このラインオブコンプレッションは、スイングだけで保てるのでしょうか。

私は、そう単純ではないと思います。

クラブ長が合っていなければ、手元の前後位置が合いません。
ライ角が合っていなければ、手元の高さが合いません。

手元の位置と高さが合わなければ、クラブの通り道は崩れます。
クラブの通り道が崩れれば、インパクトでボールに加わる力の向きも崩れます。

つまり、クラブ長とライ角が合っていない状態で、ラインオブコンプレッションを保つことは非常に難しいのです。


数字を見ることと、原因を見ることは違う

弾道計測機は、現代のフィッティングに欠かせない道具です。

しかし、数字を見ることと、原因を見ることは違います。

弾道計測機は、ボールがどう飛んだかを教えてくれます。
しかし、なぜそのように飛んだのかを判断するには、身体とクラブの関係を見る必要があります。

クラブ長は合っているのか。
ライ角は自然な手元高さを作っているのか。
手元は体から離れていないか。
腕は張っていないか。
クラブは外から入りやすい状態になっていないか。
ラインオブコンプレッションは保てる状態にあるのか。

ここを見ずに、弾道計測機の結果だけで判断すると、原因を間違えることがあります。


まとめ

弾道計測機は、非常に優れた道具です。

しかし、弾道計測機は基本的に結果を見ています。

ボールが左に飛んだ。
だからライ角がアップライトすぎる。

このように単純に判断してしまうと、本当の原因を見落とすことがあります。

原因は、クラブ長かもしれません。
ライ角かもしれません。
手元高さかもしれません。
クラブの通り道かもしれません。
スイングの動きかもしれません。

それを判断するには、正しいカメラ位置で撮影されたスイング動画が必要です。
そして、その動画をもとに、インストラクターが身体とクラブの関係を判断する必要があります。

クラブフィッティングとは、数字を合わせる作業ではありません。

クラブ長とライ角によって、自然な手元位置を作り、ラインオブコンプレッションを保てる状態を作る作業です。

弾道計測機の数値は重要です。

しかし、その数値の原因を読めなければ、本当のフィッティングにはならないのです。

 

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第4話 フェードとスライスの違い

ラインオブコンプレッションとスピン軸で考える

ここまで、フェードについて考えてきました。

第1話では、ローフェードは外から切る球ではないと整理しました。
第2話では、フェードには手元高さとクラブの通り道が必要だと考えました。
第3話では、リー・トレビノのフェードを通して、フェードはクラブパスだけでは決まらないと見てきました。

今回は、フェードとスライスの違いを整理します。


フェードとスライスは、曲がり幅だけの違いではない

フェードもスライスも、右へ曲がる球です。

そのため、

少し曲がるのがフェード
大きく曲がるのがスライス

と考えられがちです。

しかし、本質はそこではありません。

大切なのは、

ラインオブコンプレッションが保たれているか。
それとも、力が右へ逃げているか。

です。 “第4話 フェードとスライスの違い” の続きを読む