宇宙は数学(数式)の言語で書かれているなら、ゴルフも数学で書かれているのか? 第2話

第2話 人間は何を見て、いいスイングだと判断しているのか?

前回は、ゴルフスイングという複雑に見える運動も、単純な仕組みの組み合わせとして考えられるのではないか、という話をしました。

そして、最後にこんな宿題を出しました。

「形が違うのに、なぜ私たちは、どちらも正しいスイングだと判断できるのでしょうか?」

皆さん、考えていただけましたか?

今回は、この疑問をAIと一緒に考えていこうと思います。

正しいスイングの形はあるのか?

店長:「AIさん、ゴルフスイングには正しい形というものがあるのでしょうか?」

AI:「一般的には、アドレス、トップ、インパクトなど、それぞれに理想的とされる姿勢があります。ただし、個人差もあります。」

店長:「では、ジャック・ニクラウスとベン・ホーガンのスイングを考えてみましょう。」

ニクラウスとホーガン。

どちらもゴルフの歴史に名を残す偉大な選手ですが、そのスイングの形はかなり違います。

ニクラウスは高いトップが特徴的で、ホーガンは比較的フラットなスイングとして知られています。

しかし、どちらのスイングを見ても、素晴らしいと感じる人は多いでしょう。

店長:「二人のトップの形は違いますよね?」

AI:「はい。腕の位置やスイングプレーンなどに違いがあります。」

店長:「それでは、どちらが正しいのでしょう?」

AI:「どちらも優れたスイングです。それぞれの身体的特徴やスイングの仕組みに適していると考えられます。」

店長:「正しい形があるのなら、違う形の二人がどちらも正しいというのは、少し不思議ではありませんか?」

AI:「確かに、正しい形が一つだけあると考えるなら、矛盾が生じます。」

店長:「では、そもそも人間の身体の形は、何によって決まるのでしょう?」

人間の形を作っているもの

AI:「基本的には骨格です。骨の長さや関節の構造、筋肉などによって身体の形が作られます。」

店長:「骨格がまったく同じ人はいるのでしょうか?」

AI:「いいえ。骨の長さや関節の形状には個人差があります。」

店長:「ということは、骨格が違えば、自然に作られる姿勢も違いますよね?」

AI:「そうですね。同じ姿勢を取ろうとしても、身体に必要な関節の動きや負担は人によって異なります。」

店長:「それなのに、同じトップの形やインパクトの形を目指すというのは、どうなんでしょう?」

AI:「少なくとも、すべてのゴルファーに同一の形を求めることが合理的とは限りません。」

ゴルフのレッスンでは、プロのスイングを参考にすることがあります。

もちろん、優れた選手の動きを観察することには大きな価値があります。

しかし、骨格も関節の可動域も違う人間が、まったく同じ姿勢を作ろうとすれば、どこかに無理が生じるかもしれません。

それでは、なぜ私たちはプロの形を真似しようとするのでしょう?

店長:「人間は、目に見える形を判断基準にしやすいからではないでしょうか?」

AI:「それは一つの理由として考えられます。視覚的に確認しやすい姿勢は、比較や指導の基準にしやすいからです。」

店長:「でも、それだと最初の疑問に戻ってしまいますね。」

AI:「ニクラウスとホーガンは形が違うのに、どちらも正しいスイングに見えるということですね。」

店長:「そうです。いったい何を見ているんでしょう?」

動いている姿を見ている

ここで、少し視点を変えてみましょう。

写真で見るゴルフスイングと、動画で見るゴルフスイング。

どちらの方が、その選手らしさを感じられるでしょうか?

店長:「AIさん、スイングの写真と動画では、何が違いますか?」

AI:「写真はある瞬間の姿勢を示します。一方、動画では動作の順序や速度、タイミング、リズムなども確認できます。」

店長:「では、私たちが『いいスイングだなあ』と感じるのは、形だけを見ているからでしょうか?」

AI:「そうとは限りません。動きの滑らかさやリズム、バランスなども判断に関係している可能性があります。」

店長:「そうですよね。では、その滑らかさやリズムは、何によって生まれるのでしょう?」

AI:「身体各部の運動が適切なタイミングで連動することが関係していると思います。」

店長:「その連動を作るためには、それぞれの関節を正確に操作しなければならないのでしょうか?」

AI:「必ずしもそうとは限りません。一つの部分の運動によって、ほかの部分が動かされることもあります。」

店長:「そうなるはずです。」

正しい形が、正しい運動を作るのか?

ここで、もう一度考えてみたいと思います。

例えば、プロゴルファーのインパクトの写真を見て、その姿勢をそっくり真似したとします。

それで、プロと同じボールが打てるでしょうか?

店長:「インパクトの形を真似するだけで、同じショットが打てるのでしょうか?」

AI:「いいえ。クラブヘッドの速度や進入方向、フェースの向きなど、さまざまな条件が関係します。」

店長:「では、そのインパクトの形は、どうやって生まれたのでしょう?」

AI:「それ以前の身体とクラブの運動の結果として生まれたと考えられます。」

店長:「ということは、形を作ったから正しい運動になったのか、それとも正しい運動の結果としてその形になったのか。どちらなのでしょう?」

AI:「少なくとも、完成した形だけを見ても、そこに至った運動の原因は判断できません。」

店長:「そうなんです。そこを考えたいんですよ。」

私たちは、目に見えるものから物事を理解しようとします。

しかし、からくり人形の手が動いているからといって、その手に動力があるとは限りません。

前回紹介したように、内部の機構によって動かされているのかもしれないのです。

ゴルフスイングでも、同じことが起きているのではないでしょうか。

腕が動いているからといって、腕がその運動を発生させているとは限りません。

手首が返っているからといって、手首を積極的に返したとは限りません。

目に見える動きは、原因ではなく結果なのかもしれないのです。

では、人間は何を感じているのでしょう?

店長:「もう一つ聞きたいことがあります。ゴルファー本人は、自分のスイングを何によって判断しているのでしょう?」

AI:「視覚のほか、筋肉や関節からの感覚、足裏の圧力など、さまざまな感覚情報を利用しています。」

店長:「その感覚は、身体の中で実際に起きていることを、すべて正確に教えてくれるのでしょうか?」

AI:「いいえ。人間の感覚は多くの情報を統合していますが、身体に作用する力や運動をすべて直接感知しているわけではありません。」

店長:「ということは、自分では正しく動かしているつもりでも、実際には違うことが起きているかもしれませんね。」

AI:「その可能性はあります。」

店長:「逆に、自分では何もしていないつもりの部分が、実際には大きく動いていることもありますよね?」

AI:「はい。身体の別の部分の運動によって、受動的に動くこともあります。」

店長:「だとすると、感覚だけを頼りにスイングを考えることにも、問題がありそうですね。」

ここまで考えると、ゴルフスイングの見方が少し変わってきませんか?

私たちはプロのスイングを目で見て、その形を真似しようとします。

さらに、自分の感覚を頼りに、身体の各部分を操作しようとします。

しかし、目に見える形も、自分が感じている動きも、それだけでは運動の原因を教えてくれるわけではありません。

だとすれば、ゴルフスイングを理解するには、もう少し別の視点が必要なのかもしれません。

今週の宿題

今回は、形と運動の関係について考えてみました。

最後に、もう一つ質問です。

ゴルフスイング中に、右手に力が入っていると感じたとします。

そのとき、私たちは「右手を使ってクラブを動かしている」と考えがちです。

しかし、本当にそうなのでしょうか?

筋肉に力が入っていることと、その筋肉が運動を発生させていることは、同じなのでしょうか?

そして、もし筋肉に別の役割があるとしたら、何でしょう?

少し考えてみてください。

来週は、人間の感覚と筋肉の働きについて、もう少し考えてみたいと思います。

次回:「人間の感覚は、どこまで信用できるのか?」

毎週日曜日、午後8時更新予定。

握り方が違えば、適したグリップの太さも変わる

ここまで、グリップの太さと、保持や力の伝わり方について考えてきました。

最終回は、フィンガーグリップとパームグリップを比較しながら、太さの選び方を整理してみたいと思います。

指で保持するか、手のひら側で保持するか

フィンガーグリップは、主に指側でクラブを保持する握り方です。一方、パームグリップは、より手のひら側にグリップを収めて保持します。

実際の握り方には、その中間もあります。フィンガーでも手のひらに接触しますし、パームでも指を使います。ここでは、左手のどの位置で主に保持しているか、という違いとして考えてください。以下は右打ちの場合のお話です。

比較する点 フィンガーグリップ パームグリップ
主に保持する位置 指側 手のひら側
確認したいこと 曲げた指の内側に、十分な接触があるか 手のひら側に無理なく収まり、指でも支えられるか
握り込んだ際の動き グリップを巻き込んでいないか 接触位置がずれたり、クラブが回ったりしないか
太さを選ぶ出発点 チャートを基準に、指の掛かりと巻き込みを確認 チャートを基準に、収まりと保持感を確認

どちらが優れているかを決めるための比較ではありません。

同じ手の寸法、同じグリップの太さでも、保持する位置が違えば、接触の仕方も力の伝わり方も変わるということです。 “握り方が違えば、適したグリップの太さも変わる” の続きを読む

宇宙は数学(数式)の言語で書かれているなら、ゴルフも数学で書かれているのか? 第1話

第1話 ゴルフスイングは、なぜこんなに難しいのか?

いきなり壮大なタイトルで始まりましたが、今回から少し変わったシリーズを始めたいと思います。

「宇宙は数学という言語で書かれている」

これはガリレオ・ガリレイの有名な言葉です。

地球も宇宙の一部です。そして、私たちが楽しんでいるゴルフも、この宇宙で起きている現象です。

だったら、ゴルフも数学で書かれているのでしょうか?

テーマは「数学とゴルフ」。

数学と聞いただけで、読むのをやめようと思った方、ちょっと待ってください。

難しい数式を並べるつもりはありません。

そもそも数学とは、数式を計算することだけではなく、物事の関係や仕組みを論理的に考えることでもあると思うんです。

今回は、その考え方を使って、ゴルフスイングについて考えてみようと思います。

しかも、今回は店長一人ではありません。

今回のシリーズは、こうした一見ばらばらに見えるものが、実はつながっているのではないか、というところから始まります。

しかも、今回は店長一人ではありません。

最近、いろいろなことを議論しているAI、ChatGPTを相棒に話を進めていきたいと思います。

AIは膨大な知識を持っていますが、必ずしも店長の考えていることをすぐに理解してくれるわけではありません。

さて、どうなることでしょう。

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グリップの太さに、店長の「味変」を加えてみます

前回は、グリップの種類と、PINGのグリップカラーコードチャートをご紹介しました。

今回は、そのチャートを出発点に、グリップの太さを少し違う角度から考えてみたいと思います。

まず、一般的に言われている説明を並べてみましょう。

細いグリップ 太いグリップ
手首を使いやすい 手首の余計な動きを抑える
フェースを返しやすく、球がつかまりやすい フェースの返りすぎを抑え、引っかけを防ぐ
操作性が高い 方向性が安定する
小さい手に合いやすい 大きい手に合いやすい

太いグリップには、「握る力を減らしやすい」「手の負担を軽減しやすい」という説明もあります。

経験上、思い当たる方もいらっしゃるでしょう。しかし、ここで考えたいのは、その変化が、なぜ起きるのかということです。

球がつかまったら、手首を使ったのでしょうか?

細いグリップに替えて、球がつかまるようになった。

この変化を、「手首を使いやすくなったから」と説明することがあります。しかし、フェースが閉じたことと、手首の関節が動いたことは、同じではありません。

試しに、クラブを左手だけで持ち、腕や手首の向きをできるだけ変えずに、指をゆっくり握り込んでみてください。

保持する位置や握り方によっては、グリップが手の中で巻き込まれ、フェースが閉じる方向に動くことがあります。

これは、指の動きがクラブの回転に変わったものです。

この動きによって球がつかまったのであれば、「手首を使いやすくなった」と説明するだけでは、実際に起きていることを見落としてしまいます。

PINGのチャートで、注目したいところ

前回のPINGのグリップチャートを、もう一度見てください。

同じ手の長さでも、指が長い方には、太いグリップが推奨されています。

指が長いから、太くする。

寸法の関係としては分かりますが、それが保持の仕方にどう関係するのでしょうか。

ここで、重いバッグを手で持つ場面を想像してください。

持ち手を握り潰すように締め付けなくても、指をフック状に曲げれば、その形で重さを受けられます。もちろん、指の形を保つ筋力は必要ですが、強く握り締めることとは違います。

店長は、ゴルフのグリップにも、この考え方を取り入れたいと思っています。

指を曲げた内側を、グリップが満たしているか

注目したいのは、指先から二つ目の関節、PIP関節です。

この関節を曲げ、指をフック状にしたとき、その内側にグリップが収まっていれば、指の形を利用して力を受けられます。

ところが、グリップが細すぎると、曲げた指の内側に十分な接触を作れず、保持するために、さらに指を閉じて握り込む方がいるのではないでしょうか。

その握り込みが、グリップを巻き込む動きにもつながる。これが、店長の考えている仕組みです。

「指で保持すること」と「指を握り込むこと」は、分けて考える必要があります。

太さを合わせる目的は、指を使わなくすることではありません。無理のない指の形で接触を作り、必要以上に握り締めずに保持できるようにすることです。

チャートに、握り方を加えて選ぶ

PINGのチャートは、手と指の寸法から太さの目安を示しています。ただし、そこで握り方まで定義しているわけではありません。

そこで当店では、次のような選び方を提案したいと思います。

握り方・傾向 比較する太さの目安
手のひら側で保持するパームグリップ チャートの推奨サイズを基本にする
指側で保持するフィンガーグリップで、フックが出やすい 推奨サイズより太めも比較する

フィンガーグリップの方に太めを提案するのは、手首を動かなくするためではありません。

指との接触を確保し、さらに握り込まなくても支えられるようにする。その結果、左手の握り込みによる、意図しないフェースの回転を減らせないかを確認するためです。

もちろん、フックの原因がすべて握り込みにあるわけではありません。太くすれば必ず改善する、という選び方でもありません。

チャートで寸法の基準を知り、握り方と実際の動きに合わせて調整する。

これが、今回加えたい店長の「味変」です。

次回は、バックラインと右手側の太さについて、保持と力の伝わり方から考えてみたいと思います。

細野勇策プロのクラブセッティングから考える ― なぜハイブリッドを使わないのか?

前回は、細野勇策プロが4種類のアイアンを組み合わせている理由について考えてみました。

今回は、もう一つ気になる部分について考察したいと思います。

それは、細野プロのセッティングには、ハイブリッド(HB)が1本も入っていないことです。

一般的には、ロングアイアンをやさしく打つためのクラブとして、ハイブリッドが広く使われています。

ところが細野プロは、G440 MAXの4Wと7W、i500の3番アイアン、そしてG440の5番・6番アイアンという組み合わせを採用しています。

なぜ、ハイブリッドを使用しないのでしょうか。

ハイブリッドはアイアンと同じスイングで打てるのか?

ハイブリッドは、フェアウェイウッドとアイアンの長所を組み合わせたクラブです。

フェアウェイウッドのようなボールの上がりやすさと、アイアンに近いシャフト長による扱いやすさ。

非常に合理的なクラブだと思います。

しかし、両方の長所を持っているということは、両方の弱点も持っているのではないでしょうか。 “細野勇策プロのクラブセッティングから考える ― なぜハイブリッドを使わないのか?” の続きを読む

細野勇策プロのクラブセッティングに見る、フィッティングの神髄!

実は、以前紹介した佐久間朱莉プロのクラブセッティングについてのコヤマカズヒロ氏の動画で、細野勇策プロのクラブセッティングにも言及されていました。

その中でコヤマ氏は、細野プロが「ピンを狙うのは9番アイアンから下のクラブ」と話していることを紹介しています。

これを根拠に考えるならば、それよりも長いクラブでは、ピンという一点ではなく、ある程度のゾーンを狙っているということになります。

例えば、あるクラブの左右の着弾分散が15ヤードあるとします。

ピンがグリーンのエッジから5ヤードの位置に切られている場合、ピンを直接狙えば、ショットの一部がグリーンを外れる可能性があります。

そこで、ピンを直接狙うのではなく、自分のショットの分散範囲ができるだけグリーン内に収まる位置を目標に設定します。 “細野勇策プロのクラブセッティングに見る、フィッティングの神髄!” の続きを読む

ダイナミックでいこう 最後に

ここまで、

「ダイナミックでいこう」

というタイトルで、ゴルフクラブとスイングを少し違った角度から考えてきました。

最初のきっかけは、

ウェッジのライ角を、アイアンの流れより2度ほどフラットにすると統一感が出る

という話でした。

スタティックに考えれば、

ライ角をフラットにするとフェースは相対的に右を向く。

それで説明は終わります。

しかし実際には、

ライ角を変えると手元の位置が変わり、

腕の位置が変わり、

人間とクラブの慣性関係が変わり、

時間差が変わり、

クラブパスやフェースの動きまで変わる可能性があります。

つまり、

止まっているクラブだけを見ても、動いているクラブのすべては説明できない。

そこから、このシリーズは始まりました。 “ダイナミックでいこう 最後に” の続きを読む

ダイナミックで行こう 現代のクラブはホーガンほどスタンスを変えなくていいのか

前回は、ホーガンのスタンス図に補助線を入れ、

接線は力の方向、支点から広がる扇形は回転量

として考えてみました。

そして、長いクラブほど扇形が大きく開いていることから、

クラブの慣性が大きくなるほど、人体側でもより大きな回転量を準備していたのではないか

という仮説を立てました。

では、ホーガンの時代と現代では、クラブの慣性はどれくらい違うのでしょうか。 “ダイナミックで行こう 現代のクラブはホーガンほどスタンスを変えなくていいのか” の続きを読む

ダイナミックで行こう 人間とクラブを一つの系として考える

クラブの数字を揃えることと、動きを揃えることは同じではない

という話をしました。

では、動きを揃えるためには何を見ればよいのでしょうか。

ここで、フィッティングの考え方を少し変えてみます。

先日、あるお客様からこんな相談がありました。

「アイアンは振り切れるようになった。でも今度はドライバーが暴れるようになった」

普通なら、

「では、ドライバーに問題があるのかもしれませんね。新しいドライバーを試してみましょう」

となりそうな場面です。

しかし私は、

「一度、スイングを見せてください」

と連絡しました。

なぜなら、変わったのはドライバーではありません。

お客様のスイングの方だったからです。

クラブと人間を分けて考えていいのか

“ダイナミックで行こう 人間とクラブを一つの系として考える” の続きを読む