ウインダム・クラークがエピソードトークにやってきた。

なんと、ウインダム・クラークがエピソード トークにやってきました。内容を見ていきましょう。

ウィンダム・クラークが語った、PING Ally Blueに替えてパットが入る理由

全米オープンを制したウィンダム・クラークが、PINGのPodcastで自身のパターについて語っています。

今回、特に面白いのは、単に「新しいパターに替えたら入った」という話ではありません。
クラーク本人が、なぜこのパターで狙いやすくなったのかをかなり具体的に話している点です。

クラークは、PINGのツアートラックで偶然Ally Blueを手にしたといいます。

「待っている間にバッグの中のパターをいじっていたら、Ally Blueが目に入った」

そこからヒューストンで実戦投入し、マスターズでも使用。
そしてRBCの前後で、さらに自分仕様へ調整していきます。

具体的には、

38インチに長くする
大きめのグリップを入れる
ヘッド下部にかなりの重量を追加する

という調整です。

ここからクラークのパッティングは大きく変わります。

本人も、

「RBCのヒルトンヘッドあたりから、本当に素晴らしいパッティングが始まった」

と語っています。

さらにPINGのスタジオでロフトや転がり、スピンを確認したことで、自分が感じていた良さが数字でも確認できたようです。


クラークが最も評価しているのは「狙いやすさ」

クラークがAlly Blueで最も気に入っているのは、転がりの良さだけではありません。
むしろ中心にあるのは、構えた時の狙いやすさです。

彼はこう話しています。

「一番の問題は、照準だった」
「自分が安定して狙えるパターをずっと探していた」
「本当に見つけたと思っている」

これは非常に重要です。

プロであっても、ストロークそのものより、まずどこを向いているかが問題になる。
クラーク自身も、自分のストロークにはかなり自信を持っています。

「フェースを良い状態で入れて、良い転がりを作ることは一貫してできる」
「でも一番の問題は、照準だった」

つまり、Ally Blueはクラークにとって、ストロークを直したパターではなく、
正しく構えられるようにしたパターだったと言えます。


オンセット、白いヘッド、黒いライン、そしてドット

クラークは、Ally Blueの良さを3つ挙げています。

まず、オンセット形状
クラークは、オンセットによってフェースを狙いやすく感じると話しています。

次に、白いヘッドに黒いライン
彼の目には、黒地に白よりも、白地に黒の方が合うようです。

そして、ラインとドットの組み合わせ
PINGがIQテクノロジーと呼ぶ照準機能について、クラークはこう表現しています。

「ドットがラインをしっかり確定させてくれる感じがある」
「視線が柔らかくなるような感じ」

これは、非常に面白い表現です。

アライメントは、単に線を長くすれば良いわけではありません。
人によっては、ラインだけだと左に見えたり、逆に迷いが出たりします。

クラークは左目利きで、ボールをスタンスの前方に置くため、ラインが左を向いて見えることがあったと話しています。
しかしAlly Blueでは、ラインとドットの関係によって、構えた時のズレが少なくなった。

その結果、キャディに確認してもらっても、

「今は毎回、合っていると言われる」

という状態になったそうです。


重いパターと柔らかいインサート

もう一つ見逃せないのが、クラークが重いパターを好むという点です。

本人も、

「僕は重いパターが好きなんです」

とはっきり話しています。

さらにインサートについても、ボールが速く出すぎないところを評価しています。

「ボールがフェースからすごく速く出るわけではないところが好き」
「速い下りのパットでも、しっかりストロークしている感覚を持てる」

これは、アマチュアにも非常に参考になります。

速いグリーンや微妙な距離のパットでは、フェースからボールが速く出すぎると、どうしても手が止まりやすくなります。
クラークは、少し柔らかく、しっかり打てるフィーリングを好んでいるわけです。


店長的まとめ

クラークの発言をまとめると、Ally Blueが合った理由は単純な「転がりの良さ」だけではありません。

むしろ本質は、

狙いやすい
視線が迷わない
重さがある
速いグリーンでもストロークできる
自分の感覚をPINGの計測で確認できた

という点にあります。

特に重要なのは、クラークほどの選手でも、
「ストロークは良い。しかし狙いがズレる」
という問題を抱えていたことです。

パター選びでは、打感や転がりだけでなく、
自分が本当に正しく構えられているか
を確認することが非常に大切です。

今回のクラークの優勝は、Ally Blueというパターの性能だけでなく、
パターは“打つ道具”である前に、“正しく狙う道具”である
ということを改めて教えてくれる内容だったと思います。

G740アイアンが発表されました。

今週の火曜日にようやく日本でもG740アイアンが発表され、

これでUS

ジャパンが

そろいました。多くの方がお分かりだったと思いますが、USとジャパンではヘッドのカラーが違うんですね。

一応カラーが違うだけで一緒ですが、これによって、USとジャパンが推しているところは違うのか、一緒なのかを調べてみました。

G740アイアンは、PINGのG700シリーズで追求してきた「安心感のある見た目」「高い寛容性」「飛距離性能」「心地良い打感・打音」をさらに進化させた、やさしさ重視の飛び系アイアンです。USサイトでは、G740をsuper-game-improvement iron、つまりミスへの強さを最優先するゴルファー向けのモデルとして位置づけ、飛距離、寛容性、安定性を最大化し、より速いボール初速と高弾道を実現すると説明しています。

※USではとにかくゴルフをより楽しくするためのアイアンを強調しています。

ヘッドはワイドソール、長めのブレード、厚めのトップラインを組み合わせることで、低重心化と高MOI化を図っています。これにより、打点がブレてもボールが上がりやすく、飛距離ロスを抑えやすい設計になっています。USサイトでも、ワイドソール、長いブレード、厚いトップラインが低重心化とMOI向上に寄与すると説明されています。

日本サイトでは、この性能をさらに具体的に分解し、デュアル・キャンバーソールによる抜けの良さを強調しています。ソールの前後左右に適度な丸みを持たせることで、傾斜地やラフなどの悪いライでも抜けが良く、打ちやすい設計とされています。特に、アマチュアに多いトゥダウンによるダフリを防ぐため、トゥ側のキャンバーを強め、ヒール側は抑えめにしてスクエアに構えやすくしている点が日本サイトでは詳しく説明されています。

※ビッグサイズのアイアンは地面の状況を強く受けてしまいますが、この点をちゃんとジャパンは説明しています。

フェースにはVFT、つまりバリアブル・フェースシックネス設計が採用されています。日本サイトでは、フェース周辺部を中心部より薄くすることで、打点がブレてもフェースがたわみ、ボール初速を確保し、飛距離と高さを実現すると説明しています。さらに、フィッティングデータやプレイヤーテストから、ハンディキャップの大きいアマチュアほど打点がばらつきやすく、それが初速低下や高さ不足の原因になると示しています。

※USでは特にこれについての言及はありません

打感・打音については、新しいPURFLEXバッジが重要な役割を持っています。USサイトでは、新しいPurFlex cavity badgeが不要な周波数を抑え、インパクト体験を大きく改善すると説明しています。 日本サイトではさらに踏み込み、振動が集中する箇所をモデルごとに分析し、最適化された3ピース構造のPURFLEXバッジを採用。前作より軽量化することで、打感・打音の改善だけでなく、さらなる低重心化にも貢献すると説明しています。

※新しいPURFLEXバッジについては、エピソードトークで踏み込んで発言しているのでその時に紹介します。

番手構成は、5Iから9I、PW、UW、50度、56度まで。日本仕様の基本ロフトは、5Iが21度、7Iが28度、PWが40度、UWが45度、50度、56度という流れです。日本サイトではヘッド素材を17-4ステンレススチール、仕上げをブラックPVD、製法を鋳造と表記しています。
JAPANがブラックPVD採用したことで、これによりロフト調整が出来ません。

また、日本サイトでは「確実なグリーン周りの寄せ」も明確に訴求されています。G740にラインアップされる4本のウェッジすべてに精密な削り出し溝を採用し、安定したスピン性能とダフリに強いワイドソールにより、グリーン周りでの寄せを確実にすると説明しています。

日米サイトで強調している違い

観点 USサイト 日本サイト
基本ポジション super-game-improvement iron。飛距離・寛容性・安定性を最大化 「見た目だけじゃない。この完成度、反則級。」という完成度訴求
主な訴求 faster ball speeds、高弾道、低重心、高MOI ブラックヘッド、寛容性、飛距離、打感、打音、抜け、寄せ
ヘッド形状 ワイドソール、長いブレード、厚いトップラインによる低重心・高MOI 洗練されたブラックヘッド、反射を抑えた見た目、ブラックPVDの耐久性・耐食性
ソール USでは概要的 日本ではデュアル・キャンバーソール、トゥ側キャンバー、ダフリ対策まで詳述
フェース 初速・高弾道を大きく訴求 VFTフェースとして、打点ブレ時のたわみと初速維持を説明
打感・打音 PurFlexバッジでインパクト体験を改善 振動解析、3ピース構造、軽量化、低重心化まで説明
ウェッジ 番手構成として表示 4本のウェッジ、削り出し溝、グリーン周りの寄せを明確に訴求
フィッティング表現 Power Spec / Retro Spec Loftの説明がある 日本ページでは標準スペックと日本標準シャフト構成を中心に説明
ライ角の変更は±2度、ロフトの調整は出来ません。

使用率 No.1!

ウインダムクラークがSCOTTSDALE ALLYBLUE ONSET CBを使っての優勝はかなりインパクトがあったようで、アクセス数も伸びていますが、こちらも、かなりすごい事です。

今年のメジャー大会でG440LST DRIVERが一番使われたという投稿です。

PINGを疑うよのですが、AIに本当かどうかを調べてもらいました。

指定の投稿は 「Augusta、Aronimink、Shinnecock の3メジャー連続で、G440 LST が使用本数1位のドライバーモデルだった」 という趣旨です。該当投稿の検索結果でもその文言が確認できます。

対象大会

投稿内の表現 大会 会場
Augusta 2026 Masters Augusta National
Aronimink 2026 PGA Championship Aronimink GC
Shinnecock 2026 U.S. Open Shinnecock Hills

1. 2026 Masters:G440 LST 使用選手

Golf Monthly の「2026 Masters 全選手の使用ドライバー」表では、G440 LST は11本使用で、最も多いドライバーモデルとされています。

確認できる使用選手は以下です。

選手 ドライバー
Brian Campbell PING G440 LST
Patrick Cantlay PING G440 LST
Corey Conners PING G440 LST
Harris English PING G440 LST
Chris Gotterup PING G440 LST
Mason Howell(アマ) PING G440 LST
Matt McCarty PING G440 LST
Rasmus Neergaard-Petersen PING G440 LST
Andrew Novak PING G440 LST
Jose Maria Olazabal PING G440 LST
Mike Weir PING G440 LST

Golf Monthly は、G440 LSTについて「Augusta Nationalで11本使用、Titleist GT3の9本を上回った」と説明しています。

2. 2026 PGA Championship:G440 LST 使用選手

PING側の投稿では、PGA ChampionshipでG440 LSTが20本使用され、最も多いドライバーモデルだったことは確認できます。

ただし、今回確認できた公開ソースでは、20名の選手名一覧までは取得できませんでした
確認できたのは「20本使用」「最多モデル」という事実までです。

3. 2026 U.S. Open:G440 LST 使用選手

指定投稿の内容から、Shinnecock=2026 U.S. Open でも G440 LSTが使用本数1位のドライバーモデルだったことは確認できます。

ただし、こちらも公開検索で確認できた範囲では、U.S. Open出場選手ごとのG440 LST使用者一覧は見つかりませんでした

現時点の結論

確実に選手名まで抜き出せたのは 2026 Masters の11名です。

PGA Championship と U.S. Open については、PING公式系の投稿から 「G440 LSTが最多使用モデル」 までは確認できますが、使用選手の全リストは公開ソース上では確認できませんでした。

という事になります。

店長的にびっくりしたことは、マスターズチャンピオンのレジェンドである

オラサバル

ウィアー

が使用していることなんですが、もう知らない方のほうが多いですよね。

ウインダム・クラークはなぜ全米オープンで強いのか 第二話 ウインダム・クラークはなぜ中尺・重量級パターを選んだのか

第二話 ウインダム・クラークはなぜ中尺・重量級パターを選んだのか

第一話では、全米オープンのパッティングがなぜ難しいのかを考えました。

全米オープンは、ただ距離が長い大会ではありません。

歴史ある名門コースで行われることが多く、グリーンは速く、硬く、傾斜も強い。
しかも、外した後の返しが簡単ではありません。

そこで求められるのは、強く打つパッティングではありません。

弱く、正確に、ボールへエネルギーを与える技術です。

この視点で見ると、ウインダム・クラークのパター選びは非常に面白くなります。

2023年、クラークがロサンゼルス・カントリークラブで全米オープンを制したとき、彼の手にあったのはOdyssey Versa Jailbird系のパターでした。

このパターは、いわゆる普通の長さ、普通の重さのパターではありません。

通常より長めで、重量感があり、カウンターバランスの効いた中尺系のパターです。

そして今回、店長がさらに注目しているのが、SCOTTSDALE TEC ALLY BLUE ONSET CBです。

メーカーはOdysseyからPINGへ変わりました。

しかし、ここで大事なのは、メーカー名ではありません。

Odysseyだから勝った。
PINGだから勝った。

という単純な話ではないのです。

重要なのは、そこに共通している思想です。

長めであること。
重めであること。
手先で細かく操作するよりも、ストローク全体を安定させる方向で作られていること。

ここが、クラークのパター選びの本質だと思います。

実は、全米オープンでは過去にも、この「手先の余計な動きを抑える」思想を持ったパターで勝った選手が目立ちます。

2012年、オリンピッククラブで優勝したウェブ・シンプソンは、ベリーパターを使用していました。

2020年、ウイングドフットで優勝したブライソン・デシャンボーは、アームロック型のパターを使用していました。

そして2024年、パインハーストNo.2で再び全米オープンを制したブライソンも、アームロック型のパターでした。

さらに2023年、ロサンゼルス・カントリークラブで優勝したウインダム・クラークは、長めのカウンターバランス型Odyssey Versa Jailbird系パター。

こうして見ると、全米オープンでは、普通の長さのパターで手先の感覚だけを使うというより、長さ、重さ、グリップ側のバランス、あるいは腕との一体感を使って、ストローク中の余計な動きを抑えるタイプのパターが目立ちます。

ここでいう「中尺以上」は、単に長いパターという意味ではありません。

ベリーパター。
アームロック。
カウンターバランス。

これらを、まったく同じパターとして扱うことはできません。

しかし、共通している方向性はあります。

それは、手首の過剰な動きを抑え、ストローク全体を安定させる方向のパターである、ということです。

もちろん、これだけで全米オープンを勝てるわけではありません。

ショット力。
アプローチ。
メンタル。
コースマネジメント。

すべてが揃わなければ、全米オープンは勝てません。

しかし、速く硬いグリーンで、弱いタッチを何度も正確に出し続けるという条件を考えると、これらのパターに共通する思想は非常に興味深いものがあります。

それは、

パターを自由に動かすのではなく、余計に動かさない。

という考え方です。

普通の長さのパターは、操作しやすいというメリットがあります。

フェースを開いたり、閉じたり。
距離感を手先で合わせたり。
微妙なタッチを自分の感覚で出したり。

もちろん、それが合う選手もいます。

しかし、全米オープンのようなグリーンでは、この「操作しやすさ」が、逆に危険になることがあります。

なぜなら、全米オープンでは強く打てないからです。

速いグリーンでは、ボールに大きなエネルギーを与えることができません。

ほんの少しだけ打つ。
ほんの少しだけ転がす。
カップの近くで止める。
外れても、次のパットを簡単に残す。

こういうパッティングが必要になります。

ところが、弱く打つパッティングほど、手先の余計な動きが結果に出やすくなります。

ほんの少し手首が動く。
ほんの少しフェースが開く。
ほんの少しインパクトで緩む。
ほんの少し押し出す。

これだけで、ボールの出球は変わります。

強く打つパットなら、勢いでごまかせることがあります。

しかし、弱く打つパットでは、ごまかしが効きません。

だからこそ、クラークは手先で操作しやすいパターではなく、余計な操作をしにくいパターを選んでいるように見えるのです。

中尺・重量級パターの良さは、ここにあります。

ヘッドが重い。
長さがある。
グリップ側にも重さがある。
全体として、パターが勝手にフラフラしにくい。

つまり、ストローク中に余計な動きが入りにくくなります。

もちろん、これは魔法の道具ではありません。

重いパターを使えば誰でも入る、という話ではありません。

むしろ、合わない人には合いません。

しかし、全米オープンのような速く硬いグリーンで、弱いタッチを正確に出し続けるという条件では、非常に合理的な選択になります。

ここで注意したいのは、これは昔のロングパターやアンカーリングとは違うということです。

クラークのパターは、体に固定して打つためのパターではありません。

長さと重さを使って、ストローク全体を安定させるパターです。

手で打つのではなく、パター全体の重さで転がす。

この感覚に近いと思います。

店長がクラークを推していた理由は、ここにあります。

クラークは、ただ飛ばす選手ではありません。

全米オープンという大会で必要になるパッティングの性質を考えたとき、その要求に合った道具を選んでいるように見える選手です。

全米オープンでは、入れるパッティングだけでは勝てません。

外し方を小さくするパッティングが必要です。

大きくオーバーしない。
大きくショートしない。
ラインから大きく外さない。
次のパットを難しくしない。

このためには、パターの操作性よりも、パターの安定性が重要になります。

軽くて自由に動かせるパターよりも、余計な動きをさせないパター。

手先で距離を合わせるパターよりも、ストローク全体でエネルギーを一定にするパター。

クラークの中尺・重量級パターには、この考え方が見えます。

つまり、全米オープンでは「入れるための感性」だけでなく、「外し方を小さくするための構造」が効いている可能性があります。

クラークのパター選びも、この流れの中で見ると、かなり合理的に見えてきます。

だから店長は、クラークのパター選びを単なる流行とは見ていません。

2023年のJailbird。
そして、SCOTTSDALE TEC ALLY BLUE ONSET CB。

メーカーは違っても、そこにある思想は近い。

それは、全米オープンのようなグリーンで、弱く、正確に、ボールを転がすためのパター選びです。

クラークは、全米オープンを力でねじ伏せたのではありません。

もちろん、ショット力は大きな武器です。

しかし最後に勝敗を分けるのは、グリーン上で余計な1打を打たないことです。

その意味で、クラークのパターは「入れるための奇策」ではなく、「外し方を小さくするための設計」だったのではないか。

店長は、そこにクラークの強さを見ています。

次回は、さらに一歩踏み込みます。

重いパターは、なぜソフトタッチに強いのか。

弱く打つパッティングで、なぜヘッドの重さやカウンターバランスが有利に働くのか。

第三話では、

重いパターはなぜソフトタッチに強いのか

を考えてみたいと思います。

他のメジャーではそれほど勝利はありません。調べた限りは

選手 大会 パターの系統 備考
2011年 キーガン・ブラッドリー PGA選手権 ベリーパター メジャーでアンカー系パター優勝の初期代表例
2012年 アーニー・エルス 全英オープン ベリーパター ロング/ベリー系使用者として紹介される代表例
2013年 アダム・スコット マスターズ ロングパター 胸に当てる長尺パター時代の象徴

これくらいでした。

優勝POP ピンゴルフジャパンが追いかけてきた!

やっと、ピンゴルフジャパンがLBブログに追いつきました。
と言ったら、怒られるかな?

画像をクリックするとPDFが開きます。

という訳です。このブログの読者の方は、US PINGが全米オープン初日にこれを発表してから店長が大騒ぎ(大騒ぎは暫く続きます)していることをご存じだと思います。 “優勝POP ピンゴルフジャパンが追いかけてきた!” の続きを読む

ウインダム・クラークはなぜ全米オープンで強いのか 第一話 全米オープンはなぜパッティングが難しいのか

ウインダム・クラークの優勝の余韻を借りて、店長が、なぜクラーク推しだったのかを追記いたします。

店長がクラークに注目していた理由は、実は、SCOTTSDALE TEC ALLYBLUE ONSET CBだけではなく、単に飛ぶからでも、体が大きいからでもありません。

もちろん、彼のショット力は大きな武器です。
しかし、全米オープンという大会で本当に勝敗を分けるのは、ただ飛ばす力ではありません。

歴史ある名門コースで行われることの多い全米オープンでは、フェアウェイを外せばラフに捕まり、グリーンを外せば簡単には寄らず、グリーンに乗っても安心できません。

速く、硬く、傾斜の強いグリーンでは、強く打つパッティングよりも、弱く、正確に、ボールへエネルギーを与える技術が求められます。

ここで重要になるのが、クラークのパター選びです。

彼が使ってきたのは、いわゆる普通の長さ・普通の重さのパターではありません。
中尺で、重量感があり、ストローク中の余計な操作を抑えやすいパターです。

店長がクラークを推していた理由は、まさにここにあります。

全米オープンのようなコースでは、豪快なショットだけでは勝ち切れません。
最後に必要になるのは、弱いタッチでもフェースを安定させ、狙った方向へボールを正しく転がす能力です。

クラークのパター選びには、その大会特性に対する合理性が見えます。

つまり、クラークはただ調子が良かったから勝ったのではなく、全米オープンで勝つために必要な要素を、道具の面でも持っていた選手だったのではないか。

今回はその視点から、

ウインダム・クラークはなぜ全米オープンで強いのか

を考えてみたいと思います。

第一話は、全米オープンはなぜパッティングが難しいのか

です。

全米オープンという大会は、他のメジャーとは少し性格が違います。

もちろん、マスターズにも独特の難しさがあります。
全英オープンには風とリンクスの難しさがあります。
PGA選手権には、現代的な総合力を問う難しさがあります。

しかし、全米オープンの難しさは、もっと我慢比べに近いものです。

簡単にバーディーを取らせない。
少しでもズレると、すぐにボギーになる。
よいショットを打ったつもりでも、次の一打が楽にならない。

そういう大会です。

そして、その難しさを作っている大きな要素が、開催コースにあります。

全米オープンは、歴史ある名門コースで行われることが多い大会です。

Oakmont。
Shinnecock Hills。
Winged Foot。
Merion。
Pinehurst No.2。
Pebble Beach。
Los Angeles Country Club。

名前を並べるだけでも、アメリカゴルフの歴史そのものと言ってよいコースが多くあります。

これらのコースは、ただ距離が長いだけではありません。

むしろ、現代の大型造成コースのように、広いグリーンでボールを受け止める設計とは違います。

グリーン面が小さい。
傾斜が強い。
グリーン周りの逃げ場が少ない。
ピンの近くに外したつもりが、実は一番難しい場所に止まっている。

そういう設計が多いのです。

つまり全米オープンでは、ショットの精度だけでは足りません。

フェアウェイに置く。
グリーンに乗せる。
外したら寄せる。
そして、最後にパットを沈める。

この一つ一つの工程で、少しずつ選手にストレスがかかります。

特に厄介なのが、グリーン上です。

全米オープンのグリーンは、速く、硬く、簡単には止まりません。

しかも、ただ速いだけではありません。

速いグリーンなら、弱く打てばよい。
そう考えるのは簡単です。

しかし、実際にはそう単純ではありません。

弱く打つということは、ボールに与えるエネルギーが小さいということです。

エネルギーが小さいということは、フェースの向き、打点、ストロークの緩み、わずかな手首の動きが、そのまま結果に出やすいということです。

強く打つパットなら、多少のズレを勢いでごまかせることがあります。

しかし、速いグリーンで弱く打つパットは、ごまかしが効きません。

フェースがほんの少し開けば、ボールは右へ出ます。
ほんの少し閉じれば、左へ出ます。
インパクトで緩めば、届きません。
少し押し出せば、返しのパットが残ります。

つまり、全米オープンのパッティングで難しいのは、単に距離感を合わせることではありません。

弱いタッチの中で、ボールの進行方向へ正しくエネルギーを与えること。

これが難しいのです。

店長はここが、全米オープンのパッティングの本質だと思っています。

マスターズのパッティングは、大きな傾斜をどう読むか、どのラインに乗せるか、どこで止めるかという距離感の勝負という面が強くなります。

一方、全米オープンでは、もっと小さなズレが命取りになります。

入れにいったパットが少し強ければ、返しが怖い。
寄せにいったパットが少し弱ければ、次もまだ神経を使う。
カップの近くに止まっても、そこからが簡単ではない。

だから選手は、常に「どこまで攻めるか」と「どこで止めるか」の間で揺さぶられます。

この状況で必要になるのは、強く打つ勇気だけではありません。

むしろ必要なのは、弱く打ってもフェースを安定させる能力です。

小さなストロークでも、ボールへきちんとエネルギーを伝える能力です。

そして、狙った方向へ、余計な横ブレを入れずに転がす能力です。

ここに、ウインダム・クラークのパター選びを見る意味があります。

クラークは、全米オープンを力でねじ伏せた選手というより、全米オープンで必要になる「我慢のパッティング」に対して、非常に合理的な道具を選んでいた選手と見ることができます。

長めで、重く、ストローク中に余計な操作をしにくいパター。

これは、速いグリーンで強く打つための道具ではありません。

むしろ、弱く打つための道具です。

弱いタッチでもヘッドが暴れにくい。
弱いタッチでもフェースの向きが変わりにくい。
弱いタッチでも、ボールへ一定のエネルギーを与えやすい。

全米オープンのような大会では、この差が非常に大きくなります。

パターは、入れるための道具です。

しかし、全米オープンではもう一つの役割があります。

それは、外し方を小さくすることです。

大きくオーバーしない。
大きくショートしない。
ラインから大きく外さない。
次のパットを難しくしない。

この「外し方を小さくする」という考え方は、全米オープンでは非常に重要です。

そして、クラークの中尺・重量級パターには、その思想が見えます。

だから店長は、クラークの強さを単なる勢いや調子の良さだけでは見ていません。

全米オープンという大会が要求するパッティング。
その要求に対して、彼の道具選びが非常に合っていた。

ここに、クラーク推しだった理由があります。

次回は、クラークのパターそのものに少し踏み込みます。

2023年のOdyssey Jailbird。
そして、SCOTTSDALE TEC ALLYBLUE ONSET CB。

メーカーは違っても、そこに共通する思想は何か。

第二話では、

ウインダム・クラークはなぜ中尺・重量級パターを選んだのか

を考えてみたいと思います。

見えないものを見る 第10話 クラブを見るのか、ボールを見るのか

これまで、ゴルフのインパクトをクラブ側ではなく、ボール側から見直してきました。

第1話では、コペルニクス的発想の転換について考えました。

人間は、見えているものを中心に理論を作ります。

かつては太陽や星が動いて見えたため、地球が宇宙の中心だと考えられていました。

現代のゴルフでは、弾道計測器によって、

  • クラブパス
  • フェース向き
  • アタックアングル
  • ダイナミックロフト
  • ヘッドスピード

が見えるようになりました。

これは大きな進歩です。

しかし、見えるようになったクラブの動きが、インパクト現象の中心だとは限りません。

実際に力を受け取り、速度、方向、回転を得て飛び出していくのは、ボールだからです。 “見えないものを見る 第10話 クラブを見るのか、ボールを見るのか” の続きを読む

見えないものを見る 第9話 スピンロフト45度説は、何を説明しているのか

前回は、スピンを単純な摩擦だけで考えるのではなく、

フェースとボールが接触中に結合し、ボールカバーへ回転方向の力積が伝わった結果

として考えました。

クラブ側には、

  • フェース面
  • ロフト
  • 打点
  • バンス
  • ヘッドの進入方向

があります。

ボール側には、

  • カバー材
  • カバー厚
  • 内部構造
  • 変形量
  • 復元性

があります。

さらに、その間には、

  • 水分
  • 接触圧力
  • 接触位置

があります。

スピンは、これらが一つの接触系として働いた結果です。

“見えないものを見る 第9話 スピンロフト45度説は、何を説明しているのか” の続きを読む

ウインダム・クラークのパター変遷を見ると、PING Scottsdale TEC Ally Blue Onset CBの意味が見えてくる

USオープン2日目も、ウインダム・クラークが首位をキープしています。

ここまでくると、最近のクラークのパターの変遷を調べておかなければなりません。

現時点でのクラークのパター変遷は、次のように整理できます。

時期 パター 位置づけ
2023年 全米オープン優勝時 Odyssey O-Works Versa Jailbird系 38〜39インチ級のカウンターバランス系。Rickie Fowler型の流れ
2024年〜2025年頃 Odyssey Jailbird系を中心に試行錯誤 成功した形をベースにしつつ、安定感を探る時期
2025年後半〜2026年初め L.A.B. DF3、Toulon Le Mans、Scotty Cameron Tour T-11などをテスト ゼロトルク系・大型マレット系・別ブランドを広く試す
2026年3月 THE PLAYERS頃 Bettinardi Antidote SB1 Whisper Rockのプロショップで見つけた通常長さ系のゼロトルクパター
2026年3月 Houston Open PING Scottsdale TEC Ally Blue Onset まず標準長さに近い仕様で投入
2026年4月 RBC Heritage以降 PING Scottsdale TEC Ally Blue Onset CB 38インチ、17インチグリップ、重ヘッドのカウンターバランス仕様
2026年 CJ Cup Byron Nelson PING Scottsdale TEC Ally Blue Onset CB SG: Putting +12.573でPGAツアー記録、優勝
2026年 全米オープン2日目 PING Scottsdale TEC Ally Blue Onset CB 2日目終了時点で首位キープ

こうして見ると、クラークはかなりパターを入れ替えています。

そのクラークが、使用期間3か月にも満たない段階で、しかもパターだけの契約をPINGと結んだ。

これはかなり驚きです。 “ウインダム・クラークのパター変遷を見ると、PING Scottsdale TEC Ally Blue Onset CBの意味が見えてくる” の続きを読む

見えないものを見る 第8話 スピンは、本当に摩擦だけで生まれるのか

前回は、フェースを開く目的を、単にロフトを増やしてボールを高く上げるためではなく、

ライに対して、ボールとクラブのコンタクト位置を合わせるため

と考えました。

フェースを開くと、

  • リーディングエッジの高さ
  • 実効バンス
  • ソールの接地点
  • ヘッドの沈み込み
  • フェース上の打点
  • ボール側のコンタクトポイント

が同時に変わります。

つまり、フェースを開くことは、クラブの見た目を変える操作ではありません。

ボールへどこから、どの方向へ、どのように力を伝えるかを変える操作です。

では、その接触によって生まれるスピンとは、いったい何なのでしょうか。

一般には、

スピンは、クラブフェースとボールの摩擦によって生まれる

と説明されます。

もちろん、摩擦は重要です。

しかし、摩擦だけで十分に説明できるのでしょうか。

今回は、フェースとボールが接触する、極めて短い時間の中で何が起きているのかを、ボール側から考えてみます。

超スローでは、離れてから回り始めたように見える

インパクトの超スロー映像を見ると、興味深い現象があります。

クラブフェースに押しつぶされている間、ボールは大きく変形しています。

そして、フェースから離れた直後に、急に回転がはっきり見えるようになります。

映像だけを見ると、

ボールはフェースから離れてから回り始めた

ようにも見えます。

しかし、実際にはそうではありません。

ボールは接触中に、すでに回転のための角運動量を受け取っています。

ただし、その瞬間のボールは、完全な球体ではありません。

大きく押しつぶされ、表面も内部も変形しています。

そのため、接触中の動きを、硬い球がそのまま回転しているようには見ることができません。

フェースから離れ、ボールが元の形へ戻る過程で、内部に蓄えられていた変形と回転方向のエネルギーが、一つの回転運動として現れます。

つまり、

スピンは離れてから突然生まれたのではなく、接触中に与えられた角運動量が、離脱後に見える形になった

と考えるべきです。

フェースはボールをこすっているのか

「摩擦でスピンがかかる」と聞くと、クラブフェースがボール表面を長くこすっているように感じます。

しかし、実際の接触時間は極めて短いものです。

クラブフェースがボールを数センチにわたってこすり続けているわけではありません。

インパクトでは、

  • ボールを押しつぶす力
  • ボール表面をずらす力
  • ボールカバーを引き伸ばす力

が同時に働きます。

フェースがボールへ垂直に押し込む力は、主にボールスピードを作ります。

一方、フェース面に沿ってボール表面をずらそうとする力は、ボールカバーをせん断方向へ変形させます。

このせん断方向の力が、ボールへ回転を与える重要な要素です。

したがって、スピンは、

フェースがボールをこすった結果

というより、

ボールを圧縮しながら、表面と内部を回転方向へ変形させた結果

と考えた方が、実際の現象に近いように思えます。

ボールに与えられるのは、力ではなく力積である

インパクトは、一瞬の出来事です。

そのため、ボールへ加わる力の大きさだけを見るのでは不十分です。

重要なのは、

どの方向の力が、どれだけの時間加わったか

です。

力を時間で積み重ねたものを、力積と呼びます。

目標方向へ大きな力積が加われば、ボールスピードが生まれます。

回転方向へ力積が加われば、角運動量が生まれます。

つまり、スピン量を決めるのは、摩擦係数の大きさだけではありません。

  • 接触圧力
  • 接触時間
  • 力の方向
  • 力が作用した位置
  • ボールカバーの変形量
  • 変形を保持できるかどうか

が関係します。

同じ摩擦係数を持つ素材であっても、接触圧力が小さければ、大きな回転方向の力積を伝えることはできません。

反対に、ボールがフェースへ強く押し付けられ、表面が食いつけば、短い接触時間でも大きな角運動量を与えることができます。

摩擦はスピンの原因なのか

ここで、摩擦の位置づけを考え直してみます。

摩擦がまったくなければ、フェース面に沿う方向の力をボールへ伝えることはできません。

その意味で、摩擦は不可欠です。

しかし、

摩擦が大きければ、それだけスピンが増える

と単純には言えません。

摩擦は、ボールへ回転方向の力を伝えるための結合条件です。

ボールがフェース上を完全に滑ってしまえば、十分な回転方向の力積は伝わりません。

一方、ボール表面がフェースへ食いつきすぎても、変形によるエネルギー損失が大きくなる可能性があります。

必要なのは、

押し付けられた状態で、適度に変形し、回転方向の力を保持すること

です。

したがって、摩擦はスピンそのものではありません。

フェースからボールへ、回転方向の力積を伝えるための接続機構

と考える方が適切です。

ボールカバーは何をしているのか

ここで重要になるのが、ボールカバーの材質です。

ゴルフボールの表面は、硬い金属ではありません。

変形するポリマー素材です。

特にツアー系ボールで使われる柔らかいウレタンカバーは、インパクト時に変形しやすくなっています。

カバーが適度に柔らかければ、

  • フェースとの実接触面積が広がる
  • 溝や微細な凹凸へ入り込む
  • 表面がフェースへ食いつく
  • 接線方向へ伸びる
  • せん断方向の力を保持する

ことができます。

つまり、柔らかいカバーは、単に「摩擦が大きい」のではありません。

フェースから与えられた回転方向の力を、一時的な変形として受け止める

ことができます。

そして、フェースから離れるとき、その変形が元へ戻ろうとします。

その復元とともに、ボール全体へ回転が現れます。

このように考えると、ボールカバーは単なる表面材ではありません。

回転方向の力積を受け取り、蓄え、角運動量へ変換する部品

と見ることができます。

柔らかければ柔らかいほどよいのか

ただし、カバーが柔らかければ柔らかいほど、必ずスピンが増えるわけではありません。

柔らかすぎれば、

  • 変形が大きくなりすぎる
  • 力が内部で逃げる
  • 復元が遅れる
  • エネルギー損失が増える
  • ボールスピードが下がる
  • 表面が傷つきやすくなる

可能性があります。

必要なのは、単なる柔らかさではありません。

  • どれだけ伸びるか
  • どれだけせん断力を保持できるか
  • どの速度で元へ戻るか
  • どれだけの圧力に耐えられるか

が重要です。

つまり、スピン性能を決めるのは、硬度だけではありません。

カバーの厚み、弾性、粘り、復元性、その内側にある層の硬さまで関係します。

柔らかい表面の下に、適度に硬い層があると、カバーはフェースと内層の間に挟まれます。

表面は変形できる。

しかし、奥へ逃げすぎない。

そのため、フェースへ強く押し付けられた状態で、接線方向の力を受け止めやすくなります。

これは、柔らかいタイヤ表面を、内部の構造が支えていることに少し似ています。

フェースの溝は、スピンを直接作っているのか

ウェッジの溝は、スピンを増やすためのものだと説明されます。

しかし、乾いた状態でボールとフェースが直接接触できるなら、フェース表面そのものでも大きなスピンは生まれます。

溝が特に重要になるのは、

  • 水分
  • 汚れ

がフェースとボールの間に入ったときです。

溝は、それらを逃がす空間を作ります。

その結果、ボールカバーとフェース面が直接接触できる面積を確保します。

つまり、溝の役割は、

ボールを爪で引っかけて回すこと

ではなく、

フェースとカバーの結合を邪魔する異物を排出すること

と考える方が自然です。

接触がクリーンになれば、ボールカバーはフェースへ押し付けられ、せん断方向の力を受け取りやすくなります。

スピンを作るのは溝単独ではありません。

  • フェース面
  • ボールカバー
  • 接触圧力
  • 打点
  • ライ

が一つの接触系として働きます。

打点によってスピンが変わる理由

同じクラブ、同じロフト、同じアタックアングルでも、フェース上の打点が変わればスピン量は変わります。

フェース上部へ当たれば、

  • 接触圧力
  • ヘッドの回転
  • ボールカバーの変形
  • 芝の介在量

が変わります。

一般に高打点では、スピンが減りやすくなります。

一方、リーディングエッジ直上の適正な低打点では、

  • ボールを十分に圧縮できる
  • フェースとの直接接触を確保しやすい
  • カバーへ接線方向の力を伝えやすい
  • 芝や水分の介在を抑えやすい

という条件が作られます。

ただし、低ければ低いほどよいわけではありません。

リーディングエッジそのものへ当たれば、トップやブレードショットに近づきます。

必要なのは、

フェース下部でありながら、ボールを十分に面で受けられる位置

です。

フェースを開き、バンスでヘッドを支える操作は、この適正な低打点を再現するためのものとも考えられます。

バンスがフェースをボールへ押し付ける

以前、ジャンボ尾崎さんが、アプローチにおいて、

バンスがクラブフェースをボールへ押し付ける

という趣旨の表現をしたことがあったと記憶しています。

この表現は、感覚的なものに見えます。

しかし、ここまでの考察とつなげると、非常に本質的です。

バンスが地面や芝から反力を受けると、

  • ヘッドが地面へ潜りすぎない
  • フェースの通過高さが安定する
  • ヘッド姿勢が急激に変わりにくい
  • ボールとの接触圧力が抜けにくい

という状態を作れます。

つまり、バンスは単にダフリを防ぐのではありません。

フェースとボールの接触を支持し、カバーへ回転方向の力積を伝えやすくする

役割を持つ可能性があります。

「フェースを押し付ける」という表現は、接触時間を何倍にも延ばすという意味ではないでしょう。

そうではなく、

接触中に、フェース法線方向の圧力が急に抜けるのを防ぐ

という意味に近いと考えられます。

ボールをフェースへ押し付ける力が保たれれば、接線方向の力も伝えやすくなります。

その結果、カバーのせん断変形が大きくなり、角運動量も増えます。

クラブ側とボール側が結合して初めてスピンになる

ここまで考えると、スピンはクラブ単独の性能ではないことが分かります。

クラブ側には、

  • フェース面
  • ロフト
  • 打点
  • バンス
  • ヘッドの進入方向

があります。

ボール側には、

  • カバー材
  • カバー厚
  • 内部構造
  • 変形量
  • 復元性
  • 表面状態

があります。

さらに、その間には、

  • 水分
  • 接触圧力
  • 接触位置

があります。

これらが結合したとき、初めてスピンが生まれます。

したがって、

このウェッジはスピンがかかる

という表現も、

このボールはスピンがかかる

という表現も、単独では不完全です。

正確には、

このクラブと、このボールと、このライと、この打点の組み合わせでは、回転方向の力積が効率よく伝わる

ということです。

スピンロフトだけでは見えないもの

弾道計測では、スピンロフトがスピン量を考える重要な指標として使われます。

クラブの進行方向とフェース姿勢の差が大きくなれば、フェース面に沿う相対運動も大きくなります。

そのため、スピンロフトとスピン量には強い関係があります。

しかし、スピンロフトが同じでも、

  • 打点
  • カバー材
  • 接触圧力
  • 芝や水分
  • バンスの働き
  • フェースとの滑り方

が変われば、スピン量は変わります。

つまり、スピンロフトは、

クラブ側から見た入力条件

を表しています。

しかし、ボールがその入力をどれだけ角運動量として受け取ったかまでは示していません。

ここに、クラブ側から見える数値と、ボール側で起きている現象の間があります。

摩擦から、結合へ

これまで、スピンは摩擦によって生まれると説明されてきました。

その説明は間違いではありません。

しかし、摩擦という一語だけでは、現象の一部しか見えていません。

より正確に表現するなら、

スピンは、フェースとボールが接触中に結合し、ボールカバーへ回転方向の力積が伝えられた結果として生まれる

となります。

摩擦は、その結合を成立させる要素です。

カバーは、その力積を受け取る要素です。

バンスは、その接触を支える要素です。

打点は、その力がどこへ作用するかを決める要素です。

スピンは、それらすべてが組み合わされた結果です。

見える回転と、見えない変形

弾道計測器には、スピン量が表示されます。

超スロー映像では、ボールが回転して飛び出す様子が見えます。

しかし、その回転が生まれるまでに、

  • カバーがどれだけ伸びたのか
  • どこへ圧力が集中したのか
  • どの部分が滑り、どの部分が食いついたのか
  • どの方向へ力積が伝わったのか
  • 離脱時にどのように復元したのか

は見えていません。

見えるのは、回転という結果です。

見えないのは、その回転を作った接触中の変形です。

しかし、ボール側から考えることで、見えていない過程を推測することはできます。

次回は、これまでスピンを説明する中心的な考え方として使われてきた、スピンロフトについて改めて考えます。

スピンロフト45度付近でスピンが最大になるという説明は、何を表しているのでしょうか。

そして、そのモデルには、ボール側のコンタクトポイント、カバー変形、バンスによる支持が、どこまで含まれているのでしょうか。