前田陽子プロのセッティングから見えてくるもの。

塚田プロは、i540の性能をロング〜ミドルアイアンに集中して使う、非常に合理的なセッティングでした。

今回紹介する前田陽子プロのセッティングは、また別の意味で、

「そんな考え方があったのか」

と気付かせてくれます。

PING公式によると、前田プロのセッティングは、

G440 MAX フェアウェイウッド #4・#7
G440 ハイブリッド #4〜#7
i540 #8・#9・PW・UW

となっています。

これを見るまで店長も気付きませんでしたが、かなり筋の通った構成です。

なぜか。

素材を見てみます。

モデル フェース素材 ボディ
G440 FW(MAX/SFT) 鍛造マレージング鋼 C300 17-4ステンレス+カーボンクラウン
G440 HB 鍛造 マレージング鋼 C300 17-4ステンレス+カーボンクラウン
i540 IRON 鍛造マレージング鋼 C300 17-4ステンレス

G440 FWとHBにはさらにカーボンクラウンがありますが、アイアンには当然クラウンそのものがありません。

それを除けば、

フェースはC300マレージング鋼。
ボディは17-4ステンレス。

という基本構成が、FWからHB、そしてi540まで共通しています。

これは非常に興味深いところです。

正確性を重視するゴルファーにとって、クラブが変わるたびにインパクトの感触やボールの弾き方が大きく変わらないことには、大きなメリットがあります。

もちろん、FW、HB、アイアンではヘッド形状も内部構造も違いますから、打感まで完全に同じになるわけではありません。

しかし、少なくともボールと直接接触するフェース素材を同じC300マレージング鋼でつないでいる

ここには一つの統一感があります。

さらにi540では、中空アイアン特有の打音・打感の問題を抑えるために、inR-Airテクノロジーを採用しています。PINGは、フェース裏側のエアポケットによって不要な振動を減衰させる技術だと説明しています。

そう考えると前田プロのセッティングは、

FW → HB → i540

とクラブの形は変わっていきますが、

C300マレージング鋼フェースを軸に、同じ方向性の高初速クラブを連続させている

と見ることができます。

言い換えれば、

i540は、フェアウェイウッドとハイブリッドからアイアンへつなぐための「アイアン形状の高初速クラブ」と考えることもできる。

前田プロは、それを8番からUWまで使っています。

これは塚田プロとはまったく違うi540の使い方です。

塚田プロは、i540をロングアイアンとして使う

前田プロは、G440 FW・G440 HBから続く流れの中で、i540をアイアン部分として使う

同じi540でも、使い方はまったく違います。

そして、どちらにも筋が通っています。

ここがPINGのクラブセッティングの面白いところではないでしょうか。

下衆な話ですが、このようなセッティングであるならば、こちらも最大で4本までですので、お高いi540アイアンでも手の届く存在と言えるのでは?と思います。

i540アイアンの使用例最高パターン!そんな考え方があったのか!

日本ではPINGのクラブを使ったらこの人の右に出る人はいないと言っても過言ではありません。

その塚田Pのセッティングを見てみましょう。

5番から7番をi540

7番からPWをBLUEPRINT T

です。

アイアンをセットでなかればならないというように考えていないようですよ。

  • ドライバー
  • フェアウェイウッド
  • ハイブリッド
  • ロングアイアン
  • ショートアイアン
  • ウェッジ
  • パター

とゴルフクラブを7つのジャンルに分けるという考えです。ハイブリッドとアイアンの間にロングアイアンというジャンルのクラブを入れる。

いやはや、実にスマートな考え方です。

この考え方の良いところは、ちょっとお高いi540アイアンを最大4本までしか買わなくてもいいという事です。塚田Pが5番からですので一般の方はおそらく最大で3本です。

流石、塚田Pですね。シッカリ、「i540は4〜7番にタングステンソールウェイトを入れている」という事を理解されています。

次回は、もう一人の日本のPING PROを紹介したいと思います。

i540をもう一度勉強するぞ!

3月のジョン・K・ソルハイム、PING社CEO兼社長のコメントを含めた投稿確認でもう一度i540アイアンを勉強しましょう。

プレーヤー向けデザインでありながら、より速いスピードを求めるゴルファーのために設計された、快適な打感を実現するプレミアムアイアン「i540」が本日PINGより発表されました。スコアアップ性能を追求したカスタムエンジニアリングが施されたこのi540アイアンは、本日より世界中のPING正規ゴルフショップにて、カスタムフィッティングおよび予約注文が可能です。

「i540アイアンには多くのテクノロジーが詰め込まれています。ヘッド内部では、タングステンソールウェイトが重心を低くし、鍛造マレージング鋼フェースと相まって、ボールスピードを向上させます。さらに、打感と打音を改善するためにinR-AIRテクノロジーを採用しました。これはフェース裏側の空気ポケットが振動を減衰させ、より優れたインパクト感を実現します。外観は、カバードキャビティ設計により、すっきりとしたハイテクな印象を与えます。

—ジョン・K・ソルハイム、PING社CEO兼社長

「プレーヤーズディスタンスアイアンの人気は、ブレードスタイルの外観でより速いボールスピードを求めるゴルファーが増えていることから、ますます高まっています」と、PINGのCEO兼社長であるジョン・K・ソルハイム氏は述べています。「i540アイアンには多くのテクノロジーが詰め込まれています。ヘッド内部では、タングステンソールウェイトが重心を下げ、鍛造マレージングスチールフェースと相まってボールスピードを向上させます。また、打感と打音を改善するためにinR-Airテクノロジーを採用しました。これはフェース裏側の空気ポケットで、振動を減衰させ、より優れたインパクト体験をもたらします。外観は、カバードキャビティデザインにより、すっきりとしたハイテクな印象を与えます。」

「飛距離を最優先するゴルファーにとって、このアイアンはまさに理想的です。i540アイアンは、飛距離重視のアイアンとしては珍しいほどの寛容性も備えています。見た目も素晴らしく、打感も抜群。そして何よりも、スコアアップとコースでの楽しさの向上につながるでしょう。」

プレーヤーの飛距離と制動力

i540アイアンは、飛距離アップを実現する複数の要素を備えています。例えば、4番から7番アイアンにはタングステンソールウェイトを採用し、重心を低くすることでボールスピードを向上させています。また、鍛造された高柔軟性マレージング鋼C300フェースは、17-4ステンレススチール製のボディに精密に溶接されており、金属と木材を融合させたようなしなりを生み出し、ボールスピードの向上と最大飛距離の増加を実現し、より強力なストッピングパワーを発揮します。

i540アイアンは、重心位置を最適化したロフト角により、飛距離アップとグリーン上でのボールの最高到達点向上を実現します。カスタムフィッティングでは、ゴルファーの打ち出し条件を最適化するために、3種類のロフト角(スタンダード、パワー、レトロ)から選択可能です。

「i540は、飛距離重視のアイアンにさらなるコントロール性をもたらします。飛距離を最優先に考えながらも、プレーヤー向けアイアンのサイズ感や外観を好むゴルファーに最適です。

—ジョン・K・ソルハイム、PING社CEO兼社長

「i540は、飛距離重視のアイアンにさらなるコントロール性をもたらします」とソルハイム氏は語ります。「飛距離アップを最優先に考えながらも、プレーヤーズアイアンのサイズ感や外観を好むゴルファーに最適です。場合によっては、長年の間に失ってしまったボールスピードを取り戻したいと考えているゴルファーにも適しています。ブレードアイアン愛好家は、薄いトップライン、狭いソール、浅いフェース高といった、このアイアンの洗練された高級感あふれる外観を高く評価するでしょう。i540アイアンは、スピードと精度を兼ね備えた、非常に魅力的なデザインです。」

中身:inR-Airテクノロジー

打感と打音を向上させるため、i540アイアンにはinR-Airテクノロジーが採用されています。これは、PINGのイノベーションチームが改良を重ね、昨年iDiドライビングアイアンで初めて導入された技術です。特許出願中のこの技術は、フェース裏側のクラブ内部に戦略的に配置されたエアポケットを利用して、インパクト時に発生する不要な周波数を減衰させます。また、i540アイアンの17-4ステンレススチール製ボディ内部に統合されたi-Beam構造も、サポート力を高めるとともに、打音と打感の向上に貢献しています。

「このタイプのアイアン構造は、常に打音と打感の面で課題を抱えています」とソルハイム氏は語る。「i540アイアン内部の空気ポケットは、振動周波数を抑え、インパクト時の打感を向上させる優れたソリューションです。iDiドライビングアイアンで既に高い効果が実証されており、この技術をアイアンセット全体に採用し、ゴルファーの皆様にお届けできることを大変嬉しく思っています。」

以上です。

一番重要な部分だけ抜き出すと

記事で使うなら、この5点で十分だと思います。

① 4〜7番にタングステンソールウェイト
→ 低重心化

② C300マレージング鋼フェース
→ 大きなたわみと高初速

③ 高さを確保
→ 飛距離だけではなくストッピングパワー

本文にはレトロロフトが紹介されていますが、PW,UWを除きロフト設定で対応できます。
4~7のソールウェイトによる高弾道化も貢献しています。

④ inR-Air
→ 中空・薄肉フェース特有の振動を抑えて打感・打音を改善

⑤ 「失ったボールスピードを取り戻したいゴルファー」

i540の説明を読むと、もちろんセット全体として完成度の高いアイアンであることは分かります。

しかし、今回あらためて注目したいのは、

4番から7番にだけタングステンソールウェイトが入っている

という点です。

これは非常に重要です。

PING自身が、i540の中でもロング〜ミドルアイアン側に対して、明確に

低重心化
ボールスピード向上
高弾道化
ストッピングパワー向上

を狙った設計を入れているということだからです。

つまりi540は、単純にセット全体を「飛び系」にしたアイアンではありません。

むしろ、

飛距離が落ちやすい番手に、集中的に飛距離性能を与えたアイアン

と見ることができます。

年齢とともに最初に苦しくなりやすいのは、ショートアイアンではなく、やはり5番、6番、場合によっては7番です。

昔は普通に打てていた5番アイアンが、だんだん飛ばなくなる。

6番との差がなくなる。

無理に振らなければ高さも出ない。

そうなると、5番アイアンそのものをバッグから抜くことになります。

i540は、まさにその領域に対して設計上の手当てをしているわけです。

私自身、i540の5番アイアンを使ってみて、それを強く感じています。

ロフトを標準より2度寝かせ、シャフトも標準より短くしているにもかかわらず、それでも十分すぎるほど飛びます。

その結果、これまで使用していたiDiの4番がバッグから外れました。

代わりに入ったのがG425の9番ウッドです。

つまり、i540の5番アイアンが飛ぶようになったことで、その上のクラブに「さらに飛ばす」という役割を求める必要がなくなった。

そこで、

200ヤードを飛ばすクラブではなく、200ヤード先で止めるクラブ

を入れられるようになったわけです。

そう考えると、i540の価値は単純な飛距離だけではありません。

4番〜7番の飛距離性能を上げることで、バッグ全体の構成を変えられる。

ここがi540の非常に面白いところだと思います。


「i540は高価なアイアンですが、全部の番手を入れる必要はありません。まず5番、6番だけでも意味があります」

次回は、i540アイアンの好使用例を紹介したいと思います。

i540アイアンはこう使おう!

年とともにだんだん飛ばなくなったi230アイアンの5番。

シャフトをグラファイトシャフトに変更したりして使ってきましたが、

年齢とともに、だんだん飛ばなくなってきたi230アイアンの5番。

シャフトをグラファイトに変更するなど、いろいろ工夫しながら使ってきましたが、i540アイアンの発売を機に5番アイアンをi540へ変更しました。

当初はiDiアイアンとの流れを考えて軽めのシャフトを装着していましたが、現在は他のアイアンとのつながりを優先して、MODUS³ 130 Rに変更しています。

ただし、そのままのスペックではありません。

シャフト長は6番アイアンより0.25インチだけ長くし、ヘッドのロフトは標準より2度寝かせています。

なぜ、こんなセッティングにしたのか。

理由は単純で、i540は飛ぶからです。

店長の場合、i540の5番アイアンはi230の5番アイアンより、確実に10ヤード以上飛びます。

そこで、

「シャフトを短くして、ロフトを2度寝かせれば、ちょうどいい距離になるだろう」

と考えました。

ところが、実際に打ってみると、それでも思った以上に飛びます。

全米プロ選手権にも出場する腕前を持つPINGのジェーソンは、i540の6番アイアンを5番アイアンとしてバッグに入れています。

これは非常に理にかなったセッティングだと思います。

私の場合は5番のヘッドを使っているので、6番と比較するとヘッドだけなら約2番手分の違いがあります。

そこからロフトを2度寝かせ、さらにシャフトを0.25インチ短くしています。

それでも実際の飛距離は、6番アイアンに対して約1.5番手分飛びます。

本来のアイアンセットとして正常なギャッピングを求めるのであれば、ジェーソンのようにi540の6番を5番相当として使うほうが合理的だと思います。

ただ、私は5番アイアンにはある程度の「距離のアドバンテージ」が欲しい。

そのため、このままi540の5番を使っていくことにしました。

そして、この5番アイアンが入ったことで、バッグの中身にも変化が起きました。

それまで使用していたiDiの4番が抜けました。

その代わりに入ったのが、

G425の#9フェアウェイウッドです。

私が欲しかったのは、単に200ヤード飛ぶクラブではありません。

200ヤード先で、ボールを止められるクラブです。

i540の5番アイアンが十分な飛距離を担当してくれるようになったことで、その上のクラブにはさらに飛距離を求める必要がなくなりました。

そこで、ロングアイアン系のiDi 4番ではなく、高さを出して200ヤード先のグリーンで止められるG425 #9を入れることができました。

つまり、i540の5番アイアンを入れたことで変わったのは、5番アイアンの飛距離だけではありません。

バッグ全体の距離構成を変えることができた。

これが、私にとってi540の5番アイアンを使う一番大きな意味になっています。

 

新しいシャフトの作り方 カウンターバランス

今回追加される10本の中で、元調子・中調子・先調子という分類だけでは少し説明しにくいのが、

TENSEI 1K Pro Orange RIP+

です。

TENSEI Orangeシリーズの大きな特徴は、以前から採用されてきたカウンターバランス設計です。

つまり、単に「どこがしなるか」だけではなく、

クラブ全体の重量配分まで含めて、振りやすさを作るシャフト

と考えた方が分かりやすいと思います。

現在のドライバーヘッドは、大型化・高MOI化し、ヘッド重量も大きくなっています。

その状態でヘッド側の重量感が強くなりすぎると、

切り返しでクラブが遅れる。
リリースが早くなる。
ヘッドを戻すために余分な力を使う。

ということが起こる可能性があります。

Orangeシリーズでは、重量配分を手元側へ寄せることで、ヘッド重量による負担を軽減します。

そして今回の RIP+ では、そこに先端側の安定性をさらに加えています。

従来のOrangeについては、

カウンターバランスで振りやすい反面、シャフトの中に少し曖昧な動きを感じる

という評価もありました。

今回のRIP+では、その曖昧さを減らし、

振りやすさは残す。
しかし、インパクト付近では余計に動かさない。

という方向へ進化したように見えます。

つまり、このシャフトも今回の他のモデルと考え方は共通しています。

特徴そのものをなくしたのではありません。

Orangeらしいカウンターバランスは残しながら、その弱点になり得る部分を新しい技術で薄めている。

ということです。

今回の新しいカスタムシャフト全体を見ていると、

元調子なら、遅れを減らす。

中調子なら、動きの偏りを減らす。

先調子なら、暴れを減らす。

そしてTENSEI Orangeでは、

重量配分による振りやすさを残しながら、インパクトでの曖昧さを減らす。

それぞれ方法は違いますが、

そのシャフトが本来持っているメリットは残し、デメリットだけを小さくする。

これが、今年追加される新しいカスタムシャフトに共通する開発方向ではないかと思います。

新しシャフトの作り方 中調子

今回追加される中調子系は、

  • LIN-Q PowerCore RED
  • ATTAS RX PURE BLUE
  • 26 VENTUS TR BLUE

の3本です。

※26 VENTUS TR BLUEはメーカー表記では中元調子ですが、今回は中調子系として見ていきます。

この3本にも、元調子系と同じような傾向が見えます。

従来の中調子は、シャフト中央付近を大きくしならせることで、

タイミングが取りやすい、ヘッドを走らせやすい、幅広いゴルファーに合わせやすい

という特徴がありました。

しかし、中間部分の動きが大きくなりすぎると、

しなり戻りが急になる、タイミングによってヘッドの位置が変わる、インパクトで挙動が安定しにくい

という問題も生まれます。

つまり、

中調子の動きやすさは欲しい。
しかし、中間部分だけが大きく動くシャフトでは結果が安定しない。

というゴルファーもいるわけです。

今回の3本は、それぞれ違う方法で、この中調子の弱点を薄めています。

LIN-Q PowerCore REDは、中調子らしい動きを残しながら、シャフト全体を連続的にしならせる方向です。

中間だけが大きく動くのではなく、手元から先端までを滑らかにつなげることで、

動くけれど、急激には動かない中調子

にしていると考えられます。

ATTAS RX PURE BLUEは、さらにニュートラルな方向です。

特定の部分を強くしならせるというより、

シャフト全体を素直にしならせ、素直に戻す。

試打でも「クセがない」という評価が多く、中調子の特徴そのものをかなり滑らかにしたシャフトと言えそうです。

26 VENTUS TR BLUEは、中元調子という位置付けです。

中間部分には適度な動きを持たせながら、先端の安定性を強く残しています。

つまり、

中調子のタイミングの取りやすさは残しながら、インパクト付近の余計な動きを抑える

方向です。

3本をまとめると、

LIN-Q PowerCore RED
→ 中調子の動きを、全体へ滑らかにつなげる。

ATTAS RX PURE BLUE
→ 中調子のクセそのものを薄め、ニュートラルにする。

26 VENTUS TR BLUE
→ 中間の動きを残しながら、先端の安定性を高める。

という違いがあります。

しかし共通しているのは、

中調子の動きやすさは残す。
中調子の急激な動きは減らす。

という方向です。

元調子系では、

「元調子の球質は欲しいが、従来の元調子では結果が出なかったゴルファー」

への対応が進んでいました。

中調子系でも同じです。

中調子の振りやすさは欲しい。
しかし、シャフトの動きが大きすぎると結果が安定しない。

そうしたゴルファーに対して、新しい素材や構造によって、

中調子らしさを残しながら、その欠点を薄めている。

これが、今回追加される中調子系シャフトに共通する特徴ではないかと思います。

新しいシャフトの作り方 元調子

今回追加される元調子系は、

  • ATTAS RX ULTRA BLACK
  • LIN-Q PowerCore WHITE
  • 26 VENTUS TR BLACK

の3本です。

それぞれ方向性の違いはありますが、3本に共通しているのは、元調子をベースにしながら、従来の元調子らしさを薄めているという点です。

これまでの元調子には、

左に行きにくい、強く叩ける、強い球が打ちやすい

というメリットがありました。

一方で、

ヘッドが遅れる、球が上がりにくい、つかまりにくい、タイミングが取りにくい

と感じるゴルファーも少なくありませんでした。

つまり、

元調子のような球質は欲しい。
しかし、従来の元調子では結果が出ない。

というゴルファーが存在していたわけです。

今回の3本は、そうした層に対応するために、新しい素材や構造を使って、元調子のメリットを残しながら、その欠点を小さくしたシャフトと見ることができると思います。

例えば、

ATTAS RX ULTRA BLACKは、元調子でありながらヘッドの遅れ感を抑え、球を上げやすくする。

LIN-Q PowerCore WHITEは、手元だけを大きくしならせるのではなく、シャフト全体を連続してしならせることで、元調子に中調子的な滑らかさを加える。

26 VENTUS TR BLACKは、高い剛性と低スピン性能を残しながら、硬さによる唐突さやタイミングの取りにくさを減らす。

つまり、3本とも方法は違います。

しかし目指している方向は共通しています。

元調子の球質は残す。
元調子の扱いにくさは減らす。

これが、今回追加される元調子系3本に共通する特徴ではないでしょうか。

言い換えれば、これまで「元調子は合わない」と考えていたゴルファーの中にも、

本当は元調子の球質が合っていたのに、従来型の元調子の動き方が合わなかった人がいる

ということです。

新しいテクノロジーによって、その両者を分けて考えられるようになってきた。

ここに、最近の元調子系シャフトの大きな進化があるように思います。

USのライ角とJAPANのライ角は1度違う!

アメリカのPINGと日本のPINGでは、同じモデルなのにライ角の表記が違います。

この違いを見て、

「USのヘッドと日本のヘッドは別物なのですか?」

と聞かれたことはありません。

多分、そこまでスペック表を見比べている人がほとんどいないのでしょう。

店長のような、少し変わった人しか見ていないのかもしれません。

では実際に、

US PING

PING GOLF JAPAN

のスペックを比べてみると、ドライバー、フェアウェイウッド、ハイブリッドで、USの方が約1°フラットなライ角表記になっていることが分かります。

同じヘッドなのに、なぜでしょうか。

USには「平均ライ角」と書いてある

US PINGのスペック表には、次の記述があります。

Lie angle is an average of the five adjustable loft positions indicated on the hosel.

日本語にすると、

「ライ角は、ホーゼルに表示されている5つのロフト調整ポジションの平均値です。」

という意味です。

ここが重要です。

USのライ角表示は、Standardポジションのライ角そのものではありません。

5つのロフト調整ポジションのライ角を平均した値

をカタログスペックとして表示しているのです。

Trajectory Tuning 2.0をもう一度考えてみる

前回、Trajectory Tuning 2.0について、

シャフト軸がホーゼル中心軸に対して約1.5°傾いているのではないか

という仮説を立てました。

8ポジションなので、360°を8分割すれば45°刻みです。

この1.5°の傾きを45°ずつ回転させると、ロフト方向とライ方向への成分は概算で次のようになります。

位置 ロフト変化 ライ角変化
Standard
Small + +1.06° −0.44°
Big + +1.50° −1.50°
Flat + +1.06° −2.56°
Flat −3.00°
Flat − −1.06° −2.56°
Big − −1.50° −1.50°
Small − −1.06° −0.44°

PING公式のロフト表記は、

  • Standard:0°
  • Small ±:±1°
  • Big ±:±1.5°
  • Flat:0°
  • Flat ±:±1°

です。

計算値とかなりきれいに一致します。

そしてUS PINGがいう、

「5つのadjustable loft positions」

とは、

  • Standard
  • Small +
  • Small −
  • Big +
  • Big −

の5ポジションと考えるのが自然です。

つまり、USのライ角表示は、このNormal側5ポジションの平均ライ角ということになります。

Normal Zoneの平均ライ角を計算すると

Standardからのライ角変化は、

  • Standard:0°
  • Small +:−0.44°
  • Small −:−0.44°
  • Big +:−1.50°
  • Big −:−1.50°

です。

平均すると、

約−0.78°

になります。

つまり、Standardのライ角より、平均すると約0.8°フラットです。

カタログ値は0.5°刻みなどで表示されますから、日本とUSで約1°の差が出ていても不思議ではありません。

ここまで来ると、

USと日本でヘッドが違うのではなく、ライ角の表示方法が違う

と考える方が自然です。

USは「Normal Zone」と「Flat Zone」で考えている

ここから、Trajectory Tuning 2.0の考え方がさらに見えてきます。

USでは、ライ角を単純に、

Standard
Flat

の2点だけで考えているのではなく、

Normal Lie Zone

Flat Lie Zone

という2つの領域として捉えているのではないでしょうか。

Normal Zoneには、

  • Standard
  • Small ±
  • Big ±

があり、

その中でロフトを、

標準
±1°
±1.5°

に設定する。

一方Flat Zoneには、

  • Flat
  • Flat ±

があり、

その中でロフトを、

標準
±1°

に設定する。

このように考えると、PINGの説明書の構成が非常に分かりやすくなります。

つまり、

まずライ角のゾーンを選び、その中でロフトを選ぶ。

これがTrajectory Tuning 2.0の本来の考え方なのではないでしょうか。

Flatも一つの角度ではなく「ゾーン」

私が最初にTrajectory Tuning 2.0の説明を受けた時、

「Flat Zoneは約2.6°フラット」

と聞いていました。

当時は単純に、

「Flatは2.6°フラットなのだ」

と理解していました。

しかし今回計算してみると、

  • Flat +:約2.56°フラット
  • Flat:3.00°フラット
  • Flat −:約2.56°フラット

となります。

つまり、Flatは一つの固定ライ角ではありません。

約2.6〜3.0°フラットの範囲を持った“Flat Zone”

と考えれば、説明がきれいにつながります。

同じことはNormal Zoneにも言えます。

Normal Zoneでも、

  • Standard:0°
  • Small ±:約0.44°フラット
  • Big ±:約1.5°フラット

と、実際にはライ角が変化しています。

つまり、

Normal Zoneの中でもライ角は一定ではない。
Flat Zoneの中でもライ角は一定ではない。

ということです。

日本の表記では、この考え方が少し見えにくくなる

一方、日本のPINGでは、ライ角をStandardポジションの値として表示しています。

これはスペック表としては非常に分かりやすいです。

しかし、Trajectory Tuning 2.0を

Normal Zone
Flat Zone

という考え方で理解しようとすると、少し説明が難しくなります。

日本の表記では、

「このクラブのライ角は59°です」

と見える。

しかし実際にはスリーブを回せば、

Normal Zoneの中でもライ角は変化し、

Flat Zoneではさらに大きくフラットになります。

つまり59°という数字は、

クラブそのものに固定されたライ角

というより、

Standardポジションに置いた時の基準ライ角

なのです。

USはNormal Zoneの平均値を表示し、

日本はStandardポジションの値を表示する。

同じクラブを、違う基準で表現しているわけです。

日本側が、この「ゾーン」という考え方まで意識してStandard値を採用したのかどうかは分かりません。

ただ、少なくともTrajectory Tuning 2.0の構造を考えると、USのAverage Lie Angleという表記はかなり合理的です。

同じヘッドなのに、ライ角が違って見える理由

結局、

USとJAPANでライ角が違うから、ヘッドが違う

という話ではありません。

同じヘッドでも、

USは、

Normal Zone内の5ポジションの平均ライ角

を表示し、

日本は、

Standardポジションのライ角

を表示している。

だから数字が違って見える。

そして、その表示の違いを追っていくと、

Trajectory Tuning 2.0は、単にロフトを変えるスリーブではなく、Normal ZoneとFlat Zoneという2つのライ角領域の中でロフトを組み合わせる機構

として見えてきます。

公式の説明だけを読んでいた時とは、かなり印象が変わってきませんか。

次回は、このTrajectory Tuning 2.0によるフェースアングルの変化まで考えてみたいと思います。

PING Trajectory Tuning 2.0 の秘密

PING Trajectory Tuning 2.0は、公式には次の8ポジションになっています。

ポジション ロフト調整
Standard
Small + +1.0°
Big + +1.5°
Small − −1.0°
Big − −1.5°
Flat
Flat + +1.0°
Flat − −1.0°

トルクレンチの説明書にも、このように記載されています。

つまり公式の説明では、まず大きく

ノーマルライ角

フラットライ角

の2つのグループがあり、

ノーマルライ角では、

標準ロフト
±1°
±1.5°

フラットライ角では、

標準ロフト
±1°

という構成になっています。

ここだけを見ると、

「ロフトを変えるポジション」と
「ライ角をフラットにするポジション」

が別々に存在しているようにも見えます。

しかし、実際のアダプターはどうやってこれを実現しているのでしょうか。

8ポジションを45°ずつ回転させる

Trajectory Tuning 2.0には8つのポジションがあります。

ということは、円周上では、

360° ÷ 8 = 45°

ずつ配置されていることになります。

そして、このアダプターのシャフト軸が、ホーゼルの中心軸に対して1.5°傾いていると仮定します。

この1.5°の傾きを45°ずつ回転させていくと、その傾きはロフト方向とライ方向に分解されます。

すると、概算では次のようになります。

位置 ロフト変化 ライ角変化
Standard
Small + +1.06° −0.44°
Big + +1.50° −1.50°
Flat + +1.06° −2.56°
Flat −3.00°
Flat − −1.06° −2.56°
Big − −1.50° −1.50°
Small − −1.06° −0.44°

どうでしょう。

PING公式の、

±1°
±1.5°
最大3°フラット

という数字が、ほぼそのまま出てきます。

Small ±の約1.06°は、公式表示では±1°。

Big ±はちょうど±1.5°。

Flatではロフト変化が0°となり、ライ角がちょうど3°フラット。

つまり、かなりきれいに一致します。

実際には「ロフトだけ」が変わっているわけではない

ここが一番重要なところです。

公式表示では、

Small + = +1°

と書かれています。

しかし、幾何学的に考えると、

ロフト +1.06°
ライ角 −0.44°

という組み合わせになっていると考えられます。

Big +なら、

ロフト +1.50°
ライ角 −1.50°

Flat +なら、

ロフト +1.06°
ライ角 −2.56°

です。

つまり、Trajectory Tuning 2.0は、

ロフトを変えるポジション

ライ角を変えるポジション

が独立して存在しているのではありません。

実際には、

傾いたシャフト軸を回転させることで、ロフトとライ角の組み合わせを変えている

ということになります。

なぜ3°フラットになるのか

これも1.5°という数字から説明できます。

Standardでは、シャフト軸の1.5°の傾きが一方向を向いています。

そこから180°回転したFlatでは、その傾きが完全に反対側を向きます。

つまり、

+1.5° → −1.5°

となるため、その差は、

3.0°

です。

だからFlatポジションでは、Standardに対して最大3°フラットになる。

「中心から3°ずれている」のではなく、

中心から1.5°ずれていて、その反対側まで動くことで合計3°の差が生まれる

と考えると、非常に分かりやすくなります。

そうだったのか、Trajectory Tuning 2.0

公式の説明だけを見ると、

ノーマルライ角
フラットライ角

という2種類があり、

その中でロフトを変えているように見えます。

しかし、実際の構造を考えると印象はかなり変わります。

Trajectory Tuning 2.0は、

ロフト調整機能

というより、

シャフト軸の方向を3次元的に変えることで、ロフトとライ角の組み合わせを作る機構

と考えた方が本質に近いのではないでしょうか。

そして、その数値を計算してみると、

公式表示の±1°、±1.5°、最大3°フラットが、1.5°偏心・45°刻みという構造で非常にきれいに説明できます。

そうだったのか、PING Trajectory Tuning 2.0。

公式のロフト・ライ角表示から受ける印象とは、ずいぶん違って見えてきます。

そして、さらに面白いことがあります。

USとJAPANでは、同じヘッドを使っているにもかかわらず、カタログに表示されているライ角の数値が違います。

なぜ同じクラブなのに、ライ角が違うのでしょうか。

次回は、この謎について考えてみたいと思います。

ハイブリッドの左ミスを考える ― ライ角から考えられること

先週、ジュニア君たちのラウンドを見ていた時のことです。

本来であれば、距離を欲張るよりも方向性を重視して使いたい場面で、ハイブリッドのショットがかなり左へミスしていました。それが今回のシリーズを考えるきっかけになっています。

ハイブリッドは、ロングアイアンの弱点を補うための「お助けクラブ」として位置づけられています。

それなのに、そのクラブでスコアメイクできないのであれば問題です。

特にヘッドスピードの速いゴルファーやハードヒッターにとって、ハイブリッドの大きな弱点となるのが、

左へのミス

です。

一般的には、その理由として、

  • 深い重心
  • ヘッド形状
  • オフセット
  • フェースの返りやすさ

などが挙げられます。

もちろん、それらも関係しているでしょう。

しかし、今回スペックを改めて比較してみると、

それだけでは説明しきれない別の理由

が見えてきました。

ハイブリッドは「ロングアイアンを簡単にしたクラブ」なのか

そもそもハイブリッドは、

ロングアイアンをそのまま簡単にしたクラブ

として作られたというより、

ロングアイアンで打っていた距離を、もっと簡単に出すためのクラブ

として発達してきたと考えた方がよさそうです。

ロングアイアンの弱点は、単にボールが上がりにくいことだけではありません。

短めのクラブ長と小さなヘッドで、必要なキャリーを出すための十分なヘッドスピードを確保しなければならない。

そこでハイブリッドでは、

深い重心でボールを上げやすくし、ヘッドを大きくしてミスに強くし、さらにシャフトを長くしてヘッドスピードを稼ぐ

という方向へ進みました。

今回比較したスペックでは、

クラブ ロフト ライ角 長さ
3I 19° 59.0° 39.0″
HB #3 20° 58.5° 40.25″
FW #5 19° 58.0° 42.5″

ほぼ同じロフトでも、

Iron 39.0″

HB 40.25″

FW 42.5″

と、ハイブリッドはちょうど中間に位置しています。

これはメーカー側から見れば非常に合理的です。

FWほど長くないので当てやすい。

アイアンより長いのでヘッドスピードを出しやすい。

深重心なのでボールも上がりやすい。

これによって、「難しいロングアイアンの代わりになるクラブ」が成立します。

しかし、ここに別の問題が生まれます。

同じロフトでも、手元の高さが違う

ライ角とクラブ長から、ソールを基準通りに置いた時の手元高さを単純な幾何計算で推定すると、

手元高さ ≒ クラブ長 × sin(ライ角)

となります。

19〜20°付近を比較すると、

クラブ 推定手元高さ
FW #5 36.04″
HB #3 34.32″
3I 33.43″

HB #3は、3Iより約0.89インチ手元が高くなります。

ところが、ハイブリッドは見た目も構え方もアイアンに近い。

そのためプレーヤーは、無意識にアイアンと同じような高さへ手元を置こうとします。

しかし実際には、シャフトが1.25インチ長い。

この長さをアイアンと同じ構えの中へ押し込もうとすると、クラブのどこかで帳尻を合わせなければなりません。

手元を下げればトウ側は浮きます。

そしてスイング中には、

長さを処理するためにリリースを早める

という補償動作が起こる可能性もあります。

ハードヒッターでは、このアーリーリリースによってフェースの閉じるタイミングが早くなれば、左へのミスにつながりやすくなります。

FWでは、なぜ同じ問題が目立ちにくいのか

FWもHB以上にシャフトは長い。

しかしFWでは、ライ角もそれに合わせてかなりフラットになっています。

19°前後なら、

FW #5:42.5″・58.0°

です。

長さによって手元は高くなりますが、その一方でライ角はフラットです。

つまり、

長さによる手元高さの上昇

と、

フラットなライ角によるつかまりの抑制

が、ある程度相殺されています。

一方HBは、

3Iより1.25インチしか長くなっていないのに、ライ角は0.5°になっっています。

PINGのTrajectory Tuning 2.0には、ロフト調整だけでなく、最大約3°フラット

までライ角を変えられるポジションがあります。

ですので、実際にポジションを変えてみてください。

次回は、PINGのTrajectory Tuning 2.0について考えます。