新しシャフトの作り方 中調子

今回追加される中調子系は、

  • LIN-Q PowerCore RED
  • ATTAS RX PURE BLUE
  • 26 VENTUS TR BLUE

の3本です。

※26 VENTUS TR BLUEはメーカー表記では中元調子ですが、今回は中調子系として見ていきます。

この3本にも、元調子系と同じような傾向が見えます。

従来の中調子は、シャフト中央付近を大きくしならせることで、

タイミングが取りやすい、ヘッドを走らせやすい、幅広いゴルファーに合わせやすい

という特徴がありました。

しかし、中間部分の動きが大きくなりすぎると、

しなり戻りが急になる、タイミングによってヘッドの位置が変わる、インパクトで挙動が安定しにくい

という問題も生まれます。

つまり、

中調子の動きやすさは欲しい。
しかし、中間部分だけが大きく動くシャフトでは結果が安定しない。

というゴルファーもいるわけです。

今回の3本は、それぞれ違う方法で、この中調子の弱点を薄めています。

LIN-Q PowerCore REDは、中調子らしい動きを残しながら、シャフト全体を連続的にしならせる方向です。

中間だけが大きく動くのではなく、手元から先端までを滑らかにつなげることで、

動くけれど、急激には動かない中調子

にしていると考えられます。

ATTAS RX PURE BLUEは、さらにニュートラルな方向です。

特定の部分を強くしならせるというより、

シャフト全体を素直にしならせ、素直に戻す。

試打でも「クセがない」という評価が多く、中調子の特徴そのものをかなり滑らかにしたシャフトと言えそうです。

26 VENTUS TR BLUEは、中元調子という位置付けです。

中間部分には適度な動きを持たせながら、先端の安定性を強く残しています。

つまり、

中調子のタイミングの取りやすさは残しながら、インパクト付近の余計な動きを抑える

方向です。

3本をまとめると、

LIN-Q PowerCore RED
→ 中調子の動きを、全体へ滑らかにつなげる。

ATTAS RX PURE BLUE
→ 中調子のクセそのものを薄め、ニュートラルにする。

26 VENTUS TR BLUE
→ 中間の動きを残しながら、先端の安定性を高める。

という違いがあります。

しかし共通しているのは、

中調子の動きやすさは残す。
中調子の急激な動きは減らす。

という方向です。

元調子系では、

「元調子の球質は欲しいが、従来の元調子では結果が出なかったゴルファー」

への対応が進んでいました。

中調子系でも同じです。

中調子の振りやすさは欲しい。
しかし、シャフトの動きが大きすぎると結果が安定しない。

そうしたゴルファーに対して、新しい素材や構造によって、

中調子らしさを残しながら、その欠点を薄めている。

これが、今回追加される中調子系シャフトに共通する特徴ではないかと思います。

新しいシャフトの作り方 元調子

今回追加される元調子系は、

  • ATTAS RX ULTRA BLACK
  • LIN-Q PowerCore WHITE
  • 26 VENTUS TR BLACK

の3本です。

それぞれ方向性の違いはありますが、3本に共通しているのは、元調子をベースにしながら、従来の元調子らしさを薄めているという点です。

これまでの元調子には、

左に行きにくい、強く叩ける、強い球が打ちやすい

というメリットがありました。

一方で、

ヘッドが遅れる、球が上がりにくい、つかまりにくい、タイミングが取りにくい

と感じるゴルファーも少なくありませんでした。

つまり、

元調子のような球質は欲しい。
しかし、従来の元調子では結果が出ない。

というゴルファーが存在していたわけです。

今回の3本は、そうした層に対応するために、新しい素材や構造を使って、元調子のメリットを残しながら、その欠点を小さくしたシャフトと見ることができると思います。

例えば、

ATTAS RX ULTRA BLACKは、元調子でありながらヘッドの遅れ感を抑え、球を上げやすくする。

LIN-Q PowerCore WHITEは、手元だけを大きくしならせるのではなく、シャフト全体を連続してしならせることで、元調子に中調子的な滑らかさを加える。

26 VENTUS TR BLACKは、高い剛性と低スピン性能を残しながら、硬さによる唐突さやタイミングの取りにくさを減らす。

つまり、3本とも方法は違います。

しかし目指している方向は共通しています。

元調子の球質は残す。
元調子の扱いにくさは減らす。

これが、今回追加される元調子系3本に共通する特徴ではないでしょうか。

言い換えれば、これまで「元調子は合わない」と考えていたゴルファーの中にも、

本当は元調子の球質が合っていたのに、従来型の元調子の動き方が合わなかった人がいる

ということです。

新しいテクノロジーによって、その両者を分けて考えられるようになってきた。

ここに、最近の元調子系シャフトの大きな進化があるように思います。

プロの本当の凄さは、どこにあるのか

金沢ゴルフ協会のジュニア教室の木曜練習会の横で、「北陸のドラえもん」こと中村忠夫プロがレッスンをされています。

よく、子供たちのところにも遊びに来てくれるだけでなく、時折、ジュニアのラウンドにも付き添ってくださっています。

ツアー優勝経験を持つプロが、自分たちのラウンドを見てくれる。

考えてみれば、何とも恵まれた環境です。

先日も中村プロに顔を出していただいたので、ジュニアたちに聞いてみました。

「中村プロのどの部分が参考になった?」

すると返ってきた答えは、

「飛距離がすごいんですよ。」

でした。

私は思わず、

「えっ、そこなの?」

と言ってしまいました。

もちろんプロですから飛距離も出ます。

しかし、一番自分たちと違うところは、そこではないのではないか。

中村プロは、子供たちが無理な攻め方をしたり、難しいアプローチを選択したりすると、

「プロはそんなことしないよ」

と教えてくださっているそうです。

そこで私はジュニアたちに、

「中村プロって、30ヤード以内まで来たら、そこからほとんど2打で終わっていることに気づいていない?」

と聞きました。

すると中村プロは、それを肯定しながら、こうおっしゃいました。

「そうなんだけど、杉原輝雄プロはそれが50ヤードだったのよ。」

この一言は非常に印象的でした。

ツアー優勝経験を持つ中村プロにとって、30ヤード以内はかなり高い確率で2打で終われる領域。

ところが杉原輝雄プロになると、その領域が50ヤードまで広がっていたというのです。

さらに私は以前、先生の木場本弘治元日本体育大学ゴルフ部監督から、

「デビッド・デュバルは90ヤード以内なら3ヤード刻みで距離を打ち分けることができた」

と聞いたことがあります。

デュバルは実際に世界ランキング1位まで上り詰めた選手です。

もちろん、

30ヤードならツアー優勝できる。

50ヤードならトッププロになれる。

90ヤードなら世界一になれる。

そんな単純な公式があるわけではありません。

しかし、この三つの話を並べてみると、プロゴルファーの「上手さ」を見る一つの物差しが見えてくるように思います。

30ヤード以内を2打で終えられるツアープロ。

その領域が50ヤードまで広がるトッププロ。

そして90ヤード以内を数ヤード単位で管理する世界トップレベル。

つまり、レベルが上がるほど、

「ここまで運べば、あとは大きなミスをせずにホールアウトできる」

という領域が広く、そして細かくなっていくのではないでしょうか。

飛距離は分かりやすいものです。

一球見れば、

「すごい。」

と分かります。

しかし、本当に上手いゴルファーの凄さは、一球ではなかなか分かりません。

18ホール一緒に回って初めて、

「グリーンを外しているのにボギーにならない。」

「30ヤード以内に来たら、いつも2打で終わっている。」

と気づきます。

そこに、ツアープロとアマチュアの大きな違いがあります。

だからジュニアたちには、中村プロの飛距離だけを見てほしくありません。

どういう場所からピンを狙うのか。

どこでは無理をしないのか。

どんなアプローチを選択するのか。

そして、グリーンを外した後に何打でホールアウトしているのか。

せっかくツアー優勝経験のあるプロが一緒に回ってくれているのです。

プロの球を見るだけではなく、プロがどうやってスコアを作っているのかを見る。

それができるようになれば、この恵まれた環境から学べるものは、さらに大きくなると思います。

ドライバー・FWオプションシャフトが追加さました。

今年もシャフトメーカーの新しいシャフトの発売とともに新しいオプションシャフトが追加となります。

つ生かされるシャフトは計10本、昨年なぜかつかされなかったATTAS RX ULTRA BLACKもラインナップされました。

UST MAMIYAさんは

  • UST Mamiya ATTAS RX ULTRA BLACK
  • UST Mamiya LIN-Q PowerCore WHITE
  • UST Mamiya LIN-Q PowerCore RED
  • UST Mamiya ATTAS RX PURE BLUE

FUJIKURAさんは

  • FUJIKURA 26 VENTUS TR BLACK
  • FUJIKURA 26 VENTUS TR RED
  • FUJIKURA 26 VENTUS TR BLUE
  • FUJIKURA SPEEDER NX WHITE

グラファイトデザインは

  • GRAPHITE DESIGN TOUR AD EK

三菱ケミカルさんは

  • 三菱ケミカル TENSEI 1K PRO ORANGE RIP+

です。 “ドライバー・FWオプションシャフトが追加さました。” の続きを読む

Trajectory Tuning 2.0 はロフトとライ角だけか?

Trajectory Tuning 2.0 によって、変化するのはロフトとライ角だけでしょうか?

昨日の図では、固定されたヘッドに対してシャフトの方向がどのように変化するかを示しました。

この方法でロフトとライ角が変化するのは、ゴルファーが実際にはシャフトを一定の方向に構えて使うからです。

つまり、ゴルファー側から見れば、

シャフトが動いているというより、ヘッドの姿勢が変わっている

と考えた方が分かりやすいわけです。

そして私たちが扱っているクラブは、当然ながら3次元空間に存在しています。

そうであれば、

ロフトだけが変わる。
ライ角だけが変わる。

ということはありません。

もう一つ変化するものがあります。

そうです。

フェースアングルです。

フェースアングルも変わっている

例えば、Standardのライ角を59°として近似計算すると、次のようになります。

位置 ロフト変化 ライ角変化 実ライ角 フェースアングル変化※
Standard 59.00°
Small + +1.06° −0.44° 58.56° 約1.73° Closed
Big + +1.50° −1.50° 57.50° 約2.35° Closed
Flat + +1.06° −2.56° 56.44° 約1.60° Closed
Flat −3.00° 56.00°
Flat − −1.06° −2.56° 56.44° 約1.60° Open
Big − −1.50° −1.50° 57.50° 約2.35° Open
Small − −1.06° −0.44° 58.56° 約1.73° Open

ライ角60°で同じように計算すると

位置 ロフト変化 ライ角変化 実ライ角 フェースアングル変化※
Standard 60.00°
Small + +1.06° −0.44° 59.56° 約1.80° Closed
Big + +1.50° −1.50° 58.50° 約2.45° Closed
Flat + +1.06° −2.56° 57.44° 約1.66° Closed
Flat −3.00° 57.00°
Flat − −1.06° −2.56° 57.44° 約1.66° Open
Big − −1.50° −1.50° 58.50° 約2.45° Open
Small − −1.06° −0.44° 59.56° 約1.80° Open

59°基準より60°基準の方が、同じロフト変化でもフェースアングルの変化が少し大きくなります。

つまり、ライ角がアップライトになるほど、ロフト調整によるフェースの開閉への影響も大きくなっていきます。

※フェースアングルはPING公式公称値ではなく、今回の幾何モデルによる近似値です。

「見た目」はフィッティングで無視できない

ここは、実際のフィッティングではかなり重要です。

人によってはフェースアングルを非常に気にします。

Closed、俗にいう**「かぶって見える」**状態を嫌う人は少なくありません。

特に左へのミス、フックを嫌うゴルファーは、構えた瞬間にフェースが少し閉じて見えるだけでも違和感を持つことがあります。

反対に、もともとボールをつかまえることが苦手なゴルファーの場合は、フェースが開いて見えることを嫌います。

つまり、同じ実ロフトが欲しいからといって、単純にスリーブだけでロフトを調整すればよいとは限らないのです。

例えば10°のロフトが欲しい場合でも、

9°のヘッドを+側に調整して10°に近づける

方法と、

10.5°や12°など、よりロフトの大きなヘッドを−側に調整して10°付近へ持ってくる

方法では、構えた時のフェースアングルが違って見えます。

前者ならフェースはClosed方向へ。

後者ならOpen方向へ。

同じようなリアルロフトになったとしても、ゴルファーから見えるクラブは別物になるわけです。

だから「何度にしたか」だけでは足りない

フィッティングでは、

最終的なロフトが何度になったか

だけを見ても十分ではありません。

同時に、

ライ角はどうなったのか。
フェースアングルはどう見えるのか。
その見え方をゴルファー本人がどう感じるのか。

まで見なければなりません。

ですから私は、その人に合わせて、

一つロフトの少ないヘッドを使って+側へ調整する

こともあれば、

一つロフトの多いヘッドを使って−側へ調整する

こともあります。

目的は単にロフトを合わせることではありません。

必要なリアルロフトを作りながら、その人が構えやすいフェースアングルまで作ること。

これもフィッティングの仕事です。

Trajectory Tuning 2.0を「ロフト調整機能」とだけ考えてしまうと、この部分を見落としてしまいます。

実際には、

ロフト
ライ角
フェースアングル
シャフト長

という4つが同時に関係しています。

そして、その3つの組み合わせによって、

ボールの飛び方だけでなく、ゴルファーがアドレスした時に感じるクラブの見え方まで変わる。

ここまで考えて初めて、Trajectory Tuning 2.0をフィッティングに活かすことができるのではないでしょうか。

Trajectory Tuning 2.0 の秘密

Trajectory Tuning 2.0が具体的にどのような構造になっているのか、想像図を作成してみました。

稚拙な図で申し訳ありませんが、一点鎖線で示した中心線に対して、シャフト軸が約1.5°傾くような構造になっているのではないか、と考えています。

あくまで構造から逆算した推測です(笑)。

しかし、この1.5°という数字で考えると、Trajectory Tuning 2.0の動きが非常にきれいに説明できます。

8ポジションなので、スリーブは45°ずつ回転します。

Standardを基準にすると、90°回転したところでロフト方向の変化が最大となり、

+1.5°または−1.5°

になります。

さらに180°回転すると、ロフト方向の変化は再びゼロに戻り、その代わりライ角が

3°フラット

になります。

つまり、1.5°傾いた軸を回転させることで、ロフトとライ角の組み合わせを作っていると考えられます。

なぜ、こんな構造にしたのか

ここで面白いのが、やはり重量です。

 

PINGは、ホーゼル周辺の重量がヘッド性能に与える影響を非常に重視しています。

G440から採用されたFree Hosel Designも、まさにその延長線上にあります。

少しでもホーゼル周辺を軽くし、その重量をヘッド後方や低い位置へ再配分する。

数グラムの差であっても、慣性モーメントや重心位置には影響します。

そう考えると、複雑な調整機構を追加するのではなく、

1.5°傾けた一つの軸を回転させるだけで、複数のロフト・とライ角を作る

という仕組みは、非常に合理的です。

Trajectory Tuning 2.0は、単なる調整機能ではなく、

軽量化・調整機能・ヘッド性能を、一つのシンプルな構造の中で成立させるための設計

と考えることもできます。

ただし、フィッティングでは話が変わる

問題はここからです。

こういう構造になっているのであれば、スリーブを動かした時に変わるのは、ロフトだけではありません。

ライ角も変わります。

そして、ライ角が変われば、

フェースアングルへの影響も変わります。

クラブは三次元の物体です。

ロフト、ライ角、フェースアングルは、完全に独立しているわけではありません。

つまり、

「+1°にした」

というだけでは、実際にクラブで何が変わったのかを十分には説明できないということです。

ロフトが変わり、

ライ角も変わり、

その組み合わせによってフェースアングルにも影響が出る。

フィッティングでは、この3つをセットで考える必要があります。

例えば左へのミスが減ったとしても、

ロフトが変わったからなのか。

ライ角がフラットになったからなのか。

フェースアングルが開く方向へ変化したからなのか。

あるいは、そのすべてが同時に作用した結果なのか。

そこまで考えなければ、本当の意味で「なぜ球筋が変わったのか」は分かりません。

Trajectory Tuning 2.0は便利な機能ですが、便利だからこそ、

どのポジションに合わせたかではなく、そのポジションで何が変わったのか

を理解して使う必要があります。

次回は、

ライ角が変わることで、フェースアングルがどのように変化するのか

を、具体的な数字で見ていきたいと思います。

USのライ角とJAPANのライ角は1度違う!

アメリカのPINGと日本のPINGでは、同じモデルなのにライ角の表記が違います。

この違いを見て、

「USのヘッドと日本のヘッドは別物なのですか?」

と聞かれたことはありません。

多分、そこまでスペック表を見比べている人がほとんどいないのでしょう。

店長のような、少し変わった人しか見ていないのかもしれません。

では実際に、

US PING

PING GOLF JAPAN

のスペックを比べてみると、ドライバー、フェアウェイウッド、ハイブリッドで、USの方が約1°フラットなライ角表記になっていることが分かります。

同じヘッドなのに、なぜでしょうか。

USには「平均ライ角」と書いてある

US PINGのスペック表には、次の記述があります。

Lie angle is an average of the five adjustable loft positions indicated on the hosel.

日本語にすると、

「ライ角は、ホーゼルに表示されている5つのロフト調整ポジションの平均値です。」

という意味です。

ここが重要です。

USのライ角表示は、Standardポジションのライ角そのものではありません。

5つのロフト調整ポジションのライ角を平均した値

をカタログスペックとして表示しているのです。

Trajectory Tuning 2.0をもう一度考えてみる

前回、Trajectory Tuning 2.0について、

シャフト軸がホーゼル中心軸に対して約1.5°傾いているのではないか

という仮説を立てました。

8ポジションなので、360°を8分割すれば45°刻みです。

この1.5°の傾きを45°ずつ回転させると、ロフト方向とライ方向への成分は概算で次のようになります。

位置 ロフト変化 ライ角変化
Standard
Small + +1.06° −0.44°
Big + +1.50° −1.50°
Flat + +1.06° −2.56°
Flat −3.00°
Flat − −1.06° −2.56°
Big − −1.50° −1.50°
Small − −1.06° −0.44°

PING公式のロフト表記は、

  • Standard:0°
  • Small ±:±1°
  • Big ±:±1.5°
  • Flat:0°
  • Flat ±:±1°

です。

計算値とかなりきれいに一致します。

そしてUS PINGがいう、

「5つのadjustable loft positions」

とは、

  • Standard
  • Small +
  • Small −
  • Big +
  • Big −

の5ポジションと考えるのが自然です。

つまり、USのライ角表示は、このNormal側5ポジションの平均ライ角ということになります。

Normal Zoneの平均ライ角を計算すると

Standardからのライ角変化は、

  • Standard:0°
  • Small +:−0.44°
  • Small −:−0.44°
  • Big +:−1.50°
  • Big −:−1.50°

です。

平均すると、

約−0.78°

になります。

つまり、Standardのライ角より、平均すると約0.8°フラットです。

カタログ値は0.5°刻みなどで表示されますから、日本とUSで約1°の差が出ていても不思議ではありません。

ここまで来ると、

USと日本でヘッドが違うのではなく、ライ角の表示方法が違う

と考える方が自然です。

USは「Normal Zone」と「Flat Zone」で考えている

ここから、Trajectory Tuning 2.0の考え方がさらに見えてきます。

USでは、ライ角を単純に、

Standard
Flat

の2点だけで考えているのではなく、

Normal Lie Zone

Flat Lie Zone

という2つの領域として捉えているのではないでしょうか。

Normal Zoneには、

  • Standard
  • Small ±
  • Big ±

があり、

その中でロフトを、

標準
±1°
±1.5°

に設定する。

一方Flat Zoneには、

  • Flat
  • Flat ±

があり、

その中でロフトを、

標準
±1°

に設定する。

このように考えると、PINGの説明書の構成が非常に分かりやすくなります。

つまり、

まずライ角のゾーンを選び、その中でロフトを選ぶ。

これがTrajectory Tuning 2.0の本来の考え方なのではないでしょうか。

Flatも一つの角度ではなく「ゾーン」

私が最初にTrajectory Tuning 2.0の説明を受けた時、

「Flat Zoneは約2.6°フラット」

と聞いていました。

当時は単純に、

「Flatは2.6°フラットなのだ」

と理解していました。

しかし今回計算してみると、

  • Flat +:約2.56°フラット
  • Flat:3.00°フラット
  • Flat −:約2.56°フラット

となります。

つまり、Flatは一つの固定ライ角ではありません。

約2.6〜3.0°フラットの範囲を持った“Flat Zone”

と考えれば、説明がきれいにつながります。

同じことはNormal Zoneにも言えます。

Normal Zoneでも、

  • Standard:0°
  • Small ±:約0.44°フラット
  • Big ±:約1.5°フラット

と、実際にはライ角が変化しています。

つまり、

Normal Zoneの中でもライ角は一定ではない。
Flat Zoneの中でもライ角は一定ではない。

ということです。

日本の表記では、この考え方が少し見えにくくなる

一方、日本のPINGでは、ライ角をStandardポジションの値として表示しています。

これはスペック表としては非常に分かりやすいです。

しかし、Trajectory Tuning 2.0を

Normal Zone
Flat Zone

という考え方で理解しようとすると、少し説明が難しくなります。

日本の表記では、

「このクラブのライ角は59°です」

と見える。

しかし実際にはスリーブを回せば、

Normal Zoneの中でもライ角は変化し、

Flat Zoneではさらに大きくフラットになります。

つまり59°という数字は、

クラブそのものに固定されたライ角

というより、

Standardポジションに置いた時の基準ライ角

なのです。

USはNormal Zoneの平均値を表示し、

日本はStandardポジションの値を表示する。

同じクラブを、違う基準で表現しているわけです。

日本側が、この「ゾーン」という考え方まで意識してStandard値を採用したのかどうかは分かりません。

ただ、少なくともTrajectory Tuning 2.0の構造を考えると、USのAverage Lie Angleという表記はかなり合理的です。

同じヘッドなのに、ライ角が違って見える理由

結局、

USとJAPANでライ角が違うから、ヘッドが違う

という話ではありません。

同じヘッドでも、

USは、

Normal Zone内の5ポジションの平均ライ角

を表示し、

日本は、

Standardポジションのライ角

を表示している。

だから数字が違って見える。

そして、その表示の違いを追っていくと、

Trajectory Tuning 2.0は、単にロフトを変えるスリーブではなく、Normal ZoneとFlat Zoneという2つのライ角領域の中でロフトを組み合わせる機構

として見えてきます。

公式の説明だけを読んでいた時とは、かなり印象が変わってきませんか。

次回は、このTrajectory Tuning 2.0によるフェースアングルの変化まで考えてみたいと思います。

PING Trajectory Tuning 2.0 の秘密

PING Trajectory Tuning 2.0は、公式には次の8ポジションになっています。

ポジション ロフト調整
Standard
Small + +1.0°
Big + +1.5°
Small − −1.0°
Big − −1.5°
Flat
Flat + +1.0°
Flat − −1.0°

トルクレンチの説明書にも、このように記載されています。

つまり公式の説明では、まず大きく

ノーマルライ角

フラットライ角

の2つのグループがあり、

ノーマルライ角では、

標準ロフト
±1°
±1.5°

フラットライ角では、

標準ロフト
±1°

という構成になっています。

ここだけを見ると、

「ロフトを変えるポジション」と
「ライ角をフラットにするポジション」

が別々に存在しているようにも見えます。

しかし、実際のアダプターはどうやってこれを実現しているのでしょうか。

8ポジションを45°ずつ回転させる

Trajectory Tuning 2.0には8つのポジションがあります。

ということは、円周上では、

360° ÷ 8 = 45°

ずつ配置されていることになります。

そして、このアダプターのシャフト軸が、ホーゼルの中心軸に対して1.5°傾いていると仮定します。

この1.5°の傾きを45°ずつ回転させていくと、その傾きはロフト方向とライ方向に分解されます。

すると、概算では次のようになります。

位置 ロフト変化 ライ角変化
Standard
Small + +1.06° −0.44°
Big + +1.50° −1.50°
Flat + +1.06° −2.56°
Flat −3.00°
Flat − −1.06° −2.56°
Big − −1.50° −1.50°
Small − −1.06° −0.44°

どうでしょう。

PING公式の、

±1°
±1.5°
最大3°フラット

という数字が、ほぼそのまま出てきます。

Small ±の約1.06°は、公式表示では±1°。

Big ±はちょうど±1.5°。

Flatではロフト変化が0°となり、ライ角がちょうど3°フラット。

つまり、かなりきれいに一致します。

実際には「ロフトだけ」が変わっているわけではない

ここが一番重要なところです。

公式表示では、

Small + = +1°

と書かれています。

しかし、幾何学的に考えると、

ロフト +1.06°
ライ角 −0.44°

という組み合わせになっていると考えられます。

Big +なら、

ロフト +1.50°
ライ角 −1.50°

Flat +なら、

ロフト +1.06°
ライ角 −2.56°

です。

つまり、Trajectory Tuning 2.0は、

ロフトを変えるポジション

ライ角を変えるポジション

が独立して存在しているのではありません。

実際には、

傾いたシャフト軸を回転させることで、ロフトとライ角の組み合わせを変えている

ということになります。

なぜ3°フラットになるのか

これも1.5°という数字から説明できます。

Standardでは、シャフト軸の1.5°の傾きが一方向を向いています。

そこから180°回転したFlatでは、その傾きが完全に反対側を向きます。

つまり、

+1.5° → −1.5°

となるため、その差は、

3.0°

です。

だからFlatポジションでは、Standardに対して最大3°フラットになる。

「中心から3°ずれている」のではなく、

中心から1.5°ずれていて、その反対側まで動くことで合計3°の差が生まれる

と考えると、非常に分かりやすくなります。

そうだったのか、Trajectory Tuning 2.0

公式の説明だけを見ると、

ノーマルライ角
フラットライ角

という2種類があり、

その中でロフトを変えているように見えます。

しかし、実際の構造を考えると印象はかなり変わります。

Trajectory Tuning 2.0は、

ロフト調整機能

というより、

シャフト軸の方向を3次元的に変えることで、ロフトとライ角の組み合わせを作る機構

と考えた方が本質に近いのではないでしょうか。

そして、その数値を計算してみると、

公式表示の±1°、±1.5°、最大3°フラットが、1.5°偏心・45°刻みという構造で非常にきれいに説明できます。

そうだったのか、PING Trajectory Tuning 2.0。

公式のロフト・ライ角表示から受ける印象とは、ずいぶん違って見えてきます。

そして、さらに面白いことがあります。

USとJAPANでは、同じヘッドを使っているにもかかわらず、カタログに表示されているライ角の数値が違います。

なぜ同じクラブなのに、ライ角が違うのでしょうか。

次回は、この謎について考えてみたいと思います。

ハイブリッドの左ミスを考える ― ライ角から考えられること

先週、ジュニア君たちのラウンドを見ていた時のことです。

本来であれば、距離を欲張るよりも方向性を重視して使いたい場面で、ハイブリッドのショットがかなり左へミスしていました。それが今回のシリーズを考えるきっかけになっています。

ハイブリッドは、ロングアイアンの弱点を補うための「お助けクラブ」として位置づけられています。

それなのに、そのクラブでスコアメイクできないのであれば問題です。

特にヘッドスピードの速いゴルファーやハードヒッターにとって、ハイブリッドの大きな弱点となるのが、

左へのミス

です。

一般的には、その理由として、

  • 深い重心
  • ヘッド形状
  • オフセット
  • フェースの返りやすさ

などが挙げられます。

もちろん、それらも関係しているでしょう。

しかし、今回スペックを改めて比較してみると、

それだけでは説明しきれない別の理由

が見えてきました。

ハイブリッドは「ロングアイアンを簡単にしたクラブ」なのか

そもそもハイブリッドは、

ロングアイアンをそのまま簡単にしたクラブ

として作られたというより、

ロングアイアンで打っていた距離を、もっと簡単に出すためのクラブ

として発達してきたと考えた方がよさそうです。

ロングアイアンの弱点は、単にボールが上がりにくいことだけではありません。

短めのクラブ長と小さなヘッドで、必要なキャリーを出すための十分なヘッドスピードを確保しなければならない。

そこでハイブリッドでは、

深い重心でボールを上げやすくし、ヘッドを大きくしてミスに強くし、さらにシャフトを長くしてヘッドスピードを稼ぐ

という方向へ進みました。

今回比較したスペックでは、

クラブ ロフト ライ角 長さ
3I 19° 59.0° 39.0″
HB #3 20° 58.5° 40.25″
FW #5 19° 58.0° 42.5″

ほぼ同じロフトでも、

Iron 39.0″

HB 40.25″

FW 42.5″

と、ハイブリッドはちょうど中間に位置しています。

これはメーカー側から見れば非常に合理的です。

FWほど長くないので当てやすい。

アイアンより長いのでヘッドスピードを出しやすい。

深重心なのでボールも上がりやすい。

これによって、「難しいロングアイアンの代わりになるクラブ」が成立します。

しかし、ここに別の問題が生まれます。

同じロフトでも、手元の高さが違う

ライ角とクラブ長から、ソールを基準通りに置いた時の手元高さを単純な幾何計算で推定すると、

手元高さ ≒ クラブ長 × sin(ライ角)

となります。

19〜20°付近を比較すると、

クラブ 推定手元高さ
FW #5 36.04″
HB #3 34.32″
3I 33.43″

HB #3は、3Iより約0.89インチ手元が高くなります。

ところが、ハイブリッドは見た目も構え方もアイアンに近い。

そのためプレーヤーは、無意識にアイアンと同じような高さへ手元を置こうとします。

しかし実際には、シャフトが1.25インチ長い。

この長さをアイアンと同じ構えの中へ押し込もうとすると、クラブのどこかで帳尻を合わせなければなりません。

手元を下げればトウ側は浮きます。

そしてスイング中には、

長さを処理するためにリリースを早める

という補償動作が起こる可能性もあります。

ハードヒッターでは、このアーリーリリースによってフェースの閉じるタイミングが早くなれば、左へのミスにつながりやすくなります。

FWでは、なぜ同じ問題が目立ちにくいのか

FWもHB以上にシャフトは長い。

しかしFWでは、ライ角もそれに合わせてかなりフラットになっています。

19°前後なら、

FW #5:42.5″・58.0°

です。

長さによって手元は高くなりますが、その一方でライ角はフラットです。

つまり、

長さによる手元高さの上昇

と、

フラットなライ角によるつかまりの抑制

が、ある程度相殺されています。

一方HBは、

3Iより1.25インチしか長くなっていないのに、ライ角は0.5°になっっています。

PINGのTrajectory Tuning 2.0には、ロフト調整だけでなく、最大約3°フラット

までライ角を変えられるポジションがあります。

ですので、実際にポジションを変えてみてください。

次回は、PINGのTrajectory Tuning 2.0について考えます。