第5話 弾道計測機だけでは見えにくいフィッティングの盲点

結果は見える。しかし、原因は別にある

弾道計測機は、基本的に結果を見ています。

ボールがどちらへ飛んだか。
どれくらい打ち出されたか。
どれくらい曲がったか。
スピン量はどうだったか。
クラブパスはどうだったか。
フェース向きはどうだったか。

これらは、インパクトで起きた結果を数字として見せてくれます。

もちろん、それは非常に重要です。
弾道計測機があることで、ボール初速、打ち出し角、スピン量、キャリー、クラブパス、フェース向きといった情報を、かなり正確に確認できるようになりました。

しかし、ここで注意しなければならないことがあります。

結果を見ているだけでは、原因を見誤ることがある。

たとえば、ボールが左に飛んだとします。

そこで単純に、

「ボールが左に飛ぶ=ライ角がアップライトすぎる」

と判断してしまうと、原因を見ていない可能性があります。

なぜなら、ボールが左に飛んだ原因は、ライ角そのものだけとは限らないからです。

手元が低くなりすぎていたのかもしれない。
クラブが長すぎて、手元が体から離れていたのかもしれない。
クラブが外から入っていたのかもしれない。
ロフトが立ちすぎていたのかもしれない。
フェースを手で合わせていたのかもしれない。

つまり、弾道計測機に出ている数値は、あくまで結果です。

その結果が、クラブ長によるものなのか。
ライ角によるものなのか。
手元高さによるものなのか。
それともスイングの動きによるものなのか。

ここを判断しなければ、本当のフィッティングにはなりません。


原因は、正しい動画で判断する必要がある

この原因を判断するには、弾道計測機だけでは足りません。

正しいカメラ位置で撮影されたスイング動画が必要です。

AGLメソッドでは、正しいカメラ位置から動画を取得し、身体とクラブの関係を見ます。

アドレスで手元がどこにあるのか。
クラブ長に対して、手元が体から離れていないか。
ライ角によって、手元高さが合っているのか。
腕が張っていないか。
クラブが外から入りやすい構えになっていないか。
インパクトへ向かうクラブの通り道がどうなっているのか。

これらは、弾道計測機の数値だけでは判断しきれません。

最終的には、正しい動画を見たうえで、インストラクターが判断するしかありません。

ここが非常に重要です。


クラブ長とライ角を見なければ原因を間違える

ここまで述べてきたように、クラブフィッティングでは、クラブ長とライ角の判断が絶対に必要です。

ライ角は、フェースの向きだけを変えるものではありません。

ライ角が変わると、手元の高さが変わります。
手元の高さが変わると、クラブの通り道が変わります。
クラブの通り道が変わると、ラインオブコンプレッションが保てるかどうかも変わります。

さらに、クラブ長も重要です。

クラブが長くなると、ボールは遠くなります。
ボールが遠くなると、手元の位置が変わります。
手元の位置が変わると、クラブの通り道が変わります。

つまり、クラブ長とライ角は別々の問題ではありません。

どちらも、手元位置とクラブの通り道を変えます。

そして、その結果として、ボールに加わる力のベクトルが変わります。


弾道計測機だけだと、ライ角だけのフィッティングになりやすい

弾道計測機でフィッティングをすると、どうしてもボールの打ち出し方向や曲がりに目が行きます。

左へ飛ぶ。
右へ飛ぶ。
フェースが開いている。
フェースが閉じている。
クラブパスが外から入っている。

すると、判断がライ角方向に寄りやすくなります。

左へ行くならフラット。
右へ行くならアップライト。
つかまらないならアップライト。
ひっかかるならフラット。

もちろん、それで合う場合もあります。

しかし、クラブ長の問題を見落としたまま、ライ角だけで調整すると、根本解決にならないことがあります。

一時的に球筋が良くなっても、クラブ長と手元位置の問題が残っていれば、あとで同じ症状が出ることがあります。

だから、フィッティングでは弾道計測機の結果だけでなく、

そのクラブ長とライ角が、その人に自然な手元位置を作っているか

を見なければいけません。


ラインオブコンプレッションは、スイングだけでは保てない

フェードとスライスの違いを考えるとき、私はラインオブコンプレッションを非常に重要視しています。

フェードは、ラインオブコンプレッションを保ったまま、スピン軸だけを少し右へ傾けた球です。

一方、スライスは、ラインオブコンプレッションが外れ、力が右へ逃げた球です。

では、このラインオブコンプレッションは、スイングだけで保てるのでしょうか。

私は、そう単純ではないと思います。

クラブ長が合っていなければ、手元の前後位置が合いません。
ライ角が合っていなければ、手元の高さが合いません。

手元の位置と高さが合わなければ、クラブの通り道は崩れます。
クラブの通り道が崩れれば、インパクトでボールに加わる力の向きも崩れます。

つまり、クラブ長とライ角が合っていない状態で、ラインオブコンプレッションを保つことは非常に難しいのです。


数字を見ることと、原因を見ることは違う

弾道計測機は、現代のフィッティングに欠かせない道具です。

しかし、数字を見ることと、原因を見ることは違います。

弾道計測機は、ボールがどう飛んだかを教えてくれます。
しかし、なぜそのように飛んだのかを判断するには、身体とクラブの関係を見る必要があります。

クラブ長は合っているのか。
ライ角は自然な手元高さを作っているのか。
手元は体から離れていないか。
腕は張っていないか。
クラブは外から入りやすい状態になっていないか。
ラインオブコンプレッションは保てる状態にあるのか。

ここを見ずに、弾道計測機の結果だけで判断すると、原因を間違えることがあります。


まとめ

弾道計測機は、非常に優れた道具です。

しかし、弾道計測機は基本的に結果を見ています。

ボールが左に飛んだ。
だからライ角がアップライトすぎる。

このように単純に判断してしまうと、本当の原因を見落とすことがあります。

原因は、クラブ長かもしれません。
ライ角かもしれません。
手元高さかもしれません。
クラブの通り道かもしれません。
スイングの動きかもしれません。

それを判断するには、正しいカメラ位置で撮影されたスイング動画が必要です。
そして、その動画をもとに、インストラクターが身体とクラブの関係を判断する必要があります。

クラブフィッティングとは、数字を合わせる作業ではありません。

クラブ長とライ角によって、自然な手元位置を作り、ラインオブコンプレッションを保てる状態を作る作業です。

弾道計測機の数値は重要です。

しかし、その数値の原因を読めなければ、本当のフィッティングにはならないのです。

 

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第3話 スーパーメックスを科学する

リー・トレビノのフェードを、ローポイントと力のベクトルで見る

前回は、「ローフェードが『見える』と成功率が上がる」を振り返りながら、フェードを打つには、まず手元高さとクラブの通り道を整える必要があるという話をしました。

今回は、以前の記事**「スーパーメックスを科学しよう。」**を振り返りながら、リー・トレビノのフェードについて考えてみます。

トレビノのフェードは、ただのカット打ちではない

リー・トレビノといえば、強いフェードを打つ選手として知られています。 “第3話 スーパーメックスを科学する” の続きを読む

第2話 ローフェードが「見える」と成功率が上がる

ボール位置・ハンドアップ・手元高さの意味

前回は、スピンアウト第1話として、以前の記事**「ロングアイアンでのローフェード」**を振り返りました。

そこで確認したのは、

フェードは、外から切る球ではない

ということです。

ローフェードは、クラブを外から入れて、スピン量を増やして右へ曲げる球ではありません。

力を前に出す。
ボールにしっかりエネルギーを伝える。
そのうえで、スピン軸だけを少しフェード方向へ傾ける。

これが、強いローフェードです。

今回は、以前書いたもう一つの記事、
「ローフェードが『見える』と成功率が上がる」
を振り返りながら、ローフェードの構えについて考えてみます。 “第2話 ローフェードが「見える」と成功率が上がる” の続きを読む

第1話 ロングアイアンでのローフェード

フェードはカット軌道ではなく、スピン軸で作る

今回から、**「アップライトに調整すると、右に打ち出されるようになる」**というシリーズの少しスピンアウトとして、フェードの打ち方について考えてみたいと思います。

ライ角は、単にフェースの向きを変えるだけではありません。

手元の高さ。
クラブの通り道。
インパクトでボールに加わる力のベクトル。

これらを変える要素でもあります。

この考え方は、フェードにも大きく関係します。

フェードというと、多くの方は、

外から入れる。
カットに打つ。
フェースを少し開く。
左へ振って、右へ曲げる。

このように考えます。

しかし、本当に良いフェードは、それだけでは説明できません。

以前、私は**「ロングアイアンでのローフェード」**という記事を書きました。

今回はその内容を振り返りながら、ライ角シリーズで見てきた手元高さ・クラブの通り道・力のベクトルという視点から、もう一度フェードを考えてみます。 “第1話 ロングアイアンでのローフェード” の続きを読む

白いパターが勝った! PGA,バイロンネルソン。

ウィンダム・クラークの「60」とPING SCOTTSDALE TEC ALLY BLUE ONSET CB

今週は日本ツアーだけでではありませんでした。

PING GOLF @PingTour White Gold. 🏆 The #ScottsdaleTEC Ally Blue Onset joins the Gold Putter Vault with a win at The CJ Cup Byron Nelson. The winner led the field in SG: Putting (+12.573). #PlayYourBest

PGAツアー「CJカップ・バイロン・ネルソン」で、ウィンダム・クラークが最終日に「60」をマークし、逆転優勝を飾りました。

この勝利で大きく注目されたのが、鉛が貼られた白いパターです。

そのモデルは、

PING SCOTTSDALE TEC ALLY BLUE ONSET CB

です。

GOLF.comのWITBによれば、クラークのパターは次のような仕様でした。

項目 スペック
モデル PING Scottsdale TEC Ally Blue Onset CB
ロフト 3度
ライ角 70度
長さ 38インチ
ヘッド重量 385g
追加重量 17gチップウェイト(おそらくソールの鉛の重量と思います。)
インサート PEBAX
グリップ SuperStroke

ここで注目したいのは、単に「白いマレットパター」ではないという点です。

クラークが使ったのは、CB=カウンターバランス仕様。長さは38インチで、通常のパターより長め。さらにヘッド重量385gに加え、17gのチップウェイトが入っています。

つまり、見た目の白さだけではなく、重量配分までかなり作り込まれたパターです。

白いヘッドで視線を落ち着かせる。
オンセット構造でフェース面とボールを見やすくする。
クワイエット・アイ
PEBAXインサートで打感と音を整える。
カウンターバランスで手元とヘッドの動きを安定させる。

これらが組み合わさって、クラークのストロークに合ったパターになっていたと考えられます。

この“カウンターバランス仕様”は、単に大型マレットの高慣性モーメントを使うだけでなく、手元の安定性とヘッド挙動のバランスを整える設計になっています。重量配分とフェース感覚を両立させることで、パットの方向性と距離感が決まっていたことが、最終日のSG:Putting 12.573(ツアー1位)という数字にも表れています。

PING公式でも、ALLY BLUE ONSETはオンセット構造で視線を落ち着かせ、フェース面を見やすくする設計が特徴とされています。これにより、単なる“真っすぐ動かすだけ”のパターではなく、自分のフェース軌道とミスの傾向に対応する道具として機能していたと考えられます。

そして今回、その設計が最終日の「60」というスコアに結びつきました。

ウィンダム・クラークの「60」、ストロークゲインが12.573という数字は、スコアの全てをこのパターが作ったという驚異的な事実を表しています。

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【店長の一言】
パターを選ぶときは、長さを重量です。ご増段はお気軽に。

第4話 G440シリーズは、ヘッドとシャフトでフェース管理に答える

ここまで、ドライバーについて考えてきました。

第1話では、ドライバーは「シャフトが長いから曲がる」のではなく、フェースアングルの影響が非常に大きいクラブであると整理しました。

第2話では、ドライバーの性能は、飛距離だけでも方向性だけでも判断できず、飛距離と左右分散をストロークゲインで考える必要があると書きました。

第3話では、スイング理論として、ドライバーに必要なのはインパクトでフェースを合わせに行くことではなく、フェースの開閉量を少なくし、インパクトで合わせに行かなくて済む状態を作ることだと整理しました。

では、製品としては何が必要になるのでしょうか。

ここで重要になるのが、PING G440シリーズです。

G440シリーズの強さは、単に飛ぶドライバーを作ったことではありません。

ヘッド展開で、プレーヤーの弾道傾向に対応する。
シャフト展開で、プレーヤーの入力の強さに対応する。
そして、その土台に高い方向安定性を持っている。

この三つがそろっているところに、今シリーズの大きな価値があると思います。

ドライバーは、ボールの初期方向がフェースアングルに強く支配されるクラブです。
つまり、フェースが開きやすい人、閉じやすい人、打点が上下左右に散りやすい人、強く叩く人、軽く振りたい人では、必要なクラブが変わります。

G440シリーズの土台にあるのは、高慣性モーメントで飛び重心という考え方です。

LST、MAX、SFT、Kというモデルごとの性格はありますが、すべてのモデルに共通しているのは、飛距離性能と方向安定性の両立です。 “第4話 G440シリーズは、ヘッドとシャフトでフェース管理に答える” の続きを読む

第3話 スイング理論から見る、フェース管理しやすいドライバー

第1話では、ドライバーは「シャフトが長いから曲がる」のではなく、フェースアングルの影響が大きいクラブであると整理しました。

第2話では、ドライバーの性能は、飛距離だけでも方向性だけでも判断できず、飛距離と左右分散をストロークゲインで考える必要があると書きました。

では、スイングとしては何が必要になるのでしょうか。

ここで重要になるのが、フェース管理です。

ドライバーは、ボールの初期方向がフェースアングルに強く支配されるクラブです。
つまり、インパクトでフェースが少し開く、少し閉じるだけで、出球に大きな影響が出ます。

だから、ドライバーでは、

「インパクトでフェースを合わせる」

という考え方だけでは危険です。 “第3話 スイング理論から見る、フェース管理しやすいドライバー” の続きを読む

第2話 飛距離と方向性は、ストロークゲインで考える

前回は、ドライバーが曲がる理由について考えました。

よく、

「ドライバーはシャフトが長いから曲がる」

と言われます。

しかし、厳密に言えば、シャフトが長いことそのものがボールを曲げているわけではありません。

本当にボールの方向を決めているのは、フェースアングル、クラブパス、フェース・トゥ・パス、打点、スピン軸、スピン量といったインパクト条件です。

特にドライバーは、ボールの初期方向がフェースアングルに強く支配されるクラブです。

つまり、ドライバーは飛距離のクラブである前に、フェース管理のクラブである。

ここまでが前回の話でした。

では、ここで一つ疑問が出てきます。

フェース管理が大事なら、ドライバーはとにかく曲がらないものを選べばよいのでしょうか。

私は、そう単純ではないと思っています。

なぜなら、ゴルフは方向性だけのゲームではないからです。

ドライバーには、飛距離の価値があります。

たとえば、フェアウェイに毎回置けるけれど飛距離が出ないクラブと、多少左右に散るけれど大きく飛ぶクラブがあったとします。

どちらがスコアに有利なのか。

これは、感覚だけでは判断できません。 “第2話 飛距離と方向性は、ストロークゲインで考える” の続きを読む

第1話 ドライバーは「シャフトが長いから曲がる」のではない

ドライバーが曲がる理由として、よく言われる言葉があります。

「ドライバーはシャフトが長いから曲がる」

たしかに、ドライバーは他のクラブに比べてシャフトが長く、ヘッドも大きく、ボールも遠くまで飛びます。
ですから、少しのズレが大きな結果になって見えるのは事実です。

しかし、厳密に言えば、シャフトが長いことそのものがボールを曲げているわけではありません。

ボールを曲げている直接の要因は、もっと別のところにあります。

それは、

フェースアングル。
クラブパス。
フェース・トゥ・パス。
打点位置。
スピン軸。
スピン量。

こうしたインパクト条件です。

つまり、シャフトが長いから曲がるのではなく、シャフトが長くなることで、これらのインパクト条件を安定させることが難しくなるというのが、より正確な表現です。

ここを間違えると、ドライバー選びも、スイング作りも、少し違う方向へ進んでしまいます。 “第1話 ドライバーは「シャフトが長いから曲がる」のではない” の続きを読む

第6話 フラットにしたのに、なぜつかまるのか

FW・HBの可変スリーブ調整とアドレスの手元位置

FWやHBの調整機能で、フラット設定を選ぶと、普通は「つかまりにくくなる」と考えます。

クラブ単体で見れば、それは正しい説明です。

ライ角がフラットになれば、ロフトのあるクラブほどフェース面は右を向きやすくなります。

つまり静的には、

フラット=右へ出やすい
フラット=つかまりにくい

という説明になります。

ところが、実際のフィッティングでは、まれにフラットへ調整した方がいいボールが出ることがあります。

「フラットにしたのに、なぜかボールがつかまる」

そんなことはない、と思っている人がほとんどかもしれません。

しかし、これは矛盾ではありません。


材料力学の不定性問題に似ている

少し難しい言い方をすると、これは材料力学の不定性問題に似ています。

ひとつの部品だけを見れば、答えは単純に見えます。
しかし、その部品が構造全体の中に組み込まれると、話は変わります。

こちらを少し動かすと、あちらも動く。
こちらの角度を変えると、あちらの力の流れも変わる。
こちらの高さを変えると、あちらの通り道も変わる。

ゴルフクラブも同じです。

クラブ単体で見れば、フラット設定はつかまりにくい方向です。
しかし、人間が構えて振ると、ライ角の変化はフェース向きだけでは終わりません。

手元の位置が変わる。
腕の張りが変わる。
クラブの見え方が変わる。
テークバックの上がり方が変わる。
ダウンスイングの通り道が変わる。
そして、インパクトでボールに加わる力のベクトルまで変わる。

だから、静的にはつかまりにくいはずのフラット設定が、動的にはボールをつかまえる方向に働くことがあるのです。 “第6話 フラットにしたのに、なぜつかまるのか” の続きを読む