第5話 クラブの遅れは、なぜヘッド速度に変わるのか

左股関節の上昇と接線方向の加速

ここまで、アプローチの距離感を 入力 という視点から整理してきました。

第2話では、有効重量 m を一定にすること。
第3話では、加速度 a を一定にすること。
第4話では、加速距離 s を変えることで、インパクト時の速度 V を管理すること。

式で言えば、

V² = 2as

そして、

E ≒ 1/2mV²

です。

つまり、アプローチの入力制御とは、

m を一定にする。
a を一定にする。
s を変える。

その結果として、インパクト時の V が決まり、ボールへ伝わる仕事量が決まる。

ここまでは整理できました。

しかし、ここで一つ大きな問題が残ります。

では、クラブの遅れは、なぜインパクトゾーンでヘッド速度に変わるのか。

短いアプローチでも、ヘッドが芝に負けず、ボールに仕事をする。
手で叩きにいかなくても、ヘッドがインパクトを通過する。
ポールターのように、短い距離でも緩まない。

その原因を説明しないままでは、入力の話はまだ完成しません。

今回は、インパクトゾーンでの加速の原理を整理します。 “第5話 クラブの遅れは、なぜヘッド速度に変わるのか” の続きを読む

第4話 オープン度で加速距離 s を変える

m と a を一定にし、s だけを変えて V を管理する

ここまで、アプローチの距離感を 入力 という視点から整理してきました。

第1話では、オリムピッククラブで見たイアン・ポールターのアプローチ練習から、
アプローチはボールではなく、ウェッジへの入力から始まる
という話をしました。

第2話では、距離感を難しくしている要因として、有効重量 m を取り上げました。

同じヘッドスピードで振っているつもりでも、身体・腕・クラブのリンクが毎回変われば、ウェッジに乗る有効重量 m が変わってしまう。

だから、オープンスタンスによって身体・腕・クラブのリンクを保ち、
有効重量 m を一定に近づける
という話をしました。

第3話では、加速度 a を扱いました。

アプローチで「同じスピードで振る」と言われることがありますが、物理的にはクラブヘッドはトップからインパクトへ向かって加速しています。

本当にそろえるべきなのは、等速ではなく、
PP#3にかかる圧力を一定にし、加速度 a を一定に近づけること
だと整理しました。

では、最後に残る問題です。

m を一定にする。
a を一定にする。

そのうえで、距離は何で変えるのか。

答えは、s = 加速距離 です。 “第4話 オープン度で加速距離 s を変える” の続きを読む

第3話 PP#3にかかる圧力をそろえる

加速度 a を一定にするという高品質な距離感

前回は、アプローチにおけるオープンスタンスの本質を、有効重量 m という考え方から整理しました。

アプローチの距離感は、単にヘッドスピードだけで決まるわけではありません。

身体、腕、クラブがどれだけ一体になって動いているか。
ウェッジにどれだけの質量が乗っているか。

ここが毎回変われば、同じように振ったつもりでも、ボールに伝わる仕事量は変わります。

つまり、

Vを合わせているつもりでも、mが毎回変わっている。

これが、アプローチの距離感を難しくしている大きな理由です。

そこで前回は、オープンスタンスによって身体・腕・クラブのリンクを保ち、有効重量 m を一定に近づけるという話をしました。

今回は、その次の段階です。

有効重量 m が一定に近づいても、まだ距離感が安定しない理由があります。

それが、加速度 a です。


距離感は、速度だけではなく加速度で決まる

アプローチではよく、

「同じスピードで振りましょう」
「ゆっくり振りましょう」
「テンポをそろえましょう」

と言われます。

もちろん、これらは間違いではありません。

しかし、物理的に考えると、少し曖昧です。

クラブはトップで静止に近い状態から、インパクトに向かって動きます。
ということは、インパクトまでにクラブヘッドは速度を増していきます。

つまり、実際には加速しているわけです。

完全な等速であれば、ヘッドスピードは増えません。
トップからインパクトまで同じ速度なら、ボールへ必要な仕事量を作ることはできません。

ですから、アプローチで本当に大事なのは、

等速で振ることではなく、加速度をそろえること

だと考えた方がよいのです。 


V² = 2as で考える

ここで、単純な式を使います。

V² = 2as

です。

ここで、

V = インパクト時のヘッド速度
a = 加速度
s = 加速距離

です。

アプローチの距離を変える時、多くの人は V、つまりインパクト時のヘッド速度だけを見ます。

しかし、Vは勝手に決まるものではありません。

Vは、

どれくらいの加速度 a で
どれくらいの距離 s を加速したか

によって決まります。

つまり、距離感を安定させるには、Vだけを見ていても不十分です。

その手前にある、

a と s をどう管理するか

が大事になります。


加速度 a が毎回変わると、距離はそろわない

前回、有効重量 m を一定にする話をしました。

しかし、m が一定に近づいても、ダウンスイングで加速度 a が毎回変われば、インパクト時の V は変わります。

たとえば、同じトップの大きさでも、

ある時は強く打ちにいく。
ある時は緩める。
ある時は切り返しで急ぐ。
ある時はインパクト直前で止める。
ある時は手首だけが急に動く。

これでは、加速度 a が毎回変わってしまいます。

すると、同じ加速距離 s であっても、インパクト時の V は変わります。

つまり、

m をそろえても、a が変われば距離は変わる

ということです。

ここで必要になるのが、加速度を一定にするための感覚です。


PP#3というセンサー

TGM、つまり『The Golfing Machine』では、プレッシャーポイントという考え方があります。

その中でも、今回重要になるのが プレッシャーポイント3 です。

一般的には、右手人差し指の付け根側に感じるクラブからの圧力、と考えるとわかりやすいと思います。

ダウンスイングでクラブが下りてくる時、右手人差し指の付け根付近に、クラブとの接触圧を感じる。

この圧力が、毎回強くなったり弱くなったりしていると、クラブに対する入力も変わっている可能性が高い。

反対に、ダウンスイングからインパクトまで、このPP#3にかかる圧力を一定に感じられれば、ウェッジに与えている加速度 a も一定に近づく。

これは、かなり質の高い距離感の作り方だと思います。


PP#3が感じているもの

ここで、少し丁寧に整理しておきたいことがあります。

PP#3は、単純に「重力」を感じているわけではありません。

ダウンスイングでは、クラブはトップからインパクトへ向かって下りていきます。
したがって、クラブ全体の運動には、重力による加速も含まれています。

これは大切な補足です。

しかし、PP#3が圧力として感じている中心は、重力そのものではありません。

なぜなら、クラブにも、手にも、身体にも、同じように重力はかかっているからです。
単純な落下そのものは、PP#3の圧力としては感じにくい。

PP#3が感じているのは、主にクラブと手の間に生じる相対的な圧力です。

身体の回転によってクラブを動かす。
クラブは慣性によって遅れようとする。
そのクラブをプレーン上に保つ。
その時に、右手人差し指付け根側に感じる圧力がPP#3です。

つまり、クラブの運動には重力による加速も含まれます。
しかし、PP#3で管理したい中心は、

自分自身の回転運動によってクラブに与えている加速度入力の一定感

です。

ここを誤解すると、PP#3を「右手で押す場所」と考えてしまいます。

しかし、今回のアプローチで大事なのは、右手で強く押すことではありません。

PP#3にかかる圧力を一定に保つこと。

これが大切です。


ポールターの「加速してインパクトを迎える」という言葉

ここで、もう一度ポールターの話に戻ります。

ポールターのアプローチに関する説明で印象的なのは、

加速してインパクトを迎える

という考え方です。

ただ、この言葉は少し丁寧に扱う必要があります。

プロが練習の中で本能的に身につけているのは、インパクトで急に力を入れる動きではありません。

むしろ、

大きく上げてインパクトで弱めない。
クラブとの接続を切らない。
PP#3にかかる圧力を保ったまま、減速せずにボールの位置を通過する。

その結果として、ヘッドは加速した状態でインパクトを迎える。

つまり「加速する」とは、急に打ちにいくことではなく、減速しない入力を保つことなのです。

物理的に言えば、これは a を急に大きくすることではありません。

a を消さないこと。
加速度を途中で失わせないこと。
一定に近い圧力のままインパクトへ向かうこと。

だから、短い距離でもインパクトが緩まない。
だから、ヘッドが芝に負けにくい。
だから、距離感がそろいやすい。

ポールターに見えた安定感は、この「減速しない入力管理」にあったのだと思います。


プロの言葉は、感覚語と原理を分けて考える

ここで、プロの言葉についても少し整理しておきたいと思います。

プロの言葉は、すべて同じように受け取るべきではありません。

そのプロが、動きの原理を理解したうえで話しているのか。
それとも、練習によって身についた高度な運動を、自分の感覚として表現しているだけなのか。

ここは分けて考える必要があります。

プロが語る感覚は、本人にとっては正しい。
しかし、それがそのまま他のゴルファーの再現方法になるとは限りません。

たとえば、

「ゆっくり振る」
「柔らかく打つ」
「手を使わない」
「ヘッドを走らせる」

こういう言葉は、本人の感覚としては正しくても、聞き手がそのまま真似すると、まったく違う動きになることがあります。

練習によって本能的に身についた動きは、本人の中では「自然に」「柔らかく」「ゆっくり」という言葉になります。

しかし、その裏側では、有効重量 m、加速度 a、加速距離 s が非常に高い精度で管理されていることがあります。

だから、プロの言葉を聞く時には、その言葉が原理を説明しているのか、本人の感覚を表しているのかを分けて考える必要があります。

ポールターの「加速してインパクトを迎える」という話は、単なる感覚語ではありません。

オリムピッククラブで見た実際のアプローチ練習。
スタンスの向きによってトップの大きさを制限しているように見えたこと。
インパクトで緩めず、同じような距離にボールが集まっていたこと。

それらと、この言葉が一致します。

だからこそ、ポールターの言葉は信頼できるのだと思います。


力加減を変えるのではなく、圧力をそろえる

アプローチが苦手な人は、距離を変える時に「力加減」を変えようとします。

短い距離だから弱く打つ。
少し長い距離だから強く打つ。

この考え方になると、毎回加速度 a が変わります。

強く打とうとすれば、切り返しで急ぎやすい。
弱く打とうとすれば、インパクトで緩みやすい。

どちらにしても、PP#3にかかる圧力は一定になりません。

ポールターのような質の高いアプローチが安定して見える理由は、ここが違うのだと思います。

距離を変える時に、力の入れ方そのものを大きく変えていない。
PP#3にかかる圧力を一定に保ち、ウェッジに与える加速度 a をそろえている。

そのうえで、加速距離 s を変えている。

つまり、

力加減で距離を変えるのではなく、一定の圧力で、加速する距離を変えている。

ここが非常に重要です。


「同じスピードで振る」の正体

ここで、よく言われる「同じスピードで振る」という言葉を考えてみます。

多くのゴルファーは、

「同じスピードで振ったつもりです」
「テンポは同じでした」
「ゆっくり振りました」

と言います。

しかし、物理的には、トップからインパクトまで完全な等速で振っているわけではありません。

クラブヘッドは加速しています。

では、なぜ本人は「同じスピード」と感じるのでしょうか。

おそらく、人間は、加速度が一定に保たれている状態を、等速に近い感覚として捉えやすいのだと思います。

急に力を入れない。
途中で緩めない。
同じ圧力でクラブが下りてくる。
同じテンポで通過していく。

本人の感覚では、これが「同じスピード」に感じられる。

しかし、物理的には、これは等速ではなく、

加速度入力が一定に近い状態

と考えた方が正確です。

ここで重要なのは、等速はそもそも感じにくいということです。

物理的には、静止と等速直線運動は同じように扱われます。
どちらも、加速度は0です。
力が新たに作用していない状態です。

つまり、人間が直接感じているのは、速度そのものではありません。
力の変化、圧力の変化、加速度の変化です。

だから、アプローチで「同じスピードで振っている」と感じている時も、本当に等速を感じているわけではありません。
実際には、PP#3にかかる圧力が急変せず、加速度入力が一定に近い状態を、等速に近い感覚として捉えているのだと思います。


PP#3の圧力一定が、加速度一定につながる

ここでPP#3に戻ります。

ダウンスイングからインパクトまで、右手人差し指付け根側にかかる圧力を同じにする。

これは、

「手で押し込む」
「右手で叩く」
「インパクトで力を入れる」

という意味ではありません。

むしろ逆です。

急に力を入れない。
急に抜かない。
クラブに対する圧力を途中で変えない。

この一定の圧力が、ウェッジに対する加速度 a を安定させます。

そして、加速度 a が安定すれば、同じ加速距離 s に対して、インパクト時の V も安定します。

つまり、距離感が安定する。


手で打つのではなく、圧力を保つ

ここで誤解してはいけないのは、PP#3を意識することが、手打ちではないということです。

むしろ、PP#3は手で打つためのものではなく、クラブとの接続を感じるためのポイントです。

クラブがどこにあるのか。
クラブにどれくらいの圧力がかかっているのか。
ダウンスイング中に、その圧力が急に増えたり減ったりしていないか。

それを感じる場所です。

手先でボールを合わせにいくと、PP#3の圧力は乱れます。

強くなったり、消えたり、インパクト直前で抜けたりします。

一方、身体・腕・クラブのリンクが保たれている時は、PP#3の圧力も比較的安定しやすい。

つまり、PP#3は、加速度だけでなく、リンクの状態を確認するセンサーにもなります。


アプローチでよく見るのは、aを変えて距離を合わせること

短いアプローチでよく見るミスは、

大きく上げて、インパクトで弱める

です。

この場合、加速距離 s は大きい。
しかし、距離を出したくないので、インパクト前に加速度 a を落とす。

つまり、ブレーキをかけています。

この時、ヘッドは減速し、クラブの重さは消え、最下点もずれやすくなります。

結果として、ザックリやトップが出ます。

反対に、強く入れようとすると、切り返しでaが急に大きくなります。
すると、ヘッドが走りすぎたり、ロフトが立ちすぎたり、距離が出すぎたりします。

どちらも、aが安定していない状態です。


プロは、aを変えずにsを変える

ここが、プロのアプローチの大きな違いです。

プロは、距離を変えるために毎回力加減を変えているのではありません。

もちろん、現実には微調整はあります。
しかし基本の考え方としては、

加速度 a を一定に近づける。
そのうえで、加速距離 s を変える。

という構造です。

PP#3にかかる圧力をそろえる。
同じ圧力でクラブを下ろす。
急がない。
緩めない。
そして、トップの大きさ、つまり加速距離を変える。

これなら、距離調整がかなり整理されます。

力加減を毎回変えるのではなく、圧力は同じ。
変えるのは、クラブが加速できる距離です。


ここまでの整理

前回と今回をつなげると、こうなります。

まず、オープンスタンスによって、身体・腕・クラブのリンクを保ち、有効重量 m を一定に近づける。

次に、PP#3にかかる圧力を一定にし、ウェッジに与える加速度 a を一定に近づける。

すると、距離調整で大きく変えるべきものは、加速距離 s になります。

これは非常に大きな整理です。

なぜなら、アプローチの距離感から、変数を減らせるからです。

スクエアスタンスで手先に頼ると、

m も変わる。
a も変わる。
s も変わる。

これでは、距離感は難しい。

しかし、オープンスタンスとPP#3の圧力管理を使えば、

mを一定に近づける。
aを一定に近づける。
sを変える。

という形にできます。


アプローチの「同じテンポ」は、圧力の一定感である

アプローチでよく言う「テンポが大事」という言葉も、ここから考えると整理しやすくなります。

テンポとは、単にゆっくり振ることではありません。

トップからインパクトまで、クラブにかかる圧力が急変しないこと。
切り返しで急がないこと。
インパクトで緩めないこと。
クラブとの接続が切れないこと。

これらがそろった時、プレーヤーは「テンポが良い」と感じます。

つまり、テンポとは感覚的な言葉ですが、原因側で見れば、

加速度 a が安定している状態

と考えることができます。


まとめ

アプローチの距離感は、ヘッドスピードだけの問題ではありません。

前回は、有効重量 m の話をしました。

同じVでも、mが変われば、ボールに伝わる仕事量は変わります。

今回は、加速度 a の話です。

同じトップの大きさでも、aが変われば、インパクト時のVは変わります。

だから、距離感を安定させるには、

有効重量 m を一定に近づけること。
加速度 a を一定に近づけること。

この2つが重要になります。

そのための方法が、

オープンスタンスによるリンクの維持
そして、
PP#3にかかる圧力をそろえること

です。

クラブ全体の運動には、重力による加速も含まれます。
しかし、PP#3が圧力として感じる中心は、重力そのものではなく、自分自身の回転運動によってクラブに与えた加速度の反力です。

アプローチでいう「同じスピードで振る」とは、物理的な等速ではありません。

実際には、

PP#3にかかる圧力を一定にし、加速度入力を一定に近づけること

だと考えた方がよい。

距離を力加減で合わせるのではない。
圧力をそろえる。
加速度をそろえる。
そして、加速距離を変える。

この考え方ができると、アプローチの距離感はかなり整理されます。


次回予告

次回は、いよいよ入力編の核心に入ります。

mを一定にする。
aを一定にする。

では、距離は何で変えるのか。

答えは、s = 加速距離 です。

オープンスタンスの度合いによって、バックスイングの大きさが変わる。
バックスイングの大きさが変われば、クラブヘッドが加速できる距離 s が変わる。
s が変われば、インパクト時の速度 V が変わる。

つまり、

mとaを一定にし、sだけを変えることで、Vを管理する。

次回は、この部分を整理します。

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第2話 スクエアスタンスでは、変数が多すぎる

有効重量 m を一定にするためのオープンスタンス

前回は、オリムピッククラブで見たイアン・ポールターのアプローチ練習から、

アプローチは、ボールではなくウェッジへの入力から始まる

という話をしました。

ポールターのアプローチは、手先で距離を合わせているようには見えませんでした。
インパクトで弱めている感じもない。
大きく上げて、当たる直前に調整している感じもない。

むしろ、構えの時点で、すでにウェッジに入る入力の上限を決めているように見えました。

その中心にあったのが、スタンスの向きです。

スタンスをオープンにすることで、バックスイングが大きくなりすぎない。
そして、フォロー側には身体が抜けていく。

この構造が、距離感の安定につながっているのではないか。

今回はその理由を、有効重量という考え方から整理してみます。


距離感は、ヘッドスピードだけでは決まらない

アプローチの距離感というと、多くの人はヘッドスピードを考えます。

速く振れば飛ぶ。
遅く振れば飛ばない。

もちろん、それは間違いではありません。 “第2話 スクエアスタンスでは、変数が多すぎる” の続きを読む

第1話 マキロイより気になったポールターの安定感

アプローチは、ボールではなくウェッジへの入力から始まる

オリムピッククラブで、イアン・ポールターのアプローチ練習を見たことがあります。

その時、近くではローリー・マキロイも練習していました。

普通に考えれば、目を奪われるのはマキロイです。
世界トップクラスのスイング。
圧倒的なスピード。
身体能力の高さ。
ボールを打つ姿そのものに、華があります。

ところが、その時の私は、なぜかポールターのアプローチから目が離せませんでした。

理由は、派手さではありません。
高く上げる球でも、強烈なスピンでもありません。

むしろ、見た目にはとても静かでした。

しかし、ボールが同じような距離に集まっていく。
構えが大きく変わらない。
リズムも大きく変わらない。
インパクトで緩んでいる感じもない。

その安定感が、妙に印象に残ったのです。

イアン・ポールターといえば、ライダーカップで強さを発揮した選手です。

ヨーロッパチームの一員として、何度も重要な場面で結果を出してきました。
“THE POSTMAN” と呼ばれたのも、必要な場面で必ず仕事を届ける、という意味合いがあったのだと思います。

一打一打の意味が重くなる場面で、力を発揮できる選手です。

そのポールターのアプローチ練習を見ていると、なるほどと思う部分がありました。

勝負どころで強い選手のアプローチは、手先で距離を合わせているようには見えない。
偶然寄せているようにも見えない。

最初から、距離が大きく外れない構造を作っているように見えたのです。

私が特に気になったのは、スタンスの向きでした。

ポールターは、スタンスのオープン度を変えることで、バックスイングの大きさを制限しているように見えました。

つまり、何ヤードだから手でここまで上げる、というよりも、
構えた時点で、

そこまでしか上がらない状態

を作っているように見えたのです。

これは、非常に重要です。

多くのアマチュアは、短いアプローチで距離を落とそうとすると、インパクトで弱めます。

大きく上げて、当たる直前に緩める。
ヘッドを止める。
身体を止める。
手で合わせる。

しかし、それでは毎回違うインパクトになります。

ある時は身体ごと動く。
ある時は腕だけになる。
ある時は手首だけで合わせる。
ある時はヘッドだけが走る。

これでは、距離感がそろいません。

アプローチの距離感というと、多くの人はまず結果を考えます。

何ヤード飛ばすか。
どこに落とすか。
どれくらい転がすか。
スピンを入れるか。
高く上げるか。
低く出すか。

もちろん、それらは大切です。

しかし、それはすべて結果側の話です。

その前にあるのは、

ウェッジにどれだけの入力を与えるか

です。

ここを見落としてはいけません。

アプローチは、ボールをどうするかの前に、ウェッジに何をさせるかです。

ウェッジに入る入力が大きすぎれば、インパクトで減速しなければならない。
入力が小さすぎれば、芝に負ける。
入力が毎回違えば、キャリーもスピンもランも読めない。

だから、まず制御すべきなのはボールではありません。

ウェッジへの入力です。

この時のポールターのアプローチは、まさにそこが整理されているように見えました。

スタンスの向きで、バックスイングの大きさを制限する。
バックスイングの大きさが制限されれば、クラブヘッドが加速できる距離も制限される。
加速できる距離が制限されれば、インパクト時のヘッド速度も大きくなりすぎない。

つまり、距離をインパクトで殺しているのではなく、
構えの時点で、ウェッジに入る入力の上限を決めている。

ここに、プロのアプローチの大きなヒントがあります。

アプローチが苦手な人ほど、インパクトで距離を合わせようとします。

「強かった」
「弱かった」
「緩んだ」
「入った」
「手が出た」
「ヘッドが走った」

こういう言葉が多くなります。

しかし、インパクトで調整している限り、距離感は安定しません。

なぜなら、インパクトは一瞬だからです。
その一瞬で、速度、ロフト、フェース向き、最下点、入射角、スピン量をすべて合わせようとするのは、あまりにも難しい。

本来は逆です。

インパクトで合わせるのではなく、
インパクトまでに、すでに合う状態を作っておく。

ポールターのアプローチには、その考え方が見えたのです。

このシリーズでは、アプローチを少し違う角度から考えていきます。

テーマは、距離感ではありません。

もっと手前にある、

ウェッジへの入力制御

です。

アプローチの距離は、単に振り幅だけで決まるわけではありません。
ヘッドスピードだけで決まるわけでもありません。

身体とクラブがどれだけつながっているか。
どれだけ一定の圧力でクラブを動かせているか。
どれだけの加速距離を与えているか。

そうした要素によって、ウェッジへの入力は決まります。

そして、その入力が安定して初めて、ボール位置、フェースの開き、バンス、グリップポジションといった出力側の調整が意味を持ちます。

ポールターのアプローチ練習を見た時、私はただ「安定している」と感じました。

しかし、今あらためて考えると、その安定感には理由があったのだと思います。

距離を手で合わせていたのではない。
インパクトで弱めていたのでもない。
大きく振って、途中で調整していたのでもない。

構えの段階で、ウェッジへの入力を決めていた。

その入力が大きくなりすぎないように、スタンスの向きでバックスイングを制限していた。
そして、その制限された入力を、最後まで止めずに使っていた。

だから、短い距離でも緩まない。
だから、ボールが同じような距離に集まる。
だから、アプローチに安定感が出る。

アプローチは、ボールに合わせる技術ではありません。

まず、ウェッジに入る入力をそろえる技術です。

ボールの高さ、スピン、ラン、落とし場所は、その後に出てくる結果です。

次回は、この入力をもう少し物理的に考えます。

特に重要になるのは、

有効重量

です。

同じヘッドスピードでも、身体とクラブが一体で動いているのか、手先だけで合わせているのかで、ボールに伝わる仕事量は変わります。

つまり、距離感を狂わせているのは、スピードだけではありません。

ウェッジに乗っている有効重量が、毎回変わっていること。

ここに、アプローチが安定しない大きな理由があります。

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ヘッドスピードは上がった。では、ボールは速くなったのか?第3話

売れる言葉と、PINGが見ていたもの

――しなりの大きさではなく、ボールに何が伝わったか――

前回は、ヘッドスピードアップ練習器具の効用と危険性について書きました。

ヘッドスピードを上げる練習器具には、たしかに効用があります。

普段より強く振るきっかけになる。
出力制限が外れる。
リリース不足だった人が、ヘッドを出せるようになる。
一時的に飛距離が伸びることもある。

ですから、ヘッドスピードアップ系の練習器具を、すべて否定したいわけではありません。

ただし、問題はその先です。

そのヘッドスピードが、どのように作られたのか。
そして、その速度がボールスピードに変換されたのか。

ここを見なければなりません。

体を止める。
手を使う。
リリースを早くする。
身体とクラブの束縛を早く切る。

こうした動きでも、ヘッドスピードという数字は上がります。

しかし、その代わりに有効重量を失い、インパクトでクラブが軽くなっているなら、それは本当に飛ぶスイングに近づいたとは言えません。

ヘッドスピードは上がった。
しかし、クラブは軽くなった。

ここに、ヘッドスピードアップという言葉の難しさがあります。 “ヘッドスピードは上がった。では、ボールは速くなったのか?第3話” の続きを読む

ヘッドスピードは上がった。では、ボールは速くなったのか?第2話

ヘッドスピードアップ練習器具の効用と危険性

――一時的に飛ぶからこそ、注意が必要です――

前回は、金沢市のジュニア練習会での出来事から、ヘッドスピードと飛距離は同じではないという話をしました。

簡易的な測定器では、ジュニアの方がヘッドスピードで勝っていました。
しかし、実際にボールを打つと、委員長の方が50ヤードほど飛ぶ。

ここに、ヘッドスピードという数字の難しさがあります。

ヘッドスピードは、クラブヘッドがどれだけ速く動いたかを示す数字です。
しかし、飛距離を決めるのは、それだけではありません。

本当に見るべきなのは、

そのヘッドスピードが、どれだけボールスピードに変換されたか

です。

今回は、そこからもう一歩進んで、ヘッドスピードを上げる練習器具について考えてみたいと思います。


ゴルフの練習器具には、ヘッドスピードアップを前面に出したものがたくさんあります。

ヘッドスピードが上がる。
振るだけで飛距離アップ。
ヘッドが走る。
速く振れるようになる。

こうした言葉は、とても分かりやすいです。

そして、実際に使ってみると、一時的にヘッドスピードが上がることもあります。
場合によっては、ボールスピードが上がり、飛距離が伸びることもあります。

ですから、私はヘッドスピードアップ系の練習器具を、すべて否定したいわけではありません。

効用はあります。

普段より強く振るきっかけになる。
普段より大きく振るきっかけになる。
リリース不足だった人が、ヘッドを出せるようになる。
クラブを振ることへの怖さが減る。
自分にはまだ速く振れる余地があると気づく。

こういう意味では、ヘッドスピードアップ系の器具は、一定の役割を持っています。 “ヘッドスピードは上がった。では、ボールは速くなったのか?第2話” の続きを読む

第2話 PLDなのか、Scottsdale TECなのか

Reitanの使用パターから見えるPINGのツアーカスタム思想

前回は、Kristoffer Reitanの優勝について見てきました。

ノルウェー出身のReitan。
ノルウェーといえば、ビクター・ホブラン。
そして、PING創業者カーステン・ソルハイムの故郷でもあります。

そのノルウェーから来た選手が、PINGのパターを手にしてPGA TOURで勝利した。

しかも、勝利の大きな鍵になったのがパッティングでした。

PING Tourの投稿では、Reitanはその大会で Strokes Gained: Putting 2位
つまり、グリーン上で大きくフィールドに差をつけていたことになります。

では、そのパッティングを支えたパターは、いったいどのようなものだったのでしょうか。

今回見ていきたいのは、Reitanが使用した Custom PLD Ally Blue H です。

ただし、このパターは少し不思議です。

公式にはPLD。
しかし、見た目にはScottsdale TEC Ally Blue Hの要素も強く感じます。

今回は、そのあたりを整理してみたいと思います。


公式には、Custom PLD Ally Blue H

まず、事実として押さえておきたいのは、Reitanのパターが Custom PLD Ally Blue H と紹介されていることです。

Alistair Cameron@ACameronWRX

A great time for Kristoffer Reitan to add a

PLD Milled Ally Blue H to the bag! With more toe hang than his previous putter, the custom head was created so that he could see an uninterrupted sight line. He also added the G440 K 9 degree w/Mitsubishi Tensei White 1K 60TX

PLDと聞くと、多くのPINGファンは、削り出し、精密加工、ツアー仕様、プレーヤーの感覚に合わせた作り込みを思い浮かべると思います。 “第2話 PLDなのか、Scottsdale TECなのか” の続きを読む

第1話 カーステンの故郷から来た勝者

Kristoffer Reitanの優勝を支えたPINGカスタムPLDパター

※pga tourでの優勝がありましたので、通常記事に2回割り込みます。

PING Tourの投稿で、非常に興味深いニュースが紹介されていました。

Kristoffer Reitanが、PINGのカスタムPLDパターを使用して優勝。
しかも、その勝利の大きな鍵になったのが、パッティングでした。

投稿によると、Reitanはその大会で Strokes Gained: Putting 2位
つまり、グリーン上でフィールドに対して大きく差をつけていたということです。

ゴルフの試合は、ドライバーの飛距離だけで決まるわけではありません。
アイアンの切れだけで決まるわけでもありません。

最後にボールをカップに沈める。
その部分で差をつけた選手が、優勝争いでは強い。

今回のReitanの勝利は、まさにそのことを示しているように感じます。 “第1話 カーステンの故郷から来た勝者” の続きを読む

ヘッドスピードは上がった。では、ボールは速くなったのか? 第1話

ヘッドスピードで勝って、飛距離で負ける理由

――飛距離を決めるのは、ヘッドスピードだけではありません――

ゴルフでは、よくこう言われます。

ヘッドスピードを上げれば飛ぶ。
ヘッドが走れば飛ぶ。
速く振れれば飛距離が伸びる。

たしかに、これは間違いではありません。

ヘッドスピードは、飛距離を作る大切な要素です。
ヘッドスピードがなければ、ボールスピードも出にくくなります。

しかし、ここで一つ注意しなければならないことがあります。

ヘッドスピードが速いことと、実際に飛ぶことは、同じではない。

このことを、非常に分かりやすく感じた出来事がありました。


金沢市のジュニア練習会でのことです。

簡易的にヘッドスピードを測る器具を使って、委員長とジュニアの子がヘッドスピードを競い合っていました。

数値だけを見ると、勝ったのはジュニアでした。
当然、ジュニアは大喜びです。

ヘッドスピードで大人に勝った。
自分の方が速く振れている。
これは、子どもにとってはとても分かりやすい成功体験です。

ところが、実際にボールを打ってみると、結果は違いました。

飛距離は、委員長の方が約50ヤードも飛ぶのです。

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