加齢で飛ばなくなった人に、まだ残っている武器

有効重量で考えるスインガースイング・第7話

前回は、

ベクトル分散が飛距離を奪う

という話をしました。

飛距離に必要なのは、力の大きさだけではありません。
その力が、どの方向へ通っているかです。

ヘッドスピードを上げても、力が上に逃げれば吹け上がります。
横に逃げれば曲がります。
ロフトが増えればスピンに変わります。
フェースが暴れれば打点が散ります。

つまり、力は出しているのに、ボールスピードや飛距離に変わらない。

これがベクトル分散です。

スインガーに必要なのは、有効重量を大きくすること。
そして、その有効重量を散らさずにボールへ届けることです。

今回は、この考え方を、年齢を重ねたゴルファーに当てはめて考えてみたいと思います。


年齢とともに飛距離が落ちた、という相談はとても多くあります。

以前よりドライバーが飛ばない。
アイアンの番手が一つ変わった。
同じように振っているつもりなのに、ボールが前に行かない。
若い頃のようにヘッドが走らない。

こういう悩みは、年齢を重ねたゴルファーには自然に起こります。

なぜなら、加齢によって筋肉の収縮スピードは落ちやすいからです。

若い頃のように、瞬間的に速く動かす。
腕を鋭く振る。
切り返しで一気に加速する。
インパクトで強く叩く。

こうした能力は、どうしても年齢の影響を受けます。

その結果、ヘッドスピードは落ちやすくなります。

これは、ある程度は自然なことです。

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PING i540打感考察①

PING i540の打感は、なぜ「柔らかい」だけでは説明できないのか

——海外レビューの “hot / solid / muted” から読み解く

PING i540アイアンについて、海外レビューも含めて確認していると、少し面白いことに気づきました。

日本では、i540の打感について、

「打感が良い」
「柔らかい」
「中空とは思えない」
「音が静か」

という表現が多く見られます。

もちろん、i540の打感は非常によく作られていると思います。

ただ、海外レビューでは少し表現が違います。

i540の打感を単純に soft と言うよりも、

hot
solid
muted
lively
responsive

といった言葉で表現しているものが目立ちます。

ここが、とても気になりました。

日本語で「打感が良い」と言うと、多くの方はまず「柔らかい打感」を想像するかもしれません。

軟鉄鍛造のように、しっとりしている。
手に伝わる衝撃が丸い。
フェースにボールが乗るように感じる。

そういう感覚です。

しかし、海外レビューで使われる hot は、それとは少し違います。

hot は、ゴルフクラブの打感で使われる場合、

ボールが強く出る
初速感がある
自分の想像より打球が前へ出る

という意味に近いと思います。

つまり、i540の打感は、

「柔らかく沈み込む」

というより、

一瞬受け止めて、そこから強く出る

と表現したほうが近いのかもしれません。

ここで、日本語の表現の難しさがあります。

たとえば英語では、「辛い」にもいくつかの言い方があります。

salty なら、塩辛い。
hot なら、唐辛子のような熱い辛さ。
spicy なら、香辛料が効いた刺激。

日本語では、これらをまとめて「辛い」と言ってしまうことがあります。

「甘い」も同じです。

砂糖の甘さだけでなく、

米が甘い。
脂が甘い。
出汁が甘い。

本当は、旨みやコク、角の取れた丸さを感じているのに、「甘い」と表現することがあります。

打感も、これに近いと思います。

日本語の「打感が良い」という言葉の中には、実はいろいろな感覚が含まれています。

柔らかい。
芯がある。
音が低い。
振動が少ない。
球が強く出る。
打点が分かる。
嫌な硬さがない。
弾くけれど雑ではない。

これらをまとめて、私たちは「打感が良い」と言ってしまうことがあります。

しかし英語レビューでは、その中身をもう少し分けます。

soft は、柔らかい。
軟鉄鍛造のように、衝撃が丸く、しっとりした打感です。

hot は、打球が強く出る。
フェースからボールが勢いよく飛び出す感覚です。

solid は、芯がある。
薄っぺらくなく、当たり負けしない感覚です。

muted は、音や振動が抑えられている。
甲高い音や余計な響きが少ない打感です。

lively は、反応が良い。
ボールが元気よく出る感覚です。

responsive は、入力に対して返りがある。
打点や当たり方の情報が手に伝わる感覚です。

こう考えると、海外レビューでi540が soft というより hot / solid / muted と表現されている理由が見えてきます。

i540は、軟鉄鍛造アイアンのように、ただ柔らかく沈み込む打感を目指したクラブではありません。

C300マレージング鋼の薄肉フェースを使い、フェースをたわませ、その復元でボール初速を作るアイアンです。

つまり、打感の中には明らかに「出球の強さ」があります。

しかし、その強さが不快な硬さとして出ていない。

ここが重要です。

薄肉フェースのアイアンは、一歩間違えると、

カチッと硬い。
パチンと軽い。
音が高い。
中空っぽく響く。

という印象になりやすいです。

ところがi540では、inR-Airやi-Beamによって、余計な音と振動を抑えています。

そのため、球は強く出る。
しかし、音は暴れない。
フェースの弾きはある。
しかし、手には嫌な硬さとして残りにくい。

だから海外レビューでは、単純に soft ではなく、

hot
solid
muted

という表現になるのだと思います。

日本語で言えば、

強く出るのに、嫌な硬さがない打感

です。

あるいは、

弾くのに、雑ではない打感

と言ってもよいかもしれません。

ここを「柔らかい」とだけ言ってしまうと、i540の本当の良さが少しぼやけます。

i540の打感は、軟鉄鍛造のしっとりした柔らかさとは違います。

しかし、ただ硬く弾くわけでもありません。

一瞬、ボールを受け止める。
そこから、自分が想像しているよりも強い打球が出る。
そして、その強さを音や振動で過剰に主張しない。

このあたりが、i540の打感の面白さだと思います。

日本のレビューで「打感が良い」と言われる理由も、海外レビューで hot / solid / muted と表現される理由も、おそらく同じところを見ています。

ただ、使っている言葉が違う。

日本語では「打感が良い」とまとめる。
海外では、その中身を hot、solid、muted と分ける。

その違いです。

ですから、i540の打感を理解するうえでは、まずこの整理が大事になります。

i540は、柔らかいだけのアイアンではありません。

むしろ、

強く出る。
芯がある。
音と振動は抑えられている。

この3つがそろった打感です。

そしてこの「強く出るのに、嫌な硬さがない」という感覚は、昔の良いアイアンを知っているゴルファーほど、少し懐かしく感じる部分があるのかもしれません。

次回は、実際にi540を打ったトップアマの方が口にした、

「なんて打感が良いんだ」

という言葉から、この打感の正体をもう少し掘り下げてみたいと思います。

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ベクトル分散が飛距離を奪う

有効重量で考えるスインガースイング・第6話

前回は、

ヘッドスピードを上げたつもりが、なぜ軽く当たってしまうのか

について考えました。

飛ばそうとして、もっと速く振る。
もっと強く振る。
もっと手を使う。
もっとヘッドを走らせる。

その気持ちは、とてもよく分かります。

しかし、その動きによって身体とクラブの接続が切れてしまうと、有効重量は小さくなります。

つまり、ヘッドは速く動いている。
しかし、ボールにぶつかっているものは軽い。

これが、

速く振っているのに、軽く当たっている

という状態です。

今回は、そこからさらに一歩進めて、

ベクトル分散

について考えてみます。


飛距離を考えるとき、多くの人は力の大きさを考えます。

もっと強く振る。
もっと速く振る。
もっと大きく動く。

もちろん、力の大きさは大切です。
エネルギーが小さければ、ボールは飛びません。

しかし、ゴルフで本当に難しいのは、

その力がどの方向へ向かっているか

です。

力は、大きければよいわけではありません。

前に届く力。
上に逃げる力。
横に逃げる力。
フェースを開閉させる力。
ロフトを増やす力。
スピンに変わる力。

同じように強く振っていても、その力がどこへ向かっているかによって、結果はまったく変わります。

私はこの、力の向きがあちこちへ散ってしまう状態を、

ベクトル分散

と考えています。


たとえば、ヘッドスピードを上げようとして、手でヘッドを走らせたとします。

クラブヘッドは速く動いているように感じるかもしれません。
しかし、身体とクラブの接続が切れると、クラブは安定した方向へ動きにくくなります。

その結果、力の向きが散ります。

ボールを前へ押す力にならず、
フェースを開く力になったり、
ロフトを寝かせる力になったり、
スピンを増やす力になったり、
横方向へ曲げる力になったりします。

本人は強く振っている。
しかし、その強さがボールを前へ飛ばす方向へ集中していない。

これが、ベクトル分散です。


ベクトル分散が起きると、ボールは弱くなります。

ヘッドスピードは出ている。
でも、ボールスピードが出ない。

フェースに当たっている。
でも、前に強く進まない。

高く上がる。
でも、キャリーが出ない。

スピンが増える。
曲がる。
打点が散る。

こういう現象は、単に「ミスショット」と片づけるよりも、

エネルギーが前方へ集中していない

と考えた方が分かりやすい場合があります。

クラブは動いている。
力も出している。
しかし、ボールへ向かう一本の方向へまとまっていない。

だから、飛距離にならないのです。


ここで、有効重量の話とつながります。

有効重量が大きくても、ベクトルが分散すれば、ボールには届きません。

逆に、有効重量が小さく、さらにベクトルも分散していれば、最悪です。

腕だけでクラブを速く動かす。
有効重量は小さくなる。
身体とクラブの接続も切れる。
力の向きも散る。

こうなると、本人は一生懸命振っているのに、ボールは強くなりません。

むしろ、

頑張るほど曲がる
強く振るほどスピンが増える
速く振るほど当たりが薄くなる

ということが起きます。

これは努力不足ではありません。
力の通り道の問題です。


では、スインガーは何が違うのでしょうか。

スインガーは、力を出していないわけではありません。
むしろ、身体とクラブが一体化しているため、有効重量は大きくなります。

しかし、その力が散りにくい。

身体とクラブがつながっている。
クラブが急に暴れない。
手先だけでフェースを返さない。
インパクトで急に押し込まない。
身体が前へ突っ込まない。

その結果、力の向きがそろいやすくなります。

上に逃げる力ではなく、
横に逃げる力でもなく、
ロフトを寝かせる力でもなく、
ボールを前へ進める力として届きやすくなる。

これが、スインガーの強さです。


ここで、よくある誤解があります。

では、真っすぐ前に押せばよいのか?

という考えです。

しかし、ゴルフスイングは単純に直線的に押す運動ではありません。

クラブは円運動をしています。
身体も回転しています。
シャフトも傾いています。
ロフトもあります。
フェース面もあります。

その中で、ボールに対してどの方向に力が通るのか。

ここが重要です。

ですから、ベクトルをそろえるというのは、単にボール方向へ体を突っ込ませることではありません。
また、手でボールを押すことでもありません。

身体とクラブが一体化した運動の中で、結果として力がボールへ通る状態を作ることです。


ここで、ライン・オブ・コンプレッションの話が出てきます。

ライン・オブ・コンプレッションとは、簡単に言えば、インパクトで力がボールに圧縮として通る方向です。

この方向に力が通れば、ボールは強くなります。

反対に、このラインから外れれば、エネルギーは逃げます。

ロフトが増えすぎれば、上に逃げる。
フェースが開けば、横に逃げる。
手元が止まれば、フェースが返りすぎる。
身体が突っ込めば、入射角や最下点が乱れる。

つまり、ベクトル分散とは、ライン・オブ・コンプレッションに力が集まっていない状態とも言えます。

スインガーを考えるうえで、ここは非常に大切です。


多くのゴルファーは、飛距離を伸ばすために力を増やそうとします。

しかし、本当に必要なのは、

力を増やすこと

だけではありません。

力を散らさないこと

です。

これは、とても大事な違いです。

力を増やしても、上や横に逃げれば飛距離にはなりません。
むしろ、曲がりやスピンや身体への負担が増えるだけです。

一方、力そのものがそれほど大きく見えなくても、向きがそろっていれば、ボールは強くなります。

だから、上手い人のスイングは静かに見えることがあります。

力がないのではありません。
力が散っていないのです。


この見方をすると、

軽く振っているのに飛ぶ

という現象も、さらに分かりやすくなります。

軽く振ったから飛んだのではありません。
余計な力が入らなかったことで、身体とクラブの接続が切れにくくなった。
有効重量が逃げにくくなった。
そして、力の向きが分散しにくくなった。

その結果、ボールへ届く出力が大きくなった。

つまり、軽く見えるスイングは、

力が小さいスイング

ではなく、

力の無駄が少ないスイング

である可能性があります。

ここを間違えると、ただ力を抜くだけのスイングになってしまいます。


スインガーは、弱く振る人ではありません。

スインガーは、有効重量を逃がさず、力の向きをそろえる人です。

クラブを手で走らせるのではなく、身体とクラブが一体化した運動の結果として、クラブが走らされる。

そして、そのクラブの運動が、ライン・オブ・コンプレッションへ向かって通る。

だから、見た目には力感が少なくても、ボールは強い。

これが、スインガーのメカニズムです。


今回の結論は、こうです。

飛距離に必要なのは、力の大きさだけではありません。
その力が、どの方向へ通っているかです。

ヘッドスピードを上げても、力が上に逃げれば吹け上がります。
横に逃げれば曲がります。
ロフトを増やせばスピンに変わります。
フェースを暴れさせれば打点が散ります。

つまり、力は出しているのに、ボールスピードや飛距離に変わらない。

これがベクトル分散です。

スインガーに必要なのは、

有効重量を大きくすること
そして、その有効重量を散らさずにボールへ届けること

です。

速さ。
重さ。
方向。

この三つがそろって、初めてボールスピードになります。


次回は、ここから少し視点を変えて、

加齢で飛ばなくなった人に、まだ残っている武器

について考えてみます。

年齢とともに、筋肉の収縮スピードは落ちます。
ヘッドスピードが落ちるのは自然なことです。

しかし、身体の重さまで失ったわけではありません。

むしろ、若い頃より体重が増えている方も多いはずです。

次回は、加齢ゴルファーこそ、なぜスインガーの考え方が必要なのかを考えてみたいと思います。

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第3話 仕上げで何打変わるのか

数字で見る「スコアメイクの正体」

前回は、

仕込みのミスは、仕上げである程度カバーできることがある。
しかし、仕上げのミスは、そのホールの中ではカバーしにくい。

という話を書きました。

今回は、その感覚的な話を、少し数字で見てみます。

ゴルフは感覚のゲームでもありますが、スコアそのものは極めて単純です。
何打で終えたか。
それだけです。

ですから、ショートアプローチとパットをまとめた仕上げが、実際にどれくらい打数差を生むのかを見ていくと、スコアメイクの中身がかなりはっきりしてきます。 “第3話 仕上げで何打変わるのか” の続きを読む

ヘッドスピードを上げたつもりが、なぜ軽く当たるのか

有効重量で考えるスインガースイング・第5話

前回は、有効重量を数字で考えてみました。

腕だけでクラブを動かしている場合の有効重量を、仮に 1〜2kg前後
身体とクラブが一体化している場合の有効重量を、仮に 5〜12kg前後

もちろん、これは実測値ではありません。
有効重量の考え方を分かりやすくするための推測値です。

しかし、この数字を使って運動エネルギーを考えると、非常に大切なことが見えてきます。

同じ速度でも、有効重量が違えば、エネルギーは大きく変わる。
つまり、ヘッドスピードだけでは、ボールに届くエネルギーを説明できないということです。

今回は、そこから一歩進めて考えます。

多くのゴルファーが、

ヘッドスピードを上げようとして、かえって軽く当たっている

という問題です。

“ヘッドスピードを上げたつもりが、なぜ軽く当たるのか” の続きを読む

第2話 仕込みは救えても、仕上げは救いにくい

前回、ゴルフは大きく分けると
仕込み仕上げ で考えると整理しやすい、という話を書きました。

  • 仕込み
    ティショットから、グリーン近くまで運ぶまでのショット
  • 仕上げ
    ショートアプローチとパット

仕込みは、そのホールを楽にするための下準備。
仕上げは、その下準備を実際の数字に変える工程です。

この見方をすると、ゴルフというゲームの少し厳しいところも見えてきます。

それは、

仕込みのミスは、仕上げである程度カバーできることがある。
しかし、仕上げのミスは、そのホールの中ではカバーしにくい。

ということです。
“第2話 仕込みは救えても、仕上げは救いにくい” の続きを読む

ヘッドスピードだけでは埋まらない、有効重量の差

有効重量で考えるスインガースイング・第4話

前回は、

軽く振った方が飛ぶ理由

について考えました。

軽く振ったから飛んだのではなく、軽く振ったことで身体とクラブの接続が切れず、有効重量が逃げなかったのではないか、という話です。

今回は、その有効重量をもう少し数字で考えてみたいと思います。

もちろん、これから出す数字は実測値ではありません。
有効重量は、体重そのものでも、クラブの重さそのものでもありません。

インパクトの瞬間に、ボールとの衝突にどれだけの重さが参加しているか。

それを分かりやすく考えるための推測値として、今回は数字を置いてみます。


まず、腕だけでクラブを動かしている場合を考えます。

この場合、クラブは速く動いているように見えても、身体との接続が切れていれば、ボールとの衝突に参加している重さは小さくなります。

私は、この状態の有効重量を、

1〜2kg前後

くらいで考えるとよいのではないかと思っています。

一方、身体とクラブが一体化している場合。

腕だけではなく、身体の重さがクラブを通じてボールへ届いている。
この状態では、有効重量は大きくなります。

この場合の有効重量は、

5〜12kg前後

くらいで考えると、イメージしやすいと思います。

繰り返しますが、これは体重5kgや12kgを直接ボールにぶつけているという意味ではありません。
身体とクラブが一体化することで、クラブヘッドの運動にどれだけ身体の質量が関与しているかを説明するための推測値です。


ここで、運動エネルギーの式を使います。

ここで、

  • E はエネルギー
  • m は有効重量
  • v は速度

です。

この式で大事なのは、エネルギーは速度だけで決まるわけではない、ということです。

速度も大切です。
しかし、重さも大切です。

つまり、ヘッドスピードだけを見ていては、ボールに届くエネルギーを正しく見られないのです。


仮に、速度を同じ 10m/s として考えてみます。

まず、腕だけでクラブを動かしている場合。
有効重量を1kgとすると、

有効重量を2kgとすると、

つまり、腕だけで動いている状態では、同じ10m/sでも、エネルギーはおよそ 50〜100J になります。

では、身体とクラブが一体化している場合はどうでしょうか。

有効重量を5kgとすると、

有効重量を12kgとすると、

つまり、同じ10m/sでも、エネルギーはおよそ 250〜600J になります。

かなり大きな差です。


整理すると、こうなります。

状態 推測される有効重量 速度 エネルギー
腕だけで動いている 1kg 10m/s 50J
腕だけで動いている 2kg 10m/s 100J
身体とクラブが一体 5kg 10m/s 250J
身体とクラブが一体 12kg 10m/s 600J

この表を見ると、ヘッドスピードだけでは説明できないことが分かります。

同じ速度でも、有効重量が違えば、エネルギーはまったく変わります。

腕だけの1kgと、身体とクラブが一体化した12kgでは、同じ速度でも計算上は 12倍 の差になります。

もちろん、この数字がそのままボール初速になるわけではありません。
実際には、打点、ロフト、フェース向き、入射角、スピン量、クラブヘッドの安定性など、さまざまな要素が関わります。

しかし、

同じ速度でも、有効重量が変われば、衝突エネルギーは大きく変わる

ということは、非常に重要です。


では、同じエネルギーを出すには、必要な速度はどう変わるでしょうか。

仮に、同じ 100J のエネルギーを出したいとします。

式を変形すると、

になります。

これで計算すると、次のようになります。

有効重量 100Jを出すために必要な速度
1kg 約14.1m/s
2kg 10.0m/s
5kg 約6.3m/s
12kg 約4.1m/s

ここがとても大切です。

有効重量が1kgしかなければ、100Jを出すには約14.1m/sの速度が必要です。
しかし、有効重量が12kgあれば、約4.1m/sで同じ100Jになります。

つまり、有効重量が大きければ、それほど速く動かさなくても同じエネルギーを出せるのです。

これが、

軽く振っているように見えるのに飛ぶ
コンパクトなのに飛ぶ
ゆっくり見えるのに球が強い

という現象の物理的な説明になります。


ここで、もう一度確認しておきたいことがあります。

この話は、

体重をボールにぶつければよい

という意味ではありません。

身体が前に突っ込む。
軸が流れる。
手で押し込む。
上から叩きつける。

これでは、身体の重さはあっても、ボールに正しく届きません。

むしろ、入射角が乱れたり、ロフトが変わったり、フェース向きが狂ったりします。
結果として、ボールスピードではなく、スピンや曲がり、打点のズレにエネルギーが逃げてしまいます。

大切なのは、身体とクラブが一体化した状態を保ち、その重さをクラブヘッドに伝えることです。

スインガーの考え方は、ここにあります。

速く振る前に、重さを逃がさない。
力を出す前に、方向を散らさない。
手で押す前に、身体とクラブの接続を切らない。

ここが重要です。


この数字の話から分かることは、非常にシンプルです。

ヘッドスピードは大切です。
しかし、ヘッドスピードだけでは足りません。

もしヘッドスピードを上げるために、身体とクラブの接続を切ってしまえば、有効重量は1〜2kgの世界に落ちてしまうかもしれません。

反対に、身体とクラブが一体化し、有効重量が5〜12kgの世界でボールに届けば、見た目にはそれほど強く振っていなくても、ボールは強く飛ぶ可能性があります。

つまり、

少し速く振ることより、重く当たることの方が大きな差になる場合がある

ということです。


多くのゴルファーは、飛距離が落ちると、まずヘッドスピードを上げようとします。

もっと速く振る。
もっと強く振る。
もっと手で走らせる。

しかし、その努力によって有効重量を失っているなら、結果は逆になります。

速く振っているのに飛ばない。
強く振っているのに球が弱い。
頑張っているのに曲がる。

それは、努力が足りないのではなく、努力の方向が違うのかもしれません。

スインガーの考え方では、クラブだけを速く動かすことを目指しません。

身体とクラブを一体化させ、有効重量を逃がさず、その重さをボールへ届ける。

その結果として、ボールスピードが出る。

ここが重要です。


有効重量は、目には見えません。
しかし、ボールの強さには現れます。

同じように振っているように見えても、球が強い人と弱い人がいる。
軽く振っているように見えて、よく飛ぶ人がいる。
コンパクトなトップなのに、強いボールを打つ人がいる。

その違いは、単なる才能やタイミングだけではありません。

ボールに届いている有効重量が違う。
そして、その有効重量がどれだけ逃げずに、正しい方向へ届いているかが違う。

私はそこに、スインガーの本質があると思っています。


今回の結論は、こうです。

ヘッドスピードだけでは、有効重量の差を埋められない場合がある。

腕だけで速く振るのか。
身体とクラブが一体化した状態で、重さを逃がさずに振るのか。

この違いは、少しのヘッドスピード差では埋まりません。

スインガーの飛距離は、力任せではありません。
単なる速さでもありません。

速さに、重さが乗っているのです。


次回は、この話をさらに進めて、

ヘッドスピードを上げたつもりが、なぜ軽く当たってしまうのか

を考えます。

腕でヘッドを走らせる。
手でクラブを急がせる。
フェースを返して飛ばそうとする。

これらは、一見すると飛ばす努力に見えます。
しかし、スインガー目線では、身体とクラブの接続を切り、有効重量を減らす原因にもなります。

次回は、ヘッドスピード信仰がなぜ飛距離を奪うことがあるのかを、もう少し掘り下げてみたいと思います。

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第1話 ゴルフは「ナイスショットの数」でできているわけではない

十分に100を切ることが出来ると思う生徒さんが、
「パー3でパーをとらないとスコアが出せない」
と話しているのを聞いて、私はハッとしました。

ああ、多くのゴルファーは、やはりスコアをこう見ているのだな、と思ったのです。

パー3なら、パーを取らなければいけない。
パー4なら、どこかでパーを拾わなければいけない。
パー5なら、できればパー、うまくいけばバーディー。

つまり、既定打数というものを、
ナイスショットを並べて達成する数字
だと捉えているわけです。

たしかに、その感覚はよく分かります。

パー3であれば、ティショットをグリーンに乗せて、2パット。
これがもっとも教科書的なパーの形です。
ですから、「パー3でパーを取れないと苦しい」と感じるのは自然です。

しかし、その言葉を聞いたときに、私は少し違うことを考えました。

本当にスコアとは、
ナイスショットを必要な回数だけ並べることで作るものなのか。

むしろ逆ではないか。
スコアというものは、ナイスショットの数ではなく、
必要打数の中で、どこまで破綻させずに進められるか
で決まっているのではないか。

そう考えると、ゴルフの見え方はかなり変わってきます。 “第1話 ゴルフは「ナイスショットの数」でできているわけではない” の続きを読む

軽く振った方が飛ぶ理由

有効重量で考えるスインガースイング・第3話

前回は、時速5キロの電車と三輪車の例から、有効重量について考えました。

同じ時速5キロでも、電車と三輪車では衝撃がまったく違います。
速度は同じでも、ぶつかってくるものの重さが違うからです。

ゴルフも同じです。

同じヘッドスピードでも、腕だけでクラブが動いているのか。
それとも、身体とクラブが一体化して動いているのか。

ここで、ボールに届く衝撃の重さは変わります。

今回は、多くのゴルファーが一度は経験している、

軽く振った方が飛ぶ

という現象について考えてみます。


ラウンド中や練習中に、こういう経験はないでしょうか。

思いきり振ったときより、少し抑えて振ったときの方が飛んだ。
飛ばそうとしたときより、軽く合わせたときの方がボールが強かった。
マン振りしたときより、力を抜いたときの方がミート率が良かった。

多くのゴルファーは、この現象を不思議に感じます。

なぜなら、普通に考えれば、

強く振れば飛ぶ
速く振れば飛ぶ
大きく振れば飛ぶ

と思っているからです。

しかし実際には、必ずしもそうなりません。

ここに、スインガースイングを考えるうえで大切なヒントがあります。


軽く振った方が飛ぶ。

この言葉をそのまま受け取ると、

力を抜けば飛ぶ

という話に聞こえるかもしれません。

しかし、私は少し違うと考えています。

軽く振ったから飛んだのではありません。
軽く振ったことで、身体とクラブの接続が切れなかったのです。

“軽く振った方が飛ぶ理由” の続きを読む

フィッティングをより深く考える④

数値は答えではなく、フィッティングへの問いです

PING Proving Grounds Episode 3「Fitting Matters」より

PING Proving Grounds Podcast Episode 3「Fitting Matters」を受けて、
ここまでフィッティングについて考えてきました。

第1話では、
フィッティングは上手くなってから受けるものではなく、
上手くなるために道具の前提条件を整える作業だと書きました。

第2話では、
ヘッドスピードだけでクラブを判断してはいけない、
という話をしました。

ヘッドスピードは入力側の数値です。
しかし、コースで結果として残るのは、
ボールスピード、打ち出し角、スピン量、落下角、左右のばらつきなど、
ボールがどう飛んだかです。

第3話では、
試打で一番飛んだ1球を信じすぎてはいけない、
という話をしました。

最高の1球は大切です。
そのクラブの可能性を示してくれます。

しかし、コースでスコアに残るのは、
最高の1球だけではありません。

平均値。
ミスした時の残り方。
左右の幅。
前後の距離差。
そして、その人が何度も出してしまう球。

ここを見るのがフィッティングです。

今回は、Episode 3 のまとめとして、
数値は答えではなく、フィッティングへの問いである
というテーマで考えてみたいと思います。


弾道計測器は、結果を示してくれる

現代の弾道計測器は非常に優秀です。

ヘッドスピード。
ボールスピード。
打ち出し角。
スピン量。
キャリー。
トータル距離。
最高到達点。
落下角。
左右のばらつき。

これらの数値を、かなり細かく見ることができます。

以前であれば、
「何となく高い」
「何となく吹けている」
「何となく右に出る」
という感覚で見ていたものが、
今は数字として確認できます。

これは、フィッティングにとって非常に大きな進歩です。

ただし、ここで勘違いしてはいけないことがあります。

弾道計測器は、
結果を示してくれます。

しかし、その結果を生んだ原因まで、
すべて自動で教えてくれるわけではありません。


数値が出ると、答えが出たように感じてしまう

試打室で数字が表示されると、
どうしてもその数字が答えのように見えます。

ボールスピードが速い。
だから良いクラブ。

スピン量が少ない。
だから良いクラブ。

キャリーが伸びた。
だから良いクラブ。

左右のブレが少ない。
だから良いクラブ。

もちろん、それぞれ大切な情報です。

しかし、その数値だけで判断してしまうと、
フィッティングはかなり危うくなります。

なぜなら、数値は単独で存在しているわけではないからです。

ボールスピードが出ている。
しかし、打ち出し角が低すぎる。

スピン量が減っている。
しかし、落下角が浅くなり、グリーンで止まりにくい。

キャリーが伸びている。
しかし、左右の幅も広がっている。

トータル距離は出ている。
しかし、コースでは止まる場所が読みにくい。

こういうことは、実際によくあります。

つまり、数値は単独で見るものではありません。
数値同士の関係を見なければなりません。


数値は、答えではなく問いである

私は、フィッティングにおける数値は、
答えではなく、問いだと思っています。

なぜ、このボールスピードなのか。

なぜ、この打ち出し角なのか。

なぜ、このスピン量なのか。

なぜ、右に出るのか。

なぜ、左に巻くのか。

なぜ、最高の1球は良いのに、平均値は悪いのか。

なぜ、試打室では良いのに、コースでは怖くなるのか。

ここを読むのがフィッティングです。

数値を見て終わりではありません。

その数値が、
クラブによって出ているのか。
スイングによって出ているのか。
アドレスによって出ているのか。
打点によって出ているのか。
それとも、それらが複合して出ているのか。

その原因を考える必要があります。


たとえば、右に出る球をどう読むか

たとえば、ボールが右に出るとします。

この時、単純に
「右に出るから、つかまるクラブにしましょう」
で終わってよいのでしょうか。

もちろん、それで改善するケースもあります。

しかし、右に出る理由はいくつもあります。

フェースが開いて当たっているのか。
クラブパスが右を向いているのか。
ライ角が合っていないのか。
長さが合わず、手元の位置がズレているのか。
シャフトが戻りにくいのか。
ヘッドタイプがその人に合っていないのか。
そもそもアドレスで右を向いているのか。

同じ「右に出る」という結果でも、
原因が違えば、提案するクラブも変わります。

ここを見ずに、
結果だけでクラブを決めてしまうと、
一時的には良く見えても、コースで再び問題が出ることがあります。


たとえば、スピン量が多い球をどう読むか

スピン量が多い場合も同じです。

スピン量が多い。
だからロースピンのヘッドにしましょう。

これも、必ずしも間違いではありません。

しかし、なぜスピンが多いのかを見なければなりません。

打点が下に入っているのか。
フェースが開いているのか。
ロフトが寝て当たっているのか。
入射角が強すぎるのか。
シャフトが合わず、インパクトでロフトが増えているのか。
ヘッドの重心特性が合っていないのか。

原因によって、
ロフトを変えるのか。
ヘッドを変えるのか。
シャフトを変えるのか。
長さを変えるのか。
あるいは、スイング側の課題として見るのか。

判断は変わります。

つまり、スピン量という数値そのものは答えではありません。
その数値が出た理由を考えるための入口です。


たとえば、ボールスピードが出ていない球をどう読むか

ボールスピードが出ていない場合も同じです。

ヘッドスピードはある。
しかし、ボールスピードが出ていない。

この場合、まず考えたいのは、
エネルギーがボールに効率よく伝わっているかどうかです。

打点がズレているのか。
フェースの向きが合っていないのか。
ロフト条件が悪いのか。
クラブが長すぎて芯に当たりにくいのか。
重すぎて振り遅れているのか。
軽すぎて手で合わせにいっているのか。
シャフトのタイミングが合っていないのか。

ボールスピードが出ないから、
もっと反発の良いヘッドにする。

それだけでは足りないことがあります。

なぜなら、ヘッドの性能以前に、
その人が芯で打ちやすい状態になっていない可能性があるからです。

フィッティングでは、
ボールスピードの数値そのものよりも、
なぜそのボールスピードになっているのか
を見る必要があります。


フィッターは、数値の通訳者である

弾道計測器は、数字を出してくれます。

しかし、その数字をどう読むかは、
フィッターの仕事です。

私は、フィッターは数値の通訳者でもあると思っています。

お客様にとって、
弾道計測器の数字は分かりやすいようで、
実は分かりにくいものです。

ボールスピードが高い。
スピン量が多い。
打ち出し角が低い。
左右のばらつきがある。

数字だけを見れば、そうです。

しかし、その数字が、
お客様のゴルフにとって何を意味するのか。

コースでどんなミスにつながるのか。
どのクラブを使う時に問題になるのか。
どこまでがクラブで整えられるのか。
どこからがスイング側の課題なのか。

そこを分かる言葉に置き換えるのが、
フィッターの役割だと思います。


試打室の数字と、コースの現実をつなげる

フィッティングで重要なのは、
試打室の数字を、コースの現実につなげることです。

試打室でキャリーが伸びた。
それは良いことです。

しかし、そのキャリーがコースで何を意味するのか。

ドライバーなら、
いつも越えられなかったバンカーを越えられるのか。
それとも、曲がった時にOBへ届きやすくなるのか。

アイアンなら、
番手間の距離がきれいに並ぶのか。
それとも、飛びすぎる1球が出て、グリーン奥が怖くなるのか。

ハイブリッドやフェアウェイウッドなら、
高さが出て、グリーンを狙えるのか。
それとも、低く強い球になりすぎて、止めにくいのか。

ウェッジなら、
スピン量が増えたことで止めやすくなるのか。
それとも、打ち出し角やキャリーが不安定になっているのか。

数字は試打室で出ます。
しかし、クラブを使うのはコースです。

ですから、フィッティングでは、
試打室の数字だけで終わらせず、
その数字がコースでどう働くのかを考える必要があります。


よくラウンドするコースも、フィッティングの情報になる

第3話でも書きましたが、
フィッターの役割は試打室の数値だけを見ることではありません。

お客様のスイングの特徴。
よくラウンドするコース。
想定されるミスの傾向。

ここまで踏まえて判断することが重要です。

たとえば、同じ右へのミスでも、
普段回るコースの右サイドがすぐOBなのか。
それとも、右は広くラフで止まるのか。

これによって、必要なクラブは変わります。

同じアイアンのキャリー不足でも、
よく行くコースのグリーン手前が安全なのか。
池やバンカーが多いのか。

これによって、見るべきポイントは変わります。

同じフェアウェイウッドでも、
セカンドでグリーンを狙うことが多いのか。
レイアップで前に進めることが多いのか。

これによって、求める高さや止まり方は変わります。

つまり、フィッティングは、
単に良い数字を出すクラブを探す作業ではありません。

その人が実際にプレーする環境で、
どのミスを減らし、どの結果を増やすべきかを考える作業です。


クラブで整えるべきことと、スイングで整えるべきこと

フィッティングで大切なのは、
クラブで整えるべきことと、
スイングで整えるべきことを分けて考えることです。

すべてをクラブのせいにしてはいけません。

しかし、すべてをスイングのせいにしてもいけません。

クラブが長すぎて芯に当たりにくい。
ライ角が合っていなくて方向に影響している。
シャフトが重すぎて振り切れない。
ヘッドタイプが合わず、ミスの幅が大きくなっている。

こうしたことは、クラブ側で整えられる可能性があります。

一方で、
アドレスの向き。
極端な打ち込み。
過度なフェース操作。
リズムの乱れ。
力み。

こうしたことは、スイング側の課題として見る必要があります。

大切なのは、
どちらか一方に決めつけないことです。

クラブ側で整えられることは整える。
そのうえで、スイング側の課題を見る。

この順番が、フィッティングを現実的なものにしてくれると思います。


PINGのフィッティング思想に感じること

PING Proving Grounds Podcast Episode 3 を聞いていて感じるのは、
PINGがフィッティングを単なる販売手段として見ていないことです。

クラブの性能を説明するだけではない。

ゴルファーの体格、スイング、ミスの傾向、弾道のデータを見て、
その人にとってクラブがどう働くかを考える。

ここにPINGのフィッティング思想があるのだと思います。

クラブには性能があります。

しかし、その性能は、
誰が使っても同じように出るわけではありません。

ある人にとっては非常にやさしいクラブが、
別の人にはつかまりすぎることがあります。

ある人にとっては強い弾道になるクラブが、
別の人には上がりにくいクラブになることがあります。

だからこそ、フィッティングが必要になります。

クラブの性能を、
その人のゴルフにどう結びつけるか。

それを考えるのが、
PINGが長年大切にしてきたフィッティングなのだと思います。


フィッティングは、試打では終わらない

試打は大切です。

実際に打ってみなければ分からないことは多いです。

構えた時の見え方。
振った時の重さ。
打った時の音。
打点の出方。
弾道の高さ。
ミスの出方。

これらは、試打によって初めて分かります。

しかし、フィッティングは試打で終わりではありません。

試打で出た数字を読み、
その数字がなぜ出たのかを考え、
お客様のゴルフにどう影響するかを判断する。

ここまで行って、フィッティングになります。

単に、
「これが一番飛びました」
「これが一番曲がりませんでした」
では、まだ浅いと思います。

なぜ飛んだのか。
なぜ曲がらなかったのか。
その結果は何度も出るのか。
コースで使えるのか。
ミスした時にどこまでで収まるのか。

そこまで見る必要があります。

最後に:クラブを替えるかどうかは、その後でいい

このシリーズの最後に、
店長として改めて書いておきたいことがあります。

フィッティングは、
必ずクラブを買い替えるためのものではありません。

まずは、今のクラブが自分に合っているのかを知ることです。

今のクラブが合っているなら、
それはとても良いことです。

安心して使えば良いと思います。

もし合っていない部分があるなら、
何が合っていないのかを知ることが大切です。

長さなのか。
重さなのか。
ライ角なのか。
ロフトなのか。
シャフトなのか。
ヘッドタイプなのか。
番手構成なのか。

それを知ったうえで、
今のクラブを調整するのか。
買い替えるのか。
練習の方向性を変えるのか。

その選択をすれば良いと思います。

クラブを替えるかどうかは、その後でいい。

まず大切なのは、
今のクラブが、今の自分のゴルフにどう働いているのかを知ることです。

そして、特にアイアンの場合は、
PINGのカラーコードチャートから大きく外さないことも大切だと思います。

もちろん、カラーコードチャートが絶対の答えという意味ではありません。
実際のスイング、構え方、インパクト、弾道を見ながら調整する必要があります。

しかし、身長や手首から床までの長さをもとにしたカラーコードは、
その人にとって自然に構えやすいライ角を考えるための重要な出発点です。

ここから大きく外れたアイアンを使うと、
ゴルファーがクラブに合わせて構え方や手元の通し方を補正してしまうことがあります。

ですから、アイアン選びでは、
「今の自分に合ったライ角の入口」から大きく外れていないか。

ここも、確認しておくべき大切なポイントだと思います。


まとめ

PING Proving Grounds Podcast Episode 3「Fitting Matters」を受けて、
4回に分けてフィッティングについて考えてきました。

フィッティングは、
上手くなってから受けるものではありません。

上手くなるために、
道具の前提条件を整える作業です。

ヘッドスピードは大切です。
しかし、それだけでクラブを決めるものではありません。

ボールスピード、打ち出し角、スピン量、落下角、左右のばらつき。
その結果、ボールがどう飛んだかを見る必要があります。

試打で一番飛んだ1球は大切です。
しかし、コースでスコアに残るのは、
平均値とミスの幅です。

そして、数値は答えではありません。

数値は問いです。

なぜそのボールスピードなのか。
なぜそのスピン量なのか。
なぜ右に出るのか。
なぜ最高の1球は良いのに、平均値は悪いのか。

そこを読むのがフィッティングです。

フィッティングとは、
クラブの性能を説明する作業ではありません。

ゴルファーとクラブの関係を読み解き、
その人がコースで繰り返すゴルフを、
少しでも良い方向へ動かす作業です。

週末に練習場へ行く方、
ラウンド予定のある方は、
ぜひ一度、自分のミスの傾向を見てみてください。

一番良かった球ではなく、
何度も出てしまう球。

そこに、フィッティングの入口があります。