より良くなろうとすることがダメな場合がある。

世界No.1であり、メジャーチャンピオンのデビット・デュバルがなぜ強かったのか。そして、突如といっていいほど、ダメになったのかを、解説した動画です。

動画の内容は以下となります。

0:00〜

デビッド・デュバルは、すでに機能しているスイングを変え始めたときに何が起こるか、その現代ゴルフにおける最も痛ましい例かもしれません。

彼は世界ランキング1位になり、59を記録し、賞金ランキング1位にもなり、2001年にはロイヤル・リザムで全英オープンを制しました。1997年から2001年までにPGAツアーで13勝。現代ゴルフでも屈指の5年間を築いた選手です。

※当時、彼の登場はセンセーショナルでした。これまでに見たことのないスイングタイプで、PGAに登場するや否や一気にランキングを駆け上がりました。

ところが、その後、完全に表舞台から姿を消しました。2001年を最後に優勝はなく、彼のゴルフはほとんど一夜にして崩壊したように見えました。

※全英オープンでの優勝はピーク過ぎた時と言ってもいいとおもいます。それから、本当にあっという間に消え去りました。その辺りの経緯は、あとで出てくるパギーと木場本先生が親交が深かった事もあり、先生を通じて聞いていました。この後は、それが書いてあります。

そして、彼が「何を変えたのか」、そして「なぜ変えたのか」を理解すると、その原因と結果の関係が痛いほど明確になります。

デビッドは、ゴルフの世界の中で育ちました。父のボブ・デュバルはジャクソンビルのティムクアナ・カントリークラブのプロで、デビッドは事実上そのゴルフ場で育ったようなものでした。

1989年の全米ジュニア・アマチュアに優勝し、ジョージア工科大学では4度ファーストチーム・オールアメリカンに選ばれました。また、非常に評価の高い大学ゴルフコーチ、パギー・ブラックモンの指導を受けました。

父親とブラックモンの指導によって、デュバルには非常に強固な基礎が築かれていました。PGAツアーに出るずっと以前から、世界レベルで戦えるスイングが出来上がっていたのです。

しかし全盛期のデュバルを特別な存在にしていたのは、そのスイングが彼自身の身体に極めてよく適合していたことでした。

※デュバルのスイングは完全にアクセラレート・ゴルフ・ラーニングシステム(以下AGL)に適合したスイングで、もう1人のAGLの提唱者ジョージ・ケルンフォファーがいます。以下、投稿者がスイングを解説しているので文字起こしを読み進めましょう。

彼はストロンググリップを使い、早い段階からフェースを閉じ気味にし、トップではシャフトがわずかにレイドオフ。そしてボールを通過するときには、非常に大きく、迷いのない回転運動を行っていました。

手を使った細かな操作はほとんどしません。

安定したフェースを保ったまま、身体を強烈に左へ回転させ、彼特有の小さなフェードを打っていました。

後年、彼のスイングを分析した人々は、インパクトを通じてフェースがいかに安定していたかを指摘しています。

フェースのぐらつきがほとんどなく、大きく曲がることもない。ただ再現性の高い弾道を打ち続ける。

彼の回転運動と閉じ気味のフェースが噛み合っていると、ボールはターゲット方向に出て、そこからほんの数ヤード右へ落ちていきました。

これこそが彼の「DNA」でした。

※普通の選手と比較すると、トップでのクラブフェースの向きはシャットですが、普通の選手が開いているのであって、彼は閉じてはいません。ですので、何もしていないのです。

1997年から2001年にかけて、このパターンによって彼はほぼ無敵の存在になりました。

1997年に本格的にブレークし、1998年には4勝。1999年には世界ランキング1位となり、ボブ・ホープ・クラシックでは最終ホールのイーグルで59を記録。そして2001年、全英オープン制覇で頂点に立ちました。

その圧倒的な強さのすべてが、このスイングの組み合わせから生まれていました。

閉じたフェース。大きなターン。小さく締まったフェード。左へのミスを恐れる必要がない。

これがデュバルのゴルフでした。


2:07〜

ところが、その後すべてが変わります。

しかも急激にです。

1999年末頃から、デュバルは厳格なフィットネスと食事管理を始めました。それ以前にも約40ポンド体重を落としていましたが、この時期の取り組みはさらに極端なものでした。

激しくウェイトトレーニングを行い、食事を厳密に管理し、身体そのものを作り変えていきました。

同じ頃、2000年代初頭には背中を痛めます。

後に本人は、背中をかばいながらスイングしていたため、「スイングがおかしくなってしまった」と語っています。

デュバルのように、大きな回転運動に依存していた選手が、それまでと同じように回転できなくなれば、その影響は非常に大きくなります。

しかし、その次に行った決断が、最も危険なものだったのかもしれません。

デュバルは、安定してドローを打てるようにしようとし始めたのです。

これは彼の低迷期について実際に記録されていることです。

ここで、その意味を考えてみてください。

彼のシステム全体は、

ストロンググリップ+閉じたフェース+強烈な回転+フェースを返し過ぎずに振り抜く

ことで、タイトなフェードを打つように構築されていました。

ところが今度は、閉じたフェースのまま、しかも背中の状態が悪い中で、ボールを反対方向へ曲げようとしていたのです。

その結果、スイング中にフェースはさらに閉じるようになりました。

痛みのために身体の回転量は減少しました。

すると、それまで美しかったフェードは、突然「タイミング勝負」のショットへと変わってしまいます。

早くリリースすれば左へ。

それを嫌って何とか調整すれば右へプッシュ。

フェードヒッターが左右両方へミスし始めれば、自信は急速に失われていきます。

重要なのは、デュバルが新しい有名コーチや流行の理論に影響されて、このスイング変更を始めたわけではないということです。

むしろ、すべてが崩れ始めた後、彼は逆方向へ進みました。

昔の自分のパターンを取り戻すために、以前のコーチのもとへ戻ったのです。

新しいシステムを追い求めたのではありません。

昔のスイングを再構築しようとしました。

しかし、彼の身体はすでに以前と同じようには動けなくなっていました。

さらに、新しく求めた球筋も、父親やパギー・ブラックモンのもとで作り上げたスイングの基礎とは一致していませんでした。

彼を世界トップレベルにしたシステムは、失われてしまったのです。


3:53〜

結果はすぐに数字に表れました。

全英オープンに勝ったその年でさえ、賞金ランキングは80位まで低下。

2003年には211位まで落ち、ツアーカードを失いました。

背中の故障、手首の問題、めまい、肩の痛み、私生活上のストレス。

考えられるほとんどすべての問題が彼を襲いました。

そして、元々成立していたスイングの「組み合わせ」が崩れてしまったため、その後の再建もなかなか定着しませんでした。

2002年から2008年にかけて、リーダーボードに名前が載ることはほとんどなくなります。

2005年には年間を通して予選通過がわずか1回。

数年間における最高成績も、13位タイや16位タイ程度でした。

※デュバルが体を鍛え始めた時に、周りの人たちはこぞって止めたそうです。デュバルはデュバルのスイングをわかっていなかったかもしれませんが、周りの人たちは、わかっていたようです。しかし、強い状態から、体を鍛えたらもっと上のものが手に入ると思っていたんだと思います。

59を出した時には、シャツが背中からはみ出るような体型だったです。

力を使わずにスイングしていたんです。しかし、力がつくと、その力に頼るスイングになります。

90ヤードまで、3ヤード刻みで打てたショットは影を潜めます。ショットは意思に反して、逆に曲がります。

ところが2009年。

ベスページ・ブラックで行われた全米オープンで、突然、かつてのデビッド・デュバルが戻ってきます。

彼は本戦に出場するために、地区予選から勝ち上がらなければなりませんでした。

多くの人は、彼が出場していることさえ知らなかったほどです。

しかし2日目を終えると4位タイ。

3日目を終えると3位タイ。

そして最終的には2位タイで大会を終えました。

2002年以来、最高の成績でした。

その映像を見ると、昔の「DNA」がはっきり残っています。

安定したフェース。タイトなフェード。迷いのない腰のターン。

身体がこれだけ多くの問題を経験した後でさえ、かつての組み合わせが再び現れたとき、あの一流選手はまだ彼の中に存在していたのです。


4:58〜

これが、デビッド・デュバルから学べることです。

彼が崩壊したのは、彼のスイングが「変なスイング」だったからではありません。

身体を変えた。

怪我をした。

求める球筋を変えた。

そして、それらを、本来そうした変化に対応するように作られていなかったスイングパターンの上に重ねてしまったからです。

彼のフェードは欠点ではありませんでした。

それこそがシステムだったのです。

閉じたフェースも問題ではありませんでした。

それが他の動きと組み合わされることで成立していたのです。

そして彼の回転運動は、あってもなくてもよいものではありませんでした。

すべてを機能させるためのエンジンだったのです。

身体が変わり、打とうとする球筋が変わったとき、その機械全体が崩壊しました。

だからといって、デュバルが精神的に弱かったとか、怠けていたということではありません。

意欲がなかったわけでもありません。

彼もまた、多くのゴルファーがするように、

「もう少し良くなりたい」

と考えたゴルファーだったのです。

しかし、世界ランキング1位にまでなった選手で、しかも非常に特殊で完成された「スイングDNA」を持っている場合、わずか数度の変化でさえシステム全体を壊してしまう可能性があります。

彼のキャリアから一つ学ぶとすれば、これです。

スイングは、自分の身体、自分の傾向、そして打ちたい球筋の意図が、すべて一致しているときに機能する。

デビッド・デュバルは、ゴルフ史において「原因と結果」を考えるうえで最高の教材の一人です。

彼の飛躍は、完璧な組み合わせによって作られました。

彼の転落は、その組み合わせを壊したことによって起きました。

そして2009年の一時的な復活は、

昔のDNAが戻れば、かつての偉大さもまだそこにある

ということを証明したのです。

 

どうでしたか?生粋のデュバルファンで木場本先生からいろいろ聞くことだできた店長ですが、youtubeにパギーの名前が出てきたときのは驚きました。

そして、5ヵ月前には最もシンプルなLPGA選手として「山下美夢有」を紹介していることも驚きです。興味深い動画が沢山あるようなので、紹介することもあると思います。

新しいシャフトの作り方 カウンターバランス

今回追加される10本の中で、元調子・中調子・先調子という分類だけでは少し説明しにくいのが、

TENSEI 1K Pro Orange RIP+

です。

TENSEI Orangeシリーズの大きな特徴は、以前から採用されてきたカウンターバランス設計です。

つまり、単に「どこがしなるか」だけではなく、

クラブ全体の重量配分まで含めて、振りやすさを作るシャフト

と考えた方が分かりやすいと思います。

現在のドライバーヘッドは、大型化・高MOI化し、ヘッド重量も大きくなっています。

その状態でヘッド側の重量感が強くなりすぎると、

切り返しでクラブが遅れる。
リリースが早くなる。
ヘッドを戻すために余分な力を使う。

ということが起こる可能性があります。

Orangeシリーズでは、重量配分を手元側へ寄せることで、ヘッド重量による負担を軽減します。

そして今回の RIP+ では、そこに先端側の安定性をさらに加えています。

従来のOrangeについては、

カウンターバランスで振りやすい反面、シャフトの中に少し曖昧な動きを感じる

という評価もありました。

今回のRIP+では、その曖昧さを減らし、

振りやすさは残す。
しかし、インパクト付近では余計に動かさない。

という方向へ進化したように見えます。

つまり、このシャフトも今回の他のモデルと考え方は共通しています。

特徴そのものをなくしたのではありません。

Orangeらしいカウンターバランスは残しながら、その弱点になり得る部分を新しい技術で薄めている。

ということです。

今回の新しいカスタムシャフト全体を見ていると、

元調子なら、遅れを減らす。

中調子なら、動きの偏りを減らす。

先調子なら、暴れを減らす。

そしてTENSEI Orangeでは、

重量配分による振りやすさを残しながら、インパクトでの曖昧さを減らす。

それぞれ方法は違いますが、

そのシャフトが本来持っているメリットは残し、デメリットだけを小さくする。

これが、今年追加される新しいカスタムシャフトに共通する開発方向ではないかと思います。

新しいシャフトの作り方 先調子

今回追加される先調子系として注目したいのは、

  • 26 VENTUS TR RED
  • SPEEDER NX WHITE

の2本です。

さらにメーカー表記は中調子ですが、

  • TOUR AD EK

も、中間から先端を積極的に動かす「走り系」として同じ方向から見てみたいと思います。

従来の先調子・先中調子には、

ヘッドが走る、球がつかまる、ボールを上げやすい

という大きなメリットがあります。

しかし、その動きが大きくなりすぎると、

ヘッドが暴れる、左へのミスが出る、打点やフェースの向きが安定しにくい

という欠点にもなります。

つまり、

先調子のスピード感は欲しい。
しかし、先端が暴れるシャフトでは結果が出ない。

というゴルファーが存在します。

今回のシャフトは、まさにそこへ新しい技術を使って対応しているように見えます。

26 VENTUS TR RED

VENTUS TR REDは先中調子です。

先中調子らしく、

球を上げやすく、適度につかまり、ヘッドを走らせる。

しかしフジクラが強調しているのは、一般的な走り系とは違う**「粘るフィーリング」と安定性**です。

つまり、

先を動かすことはやめない。
しかし、急激には動かさない。

という方向です。

先中調子のスピード感を残しながら、VENTUSらしいコントロール性を持たせたシャフトと言えるでしょう。

SPEEDER NX WHITE

SPEEDER NX WHITEも先中調子です。

こちらはさらに分かりやすく、

先端の剛性を落として、球をつかまえ、上げやすくする

設計です。

普通なら先端を柔らかくすれば、インパクトで当たり負けしたり、ボールが散らばったりする可能性が高くなります。

そこで新しいDHXとVTCによって、ねじれなどの余分な動きを抑えています。

つまり、

先端は走らせる。
しかし、インパクトでは暴れさせない。

これがSPEEDER NX WHITEの大きな特徴です。

TOUR AD EK

TOUR AD EKはメーカー表記では中調子です。

しかし設計を見ると、手元側の剛性を高めながら、

中間から先端をしなやかに動かして初速を上げる

という、明確な「走り系」の性格を持っています。

ここでも考え方は同じです。

走りを出すだけなら、中間から先端を大きく動かせばいい。

しかし、それではシャフトが暴れやすくなる。

そこで、曲げ・ねじれ・つぶれをそれぞれ制御することで、

走るのに暴れにくいシャフト

を作ろうとしています。

先調子のメリットは残す。暴れは減らす。

3本を整理すると、

26 VENTUS TR RED
→ 先中調子の走りを「粘り」に変えて安定させる。

SPEEDER NX WHITE
→ 先端を積極的に走らせながら、インパクトでの当たり負けを抑える。

TOUR AD EK
→ 中間から先端を動かしながら、曲げ・ねじれ・つぶれという余計な変形を抑える。

それぞれ方法は違います。

しかし目指している方向は共通しています。

先調子のスピード感は残す。
先調子の暴れやすさは減らす。

ということです。

これまで、

先調子の球の上がりやすさ、つかまり、スピード感は欲しい。
しかし、先調子では左へ行く、当たりがばらつく。

という理由で使えなかったゴルファーもいたはずです。

今回の新しいシャフトは、その部分を新しい素材や構造によって分離しようとしている。

つまり、

先を動かすことが問題なのではなく、先が「余計に」動くことが問題だった。

そこを制御できるようになったことが、最近の先調子系シャフトの進化ではないかと思います。

この第3話まで並べると、かなりきれいに一本のテーマになります。

元調子=遅れは減らす。
中調子=動きの偏りを減らす。
先調子=暴れを減らす。

つまり最近のシャフトは、調子によるメリットを残したまま、その調子特有のデメリットだけを新しい技術で取り除こうとしている、という全体像です。

新しシャフトの作り方 中調子

今回追加される中調子系は、

  • LIN-Q PowerCore RED
  • ATTAS RX PURE BLUE
  • 26 VENTUS TR BLUE

の3本です。

※26 VENTUS TR BLUEはメーカー表記では中元調子ですが、今回は中調子系として見ていきます。

この3本にも、元調子系と同じような傾向が見えます。

従来の中調子は、シャフト中央付近を大きくしならせることで、

タイミングが取りやすい、ヘッドを走らせやすい、幅広いゴルファーに合わせやすい

という特徴がありました。

しかし、中間部分の動きが大きくなりすぎると、

しなり戻りが急になる、タイミングによってヘッドの位置が変わる、インパクトで挙動が安定しにくい

という問題も生まれます。

つまり、

中調子の動きやすさは欲しい。
しかし、中間部分だけが大きく動くシャフトでは結果が安定しない。

というゴルファーもいるわけです。

今回の3本は、それぞれ違う方法で、この中調子の弱点を薄めています。

LIN-Q PowerCore REDは、中調子らしい動きを残しながら、シャフト全体を連続的にしならせる方向です。

中間だけが大きく動くのではなく、手元から先端までを滑らかにつなげることで、

動くけれど、急激には動かない中調子

にしていると考えられます。

ATTAS RX PURE BLUEは、さらにニュートラルな方向です。

特定の部分を強くしならせるというより、

シャフト全体を素直にしならせ、素直に戻す。

試打でも「クセがない」という評価が多く、中調子の特徴そのものをかなり滑らかにしたシャフトと言えそうです。

26 VENTUS TR BLUEは、中元調子という位置付けです。

中間部分には適度な動きを持たせながら、先端の安定性を強く残しています。

つまり、

中調子のタイミングの取りやすさは残しながら、インパクト付近の余計な動きを抑える

方向です。

3本をまとめると、

LIN-Q PowerCore RED
→ 中調子の動きを、全体へ滑らかにつなげる。

ATTAS RX PURE BLUE
→ 中調子のクセそのものを薄め、ニュートラルにする。

26 VENTUS TR BLUE
→ 中間の動きを残しながら、先端の安定性を高める。

という違いがあります。

しかし共通しているのは、

中調子の動きやすさは残す。
中調子の急激な動きは減らす。

という方向です。

元調子系では、

「元調子の球質は欲しいが、従来の元調子では結果が出なかったゴルファー」

への対応が進んでいました。

中調子系でも同じです。

中調子の振りやすさは欲しい。
しかし、シャフトの動きが大きすぎると結果が安定しない。

そうしたゴルファーに対して、新しい素材や構造によって、

中調子らしさを残しながら、その欠点を薄めている。

これが、今回追加される中調子系シャフトに共通する特徴ではないかと思います。

新しいシャフトの作り方 元調子

今回追加される元調子系は、

  • ATTAS RX ULTRA BLACK
  • LIN-Q PowerCore WHITE
  • 26 VENTUS TR BLACK

の3本です。

それぞれ方向性の違いはありますが、3本に共通しているのは、元調子をベースにしながら、従来の元調子らしさを薄めているという点です。

これまでの元調子には、

左に行きにくい、強く叩ける、強い球が打ちやすい

というメリットがありました。

一方で、

ヘッドが遅れる、球が上がりにくい、つかまりにくい、タイミングが取りにくい

と感じるゴルファーも少なくありませんでした。

つまり、

元調子のような球質は欲しい。
しかし、従来の元調子では結果が出ない。

というゴルファーが存在していたわけです。

今回の3本は、そうした層に対応するために、新しい素材や構造を使って、元調子のメリットを残しながら、その欠点を小さくしたシャフトと見ることができると思います。

例えば、

ATTAS RX ULTRA BLACKは、元調子でありながらヘッドの遅れ感を抑え、球を上げやすくする。

LIN-Q PowerCore WHITEは、手元だけを大きくしならせるのではなく、シャフト全体を連続してしならせることで、元調子に中調子的な滑らかさを加える。

26 VENTUS TR BLACKは、高い剛性と低スピン性能を残しながら、硬さによる唐突さやタイミングの取りにくさを減らす。

つまり、3本とも方法は違います。

しかし目指している方向は共通しています。

元調子の球質は残す。
元調子の扱いにくさは減らす。

これが、今回追加される元調子系3本に共通する特徴ではないでしょうか。

言い換えれば、これまで「元調子は合わない」と考えていたゴルファーの中にも、

本当は元調子の球質が合っていたのに、従来型の元調子の動き方が合わなかった人がいる

ということです。

新しいテクノロジーによって、その両者を分けて考えられるようになってきた。

ここに、最近の元調子系シャフトの大きな進化があるように思います。

プロの本当の凄さは、どこにあるのか

金沢ゴルフ協会のジュニア教室の木曜練習会の横で、「北陸のドラえもん」こと中村忠夫プロがレッスンをされています。

よく、子供たちのところにも遊びに来てくれるだけでなく、時折、ジュニアのラウンドにも付き添ってくださっています。

ツアー優勝経験を持つプロが、自分たちのラウンドを見てくれる。

考えてみれば、何とも恵まれた環境です。

先日も中村プロに顔を出していただいたので、ジュニアたちに聞いてみました。

「中村プロのどの部分が参考になった?」

すると返ってきた答えは、

「飛距離がすごいんですよ。」

でした。

私は思わず、

「えっ、そこなの?」

と言ってしまいました。

もちろんプロですから飛距離も出ます。

しかし、一番自分たちと違うところは、そこではないのではないか。

中村プロは、子供たちが無理な攻め方をしたり、難しいアプローチを選択したりすると、

「プロはそんなことしないよ」

と教えてくださっているそうです。

そこで私はジュニアたちに、

「中村プロって、30ヤード以内まで来たら、そこからほとんど2打で終わっていることに気づいていない?」

と聞きました。

すると中村プロは、それを肯定しながら、こうおっしゃいました。

「そうなんだけど、杉原輝雄プロはそれが50ヤードだったのよ。」

この一言は非常に印象的でした。

ツアー優勝経験を持つ中村プロにとって、30ヤード以内はかなり高い確率で2打で終われる領域。

ところが杉原輝雄プロになると、その領域が50ヤードまで広がっていたというのです。

さらに私は以前、先生の木場本弘治元日本体育大学ゴルフ部監督から、

「デビッド・デュバルは90ヤード以内なら3ヤード刻みで距離を打ち分けることができた」

と聞いたことがあります。

デュバルは実際に世界ランキング1位まで上り詰めた選手です。

もちろん、

30ヤードならツアー優勝できる。

50ヤードならトッププロになれる。

90ヤードなら世界一になれる。

そんな単純な公式があるわけではありません。

しかし、この三つの話を並べてみると、プロゴルファーの「上手さ」を見る一つの物差しが見えてくるように思います。

30ヤード以内を2打で終えられるツアープロ。

その領域が50ヤードまで広がるトッププロ。

そして90ヤード以内を数ヤード単位で管理する世界トップレベル。

つまり、レベルが上がるほど、

「ここまで運べば、あとは大きなミスをせずにホールアウトできる」

という領域が広く、そして細かくなっていくのではないでしょうか。

飛距離は分かりやすいものです。

一球見れば、

「すごい。」

と分かります。

しかし、本当に上手いゴルファーの凄さは、一球ではなかなか分かりません。

18ホール一緒に回って初めて、

「グリーンを外しているのにボギーにならない。」

「30ヤード以内に来たら、いつも2打で終わっている。」

と気づきます。

そこに、ツアープロとアマチュアの大きな違いがあります。

だからジュニアたちには、中村プロの飛距離だけを見てほしくありません。

どういう場所からピンを狙うのか。

どこでは無理をしないのか。

どんなアプローチを選択するのか。

そして、グリーンを外した後に何打でホールアウトしているのか。

せっかくツアー優勝経験のあるプロが一緒に回ってくれているのです。

プロの球を見るだけではなく、プロがどうやってスコアを作っているのかを見る。

それができるようになれば、この恵まれた環境から学べるものは、さらに大きくなると思います。

ドライバー・FWオプションシャフトが追加さました。

今年もシャフトメーカーの新しいシャフトの発売とともに新しいオプションシャフトが追加となります。

つ生かされるシャフトは計10本、昨年なぜかつかされなかったATTAS RX ULTRA BLACKもラインナップされました。

UST MAMIYAさんは

  • UST Mamiya ATTAS RX ULTRA BLACK
  • UST Mamiya LIN-Q PowerCore WHITE
  • UST Mamiya LIN-Q PowerCore RED
  • UST Mamiya ATTAS RX PURE BLUE

FUJIKURAさんは

  • FUJIKURA 26 VENTUS TR BLACK
  • FUJIKURA 26 VENTUS TR RED
  • FUJIKURA 26 VENTUS TR BLUE
  • FUJIKURA SPEEDER NX WHITE

グラファイトデザインは

  • GRAPHITE DESIGN TOUR AD EK

三菱ケミカルさんは

  • 三菱ケミカル TENSEI 1K PRO ORANGE RIP+

です。 “ドライバー・FWオプションシャフトが追加さました。” の続きを読む

Trajectory Tuning 2.0 はロフトとライ角だけか?

Trajectory Tuning 2.0 によって、変化するのはロフトとライ角だけでしょうか?

昨日の図では、固定されたヘッドに対してシャフトの方向がどのように変化するかを示しました。

この方法でロフトとライ角が変化するのは、ゴルファーが実際にはシャフトを一定の方向に構えて使うからです。

つまり、ゴルファー側から見れば、

シャフトが動いているというより、ヘッドの姿勢が変わっている

と考えた方が分かりやすいわけです。

そして私たちが扱っているクラブは、当然ながら3次元空間に存在しています。

そうであれば、

ロフトだけが変わる。
ライ角だけが変わる。

ということはありません。

もう一つ変化するものがあります。

そうです。

フェースアングルです。

フェースアングルも変わっている

例えば、Standardのライ角を59°として近似計算すると、次のようになります。

位置 ロフト変化 ライ角変化 実ライ角 フェースアングル変化※
Standard 59.00°
Small + +1.06° −0.44° 58.56° 約1.73° Closed
Big + +1.50° −1.50° 57.50° 約2.35° Closed
Flat + +1.06° −2.56° 56.44° 約1.60° Closed
Flat −3.00° 56.00°
Flat − −1.06° −2.56° 56.44° 約1.60° Open
Big − −1.50° −1.50° 57.50° 約2.35° Open
Small − −1.06° −0.44° 58.56° 約1.73° Open

ライ角60°で同じように計算すると

位置 ロフト変化 ライ角変化 実ライ角 フェースアングル変化※
Standard 60.00°
Small + +1.06° −0.44° 59.56° 約1.80° Closed
Big + +1.50° −1.50° 58.50° 約2.45° Closed
Flat + +1.06° −2.56° 57.44° 約1.66° Closed
Flat −3.00° 57.00°
Flat − −1.06° −2.56° 57.44° 約1.66° Open
Big − −1.50° −1.50° 58.50° 約2.45° Open
Small − −1.06° −0.44° 59.56° 約1.80° Open

59°基準より60°基準の方が、同じロフト変化でもフェースアングルの変化が少し大きくなります。

つまり、ライ角がアップライトになるほど、ロフト調整によるフェースの開閉への影響も大きくなっていきます。

※フェースアングルはPING公式公称値ではなく、今回の幾何モデルによる近似値です。

「見た目」はフィッティングで無視できない

ここは、実際のフィッティングではかなり重要です。

人によってはフェースアングルを非常に気にします。

Closed、俗にいう**「かぶって見える」**状態を嫌う人は少なくありません。

特に左へのミス、フックを嫌うゴルファーは、構えた瞬間にフェースが少し閉じて見えるだけでも違和感を持つことがあります。

反対に、もともとボールをつかまえることが苦手なゴルファーの場合は、フェースが開いて見えることを嫌います。

つまり、同じ実ロフトが欲しいからといって、単純にスリーブだけでロフトを調整すればよいとは限らないのです。

例えば10°のロフトが欲しい場合でも、

9°のヘッドを+側に調整して10°に近づける

方法と、

10.5°や12°など、よりロフトの大きなヘッドを−側に調整して10°付近へ持ってくる

方法では、構えた時のフェースアングルが違って見えます。

前者ならフェースはClosed方向へ。

後者ならOpen方向へ。

同じようなリアルロフトになったとしても、ゴルファーから見えるクラブは別物になるわけです。

だから「何度にしたか」だけでは足りない

フィッティングでは、

最終的なロフトが何度になったか

だけを見ても十分ではありません。

同時に、

ライ角はどうなったのか。
フェースアングルはどう見えるのか。
その見え方をゴルファー本人がどう感じるのか。

まで見なければなりません。

ですから私は、その人に合わせて、

一つロフトの少ないヘッドを使って+側へ調整する

こともあれば、

一つロフトの多いヘッドを使って−側へ調整する

こともあります。

目的は単にロフトを合わせることではありません。

必要なリアルロフトを作りながら、その人が構えやすいフェースアングルまで作ること。

これもフィッティングの仕事です。

Trajectory Tuning 2.0を「ロフト調整機能」とだけ考えてしまうと、この部分を見落としてしまいます。

実際には、

ロフト
ライ角
フェースアングル
シャフト長

という4つが同時に関係しています。

そして、その3つの組み合わせによって、

ボールの飛び方だけでなく、ゴルファーがアドレスした時に感じるクラブの見え方まで変わる。

ここまで考えて初めて、Trajectory Tuning 2.0をフィッティングに活かすことができるのではないでしょうか。

Trajectory Tuning 2.0 の秘密

Trajectory Tuning 2.0が具体的にどのような構造になっているのか、想像図を作成してみました。

稚拙な図で申し訳ありませんが、一点鎖線で示した中心線に対して、シャフト軸が約1.5°傾くような構造になっているのではないか、と考えています。

あくまで構造から逆算した推測です(笑)。

しかし、この1.5°という数字で考えると、Trajectory Tuning 2.0の動きが非常にきれいに説明できます。

8ポジションなので、スリーブは45°ずつ回転します。

Standardを基準にすると、90°回転したところでロフト方向の変化が最大となり、

+1.5°または−1.5°

になります。

さらに180°回転すると、ロフト方向の変化は再びゼロに戻り、その代わりライ角が

3°フラット

になります。

つまり、1.5°傾いた軸を回転させることで、ロフトとライ角の組み合わせを作っていると考えられます。

なぜ、こんな構造にしたのか

ここで面白いのが、やはり重量です。

 

PINGは、ホーゼル周辺の重量がヘッド性能に与える影響を非常に重視しています。

G440から採用されたFree Hosel Designも、まさにその延長線上にあります。

少しでもホーゼル周辺を軽くし、その重量をヘッド後方や低い位置へ再配分する。

数グラムの差であっても、慣性モーメントや重心位置には影響します。

そう考えると、複雑な調整機構を追加するのではなく、

1.5°傾けた一つの軸を回転させるだけで、複数のロフト・とライ角を作る

という仕組みは、非常に合理的です。

Trajectory Tuning 2.0は、単なる調整機能ではなく、

軽量化・調整機能・ヘッド性能を、一つのシンプルな構造の中で成立させるための設計

と考えることもできます。

ただし、フィッティングでは話が変わる

問題はここからです。

こういう構造になっているのであれば、スリーブを動かした時に変わるのは、ロフトだけではありません。

ライ角も変わります。

そして、ライ角が変われば、

フェースアングルへの影響も変わります。

クラブは三次元の物体です。

ロフト、ライ角、フェースアングルは、完全に独立しているわけではありません。

つまり、

「+1°にした」

というだけでは、実際にクラブで何が変わったのかを十分には説明できないということです。

ロフトが変わり、

ライ角も変わり、

その組み合わせによってフェースアングルにも影響が出る。

フィッティングでは、この3つをセットで考える必要があります。

例えば左へのミスが減ったとしても、

ロフトが変わったからなのか。

ライ角がフラットになったからなのか。

フェースアングルが開く方向へ変化したからなのか。

あるいは、そのすべてが同時に作用した結果なのか。

そこまで考えなければ、本当の意味で「なぜ球筋が変わったのか」は分かりません。

Trajectory Tuning 2.0は便利な機能ですが、便利だからこそ、

どのポジションに合わせたかではなく、そのポジションで何が変わったのか

を理解して使う必要があります。

次回は、

ライ角が変わることで、フェースアングルがどのように変化するのか

を、具体的な数字で見ていきたいと思います。