理想のスイング、マキロイの真実

一般的に、良いスイングはインパクトで 手元が低い と言われます。
また、アドレスで作った 前傾角度が維持されている ことも、良いスイングの条件としてよく語られます。

では、「スイングが素晴らしいプロ」と聞いて、多くの人が思い浮かべる選手は誰でしょうか。

おそらく、その一人が ローリー・マキロイ だと思います。

美しいリズム。
力感のないように見える動き。
大きな回転。
低い手元。
崩れない前傾。

まさに、現代ゴルフにおける理想的なスイングとして語られることの多い選手です。

では、こちらの動画を確認してみてください。

では、こちらの動画を確認してみてください。

左の選手は、インパクトでアドレス時のシャフトプレーンとほぼ重なっています。
前傾角度も崩れていません。

正面から見ると、タメも非常に強く、インパクトではしっかりハンドファーストです。

一般的に言われる良いスイングの条件である、

手元が低い
前傾角度が維持されている
シャフトプレーンが戻っている
強いタメがある
ハンドファーストでインパクトしている

これらを高いレベルで満たしています。

一方、右の選手はどうでしょうか。

インパクトでは、アドレス時のシャフトプレーンから外れています。
手元はやや浮き、前傾角度も崩れているように見えます。

ここだけを見れば、多くの人はこう思うかもしれません。

左の選手がローリー・マキロイで、右の選手は別の選手だろう。

なぜなら、一般的にマキロイは「世界で最も美しいスイングの持ち主」と評価されることが多いからです。

しかし、実際には逆です。

左がセルジオ・ガルシア。
右がローリー・マキロイです。

ここに、ゴルフスイング評価の大きな問題があります。

マキロイのスイングは、一般的に非常に高く評価されています。
美しいリズム、大きな回転、力強さ、飛距離。
たしかに素晴らしいスイングです。

しかし、一般的に良いスイングの条件として語られる、

手元が低い
前傾が崩れない
シャフトプレーンが戻る
タメがある
ハンドファーストで打つ

という基準で見ると、ガルシアの方が非常に明確に満たしている部分があります。

にもかかわらず、ガルシアのスイングはしばしば、

独特
クラブが寝る
真似しにくい
特殊なスイング

と表現されます。

ここで考えなければいけないのは、
私たちは本当にスイングを正しく見ているのか
ということです。

見た目の美しさ。
有名選手へのイメージ。
一般的な評価語。

それらに引っ張られて、実際に起きているインパクト構造を見落としていないでしょうか。

ガルシアのスイングは、途中のクラブの動きが独特に見えるため、評価されにくい。
しかし、インパクトでは非常に優れた構造を持っています。

そしてここから、ガルシアのアイアンがなぜ飛ぶのか、という話につながります。

一般的には、

ハンドファーストでロフトが立つから飛ぶ

と説明されます。

もちろん、それは間違いではありません。
しかし、それだけでは足りません。

本当に重要なのは、
上体・腕・クラブの接続が切れていないこと
です。

接続が切れていないから、前傾が崩れない。
接続が切れていないから、手元が浮かない。
接続が切れていないから、シャフトがアドレス時の位置に戻る。
接続が切れていないから、ハンドファーストでもボールにエネルギーが乗る。

つまり、

ガルシアは、ハンドファーストだから飛ぶのではありません。
接続が切れていないから、ハンドファーストでも飛ぶのです。

この順番を間違えると、スイングの見方を間違えます。

見える形は結果です。
見えない接続こそが原因です。

次回は、ガルシアのアイアンがなぜ飛ぶのかを、もう少し物理的に考えてみたいと思います。

MODUS³ TOUR 130とセルジオ・ガルシア

MODUS³ TOUR 130を考えるうえで、非常に分かりやすい選手がいます。

セルジオ・ガルシアです。

セルジオ・ガルシアは、2017年のマスターズ優勝時に、アイアンとウェッジでN.S.PRO MODUS³ TOUR 130Xを使用していました。

ガルシアのスイングは、切り返しでクラブが背後に深く落ち、強烈なラグを作ります。

手元は下へ、体は回転へ。
しかし、クラブヘッドは背後に残る。

この動きによって、シャフトには非常に大きな曲げ入力が入ります。

しかも、ガルシアはリリースが遅い。

インパクト直前までタメが残り、強いハンドファーストでボールに入っていきます。

このようなスイングでは、シャフトに求められるものは単なる硬さではありません。

強い入力を受け止めること。
しかし、棒のように突っ張らないこと。
遅れているヘッドを、インパクトに向けて自然に戻すこと。
そして、強いハンドファーストでもボールを上げる余地を残すこと。

ここが重要になります。 “MODUS³ TOUR 130とセルジオ・ガルシア” の続きを読む

重心距離の長いアイアンは、ライ角にシビアです

店長が「シビア」という言葉を覚えたのは、漫画アクションに連載されていた『嗚呼!! 花の応援団』だったと思います。

たしか青田赤道が「厳しくいくよ〜」というような意味合いで使っていた記憶があります。

それで思い出すのが、YMOの教授が『RYDEEN』の演奏前に、コマネチから「くぇーっ、くぇっ」をやっているところです。今見ても妙な勢いがあります。

この動画を見てみて下さい。

こういう昭和の言葉や映像には、理屈では説明しにくい強さがあります。

そして、ゴルフクラブのフィッティングを長くやっていると、この「シビア」という言葉が実にしっくりくる場面があります。

それが、重心距離の長いアイアンのライ角です。

“重心距離の長いアイアンは、ライ角にシビアです” の続きを読む

iPINGとco-pilotを繋げてもらいました

今日の試打会でiPINGとco-pilotを接続してもらいました。

co-pilotはバージョンアップされており、えっ何これ?と言う感じになってました。

新しいバージョンのiPINGにはco-pilotと接続というボタンが追加され、表示されたコードをco-pilotに設定すると、iPINGの結果が即座にpcに反映されます。これは通信機能があるiphoneにipingを入れてなければならないらしく、インストールしました。

パターフィッティングが終わると、このようなレポートがメールで送られてきます。

先ずは総合点数、その後各項目の詳細が送られてきます。

 

 

最後のページは、パッティングに対する統計です。

PUTTING STATS

パッティング統計

FOUR FEET

4フィート

The most important distance for amateur golfers to practice putting
(Due to large variation in skill + high number of putts from 4 feet)

アマチュアゴルファーがパッティング練習で最も重視すべき距離。
理由は、技術差が大きく、なおかつ4フィートからのパット数が多いため。

85%

of a putt’s start direction is determined by face angle at impact
パットの打ち出し方向の85%は、インパクト時のフェース角によって決まる。

WHY YOU MISS PUTTS

なぜパットを外すのか

  • Green Reading 41%
    グリーン読み:41%
  • Direction Control 38%
    方向性のコントロール:38%
  • Speed Control 18%
    距離感・スピードコントロール:18%
  • Target Selection 3%
    狙い所の選択:3%

15 FEET OR LESS

15フィート以内

Amateurs are 3x more likely to leave a putt short from this distance than a PGA Tour player
アマチュアは、この距離からのパットをショートする確率が、PGAツアープレーヤーの3倍高い。

FROM 5 FEET

5フィートから

PGA Tour pros make 27% more of their putts than 90-golfers
PGAツアープロは、90台で回るゴルファーよりも、5フィートのパット成功率が27%高い。

  • PGA TOUR 77%
    PGAツアー:77%
  • 90-GOLFER 50%
    90台ゴルファー:50%

TARGETING STRATEGY

ターゲット戦略/狙い方の戦略

7 FOOTERS: An uphill 7-footer should finish around one foot past the hole, regardless of slope, while a severely downhill 7-footer should finish nearly 3 feet past the hole.
7フィートのパットでは、上りのパットは傾斜に関係なく、カップを約1フィート過ぎる強さが目安。
一方、強い下りの7フィートでは、カップを約3フィート近く過ぎる強さが目安となる。

AT 33 FEET

33フィートでは

PGA Tour players are more likely to 3-putt than 1-putt
PGAツアープレーヤーでも、33フィートでは1パットで入れるより、3パットする可能性の方が高い。

AROUND 40%

約40%

of your strokes take place on the green
ゴルフの総打数の約40%は、グリーン上で行われる。

1 IN 10

10回に1回

putts from 40 feet end in a three-putt on the PGA TOUR
PGAツアーでも、40フィートからのパットは10回に1回が3パットになる。

13 FEET

13フィート

PGA Tour pros average one made putt per round from 13 feet or longer
PGAツアープロは、1ラウンドあたり平均して、13フィート以上のパットを1回決めている。

REFERENCES

参考文献

Broadie, Mark, and Dongwook Shin.
“A Golf Putting Model for Optimal Targeting Strategy and Attribution Analysis.”
2016年1月18日、1–26ページ。

Mark Broadie 著
『Every Shot Counts: Using the Revolutionary Strokes Gained Approach to Improve Your Golf Performance and Strategy』
Penguin Group, 2014年。

Putting: PGA TOUR Stats.
PGA Tour.
PGAツアー公式パッティング統計。

Amateurs: All “non-professional” golfers
アマチュア:すべての「非プロ」ゴルファー。

スタジオではまだ準備が完了するまでもう少しお待ちください

 

 

見えないものを見る 第6話 番手が変わると、なぜアタックアングルとバンスも変わるのか

前回は、ダウンブローになることで、ボールへ力を加える方向と実効的な作用位置が変わり、方向性が安定する可能性を考えました。

プロがグリーンを狙う場面では、最大飛距離を求めたフルショットよりも、右手首の角度を保ち、適正なダウンブローでラインを出すショットが多く見られます。

その理由は、単にスピンを増やすためではありません。

ボールへ力を加える位置と方向を揃え、左右方向と縦距離の両方を安定させるためではないか。

それが前回までの考察でした。

では、クラブの番手が変わると、なぜアタックアングルも変わるのでしょうか。

ロングアイアンでは比較的浅く入り、ショートアイアンやウェッジでは、より深いダウンブローになる傾向があります。

同時に、クラブのロフトは増え、バンスも大きくなっていきます。

これは偶然なのでしょうか。

今回は、ロフト、アタックアングル、バンスの関係を、ボールとの接触から考えてみます。

円の接線という中学校の数学

まず、中学校で習う円の基本性質を思い出します。

円の中心から接点へ引いた半径は、その接点における接線と必ず垂直になります。

円の中心を O、接点を P、接線を l とすれば、

OP丄 l

です。

これは、ゴルフボールとクラブフェースの関係を考えるうえで、非常に重要な性質です。

ゴルフボールを完全な球体、クラブフェースを平面として考えると、最初に接触する瞬間には、

  • クラブフェースはボール球面に対する接平面
  • ボール中心から接触点へ向かう半径は、フェース面に垂直
  • その半径方向がフェースの法線方向

になります。

つまり、クラブフェースの向きが決まれば、球面上の幾何学的なコンタクトポイントも決まります。

フェース開度が経度を決め、ロフトが緯度を決めるという前回までの説明は、この接線の性質を土台にしています。

ロフトが変われば、ボール側の接触位置も変わる

ロフトの小さいクラブでは、フェースは比較的立っています。

そのため、ボール中心から接点へ向かう半径は、地面に対して比較的水平に近くなります。

地球に例えれば、コンタクトポイントは赤道に近い位置です。

一方、ロフトが大きくなると、フェースは上を向きます。

フェース面に垂直な半径も下向きに傾くため、ボール側のコンタクトポイントは、より下側へ移ります。

地球に例えれば、南極に近づいていくことになります。

したがって、

ロフトが増えるほど、クラブフェースはボールの下側へ接触する

という関係が生まれます。

これは、ロフトがボールを高く上げるという結果だけではなく、ボール球面上のどこへ接触するかを決めているということです。

ボール側の接触点と、フェース側の打点は別である

ここで、二つの打点を分ける必要があります。

一つは、ボール球面上のどこへ接触したかという、ボール側のコンタクトポイントです。

もう一つは、クラブフェースのどの高さでボールを受けたかという、フェース側の打点です。

この二つは関連しますが、同じものではありません。

同じロフトのクラブでも、

  • ヘッドが高い位置を通過した
  • ヘッドが深く地面へ入った
  • リーディングエッジが浮いた
  • バンスが地面に強く接触した

という違いによって、フェース上の打点は変わります。

したがって、ロフトが大きいから必ずフェース下部へ当たるとは限りません。

フェース側の打点を決めるには、クラブヘッドがどの高さを通過し、地面からどのような反力を受けたかまで考える必要があります。

番手が短くなるほど、アタックアングルは深くなる

一般に、ロングアイアンでは比較的浅いダウンブローになります。

ショートアイアンやウェッジになるほど、アタックアングルは深くなる傾向があります。

しかし、プロが番手ごとにまったく別の打ち方をしているわけではありません。

番手が短くなると、

  • シャフトが短くなる
  • ボール位置が中央寄りになる
  • スイング円の最下点に対するボール位置が変わる
  • ロフトが大きくなる

ため、同じスイング構造の中でも、インパクト時の進入角は自然に深くなります。

つまり、番手別のアタックアングルは、

番手ごとに意識して打ち込んだ結果

というより、

クラブ長とボール位置が変化した結果

として生まれている部分が大きいと考えられます。

ロフトが増えるのに、アタックアングルも深くなる

ここで、一見すると矛盾する関係が現れます。

ロフトが大きくなると、ボール側のコンタクトポイントは下へ移ります。

それに加えて、アタックアングルも深くなれば、クラブヘッドはさらに下方向へ進みます。

そのままなら、ショートアイアンやウェッジでは、

  • リーディングエッジが地面へ深く刺さる
  • フェース下部すぎる位置でボールを受ける
  • ヘッドが急減速する

ように見えます。

しかし、実際にはそうならないように、もう一つの構造が用意されています。

それがバンスです。

バンスは何をしているのか

バンスとは、リーディングエッジよりもソール後方が低く配置されている構造です。

一般には、

バンスはダフリを防ぐもの

と説明されます。

これは間違いではありません。

しかし、ダフリを防ぐという説明だけでは、バンスの役割を十分に表していません。

バンスが地面や芝へ接触すると、地面から反力を受けます。

その反力によって、

  • ヘッドが地面へ潜りすぎるのを防ぐ
  • リーディングエッジの通過高さを保つ
  • フェース姿勢を安定させる
  • ヘッドの急激な減速を抑える

ことができます。

つまり、バンスは、

ヘッドを跳ねさせるためのもの

ではなく、

ヘッドの侵入深さと通過高さを管理する支持機構

と考えることができます。

アタックアングルとバンスは反対方向に働く

ダウンブローが深くなるほど、クラブヘッドは地面へ深く入ろうとします。

一方、バンスが大きくなるほど、ソールは地面から強い反力を受けやすくなり、ヘッドの潜り込みを抑えます。

つまり、

  • アタックアングルはヘッドを下へ向かわせる
  • バンスはヘッドを地面から支える

という、反対方向の作用を持っています。

この二つが適切に組み合わされれば、

ダウンブローで入っても、ヘッドは必要以上に潜らず、適正な高さを通過する

ことができます。

番手が短くなるほどアタックアングルが深くなり、同時にバンスも大きくなる傾向があるのは、両者が一つの組み合わせとして働いているからではないでしょうか。

数字が完全に相殺されるわけではない

ここで注意したいのは、

アタックアングルが5度なら、バンスも5度あれば相殺される

という単純な話ではないことです。

実際のソールと地面の関係には、

  • シャフトの傾き
  • ダイナミックロフト
  • ソール幅
  • ソールの丸み
  • リーディングエッジの形状
  • 地面の硬さ
  • 芝の密度
  • ヘッドスピード

が影響します。

バンス角は、一つの静的な設計値です。

一方、インパクトではクラブ姿勢と地面条件によって、実際に働く実効バンスが変わります。

したがって、アタックアングルとバンスは、数値として単純に引き算するものではありません。

それでも、

深い進入に対して、バンスが地面からヘッドを支持する

という基本的な役割は変わりません。

番手ごとの組み合わせ

ロングアイアンは、

  • ロフトが小さい
  • クラブが長い
  • アタックアングルが浅い
  • バンスが比較的小さい

という組み合わせです。

フェースが立っているため、ボール側のコンタクトポイントは赤道に近くなります。

アタックアングルも浅いため、大きなバンスによる支持を必要としません。

一方、ショートアイアンやウェッジは、

  • ロフトが大きい
  • クラブが短い
  • アタックアングルが深い
  • バンスが大きい

という組み合わせです。

フェースはボールの下側へ接触します。

クラブヘッドも深い角度で地面へ向かいます。

そこでバンスが地面からヘッドを支え、リーディングエッジの通過高さを整えます。

このように見ると、番手ごとの設計は、

ロフト、長さ、アタックアングル、バンスが別々に存在している

のではなく、

適正なコンタクト状態を作るために、一つの系として組み合わされている

ことが分かります。

芝の上ではボールも動いている

さらに、実際のゴルフでは、ボールは完全に地面へ接しているとは限りません。

フェアウェイの芝は、ボールを数ミリ持ち上げています。

薄いライでは地面に近く、芝の上に浮いたライでは、ボール中心はより高い位置にあります。

一方、クラブヘッドも芝や地面へ入ります。

したがって、フェース上の打点を決めるのは、

  • ボールが地面からどれだけ高く支持されているか
  • クラブヘッドが地面へどれだけ入るか

の差です。

ボールが高く浮いていても、ヘッドが同じだけ深く入れば、打点は大きく変わりません。

しかし、バンスによってヘッドの沈み込みが抑えられれば、フェース上の打点は高くなります。

反対に、硬い地面でバンスが強く反発すれば、リーディングエッジが浮き、ボール下部を薄く捉える可能性もあります。

つまり、ライが変わると、

ボールの高さとヘッドの通過高さの関係

が変わります。

適正な打点を揃えるための設計

クラブ設計者が番手ごとに変えているのは、ロフトと長さだけではありません。

  • バンス
  • ソール幅
  • ソールの丸み
  • リーディングエッジ形状
  • ヘッド重心
  • フェース高さ

まで調整されています。

これらは、番手ごとに異なる進入条件でも、フェースの適正な位置でボールを受けるための設計と考えることができます。

ロングアイアンとウェッジでは、クラブの動きも、ボール側の接触位置も異なります。

それでも、極端に打点が上下しないように、クラブ側の形状が整えられているのです。

つまり、

番手が変わるから打点が変わる

だけではなく、

番手が変わっても適正な打点を維持するために、クラブ設計が変えられている

と考える方が自然です。

バンスはインパクトを支えるサスペンションなのか

自動車では、エンジンの力がそのまま路面へ伝わるわけではありません。

シャシー、サスペンション、タイヤを通じて、路面へ力が伝えられます。

サスペンションは、車体を上下に動かすためだけのものではありません。

タイヤの接地を保ち、路面へ安定して力を伝えるための装置です。

ゴルフクラブにおけるバンスにも、似た役割があるのかもしれません。

バンスは、ヘッドを地面から支え、

  • フェースの通過高さ
  • ヘッドの姿勢
  • ボールとの接触状態

を安定させます。

そう考えると、バンスは単なるダフリ防止機能ではありません。

クラブフェースとボールの接触を支えるサスペンション

と表現することもできます。

フェースを開く意味へつながる

ここまで考えると、アプローチでフェースを開く意味も変わって見えてきます。

一般には、

フェースを開くのは、ロフトを増やしてボールを高く上げるため

と説明されます。

しかし、フェースを開けば、ロフトだけでなく、

  • バンスの向き
  • ソールの接地点
  • リーディングエッジの高さ
  • ヘッドの侵入深さ
  • ボール側のコンタクトポイント
  • フェース上の打点

も同時に変わります。

そうであれば、フェースを開く主な目的は、

ロフトを増やすこと

ではなく、

ライとアタックアングルに対して、適正なコンタクト位置を作ること

なのかもしれません。

ロフトが増えるのは、その操作に伴って起きる結果の一つにすぎない可能性があります。

見えるロフトと、見えない組み合わせ

私たちは、クラブを見ればロフトを確認できます。

弾道計測器を使えば、アタックアングルも確認できます。

カタログを見れば、バンス角も分かります。

しかし、それらがインパクトでどのように組み合わされ、

  • リーディングエッジがどの高さを通過したか
  • ソールがどこで地面に接触したか
  • ボールのどこへ力が加わったか
  • フェースのどこでボールを受けたか

までは、直接には見えません。

見えている数値は、それぞれ独立しているように見えます。

しかし、実際のインパクトでは、すべてが一つの接触状態を作っています。

番手が変われば、ロフトが変わる。

クラブ長が変わり、アタックアングルも変わる。

その進入角に対応するように、バンスとソール形状も変わる。

それらすべてが、適正な打点とボール出力を作るために組み合わされているのではないでしょうか。

次回は、フェースを開く操作を、単にロフトを増やす動作としてではなく、

ボールとフェースのコンタクトポイントをライに合わせて調整する動作

として考えていきます。

見えないものを見る 第5話 ダウンブローになると、なぜ方向性が安定するのか

前回は、ロフトが大きくなるほどバックスピン成分が強くなり、同じ横方向の回転成分があっても、スピンアクシスの傾きが小さくなることを考えました。

ロフトが大きいクラブでは、

  • 左右方向のコンタクト偏位が小さくなりやすい
  • 横方向のトルクが小さくなりやすい
  • バックスピン成分が大きくなる
  • スピンアクシスが傾きにくくなる

という複数の条件が重なります。

では、クラブのロフトではなく、クラブヘッドがボールへ入ってくる方向が変わると、何が起きるのでしょうか。

グリーンを狙う場面で、プロは必ずしも最大飛距離を求めたフルショットを行いません。

スイング幅を抑え、右手首の角度を保ちながら、いわゆる「ラインを出す」ショットを選ぶことがあります。

そのとき、インパクトロフトは抑えられ、クラブヘッドは適正なダウンブローでボールへ入ります。

プロがこの打ち方を選ぶのは、経験的に、打ち出し方向と縦距離の両方を管理しやすいことを知っているからでしょう。

では、なぜダウンブローで捉えると、方向性が安定するのでしょうか。

今回は、アタックアングルについて考えます。

アタックアングルとは何か

アタックアングルとは、インパクト付近でクラブヘッドがどの方向へ進んでいるかを、上下方向の角度として表したものです。

地面に対して水平に近く進めば、アタックアングルは浅くなります。

目標方向へ進みながら、より強く下方向へ向かえば、ダウンブローが深くなります。

ここで大切なのは、目標方向そのものが変わるのではなく、クラブヘッドの進み方が変わるということです。

ダウンブローが深くなるほど、クラブは単に前へ進むのではなく、前へ進みながら、より下方向へ向かってボールへ入ってきます。

見えているのは、クラブが下へ進んでいる動きです。

しかし、ボール側から見て重要なのは、その下向きの進行によって、ボールのどの位置へ、どの方向の力が加わったのか、という点です。

最初の接触点と、力が作用した中心は同じではない

完全な球体と平面が最初に触れる一点だけを考えれば、その位置は主にフェースの向きによって決まります。

そのため、アタックアングルだけを変え、フェースの向きをまったく変えないなら、最初に触れる一点が必ず下へ動くとは限りません。

しかし、実際のゴルフボールはインパクトで大きく変形します。

接触は一点で終わるのではなく、時間とともに面へ広がります。

その接触面の中では、

  • 圧力が高くかかる場所
  • 摩擦が強く働く場所
  • ボールカバーが大きく変形する場所
  • 力が集中的に伝わる中心

が存在します。

ここでは、この「力が集中的に伝わる中心」を実効コンタクトポイントと考えます。

今回の考え方は、ダウンブローになると、球面上の最初の接触点が必ず下へ動くという意味ではありません。

そうではなく、ボールが変形して接触面が広がる過程の中で、圧力や力の中心が下方へ移るのではないか、という考えです。

クラブの進行方向が下へ傾けば、接触面の中での圧力分布や、摩擦の働き方も変わるはずです。

その結果、ボールが最終的に受け取る力の中心は、より下方へ移る可能性があります。

地球の経度・緯度で考える

ボールを地球のような球体として考えます。

フェース開度は経度、ロフトや上下方向の作用位置は緯度に相当します。

赤道付近では、同じ10度の経度差でも、左右方向の距離は大きくなります。

一方、南極へ近づくほど、同じ10度の経度差でも、左右方向の距離は小さくなります。

もしダウンブローが深くなることで、実効コンタクトポイントがボール下部へ移るなら、同じフェース開度であっても、ボール重心から見た左右方向の作用腕は短くなります。

つまり、フェース向きの誤差が同じでも、作用位置が下がるほど、左右方向への影響は小さくなると考えられます。

左右方向の作用腕と方向性

ボールが左右へ向きを変えるかどうかは、どれだけ目標方向へ力が加わったかだけではなく、その力がボール中心からどれだけ左右にずれた位置へ加わったかにも関係します。

同じ強さで前へ押されたとしても、その力がボール中心から左右へ大きくずれた位置にかかれば、ボールは前へ飛ぶだけでなく、左右へ向きを変えようとする回転も受けやすくなります。

逆に、同じように前へ押されても、その力がより中心に近い位置へかかれば、左右へ向きを変えようとする作用は小さくなります。

ここで重要なのが、左右方向の作用腕です。

実効コンタクトポイントが下方へ移ると、同じフェース向きの誤差があったとしても、その誤差が左右方向へ及ぼす影響は小さくなります。

つまり、ダウンブローになるほど、同じフェース誤差が左右方向の回転や方向変化として現れにくくなる可能性があります。

プロがピンを狙うときにダウンブローを使う理由

プロゴルファーは、ピンを狙うショットで、払い打つよりも、適正なダウンブローでボールを捉えることがあります。

一般には、

  • ボールを圧縮するため
  • スピンを増やすため
  • ターフを取るため
  • ロフトを立てて距離を管理するため

と説明されます。

もちろん、これらも無関係ではありません。

しかし、プロが求めているのは最大飛距離ではありません。

ピンを狙う場面で必要なのは、

  • ボールスピードを揃える
  • 打ち出し角を揃える
  • スピン量を揃える
  • 左右の方向を揃える
  • キャリーを揃える

ことです。

プロは経験的に、クラブを適正なダウンブローで入れた方が、ボールの出力を安定させやすいことを知っています。

その理由の一つとして、

実効コンタクトポイントがボール下部へ安定し、左右方向の作用腕が短くなるため、方向への感度が下がる

という構造が考えられます。

プロが「ラインを出す」と表現する打ち方は、単に低い球を打つことではないのでしょう。

フェースの開閉量を抑え、インパクトロフトと打点を管理し、ボールへ力を加える位置と方向を揃える。

その結果として、打ち出し方向と縦距離の再現性が上がると考えられます。

ダウンブローはスピンを増やすためだけではない

アタックアングルを語るとき、多くの説明はスピンロフトへ向かいます。

ダウンブローが深くなると、ダイナミックロフトとの差が広がり、その結果としてスピン量が増える、という説明です。

これはクラブ側の角度関係としては有用です。

しかし、ボール側から見ると、それだけではありません。

アタックアングルが変われば、

  • ボールへ向かう進入方向
  • 接触面の圧力分布
  • ボールカバーの変形方向
  • 力が作用する位置
  • 左右方向の作用腕

も変わります。

したがって、ダウンブローは、

スピン量を変える操作

であると同時に、

ボールへ力を加える位置と方向を変える操作

でもあります。

この後者を考えなければ、プロが方向性を求める場面でダウンブローを使う理由は、十分には説明できません。

方向性とは左右だけではない

プロが求める方向性は、単にボールが右へ行くか、左へ行くかだけではありません。

ピンを狙うショットでは、

  • 左右のばらつき
  • キャリーの前後差
  • 打ち出し高さ
  • スピン量
  • ランディング角

まで含めて、狙った空間へボールを運ぶ必要があります。

適正なダウンブローで打点とインパクトロフトが揃えば、

  • ボールスピード
  • 打ち出し角
  • スピン量
  • スピンアクシス

も揃いやすくなります。

その結果、左右方向だけでなく、縦距離も安定します。

つまり、プロが求めている方向性とは、

二次元の直進性ではなく、三次元空間における弾道の再現性

です。

深ければ深いほどよいわけではない

ただし、アタックアングルが深いほど、無条件に方向性がよくなるわけではありません。

過度に深くなれば、

  • フェース下部すぎる打点
  • ボールスピードの低下
  • スピン過多
  • リーディングエッジの刺さり
  • ヘッドの急減速
  • ターフや芝の介在
  • 距離のばらつき

が起こります。

必要なのは、最大のダウンブローではありません。

番手、ロフト、バンス、ライに対して適正なアタックアングル

です。

プロが行っているのは、ただ上から打ち込むことではありません。

クラブとボールが最も安定して結合する進入条件を作っているのです。

アタックアングルは原因なのか、入力条件なのか

弾道計測器には、アタックアングルが何度だったか表示されます。

しかし、その角度が直接ボールを真っすぐ飛ばしたわけではありません。

ボールが受け取ったのは、

  • 接触位置
  • 圧力分布
  • 力の向き
  • 力の大きさ
  • 回転の受け取り方

です。

アタックアングルは、それらを作るクラブ側の入力条件です。

したがって、

ダウンブローだから方向性がよい

というより、

ダウンブローによって、方向性が安定しやすい接触条件が作られた

と考えた方が正確です。

見える進入角と、見えない作用点

クラブヘッドが何度下向きに進んでいたかは、現在の計測器で確認できます。

しかし、その進入角によって、

  • ボール上の圧力中心がどこへ移ったのか
  • ボールカバーがどの方向へ変形したのか
  • 左右方向の作用腕がどれだけ変化したのか
  • ボールがどのような回転を受け取ったのか

は直接には見えません。

見えているのは、アタックアングルというクラブ側の数値です。

見えていないのは、その数値によって作られた、ボール側の接触状態です。

しかし、ボールを中心に考えることで、その見えない部分を推測することはできます。

プロがピンを狙う場面でダウンブローを使うのは、単なる習慣ではないのでしょう。

長年の経験から、

その進入条件の方が、ボールへ力を加える位置と方向を揃えやすい

ことを知っているのかもしれません。

次回は、番手が変わると、ロフト、アタックアングル、バンスがどのように組み合わされ、フェース上の打点とボール側のコンタクトポイントを整えているのかを考えます。

見えないものを見る 第4話 ロフトが増えると、なぜスピンアクシスは傾きにくくなるのか

第3話では、ロフトが大きくなるほど、同じフェース開度でも、ボール重心から見た左右方向のコンタクト偏位が小さくなる可能性を考えました。

低ロフトのクラブでは、フェース向きの変化が、ボール重心から見た左右方向のズレとして大きく現れます。

一方、ロフトが大きくなるほど、その左右方向のズレは小さくなります。

その結果、ボールを左右へ向けるz軸まわりのトルクも小さくなりやすい。

これが、ロフトが増えるほど直進性が高くなる一つ目の理由でした。

しかし、ロフトが大きいクラブの直進性には、もう一つ重要な理由があります。

それが、スピンアクシスです。

ボールは「バックスピン」と「サイドスピン」に分かれて回っているわけではない

ゴルフでは、よく、

  • バックスピン
  • サイドスピン

という言葉が使われます。

しかし、実際のボールが二つの別々の回転をしているわけではありません。

ボールは、一つの軸を中心に回転しています。

その軸が地面に対して水平に近ければ、回転はほぼ純粋なバックスピンになります。

一方、その軸が左右へ傾けば、ボールには横方向の空力が加わり、弾道が曲がります。

つまり、ボールの曲がりを考えるときに重要なのは、

横回転が何回転あるか

というより、

ボールの回転軸がどれだけ傾いているか

です。

この回転軸を、スピンアクシスと呼びます。

スピンアクシスは、回転成分の比で決まる

ボールの回転を単純化して考えると、

  • バックスピン方向の成分
  • 横方向の回転成分

に分けることができます。

スピンアクシスの傾きは、概念的には、この二つの比で決まります。

バックスピン成分を (\omega_{\text{back}})。

横方向の回転成分を (\omega_{\text{side}})。

スピンアクシスの傾きを (\theta) とすれば、

\tan^{-1}
\left(
\frac{\omega_{\text{side}}}
{\omega_{\text{back}}}
\right)
]

と表せます。

ここで重要なのは、スピンアクシスの傾きは、横方向の回転成分だけでは決まらないことです。

同じ横方向の回転成分が存在していても、バックスピン成分が大きければ、軸の傾きは小さくなります。

逆に、バックスピン成分が小さければ、少しの横方向成分でも、軸は大きく傾きます。

同じ500回転でも、意味は同じではない

たとえば、横方向の回転成分が500rpmだったとします。

バックスピンが2,000rpmなら、

となり、スピンアクシスの傾きは約14度です。

一方、バックスピンが5,000rpmなら、

となり、傾きは約6度です。

さらに、バックスピンが8,000rpmなら、傾きは約4度まで小さくなります。

横方向の回転成分は、すべて同じ500rpmです。

しかし、バックスピン量が違うだけで、スピンアクシスの傾きは大きく変わります。

つまり、

横方向の回転が同じ量だけ生じても、総スピンの中で占める割合が違えば、ボールの曲がり方は同じではない

ということです。

ロフトが大きいほど、バックスピン成分が強くなる

一般に、ロフトが大きいクラブほど、ボールには大きなバックスピン成分が与えられます。

もちろん、実際のスピン量は、

  • ボールスピード
  • ダイナミックロフト
  • アタックアングル
  • 打点
  • ボールカバー
  • フェースとボールの摩擦状態

によって変化します。

しかし、ほかの条件が大きく変わらなければ、ロフトの大きいクラブほど、回転ベクトルのうちバックスピン方向の成分は大きくなります。

そのため、同じ大きさの横方向成分が生じても、スピンアクシスは傾きにくくなります。

低ロフトのドライバーでは、総スピン量が少ないため、少しの横方向成分でも、スピンアクシスは大きく傾きます。

一方、ロフトの大きいアイアンやウェッジでは、バックスピン成分が大きいため、同じ横方向成分が存在しても、スピンアクシスの傾きは小さくなります。

これが、高ロフトクラブほど曲がりにくく見える理由の一つです。

直進性には二つの段階がある

ここまでの話を整理すると、ロフトが大きくなることで直進性が上がる理由は、二段階あります。

一つ目は、インパクト時の問題です。

ロフトが大きくなると、同じフェース開度でも、ボール重心から見た左右方向のコンタクト偏位が小さくなります。

その結果、左右方向へ回そうとする作用腕が短くなり、z軸まわりのトルクが小さくなりやすい。

つまり、

そもそも横方向の回転成分を生みにくくなる

ということです。

二つ目は、ボールが飛び出した後の問題です。

仮に横方向の回転成分が生じても、ロフトが大きいクラブでは、バックスピン成分が大きくなります。

そのため、横方向成分の割合が小さくなり、スピンアクシスの傾きも小さくなります。

つまり、

生じた横方向成分が、弾道の曲がりとして現れにくくなる

ということです。

高ロフトクラブは、

  • 横方向の回転を作りにくい
  • 作られた横方向の回転も、軸の傾きとして現れにくい

という二重の構造を持っています。

ドライバーとウェッジでは、同じフェース誤差でも結果が違う

たとえば、ドライバーとウェッジで、フェースとパスの関係に同じ大きさの誤差があったとします。

クラブ側の角度差だけを見れば、同じ誤差です。

しかし、ボール側では結果が異なります。

ドライバーでは、

  • ロフトが小さい
  • 左右方向のコンタクト偏位が大きくなりやすい
  • 総スピン量が少ない
  • 横方向成分の割合が大きくなりやすい
  • スピンアクシスが大きく傾きやすい

という条件が重なります。

一方、ウェッジでは、

  • ロフトが大きい
  • 左右方向のコンタクト偏位が小さくなりやすい
  • バックスピン成分が大きい
  • 横方向成分の割合が小さい
  • スピンアクシスが傾きにくい

という条件になります。

つまり、同じクラブ側の角度誤差でも、

ボールにとっての意味は同じではない

ということです。

ここでも、見えている角度だけで現象を判断することの限界が見えてきます。

スピンアクシスは原因ではなく、結果である

弾道計測器には、スピンアクシスが何度傾いたか表示されます。

しかし、スピンアクシスがボールを曲げた原因なのでしょうか。

より正確には、スピンアクシスは、

  • ボールのどこに力が加わったか
  • どの方向のトルクが生じたか
  • バックスピン方向と横方向へ、どのように角運動量が配分されたか

というインパクトの結果です。

つまり、スピンアクシスは、原因そのものではありません。

ボールが受け取った回転ベクトルを、飛び出した後に表したものです。

この違いは重要です。

一般的な説明では、

フェースとパスの差があるから、スピンアクシスが傾いた

とされます。

実用的には、それで弾道を予測できます。

しかし、実際にボールが受けたのは角度差ではありません。

ボールは、フェース角やクラブパスという数字を読み取って回転したのではありません。

ボールのある位置へ、ある方向の力が加わり、その結果として角運動量を受け取りました。

フェースとパスの差は、その接触状態を作るクラブ側の条件です。

スピンアクシスは、そこから生まれたボール側の出力です。

総スピン量だけを見ても、曲がりは分からない

ゴルフでは、スピン量が多い、少ないという話がよくされます。

しかし、総スピン量だけでは、ボールがどれだけ曲がるかは分かりません。

たとえば、総スピンが6,000rpmでも、その軸がほぼ水平なら、弾道は大きく曲がりません。

反対に、総スピンが2,000rpmでも、軸が大きく傾けば、ボールは大きく曲がる可能性があります。

重要なのは、総量だけではなく、

どの方向の回転として配分されたか

です。

スピン量は角運動量の大きさ。

スピンアクシスは、その角運動量の向き。

この二つを合わせて初めて、ボールの空中での動きを考えることができます。

高ロフトクラブの方向性を、ボール側から見る

一般には、ショートアイアンやウェッジの方向性がよい理由として、

  • シャフトが短い
  • スイングが小さい
  • ヘッドスピードが遅い
  • フェース管理がしやすい

と説明されます。

もちろん、これらも重要です。

しかし、ボール側から見ると、さらに二つの理由が加わります。

第一に、ロフトが大きくなることで、同じフェース開度でも、左右方向のコンタクト偏位が小さくなること。

第二に、バックスピン成分が増えることで、同じ横方向成分が存在しても、スピンアクシスの傾きが小さくなること。

つまり、高ロフトクラブは、

インパクト時にも、飛球中にも、左右方向の誤差が拡大しにくい

という構造を持っている可能性があります。

直進性とは、曲がらないことだけではない

ここでいう直進性とは、単に空中でボールが曲がらないことだけではありません。

  • 初期方向が大きくずれない
  • スピンアクシスが大きく傾かない
  • 横方向の空力が小さい
  • 狙った範囲に着弾しやすい

という一連の安定性です。

ロフトが大きいクラブでは、

まず、コンタクトポイントの左右方向の偏位が小さくなり、初期方向への影響が抑えられる。

さらに、バックスピン成分が大きくなることで、スピンアクシスの傾きも抑えられる。

その結果、打ち出しから着弾まで、左右方向への誤差が拡大しにくくなります。

見えるスピンと、見えない力の配分

弾道計測器には、

  • 総スピン量
  • スピンアクシス
  • 曲がり幅

が表示されます。

しかし、それらはすべて、インパクト後にボールへ残った結果です。

その前に、

  • ボールのどこへ接触したのか
  • どの方向へ力が加わったのか
  • どの方向の角運動量が作られたのか
  • バックスピン成分と横方向成分へ、どのように配分されたのか

という見えない過程があります。

スピンアクシスを見るということは、単に結果の角度を見ることではありません。

その角度の背後で、ボールがどのような力を受け取ったのかを考えることです。

次回は、ロフトというフェース姿勢だけでなく、クラブヘッドの進入方向、つまりアタックアングルが変わると、ボール側の実効コンタクト位置と方向性がどのように変化するのかを考えます。

プロがピンを狙う場面で、なぜダウンブローを強めることがあるのか。

その理由を、スピン量だけではなく、ボール重心に対する作用点とトルクから見直していきます。

見えないものを見る 第2話 ボールのどこに当たったのか

第1話では、人間は見えているものを中心に理論を作りやすい、という話をしました。

かつて人類には、太陽や星が動いているように見えました。

地球が動いていることは見えませんでした。

だから、地球を中心に宇宙を考える天動説は、当時の人々にとって自然な説明でした。

ゴルフでも、弾道計測器の登場によって、以前は見えなかったクラブの動きが見えるようになりました。

  • クラブパス。
  • フェース向き。
  • アタックアングル。
  • ダイナミックロフト。

これらの数値によって、インパクト直前のクラブの状態は、以前よりはるかに詳しく説明できるようになりました。 “見えないものを見る 第2話 ボールのどこに当たったのか” の続きを読む

第4話 フェードとスライスの違い

ラインオブコンプレッションとスピン軸で考える

ここまで、フェードについて考えてきました。

第1話では、ローフェードは外から切る球ではないと整理しました。
第2話では、フェードには手元高さとクラブの通り道が必要だと考えました。
第3話では、リー・トレビノのフェードを通して、フェードはクラブパスだけでは決まらないと見てきました。

今回は、フェードとスライスの違いを整理します。


フェードとスライスは、曲がり幅だけの違いではない

フェードもスライスも、右へ曲がる球です。

そのため、

少し曲がるのがフェード
大きく曲がるのがスライス

と考えられがちです。

しかし、本質はそこではありません。

大切なのは、

ラインオブコンプレッションが保たれているか。
それとも、力が右へ逃げているか。

です。 “第4話 フェードとスライスの違い” の続きを読む

第3話 スーパーメックスを科学する

リー・トレビノのフェードを、ローポイントと力のベクトルで見る

前回は、「ローフェードが『見える』と成功率が上がる」を振り返りながら、フェードを打つには、まず手元高さとクラブの通り道を整える必要があるという話をしました。

今回は、以前の記事**「スーパーメックスを科学しよう。」**を振り返りながら、リー・トレビノのフェードについて考えてみます。

トレビノのフェードは、ただのカット打ちではない

リー・トレビノといえば、強いフェードを打つ選手として知られています。 “第3話 スーパーメックスを科学する” の続きを読む